最近の口演発表要旨・表題・予定 (2009年 11月 15日更新)
異物昆虫カタラーゼ簡易検査法による基礎探索データの追加(1) 〇辻 英明 (環境生物研究会),日本ペストロジー学会大会(2001年11月27日〜28日,埼玉県大宮市)
すでに,チャバネゴキブリ成虫(一部幼虫,卵鞘,クロゴキブリ1齢幼虫),ノシメマダラメイガ終齢幼虫,キイロショウジョウバエ成虫,ヒメマルカツオブシムシ終齢幼虫,コクヌストモドキ成虫について,死体乾燥経過,煮沸個体の乾燥経過,一部については食酢への投入経過とその後の乾燥経過,食用油への投入経過を中〜長期間観察し発表した.一方,さらに状況ごとのデータを入手するために検査を続行した.
チャバネゴキブリの健全卵鞘は穀物酢に落下した後60日間活性を示したが,125日目には完全に失活していた.また,チャバネゴキブリの16年間乾燥サンプルでは,乾燥初期に腐敗したものをそのまま乾燥させたものが著しい陽性を示すなどの事例が得られた.腐敗や自己分解で変色等が起こるので,その場合,加熱等による腐敗防止個体も判別できる.カタラーゼ検査以前の一般観察事項として事例を集積すべきである.
異物昆虫カタラーゼ簡易検査法による基礎探索データの追加(2) 辻 英明 (環境生物研究会), 日本家屋害虫学会大会(2002年1月29日,東京農業大学)
すでに,チャバネゴキブリ成虫(一部幼虫,卵鞘,クロゴキブリ1齢幼虫),ノシメマダラメイガ終齢幼虫,キイロショウジョウバエ成虫,ヒメマルカツオブシムシ終齢幼虫,コクヌストモドキ成虫について,死体乾燥経過,煮沸個体の乾燥経過,一部については食酢への投入経過とその後の乾燥経過,食用油への投入経過を中〜長期間観察し発表した(2000, 2001A,B).それらは虫体の中央部分を多少傷つけて反応させた試験によるものである.今回,微小末端部位としてチャバネゴキブリの爪,付節端,触角,コバエの脚部の小破壊でも容易に反応が検出できることを示した.大型昆虫ワモンゴキブリの穀物酢投入による失活をみたところ,脚部(3日)>> 腹部 > 尾肢(204日以上) と失活速度が異なることが判った.さらに煮沸後乾燥で失活状態の続いたチャバネゴキブリの死体に空気湿度を与えカビが発生した場合は,破壊しなくても高い表面反応が認められた.数日アルコール処理後製作乾燥し変色のなかったチャバネゴキブリ乾燥標本は16年後に活性を示さなかったが,処理不十分で製作時に(腐敗)変色乾燥した個体は16年後でも高い反応を示した.ノシメマダラメイガ老熟幼虫では煮沸乾燥個体は変色がなく,圧死個体は腐敗や自己分解で変色が起こる.製造・流通過程の詳細とともに,反応試験前の検体の変形,破損,色彩変化,カビ,腐敗,異臭の有無などの事項確認が重要であり,それらと照らし合わせてカタラーゼ反応の結果を判断せねばならない.
ゴキブリ用粘着トラップの種類とサイズの使い分けについて 〇辻 英明 (環境生物研究会) 立岩一恵 (環境機器株式会社), 日本家屋害虫学会大会(2002年1月29日,東京農業大学)
誘引物なしの条件下,同一幅の入り口で長さの異なる粘着トラップによるチャバネゴキブリの捕獲数を室内実験で調査した結果,粘着面にゆとりがある状態では2倍の長さ(粘着面積も2倍)でも捕獲数は増加しなかった.したがって,この場合捕獲数を粘着面積で補正することは誤りである.設置期間が短く,狭い設置ポイントの多いモニタリングでは長大なトラップは必要ではなく,小型トラップが便利であろう.
