★ 第一部エピローグ(修羅場でシュシュシュ) ★
 
 
ある晴れた日の午後。
ここ、壁新聞部の部室ではまたしてもリララ教授が暑くてダレていた。

そのかたわらではトーキチローとおギンがナニゴトか話し合っている。
 
「な、なんだって!?」
「せやから、ウチは『リララ教授抹殺』なんて依頼は受けとらへんっちゅーの。」
「じゃ、じゃあ一体なんでリララ教授を付け回したりデータベースにハッキングしたりしてたんだ?!」
「いやぁ、もぉ負けてもーたし言うてまうけどな、実は「『壁新聞部』を潰すに足りる決定的な情報を掴んでくれ」っちゅー依頼やったんよ…。」
「『壁新聞部』をって…、どういう依頼だ、ソレ。
よくそんな仕事受けたな。
第一、その依頼主の名前も聞いてないってのはどういうことなんだ。」
「でも『どんな依頼でも全力投球で臨むのが誇り高きイタミの戦士の志だ』って、ちっちゃい頃、よく兄者に言われたで?」
「うむ、その通りだ!

しかしなぁ…。
そう言えば、お前、生徒証と学食の回数券を持ってたよな?」
「ああ、クライアントがくれたのを持っとるよ。」
「見せてみろ。」
「ほい。」
「……。」
「…本物だ。」
「せやから、ちゃんと編入試験も受けたっちゅーとるやん!」
「しかしこの本物を依頼主が手渡したということは、その依頼主ってのは、こう、スゴく高いビルのてっぺんにいたりしなかったか?」
「うん。」
「そんで変なカッコのが全部で4人いて…。」
「そうそう。」
「真っ暗い中で下から明りがピンスポでついて…。」
「なんや、知ってるんかいな?」
「あ〜…。」
リララ教授とトーキチローは思っいきりウナダれた。
「そっか、依頼主って『S四天王』かぁ〜…。」
「『S四天王』??
なんや、Sって?

シャドー?
シューティング??
それともセクシー???」
「いやぁ、アカデミー学園部で最もコワい集団だよ…。」
 

 
同時刻。
学園部の中心地点にそびえ立つ1号館ビル、通称『タワー』。
地上240m、80階建ての、その最上階。
暗い暗い、漆黒の闇の中、ふいに音を立ててひとかたまりの炎が巻き起こる。
青白き灯火は小さな掌の上でゆらゆらとたゆたい、その主の顔をほの白く照らし出す。
「では、行って来る。」
「ああ。
だが油断はするな。
相手はあのリララ教授だぞ。」
「ふ、他念ない。
おギンの集めた情報と私の力をもってすれば『壁新聞部』などイチコロだ。」
「シカシ、1人デ大丈夫ナノカ。」
「くどい!
この程度のコト、私1人おれば充分というモノだ!」
「勇ましいな。
吉報を待っているぞ。」
「任せておけ。
それに今回は…。
ふふふふふ…。」
アーティ7は1通の封筒を掲げて見せた。
だが、それと同時にナゼか頬を染めていることに気付く者はなかった。
 

 
「…という訳だ。」
「う、ぅうわっ!!
ビックリした!!
ナニが『という訳』なのよっ!?」
「いつの間に我々の部室に現われたのですかっ!?」
「そんな些細なコトはおいとけ。
なにはともあれコレを見るがいい。」
アーティ7ミもフタもない受け答えをしつつ1通の封筒をリララに突き付けた。
「ん?
なになに?
『はいぶつうち』…?
『廃物』、『討ち』…??
「は、『廃部通知』ですって!?」
「えー!?
ウチ、廃部にされちゃうのーっ!?」
「その通りだ。
『壁新聞部』設立後、リララ教授が引き起こした事件・事故・物損の数々、おギンの調査によって明らかだ。
もはや言い逃れはかなわぬぞ!」
「おギンちゃんヒドい!
私達を売ったのネっ!?」
「え、いや、あの、報告書出したの入部する前やったし…。」
「なんだ、『壁新聞部』に入部したのか?」
「あはは…。
一応ソッチの仕事も終わったこってすし…、すんまへん。」
「別に構わん。
よほどのコトがない限りは、ウチは自主性第一主義だからな。」
「う〜む、さすがだ、おギン。
『廃部通知』に添付された報告書、文句なく『壁新聞部』を潰せるだけの資料が揃っている…。」
「ちょっとトーキチローくん!
なに感心してるのよ!!」
「3桁に及ぶ物損事件、すべてリララ教授のモノですね。
しかも半数にはデータ改竄などによる計画的かつ悪質な隠蔽工作が仕掛けられていたようですが。」
ううっ…!Σ( ̄。 ̄)))」
「おギンはよくやってくれた。
我ら『四天王』の力をもってしてもソコまでの調査は難しかっただろう。」
「あ、『四天王』って『S四天王』ってヤツやな。
ところであんさんら誰やの?」
「……。
言わなかったか?
私はアーティ7。
『生徒会四天王』の現会長だ。」
「なにゅ〜〜っ!?
アレって『生徒会』だったんかいな!?
じゃ、あの変な暗い部屋はもしかして『生徒会室』!?」
「む?
言わなかったか?
第一、『生徒会』以外の誰が編入生にアカデミーIDや学生生活に必要なモノ一式とか用意すると言うのだ。

