側転(側方倒立回転)を中心にしたマット運動の授業
 
 もくじ おそるべき実態  倒立ができればできる  解説   授業の様子のページへ  ダイジェストのページへ
1.おそるべき実態
 5年生を受け持って驚いた。
 前転が、ままならない。後転に至っては、できるものの方が圧倒的少数。壁倒立は、「初めてやる運動だ」と。開脚前転など、「そんなの習わなかった」と。
 つまり、逆さ感覚、腕支持感覚など、鍛えてあろうはずがない。
 これが、普通の公立校の実態なのか。
 では、体育の研究指定校では、どうであろうか。
 かなり素晴らしく鍛えてある学校もある。ところが、「楽しい体育」の名のもとに、鍛えられていないところもあるようだ。
 基礎感覚づくりができていなくて、「楽しい体育」とは変だと思うが、学校によって様々な事情があるのだろう。
 このような状況におかれたら、することはただ一つである。

自分で、きちんと子どもに力をつけてやる。
 
 もちろん、子どもに力をつけていないシステムなどは、別に批判しなければならないだろう。
 さて、この実態からして、側転のみを指導しても無意味なことは、明らかだ。
 4月の最初から、基礎感覚作り、補強運動に取り組むことにした。
 手押し車・うさぎとび・おんぶ・壁倒立などである。
 併せて、前転・後転・開脚前転・開脚後転・飛び込み前転・倒立前転の復習も時間をとっていくことにした。
 
2.壁倒立ができれば側転の上達は早い
 
 側転(側方倒立回転)は、壁倒立ができている子の上達は早い。
 逆に言うと、壁倒立ができていないと、かなり苦しい。
 1分以上壁倒立ができた子は、最初の状態がどうであっても、6時間目には全員できた。
 ところが、残念ながら、壁倒立が1分以上できる子というのは、それほどいないのである。
 側転と同時に、基礎体力の一つとしての倒立を大切にしたい。
 以下に、私の学級における実態と指導後の効果を示す。
(子どものプライバシーの問題のため,いつ,どこで指導したかは明確にできません。また,番号は出席番号順ではなくしてあります。)


 

壁倒立
 

   初期状態

   授業時における状態
着手 立ち上がり    備考


 





 

 

 

 


1分





 

 

 

 


 




 

 

 

 

立ち上がりC


 




 

 

 


膝が少々曲がる


 




 

 

 


膝が少々曲がる


 





 

 

 

 


 




 


 

 

 


1分





 

 

 

 


30秒





 

 

 

 

10

1分





 

 

 

 

11

 





 

 

 

 

12

30秒





 

 

 

 

13

 




 

 


 

 

14

1分





 

 

 

 

15

 




 

 

 

 

腰が上がらない

16

1分





 

 

 

 

17

1分





 

 

 

 

18

1分





 

 

 

 

19

1分





 

 

 

 

20

30秒





 

 

 

 

21

 




 


 

 

 

22

 




 

 


 

 

23

1分





 

 

 

 

24

 





 

 

 

 

25

 





 

 

 

 

26

 





 

 

 

 

27

 





 

 

 

 

28

 





 

 

 

 

29

 




 

 

 


やや曲がる

30

 




 

 

 

 

腰が上がらない

31

 




 

 

 


少々膝が曲がる

32

 





 

 

 

 

33

1分





 

 

 

 

34

1分




 

 


 

 

35
 


 


 


 


 


 


 


 


 


 
 記号について解説する。
<着手>
 A 足の爪先の向きの逆に、着手している。
 B 両手の着き方が、安定しない。
 C 足の爪先と同じ向きに、着手している。
<腰>
 A 手、肩、腰を結ぶ直線が、マットとほぼ垂直になっている。
 B 手、肩、腰を結ぶ直線が、斜めになっている。
 C 足や腰が上がらない。
<立ち上がり>
 A 手を着かずに、片足ずつ立てる。
 B 立てることは立てるが、膝が曲がる。
 C 手を着いたり、倒れたりする。
 
