言葉について


言葉は必要で、有用だが、しかし危険なものでもある。そして現代ほど言葉と表現すべき事態の複雑さの間に距離があることは少ないのではなかろうか。 われわれが直接に知っているものなどは、われわれの知識の中でごく僅かである。われわれが知っていることのなかで、深い知識は少なく、大体のところは「イメージ」にすぎない。ある事柄の裏や、ある制度の条件を知り、したがって、但し書きをつけながら現象の本質を捉えるということは余り行なわれていないのである。それ故人間は、混沌のなかに当惑して立ちすくむことと、事態を誤って単純化することのいずれかになってしまうのである。
                                    高坂正尭「世界地図のなかで考える」


 たとえば、ぼくらは、環境破壊に関するイメージは知っているが、その事実については詳しく知らない。なのに、イメージだけで、時には途方もない不安に陥ったり、時には根拠もなく楽観視したりする。ぼくらの周りにある情報は、どこかの誰かの感情的な思いによって編纂されているものばかりだ。そのすべてを信じたら、混乱してしまうし、だからといって、そのすべてを無視することをできない。結局、自分で自分なり取捨することしか出来ないのだ。


(評)高坂さんは政治学者だが、その著作は学術書とは一味違い、読みやすい。人間という生き物の性格を捉えた上で、この現代社会及び世界政治を分析しようとしている。


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