鉄道考古学を歩く
この本はかなり一般的なものです。
内容は表題の通りですから、古い鉄道施設の探索です。車両関係はありません。
鉄道施設全般であり、駅や橋その他にもかなりのページがついやされていますから、
このHPの主題の線路に関しては少しのっている、と言わざるを得ません。 
しかし、私に言わせれば、少しのっているだけでも大変助かるのです。鉄道趣味の中では、車両趣味に比べて圧倒的にマイナーなのが線路趣味であり、わがままは言えません。 
鉄道史、産業史、廃線跡探訪の合間に線路の記事も出てきます。
最も注目出来るのは
P34、国鉄のハンプにあったカーリターダーの写真(多分国内絶滅)
P76、大正11年の秋葉原駅図にある20数個の貨車用転車台らしきもの
P161、ステップレール断面図あたりでしょうか。
ほかにも鉄道省のデュアルゲージ4線式分岐の写真もあります。

というわけで、値段的にもお勧めする参考書です。
JTB出版  1700円
英雄時代の鉄道技師たち
管 建彦 著       山海堂   2266円
イギリスの鉄道黎明期の技術者の本ですが、R.スチーブンソンとブルネル(Brunel)について書かれています。わが国では有名でないブルネルに十分ページが費やされています。
内容的には、車両は少なく鉄道施設が、特に橋やトンネルの鉄道土木工事が中心と言えましょう。しかし日本の時代区分では江戸時代に当たる時イギリスでは巨大な鉄道橋や複線トンネルを建設し、それが現在も鉄道用に使われているというような指摘に驚きます。
また、私はイギリスの鉄道車両に関して、車体幅が狭いので何となくがっかりしていたのですが、その理由が鉄道の黎明期から、アメリカや日本と異なり高速交通を想定して、急曲線や急勾配の代わりに高価なトンネルを掘った為、車両限界を小さくせざるを得なかったことを知ります。
線路に関する扱いはやや少ないのですが、ブルネルの広軌鉄道や橋型レールにふれています。ブルネルの2140mmゲージ鉄道はネットワークをめざす過程でスチブンソンゲージ(1435mm)に敗れたのですが、その直接原因は技術的なものではなく、ネットワーク展開の立ち遅れでした。
ここで私の個人的思いですが、日本の新幹線を戦後建設するときに、なぜ広軌(例えば2mゲージ)を採用しなかったのか? です。欧亜大陸連絡鉄道の展望を失った戦後だったら新規格の鉄道にスチブンソンゲージを採用する義理は無いと思うのですが。 今日でも2m程度のゲージに改軌すれば比較的楽に速度向上出来る、と素人発想するのですが、チャンスがあれば、鉄道技術プロの方に教わりたいところです。
本題からそれましたが、この本ではその他ブルネイの気圧式鉄道にもふれています。日本語でこの鉄道を書いた文に私は初めて接しました。これは蒸気機関車の技術に信頼がおけなかった頃、線路の中央にエアパイプを敷き、パイプ上部にスリットを切り込み、機関車はスリットを通して、パイプ内のピストンと連結する。エア圧力は鉄道のセンターで大型蒸気機関で生む。スリットには空気漏れを防ぐ皮製パッキングがある、そのパッキングをジッパーのように掻き分けて列車が進行するわけです。

著者はJNRのパリやロンドンの駐在員だったらしい方で、さすがに鉄道関係の資料収集には力を発揮しています。
この本は「買い」をお勧めします。ただ、私は池袋の分教堂で新本として最近買ったのですが、発行日が「昭和63年」になってます。もしかしたら購入に障害があるかも知れません。
アメリカ鉄道創世記 
文字通りアメリカに鉄道が根付くまでの歴史本です。
全体の配分は前半が蒸気機関車以前、後半が蒸気機関車導入時代になっています。
圧巻は重力式鉄道に関するものでしょう。 ケーブルで引き上げ、重力で下らせるというやり方は、大抵の人が一度は考えたのでしょうが、実際の物は私も初めて知りました。
P50で、説明されている、「バーニーカー」による車両押し上げも興味のわくしかけです。
これに似たものは日本では小樽築港で石炭車をカーダンパーまで押し上げるのに
「ミュールカー」という名前で使われていました。(鉄道資料1987年2月による)
ただし、小樽のもの(日立製?)の軌道が全線1067mm線路の内側に敷設されていたのと違い、バーニーカーは線路間ピットの中にいるときは狭いゲージを使うが、いざ、客車を押し上げるときは自動的に軌間変更して、客車用のゲージを走行すると書かれてします。
この点はとういう仕掛けだったのか図面などが無く不明です。

