取材日記vol.06

NHK教育「サイエンス・アイ」 10月14日放送

取材日:7月26・27日

場所:大阪大学レーザー核融合研究センター

 

小さな太陽で「金属炭素」を作る

 太陽はエネルギーを核融合で生み出しています。その核融合を人間の手で起こそうというレーザー核融合実験が日本でただ1ヶ所、大阪大学レーザー核融合センターで行われています。
 そしてそこでは、新しいエネルギーを研究する巨大な実験装置を使って、新しい材料を開発するプロジェクトも進んでいるのです。
 今回は、材料工学の世界に起きようとしている革命!!材料工学の最前線リポートです。
 


 金属炭素って??

 大阪大学・田中和夫先生をはじめとするプロジェクトチームが開発している新しい材料というのは『金属炭素』
 金属炭素って何??と思いの方も多いでしょう。それもそのはず。地球上には存在せず、まだ誰も見たことがないものなのです。

 金属炭素の構造を簡単に説明すると・・・

 物質は、どんなものでも温度と圧力によって固体や液体・気体と状態が変わります。(例えば水は1気圧・摂氏0度で氷に姿を変える)

 ここで、炭素を考えます。
 炭素の結晶である黒鉛は炭素原子が六角形に並んで作る結晶です。その結晶ははがれやすく、この性質を利用して鉛筆の芯に使われたりしています。

 この黒鉛に圧力をかけると、結晶は圧縮され、ダイヤモンドになります。このとき、原子が黒鉛より緻密に結びつくため硬くなります。
 そして、ダイヤモンドに更に強い圧力をかけると、ダイヤモンドの結晶は圧縮され、原子もさらに接近します。この状態が金属炭素です。
                     
 黒鉛から人工ダイヤモンドにするために必要な圧力は5万気圧
 ダイヤモンドをさらに圧縮して金属炭素にするためにはその200倍以上、千数百万気圧の圧力が必要です。
 黒鉛をダイヤモンドに変える5万気圧は、1p2の爪の上に50頭のゾウが乗る力に匹敵します。しかし、金属炭素を作るには1万頭以上のゾウの重さが必要です。
 こうやって考えると気が遠くなりますねぇ・・・

 金属炭素の作り方

 千数百万気圧という超高圧力を生み出すのはレーザー光線です。
 レーザー光は、ある一定の波長と波形を持つ人工的に作られた光です。ひとつの方向に進むため指向性が強く、エネルギーを一点に集中させることができます。

 金属炭素は常温常圧の環境ではとうてい得られません。ですから、圧力や温度の高い特殊な環境の下で作るということになります。
 こちらの実験室には長さ約270mのパイプが12本あります。このパイプの中にはガラス管が通っていて、レーザー光はその中を通過しながら増幅し、それぞれが10億ワットものエネルギーを蓄え、直径2メートルほどのチェンバーと呼ばれる丸い金属のケースの中の一点に誘導されます。
 そこには1000万気圧を優に越すとてつもない圧力が生まれます。その圧力でダイヤモンドを圧縮し、金属炭素を作ろうというのです。

 この中央の球状の部分がチェンバーです。周りの太い管はレーザーの放射管。SF映画のセットみたいですよね。ビルの3階くらいの高さにあるんですが、無造作にネットが張ってあるだけの細い階段を上らないとたどり着けない!!階下から見ても圧巻でしたよ。たくさんのパイプの下を潜り抜けなくてはたどり着けなくて、さながらスパイという感じ。
 この格好はパン屋さんみたいですけど
 担当の矢野ディレクターからは「演歌歌手のようだ」という意見もでたんですが皆さんはどう思います??

  金属炭素の可能性

 金属炭素が誕生すれば地球上で最も硬い材料になる。チタンより硬く、しかも軽くて錆びない。航空機や自動車などの交通手段だけでなく、高速道路などの建築やスペースシャトル、宇宙開発など、様々な産業に応用することができるそうです。
 つまり、究極の材料・金属炭素が使われることで、人類の生活は大きく様変わりするのです。
 


 レーザー核融合実験施設は別世界のようでした。
 特にレーザー光を発射する司令室。モニターがたくさん並んでおり、あるモニターにはレーザーの通り道である長いパイプが何の変化もなく延々と。あるモニターには全身白衣で包まれた作業員の方々がパイプの傍で作業している姿がこちらも延々と無音で写し出されています。
 発射前は赤や緑のランプが一斉に30個くらい点滅し、よくSF映画に出てくるような「緊急事態発生!!」っていうシーンの警報音が『ブー、ブー、ブー、ブー』と鳴って、張り詰めた緊張感のなかカウントが始まります。

「30秒前」
「・・・10秒前」
「・・・5,4,3,2,1,ファイヤー」

 「ファイヤー」の声と同時に発射ボタンを押すカチッという音が司令室に響きます。
 無機質な、低く感情のこもらない女性の声でのカウントは、地下にある実験施設をさらにヒンヤリさせます。
 うわぁぁ、、、ホントに映画みたい。。。
 今回のレポートでは女スパイが「レーザー」と「状態方程式」というキーワードを元に金属炭素とは何かを探るのという設定で、バックミュージックも「スパイ大作戦」を流したんですが(^^)、こういう構成にしたディレクターさんの発想にめちゃくちゃ納得する私でした。

 

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