「暮らしの中の仏教語」
日常使う私たちの日本語を学んで見ませんか
地獄で仏




 大変な困難にあったり、危ない目にあったりしている時、思いがけないことで助けられると「地獄で仏」だと申します。もちろん地獄で仏に会ったような有難さだというのでしょうが、それにしても地獄に仏様は居らっしゃらないのでしょうか。
 経典では、私達の住む世界を地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上・声聞(しょうもん)・縁覚(えんがく)・菩薩・仏(ぶつ)の十界に分けています。そしてそれぞれの世界はそこに住むにふさわしい者が住んでいるというのです。ということになれば、仏様は仏界に住んでおられるわけで、他の九界にはいらっしゃらないことになりますね。そして地獄界と仏界では地の底と天のその上ほども離れていますから、深海魚と高山に住む雷鳥が出合うより、会う確率は少なくなります。
 じゃあ、下の方にウヨウヨ居る我々は救ってもらえないのかということになりましょうが、心配要りません。仏様は慈悲深いので、我が身をさまざまに変えて下界のものをひき上げようとなさるのですね。
 でも、この人間界あたりまではおりてきて私達をお救いくださいますが、いかにもぐりの名人とて、地の底までおりるのは無理でありましょう。地獄は仏様といえども手をこまねくばかりの深い所です。
 ただひとかたお地蔵様だけが、地獄までおりて行くことができるのだそうですが、それも長くは居られません。地獄を巡廻する程度です。地獄の住人からすればこの「地獄に地蔵」にめぐりあうことが助けてもらえる唯一のチャンスでありますから、まさに「地獄で仏」の本番という訳です。
 落ちて行くのは易しいが、ひき上げてもらうのは大変。私達人間は幸い真中(まんなか)に居ますので、それより下に落ちないようにすることはもちろん、更に仏に近づくようにしたいものであります。






                


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