それにあの部屋は学園部エリア中央の1号館ビルのてっぺんにあるんだぞ。
『生徒会室』に決まっているだろう。
ちなみにあの部屋は節電中なので暗いのだ。
そこで1人ずつスポットライトを標準装備しているわけだが…。」
「なっ、なるほど!
コレでジッちゃんの名にかけて全ての謎がとけたで!!」
「謎がる前に相手の名前くらい聞いておけ…。」
書類の束を封筒に戻すトーキチローに、アーティ7がツツツと摺り寄った。
「ところで、久し振りだな、トーキチロー様(はぁと)。
私の贈ったチョコレートは気に入っていただけたか?」
「は?

…あ、あの『超リアルで食べられる!ゴジラチョコ(抹茶味)』って会長さんが贈ってくれたモノだったんですか!?」
「妹君からああいうモノが好みだと聞いたので…(ぽっ)。」
「おギン〜!」
「いや、その…。」
「気に入らなかったのか?」
「こら!おギン!!
どういうことだ!!」
「ぅぇえ〜!?」
「そっかぁ。
そういや会長さんて前からトーキチローくんにアタックしまくっていたもんネ。
それでそういうこととか知りたくてトーキチローくんの妹であるおギンちゃんをわざわざ…。」
「…こんにちは。」
彼らが騒いでいると半分開いているシャッターをくぐってフーメイが入って来た。
小脇に小包のようなモノを抱えている。
「あ、やっほ♪
フーちゃん☆」
「やっほ。

…ところでなんですか、この騒ぎは?」
「んー、恋愛ドラマ的に表現すると『修羅場』ってヤツかな?」
「『修羅場』?」
フーメイは言われてみて部室の中を見回した。

トーキチロー=男=1人。
他は女子のみ。
 
「トーキチローさん…。」
「あ、こんにちは、フーメイさん。」
「モテモテですね。」
「なんでイキナリそういう話になりますかー!?」
「リララ教授が…。」
「『修羅場』だって教えたげたの☆」
「いや、コレ、絶対『修羅場』と違います。」
「しかし、ごく近い血縁ですと遺伝子劣化が起きやすいので御注意なされたほうがよろしいと思われます。」
「だから違いますーーー!!」
「え、なになに?
『近視の総監』ってなんのこと??」
「大人になったらわかりますよ。」
「わかんなくてイイです!!
て言いますか、今どっから『キンシノソーカン』なんて言葉が出てきましたかーっ!?」
「実の妹となんて不毛だ!
トーキチロー様のような優秀な方には、同じくエリートである私こそがふさわしい!!
さぁ!トーキチロー様!!
カマンッ!!
「いや、そんな、カマンッって言われましても!?
きょ、教授!
助けてください!」
「ナマ修羅場って初めて〜。」
「って、なにビデオで録画してるんですかーーー!!」
「ああ、大丈夫。
別に『生徒会長と我が壁新聞部の部員が熱愛!?』なんて記事にはしなかったり、したかったり…。」
「おお!
公然の仲というのはロイヤルカップルな感じで悪くない!
記事にするなら『壁新聞部』の存続を認めてやってもいいぞ!」
「するする!
も、号外まで刷って駅前で配っちゃう!!」
「しないでください!

ああ、フーメイさん!
ココは理知的な貴方の力でどうにかしてください!」
「どうにか…?」
「この騒ぎを止めるんです!」
「なるほど。
では…。

すみません、よろしいですか。」
「なんだ!?」
「拝見したところ、この騒ぎには重要な点がスッポリと抜けています。
ソレは当のトーキチローさんのお気持ちをまったく無視しているというコトです。」
「ああ、さすがフーメイさん!
いいコトおっしゃる!」
「ぬぬ…。
それは、そうかもしれん…。」
「と、いうわけですので、まずはトーキチローさんが誰を好きなのかを御本人から直接聞かせていただくべきです。
争うのはそれからということで。」
「むむ!
ソレはいい!!」
「って!
なんだか事態を悪化させてるーーーっ!!!」
「おぅ!
ほら、兄者!
誰が好きなのか言えよ!!」
「隠し立てするとタメにならんぞ!!」
「いや、あの、落ち着いてください。
ちょっ、ちょっと、フーメイさん〜!?」
「『先程までの騒ぎ』は収まったと思うのですが…。」
「う〜ん、トーキチローくん、絶対絶命!
緊迫の続きは60秒後!」
「??
ビデオにナレーションを入れているんですか?」
「うん☆
あとでココにCM入れて流そうかと思って。
でも難しいね、どんなコト言えばいいのかよくわかんないや。」
「ああ、なるほど。
でしたらこうです。

