遅ればせながら、「大密室」(新潮社)を今頃読んでいましたら、有栖川さんのエッセーで「後から家をつくる密室トリックが、実は双葉氏が思いつきをその場で喋ったものだった」という内容を読んでびっくりしました。
その密室トリックは、実際に作例があります。
W.ハイデンフェルト「引き立て役クラブの不快な事件」。各務三郎篇「ホームズ贋作展覧会」(講談社文庫)に収録されていて、乱歩の「続・幻影城」の「類別トリック集成」で念頭におかれていたのはこの作品のようです。
あの本では作者がブリーンとは書いてなく「アメリカの作家」とだけ書かれています。
ハイデンフェルトはドイツから南アフリカに移住した作家のようですが、この短編がEQMMに掲載されたのは1953年で、乱歩がちょうどトリック集成を書いていた頃の掲載なので、時期もあいます。双葉さんの発言意図は不明ですが、各務さんは、元ネタ短編を発掘しておられるわけです。これはかなり大胆な趣向の密室ものなので、「密室大図鑑」でも取り上げてもいいくらいの作品だと思いました。この作品のことが有栖川さんにさえ知られていなかったのは、私としてはちょっと意外でした。