都市の飲食店において,中型で誘引物付きのトラップ(底面10×11.5p,底粘着面9.4×10p)とやや小型で誘引物なしのトラップ(底面6×12.5p,底粘着面7.4×10p)を対にして店内15ヶ所に8月22日から29日までの1週間設置した.設置場所が狭いので各対は密着させることができなかったが,なるべく50p以内に近づけた.その結果15ヶ所での2者の捕獲数の相関係数は0.62で,両者は類似の個体数分布を示した.両者を密着させることができればさらに高い相関が得られたと思われる.前者には6〜283匹(平均112.7匹),後者には0〜37匹(平均12.7匹)の捕獲数があり,誘引物による捕獲数の増加は顕著であった.誘引性(製品ロット)の変動を厳密に避ける場合や,ゴキブリ数の多すぎる場所でのモニタリングには誘引物なしのトラップが適し,ゴキブリ数の少ない場所では誘引物の使用もやむを得ないが,異種トラップ間のデータ換算は上記のような基礎データに基づく必要がある.
粘着トラップ上のベイトに対するチャバネゴキブリの反応 〇辻 英明(環境生物研究会) 立岩一恵(環境機器株式会社), 日本衛生動物学会大会 (2002年4月2日〜3日,東京都千代田区・一橋記念講堂)
1日絶食させたチャバネゴキブリの実験容器中で,トラップ付近に正常餌を置き,餌ベイト付きトラップとベイトなしのトラップを接して併置すると,両トラップ間に捕獲数の有意差がなかった.トラップ付近の正常餌を除去しても依然両者の捕獲数には差がなかった.3日間絶食させたゴキブリで正常餌抜きの場合,ベイト付き/ベイトなしの捕獲数比は,雄で1.9倍,雌で1.7倍となった.2個のトラップ間の最短距離を15センチとすると,上記の比は雄で3.5倍,雌で4.5倍となった.ゴキブリは遠くからベイトをピンポイント認知するのではなく,香りの気流方向を試歩行と補正を繰り返し感知接近するために,近接するベイトなしのトラップにも踏み込み捕獲され,空腹の度合いが高まれば,ベイトの位置を一層正確に識別できるようになると言える.
異物昆虫侵入条件に関する実験(1) 窓やドアの隙間からの出入り 〇辻 英明(環境生物研究会), 日本ペストロジー学会大会(2002年10月28−29日,北海道大学学術交流会館 (札幌)
医薬,食品,精密製品など工場製品への異物昆虫の混入防止のためには,屋内性昆虫の発生防止はもちろん,屋外からの侵入防止が必須である.しかし,モニタリング,発生源対策,隙間閉塞,殺虫施工,荷物や人体への付着防止など,様々な対策が施されるにも関わらず,なかなか十分な成果が達成できないうらみがある.演者は特に問題が多い微小な飛来昆虫に注目し,その室内への出入りを検討した.1階の事務室(A)の閉めた窓の下内側に(レール面に向けて)斜めに粘着板をかぶせ,閉めたドア下内側床上とドアに付設された郵便受けの中にそれぞれ上向きに粘着板を置き,平成14年5月24日19時から26日8時までの捕獲虫を調べた.その結果,6枚の粘着板中3枚に6頭(ユスリカ3,チョウバエ,コナジラミ,アブラムシ各1)の屋外性微小昆虫が付着し,隙間から侵入があることを示した.付着はすべて室内の換気扇で排気した時間に起こり,吸引が主要因と言える.隣接する小室(窓に隙間を作った浴室)内壁の昆虫目撃数は5月26日18時から27日10時までの間に6〜44頭の変動を示し,A室の換気扇稼働時間に増加し停止時間に減少した.これは稼働時の吸入と停止時の脱出を意味する.5月27日には目撃昆虫を回収し,ユスリカ5,チョウバエ5,クロバネキノコバエ2,コナカゲロウ1を確認した.
