取材日記vol.17

NHK教育「サイエンス・アイ」 10月放送予定

取材日:2001年7月16、17日

場所:気象庁気象研究所

 

GPSで集中豪雨の予測に挑む

 毎年のように大きな被害をもたらす集中豪雨の発生を予測することは果たして可能なのか。
カーナビゲーションなどに使われている地表の動きを探るGPSを、気象の解析に応用し、集中豪雨の予測に挑む研究者、気象庁気象研究所予報研究部、中村一さんを訪ねました。

 GPSとは

 GPSアンテナは地球をまわる24個の衛星からの電波を受信しています。
複数の衛星から同時に電波を受け取ることで、アンテナの置かれた位置を数mm単位で正確に測定することができます。GPSの観測点は国土地理院が全国のおよそ1000ヶ所に設置していて、得られたデータは、正確な地図の作成、観測点の動きから、プレートのひずみや地下のマグマの動きを調べて自身や火山噴火の予知にいかそうという研究に使われています。

これがGPS。左側はカバーをつけた通常の状態。非常に繊細で1cm動くと2mmの誤差が出るそうな。そのため、ネジで留め、下に水の入ったポリタンクの重石を乗せて常に水平を保つようにしているよそうです。


GPSは建物の屋上に設置されているのですが、その屋上に行くためには写真右側にある鎖で天井を開き、梯子をかけて上っていかなければなりません。
重い機材を持つ撮影部隊にはやや厳しそうでした。流れ作業のように運び・・・お疲れ様でした。。。


 GPSで気象予報?

 この地表の位置を測定するGPSを気象の予報にどのようして使うのでしょうか。

 衛星から送られる電波は大気中を通過し、アンテナまで到着します。
ところが、大気中に水蒸気があると、電波の速度が遅くなり、データに誤差を生じます。

 中村さんたちは、このデータの誤差、大気中の電波の遅れを解析すれば、上空にある水蒸気の量を割り出すことができると考えました。

 これまで気象庁では、大気の水蒸気量を測るため観測用の気球を上げていました。しかし、この方法では一日の観測回数はわずか2回。観測地点も全国で18ヶ所と限られており、集中豪雨の予測は不可能でした。しかし、GPSを使えば、全国1000ヶ所以上の観測点でいつでも水蒸気を測ることが可能になります。
見えますかね〜。写真中央左にポツッと気球があるんですが。
観測用気球、ラジオゾンデです。
これだけ広い場所ってなかなか行かないので気持ちよかったです^^。

 地表の位置を知るためのGPS。中村さんたちの研究では水蒸気を計測するための強力な武器になるのです。
 これまで気象学者にとって手のつけようがなかった集中豪雨の予測でしたが、水蒸気データが得られることによってその道が一気に開けたのです。


 水蒸気量と集中豪雨

 1999年、九州北部から中国地方を襲った豪雨。このときの水蒸気量の変化を調べました。
 激しく雨が降っている場所では水蒸気が多く、その西側では一気に少なくなっていて、激しく降っている場所は常にこの水蒸気の状態を保ちながら東へと移動していきました。
 このように、水蒸気が多い地域のすぐ西側に水蒸気量の少なくなっている場所があり、集中豪雨が起きていることがわかりました。中村さんたちは、こうした集中豪雨に特徴的な水蒸気の状態をGPSを使った観測で早めにとらえることで、集中豪雨の予測ができると考えています。

 なんだか警察の捜査本部みたいでつい撮ってしまいました。
 中に入ると、正面のホワイトボードいっぱいにつくば市の地図が張ってあって、市内のGPS設置場所75ヶ所にピンが打たれていました。
 部屋の中は閑散としていたんですが、やっぱり捜査本部みたいだな〜と。テレビの観すぎでしょうか??
 


 研究の行方

 「今後は水蒸気の情報を数時間ごとにリアルタイムで日本の皆さんに提供できるようにしたい。それを使って集中豪雨の精度の予測をもっと向上させたい。」とおっしゃっていました。

中村先生と。非常に真面目な先生で・・・って、写真を見れば一目瞭然ですよね。私とのコントラストが我ながら素晴らしいと感じます。


  

 あとがき

 お天気番組経験者の私としては非常に興味深いロケでした。観測機があっちこっちにいっぱい!というマニアックな感激です。天気予報とは「観測の成果に基づく現象の予想の発表」なわけですが、私は最後の部分「発表」のみしか携わっておらず、根源である観測には全く縁がなかったわけです。遅ればせながらちょっと触れられて嬉かったです^^。さらに、、、
この観測機では50メートルごとに風向と風速を観測しているそうです。

手前にぽつぽつとある白いものは、全部何らかの観測機です^^;。ちょっと黒く見える丸い観測機は、超音波を出して空気の乱れなどを把握しているそうです。
 

 感動したのは掲示板。何の連絡事項が張ってあるのかと思えば、サッカーサークルの新聞!しかもカラー刷りで中身も充実、素晴らしい。
 クラブ名は長峰フットボールクラブ。どうやら、「Gリーグ」と呼ばれるリーグで戦っているらしく、今季の成績は2部の4位のようでした。
 注目はポスター右下の緑色の部分にあった記載。ちょっと見えにくいので書き出します。
<移籍情報>

年末の人事異動で以下の選手が新天地へ移られることになりました。

○○氏。気象大学校→旭川地方気象台
△△氏。衛星観測システム研究部→気象庁観測部

△△氏は決定力抜群のエースストライカーとして長峰FC躍進の立役者となりました。

 移籍って、まさか「旭川地方気象台」に移籍するとは・・・。
しかし、このポスター一つ見ても非常に真面目な印象が伺える気象庁。本当に勉強になりました^^。

 

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