「暮らしの中の仏教語」
日常使う私たちの日本語を学んで見ませんか
禁足・安居




 昭和六十三年九月十九日に天皇陛下の御容体が悪くなり、御病状が予断を許さぬようになると、閣僚をはじめとする日本の要人は禁足(きんそく)することになりました。新聞にこの禁足の字が大きく報道されたのを見た日本国民は、それぞれに何かしら心に感ずるものがあったと思います。
 それにしても、関係者は慎重な言葉の選び方をしたものですね。外出禁止とか自宅待機というような語では、問題が残ったでありましょう。
 ところで、国語辞典で禁足を引きましたら「一定の場所に居させて外出させないこと」とありました。しかし、本来の禁足とはそれに「身を慎(つつし)み、修行すること」が加わります。
 皆様も御存じのように、インドの雨期は長く続き、この時期に草木虫類が最も繁殖いたします。お釈迦様はこれに目を止められ、門外に出て誤ってこれらを殺さぬ様にする一方、内かたで弁道修行(べんどうしゅぎょう)に励むという雨安居(うあんご)の制度を定めました。
 安居の安は身と心を静止の状態にすること、居は一定の期間一ヶ所に住むということであります。この期間は九十日間続きますので九旬安居(くじゅんあんご)とも言いますね。この制度が中国へ伝えられると、気候風土の関係から、冬にも禁足して安居を行うことが加わりました。
 それが更に日本へ伝えられ、夏を冬の各九十日間を安居する二期結制(けっせい)として、今日なお行じ続けられております。安居の制は仏祖正伝(ぶっそしょうでん)の聖制として、特に禅宗で重んじられておりますが、真宗などの安居会(あんごえ)も盛んですね。
 一般の人々も、たまには禁足して安居の生活を過ごしてみてはいかがでしょう。忙しく走りまわってばかりいては自分を見失ってしまいます。自己を見つめ、修行する時期を設けたほうが、より有意義な一生を過ごせるのではないでしょうか。





                


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