無色透明のゴキブリ用粘着トラップの実用性 〇辻 英明(環境生物研究会),菅野格朗,中根佳子,片山淳一郎(環境機器株式会社),日本ペストロジー学会(2002年10月28−29日,北海道大学学術交流会館 (札幌)
夜行性のゴキブリが照明条件下で潜伏シェルターを選ぶ場合,天井が無色透明のシェルターよりも光線(特に紫外線)をカットするオレンジ色や赤色透明のシェルターを選ぶ.透視が必要な実験観察用シェルターのみならず,トラップやベイトステーションの透明部分に着色が応用され,実用的には紙など不透明な材料が用いられることが多い.しかし,短期間の設置調査に用いる粘着トラップは昼間の潜伏場所としてではなく,夜間の徘徊場所や餌の探索場所としてゴキブリを捕らえると考えられるので,無色透明のプラスチックシート製の粘着トラップによる捕獲実験と,現場における実用性試験を行った.その結果,実験容器内における無色透明の粘着トラップによる夜間のゴキブリ捕獲数は併置した不透明(紙製)のトラップに必ずしも劣るとは言えず,個々に使用した場合は全く差がなかった.また実地の飲食店で,組み立て容易な無色透明トラップを用いた場合でも,十分実用的な捕獲数が得られた.このようなトラップは材質上耐水性があり,外側から虫数がカウントできる上,室内で一見目立たずに設置できるなどのメリットがある.
ゴキブリ用粘着トラップの入り口の状態と捕獲効率 ○辻 英明(環境生物研究会), 日本環境動物昆虫学会(2002年11月1−2日,関西大学100周年記念会館(大阪府吹田市)
前報で,紙製ゴキブリ用粘着トラップの両端入り口の広さが同じ場合,長いトラップとその半裁品の間でチャバネゴキブリ雌成虫の初期捕獲数の差は有意でなく,雄成虫はむしろ短いトラップに有意に多く捕獲されることが示された.この短いトラップは一方の入り口の縁に約5oの幅で粘着剤の塗られていない部分があり,反対側の入り口(裁断側)は縁まで粘着剤が塗られた状態であった.改めてデータを検討した結果,入り口の縁まで粘着剤が塗られている方に多くのゴキブリが捕獲されることが明示された.これはゴキブリがトラップに浅く侵入するだけで決定的に捕獲されるためである.言い換えれば接触感の異なる平面をより深く侵入する際には警戒的となり,その平面上で粘着面に触れた場合,一部は引き返しや脱出が可能であることを示す.一方,トラップ入り口底面に(入り口幅で)粘着剤なし1pの底面終端部を作り,それを内側(内角45度程度)に折り返しておくとゴキブリがよく捕獲されると言われるので,上記半裁トラップの両入り口にそれを設けたものと半裁のままのものとを比較した.その結果両トラップのゴキブリ捕獲数には差がなかった.粘着面がトラップ入り口の縁まである場合は,折り返し構造は必要ないと思われる.
異物昆虫カタラーゼ簡易検査法による基礎探索データの追加(3) 飛来侵入昆虫その他における反応 〇辻 英明 (環境生物研究会), 日本家屋害虫学会大会(2003年1月29日,東京農業大学)
すでに,チャバネゴキブリ成虫(一部幼虫,卵鞘,クロゴキブリ1齢幼虫),ノシメマダラメイガ終齢幼虫,ヒメマルカツオブシムシ終齢幼虫,コクヌストモドキ成虫など屋内発生昆虫を主体にキイロショウジョウバエを加え,死体乾燥経過,煮沸個体の乾燥経過,一部については食酢への投入経過とその後の乾燥経過,食用油への投入経過を中〜長期間観察し,さらに虫体の部分ごとやステージによる反応の差などを発表した(2000, 2001A,B,2002).今回は屋外から飛来したユスリカ,タマバエ,チョウバエ,クロバネキノコバエ,および屋内でも発生したクロバネキノコバエ,ノミバエ,ショウジョウバエその他についての検討を行った.その結果,クロバネキノコバエ1種は死後室温乾燥,室温清酒中,冷蔵ビール中の各経過で反応低下が目立ち,特に雌個体の失活が早かった.一方,キイロショウジョウバエやオオキモンノミバエは室温清酒や冷蔵ビール中に1ヶ月保たれても高い活性を示した.その他の種類も含め,状況判断にはケースバイケースの十分な経験が必要であることを感じさせる.