『このあと信じられない発言にスタジオ大パニック!果たしてトーキチローの運命やいかに!?』」
「わぁ、ソレいいね!
さっすがフーちゃん!!」
「視聴者の興味を引くように過激でいて、そのくせどんな展開になってもいいような曖昧な表現で固めるのがポイントです。」
「ん〜、でも『信じられない発言』ってどんなんなのかな??」
「実は男色家、とか。」
「なにーっ!?
トーキチロー様が実はホモーっ!?」
「兄者が実はホモサピエンスだとーーっ!?」
「待てーーー!
どうしてソレが『信じられない発言』なんだーーーっ!!」
「良い子のひとくちメモ〜。 (>∇・)b

一般に男色家を指す『ホモ』というのは『ホモセクシャル』の略なの。
そして『ホモサピエンス』とは人類のことなのよ。

良い子のみんなは間違えて口走らないように注意してネ!

そもそも『ホモ』というのは『純粋』を表す語で、根源的にはヤオイとはなんの関係もないの。
だから『ホモ牛乳』は『純な牛乳』って意味で、飲んだからって『薔薇族』や『サブ』な男になったりはしないから安心して飲もうネ!」
「そうなのですか。
私の知識にない事項です。
覚えておきましょう。」
「覚えないでいいですーーーっ!!」
 

 
「兄者ー、出来たで!
兄者の熱愛報道の号外。
うぷぷ。(=w=)」
「うん☆
これで『壁新聞部』もしばらくは安泰だねー☆」
「まったく、『壁新聞部』のためとは言え…。」
「ほーらぁ、落ち込んでないで、配りに行くわよ☆」
「わ、私がソレ配るんですか!?」
「鬼やな、お嬢チャン…。」
「ところでさっきフーちゃんナニ持って来たの?」
「あ、コレですか。

珍しい豆の乾物と手紙です。
大玉斎事務長先生の出先からのモノで、アカデミー本部のほうに届いてしまったのを持って来て下さったそうです。

実は少し前に私達の『里』に対して『おギンが敗れた』という情報を流したんですよ。
それでその後の様子を知らせてもらっているのです。
『里』は私に続いておギンまでもがこのアカデミーで音信不通に陥った事でかなり混乱しているようですね。
私もおギンも、これでも『里』ではかなり上位のエージェントでしたから。

あとは私の父方が圧力をかければクーデターは自然消滅するでしょう。」
「へぇ、じゃあずっと気にしてた『里』の事も、ちょっとは平穏になるんだね。」
「良かったやん。
あとは兄者が戻って当主に納まれば一件落着やな。
でも、『里』に戻る気ってあるん?」
「まぁ、いずれ、な。」
「じゃあ気を取り直してコレ配りに行こう☆」
「ええっ!?」
「やっぱ配らされるんか…。」
 

 
その頃、『タワー』の最上階では。
「うふふふふふ…。」
「ど、どうしてしまったんだ、アーティ7は?
帰って来てからずっとあの調子だぞ!?」
「ワカラン。
シカモ、不祥事ノ多イ『壁新聞部』ヲ廃部ニシニ行ッタハズナノニ、ソノコトニツイテハマルデ返事ヲシナイシナ。」
「う〜む…。
まさか、リララ教授のなんらかの策に落ちたのでは…?!」
3人がいぶかしげな視線を送る中、アーティ7はネットで送られて来た『号外』の取り込み画像を御機嫌で眺めていた。
ソコにはムリヤリ撮影したアーティ7とトーキチローのツーショットが大きく載っている。
「トーキチロー様…(ポッ)。」
アーティ7は恋の季節まっただ中であった。
 

 
 
こうして、『壁新聞部』最大の危機は去った。
しかしリララ教授が顧問である限り、いつまたこのような危機が訪れるとも知れないのだ。
戦えトーキチロー!
負けるなおギン!
みんなで卒業するその日まで!

ちなみに、なんにしても壁新聞の号外なんかをマジメに見る者なんていなかったというのがトーキチローにとっては幸いだったという。

 

夢と希望の第2部に
つづく!


Sijimiya Konoha & Yukaina Brothers. Presents

"Professor Rilalah @General Science Academy"