神戸散策

旧神戸海洋気象台


ありし日の旧海洋気象台 画像提供:たけけんさん


"神戸海洋気象台"

この響きはいつもあこがれでした。

ニュースや天気予報で聞く「神戸海洋気象台によりますと…」というフレーズが なんとなくわくわくするものでした。
そして神戸の中山手にある素晴らしい建物をいつか見てみたいと思っていました。


日本で初めての海洋気象台であるこの神戸海洋気象台は1920年(大正9年)神戸中山手の高台に創設されました。
東京中央気象台の業務を分掌。海流、地球磁力の観測と天気図、船舶の風雨警戒を担当。


一時は関東大震災で壊滅した東京の気象庁のかわりに一時的にこの神戸の海洋気象台がその業務を肩がわりし、 全国の気象予報を発信したこともあったそうです。

船舶向け気象無線放送が開始されたのも、神戸海洋気象台が世界で初めてです。


神戸の桜の開花予報はこの地に咲くソメイヨシノの標本木が基準で、広い高台にはあちこちに、たくさんの植物の標本木が植えられていました。
いろはかえでやハマユウの標本木の表示が今も残っています。

この気象台が保管してきた旧海軍のデーターの膨大なデーターは1903年から1944年にかけて数百万通に達します。
この間のデーターは世界でも記録が少ないらしくこの貴重なデーターは海洋学の関係者の間で
「神戸コレクション (the Kobe Collection)」と呼ばれているそうです。
1995年1月17日の阪神淡路大震災でこの高台の地は818ガルという地震動の最大加速度を記録しました。
そして全世界に神戸発の情報を発信し、惜しくもこの時の揺れで建物は全壊してしまいました。

その機能は一時、諏訪山の移住センターに移され、現在はHAT神戸にできた新しい建物に移りました。
ハンブルクの気象台をモデルに建てられたという瀟洒な白いレンガと赤い屋根の気象台は私にとって一度もみたこともない伝説の建物となりました。

しかし、建物が全壊したにもかかわらず奇跡的に損壊を免れた美しいステンドグラスは、HAT神戸に建てられた新しい海洋気象台 の1階と2階のエントランスに飾られて今も美しい輝きを保っています。

海洋気象台のHPのトップページにある海鳥のイラストはこのステンドグラスをデザインしたものです。


廃墟となった旧海洋気象台は一時、廃墟愛好家たちの噂にもなるくらいの荒れ果てた状態でしたが、 今は建物は取り除かれ空き地が広がるばかりです。

旧気象台があった高台からは北は水の科学館(平野浄水場)南は神戸市街地から海が臨めます。
そして今も毎年、かつての神戸の開花予報の標本木であるソメイヨシノは花を咲かせます。

今年も美しく見事に咲きました。

2004年4月


たけけんさんのお父様が描かれたスケッチです。