取材日記vol.03

NHK教育「サイエンス・アイ」 7月22日放送

取材日:6月14日

場所:通産省工業技術院 生命工学工業技術研究所

 

現代人の体型を科学する

 靴を買うとき、あなたは何をポイントにしますか?
 デザイン、サイズ、幅。あと土踏まずが触るようにクッションを入れたりすることもありますね。でも、それだけじゃダメ。実は全く新しい発想が大切なのです。
 今回お邪魔したのは、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所、人間環境システム部の河内まきこ先生。
 人類学者の中では古代の研究を「骨」、現代を「生もの」と呼ぶそうで、「生もの」を主に研究する人は「生や」といわれています。河内先生はその「生もの」にスポットを当てて研究されています。


足型の尺度とは…?

 さて、ここでは現代日本人の体型を人類学的に調べ、コンピューターなども駆使して、人類学と工学をドッキングさせて現代人にぴったりフィットする製品を開発するべく日々研究に励んでいるのです。

 靴ってサイズだけで判断しがちだけど、

  1.甲の高さ
  2.プロポーション(指の長さと足首の細さ)
  3.足首の傾き
    (まっすぐ、内側に傾いている、外側に傾いているの3種)
  4.つま先の方向(外向きに曲がっているなど)

が大切なんですって。

 先生は、大勢の足型をとってデータを解析して平均を割り出し、個人差が出やすい上記の4つの尺度をはじきだしたのです。

 今回、50個くらいの足型をいっぺんに見せていただいたんですが、確かに足型を一つ一つ比べると千差万別、ひとつとして同じものはありませんでした。 こうやってみると、足の「長さ」だけで判断していた靴のサイズ、こんなに個性を殺してたんですから無理があって当然ですよね。 そりゃ浮腫むし、痛くなるし、タコもマメもできるはずです。

 ちなみに私の足の特徴は「甲高で指の長い幅広」だそうです。そして「意外と骨太」とのこと。
 現代の日本人の足は、明治時代ごろに比べると骨太の傾向にあるそうです。

型取り 足型を取るため、海藻でできた液を流し込む。これがヒンヤリ気持ちイイ…


固まった石膏を傷つけないように取り出しているところ。(足の形が見えますか?) 最も慎重を要する作業。 取り出し

これからの靴選び

 先生の理想は、みんなが個性に合った靴選びができるようになることだそうです。 現在ローコストのセミオーダーメイド、しかもスピーディにできる靴を開発中とのこと、実現まではもうちょっとお待ちください。

服にも人類学が!

 さらに先生は、足だけでなく体型にも人類学を応用。服の開発にも取り組んでいます。
 昔の胴体の模型(人台)は、バスト・ウエスト・ヒップという3サイズを基準に作られていました。でも、実際はお腹の出っぱり具合とかお尻の丸みとか体の曲線があまり反映されていなかったりしますよね。
 というわけで、足型と同じように現代人の体型データを取り、平均体型を割り出し、現代人の人台を作られました。

 私もレーザー測定器で前後左右の四方から体型を測定してもらったところ、ちょうど平均値くらいでした。そこで現代人の平均人台を基準に作ったワンピースを試着したところ、ピッタリ!  どこにもたるみやひきつれがなく、着心地がとっても楽なのにビックリ! その後自分の服に着替えたらとっても窮屈に感じ、肩がこるような気がしました。 今まで無理して着てたんだなぁと初めて気づきました。

 

 皆さん足型を50個並べてみたことありますか?ないでしょうねぇ。
 私も初めてでしたが、石膏でできた足首までの実物大の白い足がずらっと並んだ光景、何ともすごい迫力でした。人間の本物の足をかたどってるわけだから指なんて生々しいんですよ。
 思わず、部屋を暗くして左右からスポットライトを2つ当て、地面すれすれのローアングルで…、いかに恐ろしく撮るか、スタッフ一同燃えてしまいました(笑)。

 先生はおっしゃいます。
 
「われわれは自身のことをわかっていない。あまりにも根本的なことだけに見落とされていた。」
 今後はメガネや寝具など、体と直接接触する製品開発にこの手法を応用していく予定だそうです。
 アメリカなどでは、使いやすさが安全に直結するもの(例えば飛行機の操縦席、工場の操作パネルなど)に役立てられているそうで、今後「生や」の重要度はますます高まっていきそうです。「生や」の未来は明るい!!
 
 

 

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