「暮らしの中の仏教語」
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笏・驚策

 
皆様は「笏」を何とお読みになりますか。そうですね。コツと読めば禅僧の持ち物、シャクと読めば神官の持ち物となります。これが日本人に使われるようになった時、コツは骨に通じるからということと、長さが一尺ほどであったことからシャクと呼ばれるようになりましたが、禅僧はそんなこと気にしませんから、今日に至るもコツの呼び名で使用しているというわけですね。
 今ではコツとシャクでは形が違いますが、ルーツは同じで、中国から更にはインドへと遡さかのぼります。最初は孫の手と同じような使われ方をしておりましたが、中国では坊さんを含めた官吏が所持し、備忘のために君命などを書きとめておく板状の持ち物へと発展しました。のちには儀礼用となって、正装をした時の携帯品となったことは御存じのとおりです。
 日本では平安時代以降、文官武官が公事の際に束帯を着、これを右手に持つこととなりましたね。明治以後洋装になってからも、天皇家や神官達によって、この正装と笏しゃくを持つ習慣は受け継がれております。
 一方、禅門が伝えている笏こつは、先端が指を曲げた形をしているものと、先端が板状になっているものに分かれたようです。後者は主に修行僧を驚・覚策・励する時に使われたことにより、驚策と呼ばれるようになりました。驚策はより長い物へと変化してきましたが、笏はあいかわらず一尺ほどのものが多く、特に法要時の導師の持ち物として伝えられてまいりました。本来の形を容易に推定させる部分も残ってますね。
 笏(シャク)と笏(コツ)それに驚策(曹洞宗ではキョウサク、臨済宗ではケイサクと読む)のルーツが同じで、読み方や形がまちまちになったなんておもしろいと思いませんか。只の孫の手が、権威や位階を有する人の儀礼用の持ち物となってることも興味深いことの一つでしょう。こんな風に、私達日本人の風習の多くが、禅僧により、中国やインドからもたらされたものであることを知って戴ければ幸甚です。


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