取材日記vol.11

NHK教育「サイエンス・アイ」 01年4月7日放送

取材日:3月21・27日

場所:大阪八尾空港、国立環境研究所
 

大気汚染の実態に迫る

 都会の大気は一体どのくらい汚れているのでしょうか。謎の多い大気汚染の実態に迫ろうと30年間大気汚染の研究をしている研究者、国立環境研究所・若松伸司さんを訪ねました。花粉症に悩まされているあなた、他人ごとではありませんよ!


 まずは敵を知ろう


対策を立てるためには敵を知ることが大事・・・ということで、浮遊粒子物質(SPM)はどのようにして、どのくらいできるのかという実態調査を行います。

 春の大阪は非常に空気が汚れているらしく、調査には大阪の空が選ばれました。
(大阪出身の私としてはちょっと悲しい。。。)

注目すべきは
1)SPMの数
 これまでは重さでしか測っていなかったが、数も大きな関わりをもっているかもしれない。数をカウントできる装置を積み込み、計測します。
2)SPMの大きさ
 大気汚染物質の中でも今問題になっているのは10μm以下の細かな汚れ。ススなど、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれています。
 このSPMは
呼吸器の疾患やアレルギーの原因物質と考えられており、現在フィルターなどを使って除去する努力が続けられています。しかし、直接でるもの以外にもガスとして出た気体が反応してSPMは作られる(二酸化窒素+オゾン、二酸化硫黄+オゾンの窒素化合物)のでなかなか厄介なのです。

 小型機に計測器を積み込み八尾空港を出発。大気を吸収し汚れを分析します。同時に地上50mの地点でも計測をします。

大阪八尾空港の格納庫。
いよいよ調査に出陣!!




 結果

SPMが多いときには窒素化合物も多かった。
 ⇒⇒相関関係が見られる

地上SPMの内9割以上がP.M2.5以下の微粒子の浮遊物。
 ⇒⇒SPMでも特に小さな微粒子が大気中に多い


 徹底解析

 若松さんは国立環境研究所にある研究室で地表面での空気の流れを調査するための風洞実験も行っています。
 実際の都市のミニチュアを作り、煙を流し空気の流れを目に見える形にして風の動きを解析します。交通量が多く、ビルに囲まれた地域で、大気汚染物質がどのように広がっているかを調べているのです。

sorry,
now printing
これが東京・上馬交差点付近のミニチュア。高架があり、空気が上から蓋をされてように溜まる条件になっているそうです。
それにしても見事な再現。ゴジラになった気分でした。
ちなみにこの建物は実験設備のために建てられたものだそうです。

  ビルの隙間ではキャビティ渦と呼ばれる渦が生まれます。このキャビティ渦の起こっているところは空気の回りがよく、大気汚染濃度も少ないのですが、高架下など空気の循環が悪い場所ではかなり高濃度の汚染が検出されていました。

 時々街で大気汚染濃度の表示がでているところがありますよね。あれは時間というスケールで観測できるという利点はあるけれど、その地点のことしかわからない、いわば点の情報。この風洞実験では高さ別に「面」で知ることができ、広がりや流れがわかるそうです。

 研究の行方

 大切なのは、空気がどのように流れているか、大気汚染濃度はどういう場所で高濃度になるのかなど、地形や建物の影響を含めた地上のデータや上空の窒素化合物やオゾンのデータを合わせて、大気汚染のメカニズムをあらゆる側面から知り尽くすこと。それが対策を立て、環境基準を見直し、将来的には、大気のよどみを少なくする都市構造の設計に役立つと考えられています。

  

 あとがき

 私たちがロケに行った翌日、八尾市で殺人事件が起こりました。そしてその2日後、今度は八尾空港から飛び立った小型機が行方不明に!!私はNNN24でそのニュースを読んでいた訳ですが、何というか・・・。
 そして火曜日。同じクル−でつくばロケ。若松さんを含めて「あのあと大変でしたねぇ」などと八尾空港の話をしていたその翌日、今度は茨城で爆発事故!
 今度は鹿島と場所がやや離れていたけれど、私たちの行った先、行った先で何かしら出来事が起こり、何だか暗い気分になってしまいました(−_−)。

 でも、明るいことというか、素敵な方との出会いが・・・。
 環境研で風洞実験を担当している上原さん。
この方はこちらで風洞一筋30年という、見るからに実直な、いかにも研究者という真面目な方でした。
 その上原さんにお話を伺うシーンがあったんですが、、、

 インタビューのお答えをしてくださっているときは何のよどみもなく、、理路整然と非常にわかりやすくきちんとお話してくださったのに、まわしていたカメラを止めた瞬間、
「うーーーっっ、うっうっうーーっ」

と言ってギューッと目をつぶり、泣きそうなうめき声を出されたのです。

スタッフ一同ビックリして
「えっ!?どうしたんですか??」と駆け寄ると、震えた声で、、、
「きっ、緊張してぇぇ・・・」

 その表情たるは、眉間にしわを寄せてやや下を向き、『アーッ、やってしまったー、どうしたらいいんだ僕はぁぁぁーーー』という心の底から打ち震えた、取り返しのつかない失敗をして神にすがっているような顔。もう、この世の終わりという悲壮感が漂っているんです。
別に難しいことを聞いているわけでもないんですよ。ただ単に実験装置や実験の概要を説明してもらったり、毎日されている事を教えていただいているだけなんです。
 しかも、その落ち込みは一度や二度じゃなく、毎回だからおかしい。
おかしいなんて言っちゃいけないんだけれど、収録中の理路整然さとカメラを止めた瞬間の豹変ぶりが私たちの理解を超えていて、笑わずにはいられなくさせるのです。

 確かにカメラが回っているときも、私の質問の3つ目辺り、数を重ねてくると『あなたはまだ私に質問するのか??』という表情をされていました。そんな表情をしながらも、やはり答えは的確なところが何ともいえないんですが・・・。

 しかし、、、カメラの前で喋ることが、そんなにこの世の果てのような気分になることなのでしょうか?
じゃぁ、こんなことを毎日のようにしている私はどうしたらいいのでしょう??

 いやぁ、色々な方にインタビューする機会がありましたがこんな反応は初めてで、新鮮な気持ちになりました。上原さん、ありがとうございました!!

 

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