カタクリの花

 カタクリは,光合成の天才です。1年の稼ぎをわずか春先だけで行ってしまいます。
 花が紫なのも,地下に養分を蓄えるのも,すべて僅かな期間で光合成をすることと関係があります。
 昔は,片栗粉と言えば,このカタクリが蓄えたでんぷんをとった物でした。現在では,ジャガイモから効率よくとるようになりました。
 この光合成の天才も,環境の変化には弱いところがあるのです。
 とても,ジャガイモのように大量に栽培することはできません。

 茨城県では,4月の初め頃,カタクリの花が見頃になります。
 カタクリは,ユリ科の多年草です。しかし,ヤマユリのような大きさを想像すると,肩すかしを食います。

 大きさはだいたいパンジーぐらいです。
 しかし,パンジーとは全く違った生活をします。
 この花は,種から育っていって8年ぐらいで咲くそうですが,「さもありなん」というような生活をしています。
 2月頃芽を出し,3月,4月に光合成をします。5月頃には種子を落として枯れてしまいます。
 枯れても,地下に養分を蓄えて次の春まで生き続けます。
 5月にまいた種は,自分のすぐ近くに落ちます。ですから,カタクリは群生します。
 (新しい科学の教科書1この本の紹介 参照)
 
 気温が上がらないとき,雨などが降ったときはこのように花びらを閉じてしまいます。
 こうすることで,花のおしべやめしべを守っているのです。
 花の最も大切なはたらきは,種子をつくることです。
 そのために,雄しべと雌しべが重要なのです。
 花は人間の目を楽しませるのに咲くのではなく,植物が子孫を残すために咲くのです。
 だから,この時期,数少ない昆虫に最も目立つ色をしています。それが紫なのです。

 このカタクリは,なぜ5月には枯れてしまうのでしょう。
 それは,落葉樹の下で生活するからです。
 クリ,クヌギなどの落葉樹は,3月4月頃には葉が出ていません。
 その隙を狙って光を浴び,光合成をするのです。落葉樹達が葉を生やすと,もう光合成が効率よくできないので,地上部があっても無駄です。ですから,撤退するわけですね。
 だからといって,ヒガンバナのように,冬場に葉を伸ばして光合成というのも効率が悪いのでやりません。春先に命を懸けるカタクリなのです。限られた時期しか光合成できないので成長は遅く,「花を咲かせるまでに約8年」と言われるのはそのためです。
 当然,落葉樹に守られなくなって,3月4月に他の植物がカタクリの光合成をじゃまするようだと,カタクリは生きていけません。
 落葉樹の林と共に生きるカタクリは,林がなくなっていく現代,生きていくことが難しくなってきました。
 間違っても,山から掘って持ち帰るようなことはしないでください。紫の花が欲しいのなら,パンジーを育てるので十分です。
 カタクリは,よく手入れされた落葉樹の中で見るものなのです。


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