巡り狂う物語
●2002/01/11 Fri 巡り狂う物語
ぼくは、言ったんだ。
もう何もいらないって。
でも、そんなことはお構いなしだった。
すべては始まってしまったことだった。
時限爆弾のランプがちかちかしている。
ぼくにできることは
青か赤か、とにかく
コードを切断することだけだった。
●2002/01/12 Sat 巡り狂う物語2
もっと悪いことも起こりえたんだ。
村上春樹ならそう言っただろう。
でも、当たり前のことだが、
それは慰めにすぎない。
楽観主義的な見方による現実肯定、
その努力の一過程にしかすぎない。
状況はすこしも変わらない。
だから、ぼくは旅立った。
すべての現実を取り戻すために。
●2002/01/16 Wed 巡り狂う物語3
現実を取り戻すためには
ぼく自身が現実的でなければならない
デュラン・デュランの“ORDINARY WORLD"を
聴きながら、ぼくは飛行場に向った
"but i won't cry for yesterday
there's an ordinary world somehow i have
to find
and as i try to make my way to the ordinary
world
i will learn to survive"
でも、どうすれば現実的になれるかすら
ぼくにはわからなかった
●2002/01/17 Thu 巡り狂う物語4
ニューヨークに着いた
目的のないものを排除する街
ぼくには目的がある
でも、この街が目的かどうかわからない
ぼくの目の前にユダヤ人が現れた
彼はきいた
お金は好きかって
ぼくにはわからなかった
彼は悲しそうな顔をして言った
ある程度のお金で幸せを買うことができる
ある程度のお金は寂しさを埋めることができる
そうだろ?
ぼくは納得した
でも、ぼくがうなづくのを確かめる前に
彼は立ち去ってしまった、とても忙しそうに
●2002/01/20 Sun 巡り狂う物語5
ロスに着いた
ぼくは、日差しの当たる
カフェに入っていった
そこには、サングラスをかけた
暇そうなアメリカ人がいた
人種はわからない
でも、きっと彼はお金持ちだ
そして、暇人だ
彼はきいた
自由はすきかって
でも、ぼくには自分が自由なのか
それとも、不自由なのかもわからなかった
彼はぼくのすべてを知ってるかのように話した
自由はあるものじゃない
獲得するものなんだ
それには力が要る
この社会は、お金という力があれば
自由になれる 違うかね??
ぼくはうなづいた
彼も満足そうだった
そして、再びワインに口をつけた
とても暇そうに
●2002/01/22 Tue 巡り狂う物語6
ロスからモスクワへ
ぼくは飛行機にのる
窓から凍りついた大地がみえる
まるで、誰かのウソをかばうかのように
哀しそうな顔をしていた
ふと、ぼくの耳に
Aled johnesの“walkiing in the air”が流れた
まるで“スノーマン”が現われて
ぼくの偽りを癒してくれるようなそんな気持ちだった
そして、ほんのすこしの間、すべてのプロブレムが凍りついた
でも、それは“ほんのすこしの間”のこと
ぼくはモスクワに着いた
●2002/01/27 Sun 巡り狂う物語7
モスクワでは、当然のように
ウォッカはすきかってきかれた
ぼくが好きだと言うと
かれは機嫌よく言った
ウォッカは冷やしたのが一番だ
きーんと冷やしやつがいい
きーんとな
そのとき、なぜだかわからないけど
ぼくの頭はその音であふれた
きーん、きーん、きーん・・・・
●2002/01/31 Thu 巡り狂う物語8
イスタンブールにやってきた
東と西を繋ぐ橋のまんなかで
青い海を見ながら
鯖サンドを食べていた
ふと、ぼくのヨコを
グラマーな女のひとが
通りぬけた
ぼくの近くにいたおとこは
すぐにその子に話しかけた
撃沈!!
で、そいつはおれに向って言った
いいおんなをみたらやりたくなる
これ、トルコ人にとって大切なこと
あまりに、まじめに言われ、
ぼくは言葉を失う
そのあと、そいつは
また女の子に声をかけにいった
●2002/02/08 Fri 巡り狂う物語9
ぼくは海を越えて
ギリシアへ行く
人々は昼寝(シエスタ)をしてまで
夜を楽しんでいた
ぼくは酒場にいった
で、気分よくなって自分の夢について
語り始めた
ある女がぼくに訊ねてきた
大きな夢を持つってのは
偉いことなのかいって
ぼくは答えた
たぶん、そうだって、
そしたら、
彼女は半分納得してないような顔をして言った
でも、大きな夢って
我慢しなきゃいけないことがたくさんあるんでしょ
そんなことより、小さい楽しみが毎日あるほうがいいとおもわない
ぼくは戸惑った
彼女はそのまままた別の男に話しかけに言った
●2002/02/10 Sun 巡り狂う物語10
ギリシアから
ぼくはフェリーで
イタリアへ向かう
甲板でぼくが
ビールを飲んでると
ほろ酔いのじいさんが話しかけてきた
汝自身を知れという言葉を知ってるか?
あぁ、ぼくは生返事をした
自分のことなんか知って何の意味があるんだ!?
彼はぼくにそうたずねて、そのまま話を続けた
おれはそんなもんは
知らないし、知れないし、知りたくもないわ!!
ぼくはなんだか必死に反論してみたい気分になった
でも、とっさにすべてのコトバは失ってしまった
無言でいるぼくを見たあとで
じいさんは満足そうにベンチで寝てしまった
つづく