アラゲニーポルテージ鉄道に関しては、鉄道と運河船の乗り継ぎの利便のため、驚くことに船をまるごと貨車に積んだことが書かれています。船は貨車に乗り切れないので、分割組み立て式だったようです。
これもなかなかミステリーな話で、組み立て作業はどうやったのか、貨車からの船の乗せ下ろしは、造船所が進水式で使うような、ランプ線を使ったのか興味が湧くところです。
この間の事情はペンシルバニア鉄道の歴史本にも出ているようですが、そちらでも船の分解構造図などは残されていないようです。
その他フェル式鉄道の詳細な説明もあるので、お勧めの良書です。
初期機関車については4-4-0の始まりまでが詳述されています。
加山 昭 著  山海堂  1900円
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全国鉱山鉄道
岡本 憲之 著    JTB出版  1400円
鉱山鉄道は、限られた構内の局地的運用ということで、大鉄道のがんじがらめの規制の影響を受けないので、思いもかけない施設があり、イントレスティングなわけです。
鉄道ファンの裾野が広がりこんな本が街の本屋で売られていることに驚きます。
豊富な写真を見ていると、鉄道に対する興味はあこがれの対象としての巨大な機関車などと、親しみの対象としての等身大のトロッコにはっきり2分されている気が自分の中でします。
さて内容ですが、この本もどちらかと言えば車両が中心で線路は副次的です。
そこで、線路趣味にしぼって興味ページを羅列的に紹介します。

@p18、官設鉄道に先立つ明治2年畜力による石炭輸送鉄道があった。(北海道、芽沼炭鉱)
Ap64 加増野金山(下田)の近年使われていたストリップレール(木材+鉄帯)
Bp74 生野銀山の複々線ケーブルカー
Cp92 三井三池のクロス(または転車台)が4つ近接した設備(目的不明)
あたりが筆頭でしょう。
明延鉱山の線路に関しては、鉄道模型趣味1973年3月号の坂本氏報告にかないません。

新しくこの方面に興味を持った方はあわてて、この本に記載された鉱山にカメラを持って行ってはいけません。 これらの鉱山鉄道の9割以上はすでに活動を停止しているのです。 つまり、食べ終わった料理の話をしているわけですから、聞いている方は、やるせない思いをするわけです。
この辺はむずかしい事情があって、撮影したファンの側としては、鉄道が営業を停止してから、初めて営業中の写真を世に発表することになるわけです。

で、今頃になって動きだした、後発の者(例えば私)は観光、学童教育用マインパークへ行って情けない思いをするほかないわけです。
せめてマインパークの人にお願いするのは、限られた予算で観光列車を走らせるより、残された図面と写真をしっかり保存公開(出来ればインターネットで)していただきたい、という事です。これは私的希望ですが。

話がそれました。 線路に興味がある人は良心的値段から言っても買うべきでしょう。
鉄の細道 (増補版)鉄の細道 (増補版)
石本 祐吉 著
アグネス技術センター刊        2000円
線路の考察をアマチュアの視点で行うという、珍しい本です。 ただし、著者はれっきとした機械工学エンジニアです。
まずはお勧め写真を順に挙げましょう。

口絵1 パリのゴムタイヤ地下鉄。 タイヤ用軌道に平行して鉄製標準車輪用鉄レールが
     使用可能らしき状態で残されているのが確認出来る。
口絵4 リールの路面電車の約6分岐

口絵8 ローザンヌのラックレールのポイント

P33  標準軌貨車を乗せる狭軌台車

P59  名鉄瀬戸線にあった、ガントレットトラック

P131 JR総研にあるデュアルゲージの3線、4線トランスファートラック

本書で扱っている対象は、山岳用ループ線やレール継ぎ目、待避線有効長などもあり、やや広いと言えます。

気の付いたことを書き出すと
@日本の鉄道創業時代に橋型レールも輸入されたという文(P6)があるが、詳しい事がわからない。

A車両の向きを変えるワザ(P70)として車体床下重心位置にジャッキを取り付けておき、ジャッキで車両を浮かしておいて、人力で回転させる方法がある。
(TMS7月号P115に1行関連記述がある)

とまあ、こんなところで、何しろこの手の本が出るのはうれしいです。


鉄道ファン生態学
日下部 みどり子 著
JTB 発行(マイロネブックス)    1000円
このHPを紹介してくれた、出版物ということで、相互リンクのようなものとして、紹介します。
内容は日本の鉄道ファンが作ったHPを27個紹介したものです。
一読すると、鉄道ファンの裾野が巨大で細分化しているのがわかり、私など、ほとんどの鉄道ファンとは同志的一体感が持てない現状です。
これは嘆かわしいことでは無く、むしろ趣味として成熟した良い結果と、とってます。

著者のこのHPの紹介はP141です。
私のHPの意図を短い文章の中で正確に記述してくれたのに感心しました。
ただし、「読み進めるうちにいっぱしの軌道博士の気分になれる」というクダリは、もちろん、お祝儀文です。