取材日記vol.02

NHK教育「サイエンス・アイ」 7月1日放送

取材日:5月11日

場所:東京大学生産技術研究所

 

土壌水分量

 皆さんは土の中の水について考えたことがありますか?
 土に撒いた水は、すぐに吸い込まれて見えなくなってしまうけれど、実はその土に含まれた水が地球の気候に大きな大きな影響を及ぼしているそうなのです。
 今回お邪魔した東京大学生産技術研究所の沖大幹助教授の研究室では、土壌水分量について研究されていました。


(1) 土壌水分量は具体的にどのような影響を与えているか。


 例えば1998年6月に起こった中国長江の50年に1度という大洪水。
 2ヶ月前の春先の土壌水分量は平年に比べて極端に多かったのだそうです。
 ミシシッピ川の大洪水のときも同様で、この土壌水分量が大洪水の要因になったことが後の研究で指摘されたそうです。
 土壌水分量が2ヵ月後の降水量を左右していたのです。
 また、土の状態によって蒸発したときの気温は

    晴れていて乾いた土の上→高温
    湿った土の上→乾いた土に比べて低温
    草地→乾いた土に比べて低温

というように違います。
 となると、土に含まれている水分の量は気温にも影響をしているわけです。
 ね、、土壌水分量って重要だって思うでしょ??

(2) 気候や環境の変化を予測できる。

 土壌水分量が中長期的な降水量に影響があるのであれば、逆にいうと、土壌水分量を知ることによって大雨や旱魃、また寒暖の傾向をあらかじめ予測することができるわけです。

(3) どうやって測るの??

 衛星を使っておられました。
 よく天気予報で「レーダーで雨の降り方を見てみましょう」なんてフレーズを耳にしますよね。そのレーダーを使っているのです。ただし、天気予報では邪魔な部分・・・
 どういうことかというと、まず、雨を観測しているレーダーは地上に向けて電波を発信し、その跳ね返りの時間、距離でどのくらい雨が降っているかを観測しています。でも、当然雨にあたらずに地上で跳ね返るものもあるわけで、雨の分析をする場合には、そのデータは邪魔ものとしてデータ処理によって打ち消されます。しかし、土の中の水分を測るには、まさしくそのデータが求められます。
 というわけで、今までは使われていなかったレーダーのデータを利用して観測をされているのでした。
 ただ、まだ高緯度地域は観測できないため、日本の気象に一番影響を及ぼすシベリアのデータが得られないのが沖さんの悩みです。次の衛星が上がるまであと5年くらいだとか…。

(4) 将来的には

 土壌水分量を知ることによって大雨や旱魃が予測できる。となると、例えば洪水が起こりそうなら避難するなど、あらかじめその気候変動に備えることができるわけです。2ヶ月から半年前にはそれがわかるそうですから対策も万全にとれそうですね。
 また、さらにいうと、土壌水分量を調整することによっても被害を防ぐことも不可能ではないそうです。都市の緑地計画などで、このあたりに森林を植えてここは植えないというように土壌水分量を念頭にうまく配分していくと、極端な気候による被害も防げるかもしれない・・・。
 土壌水分量で気候を人工的に操作できる時代がくるかもしれません。


〜〜エピソード〜〜

(その1)
 沖先生の研究室には、今話題の深層水をはじめ、あらゆる種類の国内外の水の250mlのペットボトルが並んでいました。
 そんな沖さんが普段飲んでいる水のラベルは「六甲のおいしい水」

 
駒村  「やっぱり水は六甲がいいんですか?」
 沖さん 「いやぁ、水道水でしょう。僕は水道水を沸かして飲むのが一番だと思ってます。これも中身は水道水です。」

 灯台下暗し。。。

(その2)
 ロケ中にぱらぱらとにわか雨。

 
駒村  「あ、雨降ってきちゃいましたかねー。」

 
ある研究生の方、おもむろに2,3歩小走りし、空を見上げ

 
研究生 「この雨はあのビルに半分隠れている雲です」

・・・解説、有難うございました。
 研究者たるもの、どんなことにも答えを探すことが大切です。

 

 西千葉の実験所にはワゴン車を改造した電波発信装置があります。
 ワゴン車に衛星放送チューナーみたいなおわんを載せて電波を地面に当ててその反射によって土壌水分量を測定しています。
 実はそのワゴン車は先生をはじめ研究室の皆さんのお手製。世界に一台しかない移動電波発信装置。しかも、電波を当てる向きを変えるのも工具を使っての手作業。運転も皆さんで交代しながら日本各地のレーダー観測所に出向くそうです。まるで旅回りの一座のよう。
 でも、それによって生まれる連帯感、結束で、チームワークは抜群。研究もはかどるというものでしょう。

NHK「サイエンスアイ」へのリンク


取材日記目次へ

  HOME