読書録/2004年4月
4月3日 津原泰水『ルピナス探偵団の当惑』(原書房)
三つの中編から成る、女子高生ミステリ。一話目で少し違和感をもったの
は、捜査にあたる警察官が、素人探偵ないし部外者にホイホイと気軽に情報
を教えているところ。身内がいても、捜査情報はこんなに簡単には明かして
くれない気がする。他の作家も、素人探偵が捜査情報を得るプロセスや手続
きは苦労しているところではあるのですが。
一話目は割合ライトなミステリだったが、二話と三話はけっこう重厚なミス
テリ。この作品も食へのこだわりが顕著で、一面グルメ・ミステリかも。
4月5日 乾くるみ『イニシエーション・ラブ』(原書房)
『塔の断章』以来の書き下ろしミステリ長編だと思って期待して読み始めた
のだけれど──。仕掛けはあるのだけれど、それをもってしてもミステリと
はちょっと言い切れない作品だったと思う。
恋愛小説としては気が利いている作品だと思う。現代版シラノ・ド・ベル
ジュラックというか、苦みのある、意地悪いラブストーリーだなと。ミステ
リとしては、きめ細かく土台をつくっているのに、建物がやってこなかった
感じ。
4月20日 安房直子『花豆の煮えるまで』(偕成社)
1993年、安房直子が亡くなった年に刊行された連作短編集。「小夜の物語」
という副題があり、全体を通して小夜が主人公。母がいない家庭に育った小
夜は、父から「おまえはヤマンバの子だ」と告げられるところから物語が始
まる。
挿絵は味戸ケイコ。安房直子作品の挿絵画家としては味戸ケイコが一番好き
なのだけれど、この作品集の挿絵はなにか物足りない。本文の方も、きれが
乏しく、衰えを感じさせる内容だったように思う。
偕成社から「安房直子コレクション」全七巻が刊行されて、買うべきかどう
しようか迷っている。収録作品の8〜9割は所蔵して既読なのだが、全体に3短
篇、単行本未収録がある。ウールリッチ短編集に似て、効率が悪く(未読率が
低い)悩ましいところである。
4月20日 笹沢左保『盗作の風景』(徳間文庫)
自作の趣向やトリックをもう一度使う場合は、通常、盗作ではなく焼き直し
とでも形容されるだろうが、これは笹沢作品の中の「焼き直し」という気が
する。
「炎の虚像」では、殺人の疑いをかけられた夫の容疑を晴らすべく奮闘する
女性がヒロインだった。この『盗作の風景』では、殺人の疑いをかけられた
父の容疑を晴らすべく奮闘する女性がヒロイン。中盤まで、タイトルの意味
はわからないが、意外な形で雑誌上に載った文章に盗作の疑いがあることが
事件にかかわってくる。
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