読書録/2003年7月

7月1日 折原一『模倣密室』(光文社)

 密室事件を求めてやまない黒星警部ものの連作短編集。もっとも作中には黒 星が登場せず、葉山虹子が探偵役をつとめる作品もある。
 これまでの事件簿でも黒星警部は相当(というか全部?)密室事件に遭遇し たいと思うのだが、なぜか本書でも「密室事件に全然出会えない」と嘆いて いる。多少無理のあるトリックを用いた事件でも黒星警部が担当すると違和 感がない。個人的には、島田荘司作品のパロディを狙った「邪な館、1/3の 密室」の大技ぶりが特に気に入った。

(2003年著者索引にもどる)


7月12日 有栖川有栖『暗い宿』(角川書店)

 2001年7月に刊行された、宿をモチーフとした、四中編から成る火村も のの連作短編集。
 苦い結末、悲劇が待ち受けている作品があっても、せつない詩情をかもし出 す筆致のせいか、どれも後味が悪くならない。ここで描かれたような宿があ るなら、ふらりと旅に出て、宿泊したくなる。

(2003年著者索引にもどる)


7月15日  貫井徳郎『被害者は誰?』(講談社ノベルス)

 追求する対象が犯人でなく、被害者だったり探偵だったりする小説を書いた のは、ミステリファンならご承知のパット・マガー。『被害者を探せ!』と か『探偵を探せ』の趣向はさすがに同じものを模倣はできないだろうと思っ ていたら、この連作集は、堂々とその趣向に挑んでいる。大枠の設定はマ ガーと共通していても、それを成り立たせる趣向というか意匠立ては別物 で、現代ミステリらしい技法が使われている。アイディアにすぐれた一作だと 思った。

(2003年著者索引にもどる)


7月20日 本格ミステリ作家クラブ・編『本格ミステリ03』(講談社ノベルス)

 収録作は、半分くらいは各作家自身の短編集で読んだことがあった。
「彼女がペイシェンスを殺すはずがない」犯人あてとしてよくできている。新人らしいので今後に大いに期待。「別れてください」。冒頭の場面で「実はこうだろう」と推測したことが真相だった……。「首切り監督」霞流一のお笑いミステリに賭ける執念たるや大したものだと思わせるものが。「百万のマルコ」歴史ミステリをつくる腕前は大したもの。そのうち世界史が通覧できる柳広司による大著にまとめあげられるのかもしれない。

(2003年著者索引にもどる)


7月24日 西澤保彦『神のロジック 人間のマジック』(文藝春秋)

 本格ミステリ・マスターズの新作。アメリカとおぼしきスクールの閉鎖環境 を舞台にしている。
 手練れの西澤作品、十分堪能できるのだけれど、設定のアイディアとミステ リのアイディアがちょっとミスマッチな気がして、別々に作品をたてた方が よかったのではないかという気がした。

(2003年著者索引にもどる)

トップにもどる