取材日記vol.09

NHK教育「サイエンス・アイ」 12月放送予定

取材日:9月22日

場所:日本女子大学人間社会学部

 

コンピューターで言語習得の仕組みを探る

 人間の赤ちゃんはどうやって複雑な言語を覚えるのでしょうか。
今回は、その仕組みをコンピューターを使って明らかにしようという日本女子大学・人間社会学部教授の須賀哲夫(すが てつお)さんを訪ねました。


 須賀さんは、会話ができるコンピュータープログラム「エムラス」を開発し、人間がどのように言語を学んでいくかという研究を進めています。

 エムラスの仕組み

 コンピュータの中に「ラス」という主人公を設定。そして、仮想の部屋を作り、お父さんやお母さん、箱や本などを配置してラスにいろいろな言葉を聞かせる。

  1. 初期段階

  この段階では、ラスは言葉についての知識を何も持っていない。人間の赤ちゃんと同じ、空っぽの状態。

 だから、例えば、

 お父さんが赤い箱を指して「これは赤いですか」とラスに質問しても、エムラスは言葉をまだ学習していないので、何を言われたのか分からず、何も答えない(これをコンピューターの内部では「NIL」という記号で表わす)。
 赤ちゃんなのでこの段階では何も言えないわけである。

  1. 複数の文章を比べて共通する部分や異なる部分を取り出せることができるよう設定。
    そして、たくさんの会話を聞かせる。

  エムラスは、人間の赤ちゃんと同じように家族の間で交わされている会話を聞き、情報を集める。

 こうして、エムラス、物の名前など、単語を覚えていく

  1. さらにいろいろな文章を聞かせる。

  例1.「これ」・・・
 
 これは赤い本です
   これは青い本です

 お母さんが近くの本を指して「これは赤い本です」という。以前、「これは青い本です」という文章を聞いたことがあることに気づき、この二つの文章を比較して、「これ」という単語は「赤い」や「青い」という単語とは関係なく使うと判断。
   
 単語を覚えると同時に、それらの単語がどのような場面で使われているかを自分で分析するようになる。

  例2.「これ」と「あれ」の比較
  
これは赤い本です
  あれは赤い本です

 違うのは「これ」「あれ」という単語だけ。
 一方、これらが話された状況の違いを見てみると、話し手と物との距離が異なっていることが分かる。
   
 単語の種類を分類したり、言葉の使い方を学び、正しく使い分けることができるようになる。

 そして・・・
 質問の内容をきちんと理解し、会話ができるまでに成長!!
 知能テストでほぼ5歳くらいの言語能力。

 この簡単な原理だけで、エムラスは単語の種類を分類したり、言葉の使い方を学ぶことができるそうです。

 研究の行方

 須賀さんは、人間もエムラスと同じような方法で言葉を覚えていくのではないかと考えていて、日々、開発を続けています。
 また、英語やフランス語など、どんな言語でも日本語と同じ原理で習得することができるため、全ての言語の獲得には共通したルールがあると考え、そのルールをエムラスによって発見できるのではないかと期待しているのです。
 今後は、もっと微妙な概念である「美しい」などの言葉を覚えて、大人並みの会話ができるようにしたいと、静かに、でも熱く語っておられました。

  

 あとがき

 須賀先生は、すごい研究をされているのに謙虚な方で、すぐ恐縮されてしまうのでした。それで私も恐縮してしまい、みんなで恐縮したロケでした。
 でも、須賀先生一つだけものすごく多弁になるトピックがありました。
 それは「志村けん」さん。
 大・大・大ファンらしく、志村さんの番組をビデオにとって見ていたこともあり、今「だいじょうぶだぁ」がなくなってしまったことをしきりに悲しんでいらっしゃいました。
 で、たまたまお昼ご飯を食べに行ったお店に志村さんのキャラクター入りライターを売っていたのでお土産に差し上げたところ、えらく感激して下さったのでした。
 こんな事であんなに感激して頂いて、また恐縮する駒村でした。

 

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