 4時以降の記号は、着手、腰、立ち上がりともにAの場合、Aと表記した。 
 達成率 32÷35×100=91%
 指導効率=(できた子−もともとできた子)÷人数×100
     =(32−2)÷35×100=86%
 
3.解説 

さらに充実した実践をするために
      側方倒立回転のテクニカルポイント・予備教材
                            田上和久
 
 側方倒立回転を、はじめ、なか、おわりに分ける。
 それぞれのテクニカルポイントを示す。
 
1.回転加速をつける
 [はじめ]のテクニカルポイントは、回転加速である。
 側方倒立回転(側転)は、着手してから倒立するまでの回転加速が重要になる。
 回転加速がつけば、腰も上がり、きれいな側転になる。
 手を振り上げ、大きく振り降ろすことで回転加速を稼げる。
 それだけでなく、立ち足の向きも、重要である。

立ち足は、進行方向を向ける。
 
 立ち足が横を向いても、できなくはない。
 むしろ、中・低学年では、その方が、側転のイメージが分かりやすいかも知れない。
 しかし、横を向いたまま手を振り降ろすのと、正面を向いて手を振り降ろすのでは、どちらが回転加速がつくがつくだろうか。
 ちょっとやってみれば分かるように、正面を向いた方がよい。
 だから、正面を向いて側転を始めることを、教えるのである。
 予備教材としては、壁倒立が良い。
 10秒間に、数多く倒立させるわけである。
 壁倒立を素早く何回もやることは、回転加速をつけることになる。

 だから、回転加速をつけるための予備教材としては、短時間に何回も
やる壁倒立が良いわけである。
 ただの壁倒立では、効果が薄くなるだろう。
 
 もうひとつの予備教材として、スキップホップが挙げられる。
 これは、両手を同時に大きく振り上げながらスキップをするものである。
 こうすると、手の振り上げ・振り降ろしの感覚がつかめる。
 また、踏み込む方の足も高く上げるので、勢いがつく。ハンドスプリングに発展するときにも、重要である。
 このようにして、回転加速をつけていく。
 
2.倒立
 側転の[なか]は、倒立である。
 倒立をするには、逆さ感覚・腕支持感覚が、必要になる。
 これは、年間を通じて徐々に補強していく。
 この逆さ感覚・腕支持感覚を補強する予備教材は、たくさんある。

1.かえる倒立
2.かえるの足うち
3.手押し車
4.動物歩き
   アザラシ・・足を伸ばし、手だけで進む。
   キリン・・・ひざを伸ばし、両手両足で進む。
   カサカサ・・仰向けになって腰を高く上げて進む。
5.壁倒立
6.補助倒立
7.ウサギ跳び
 
 また、倒立になったときの視線も指導する。
 あごを出し、手と手の間を見る。
 もし、指先の方を見過ぎると、腰が上がりにくくなる。
 また、視線が一定していないと、きれいに回れない。
 
3.立ち上がりは視線を残したまま
 [おわり]のテクニカルポイントは、立ち上がりである。
 最後まで手を見ていると、立ち上がり易い。
 これは、赤玉を置いて、それを見るようにさせても良い。
 しかし、意識がそれにいき過ぎて、ぎこちなくなることもある。
 だから、最後まで着いた手の位置を見せるのがよいだろう。
 また、手−手−足−足の順次性も、重要である。
 どちらかといえば、ゆっくりと回って、順次性を理解しながら立ち上がる方がレベルが上である。
 なお、最初に着く足を後向きにした方が、成功し易い。
 つまり、進行方向の逆を向かせるのである。
 こうすると、ロンダートにも発展し易くなる。
 予備教材としては、壁倒立からの立ち上がりがよい。
 これは、壁倒立から、片足ずつ着けて立ち上がるのである。
 ただし、着く足は、正面ではなく、斜め後ろに着く。
 この時に、最後まで片手を見ているようにする。
 こうすると、側転と同じように、倒立からひねって立ち上がることができるようになる。

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