異物昆虫侵入条件に関する実験(2) 窓の隙間,照明,換気扇の影響 〇辻 英明 (環境生物研究会), 日本家屋害虫学会大会(2003年1月29日,東京農業大学)
医薬,食品,精密製品など工場製品への異物昆虫の混入防止策の一助とするため,演者は特に問題が多い微小な飛来昆虫に注目し,その室内への出入りを検討している.前報告(2002)において,閉められた窓やドアからも(わずかな隙間があって)微小な昆虫が侵入し,その主要因は換気扇稼働(室内陰圧化)に伴う隙間からの吸引であることや,換気扇の停止時にはガラス窓の隙間から屋外への再脱出もあることが示された.今回は,若干の隙間のあるガラス小窓から室内へどのような昆虫が,夜間の照明の有無や隣接室の排気用換気扇の稼働の有無とどのように関連して侵入するのか,より詳しく検討した.小室(浴室)の小窓に隙間を作り,同室内の点灯と消灯を繰り返し侵入昆虫をすべて捕獲計数した.また隣接する事務室内の換気扇の稼働(排気)と停止を繰り返して同様に調査した.侵入虫数はチョウバエ,ユスリカ,クロバネキノコバエ,が多く,タマバエ,ヨコバイ,野外性小型ガがそれらについで多かった.夜間の点灯による侵入数の増加は1.5〜3倍,隣接室の換気扇の稼働による侵入数の増加は3倍以上あった(点灯中).隣室の換気扇稼働時は消灯中も侵入虫が少なくない.これらの結果は,あらゆる隙間が換気扇の影響で侵入経路となることを示している.
異物昆虫侵入条件に関する実験(3) 防虫換気扇の効果 ○辻 英明 (環境生物研究会) 菅野格朗 (環境機器株式会社), 日本衛生動物学会大会 (2003年3月31日〜4月3日,大分医科大学)
屋内への異物昆虫の混入防止策のため,問題が多い微小な飛来昆虫の室内への出入りを検討し,衛生害虫であるカを含む微小な昆虫が室内に入る主要因は換気扇稼働(室内陰圧化)に伴う隙間からの吸引であることや,換気扇の停止時には屋外への再脱出もあることが示された.また吸引の影響は照明による誘引より大きい事例も示された.そこで吸入側と排気側の両方に防虫用フィルターを取り付けた換気扇を用いて室内に給気し,問題の微小昆虫の侵入を防止できた.また防虫目的のフィルタ−を取り付けた場合(稼働時の)換気扇モーター部の温度上昇は1℃にとどまり,負荷の増加も少なかった.この結果は,クリーンルームシステムによって侵入微細物を防止する方法のほか,飛翔力の弱い小昆虫に対して既存の排気用換気扇をフィルター付きの給気用換気扇に変更するだけでも十分な効果が期待できることを示唆する.西ナイル脳炎やマラリヤ等の媒介カ対策にも利用の可能性が考えられる.
小型飛翔昆虫の室内への侵入傾向とUVランプトラップへの反応 辻 英明(環境生物研究会) 菅野格朗・片山淳一郎(県境機器株式会社), 日本ペストロジー学会大会 (2003年11月13〜14日)
室内気圧の陰圧かによる影響が多い室内には,チョウバエ,ユスリカ,クロバネキノコバエ,タマバエの侵入が多く,小型カメムシ目,小型ガ類がそれに続くケースをすでに報告した.一方,別室で光源への飛来による室内への侵入を短時間で調査すると,多数が集中的に捕獲される種類は日により異なり,たとえばハヤトビバエ.ヌカカ,小型ユスリカ,ヒメアリ(有翅)と日により変化した.これは光源(この場合UVランプ粘着トラップを使用)への昆虫の反応がより積極的であり,その時付近で発生量が多く飛翔力の強い種類が検出されやすいことを示す. 他方,いったん室内に侵入した昆虫も,室内に設置したUV光源に短時間内に到達捕獲されやすい種類と,そうでない(壁面や床面に滞在しやすい)種類とがある.ノミバエ,ヨコバエ,小型のハチ目などは前者の傾向が強く.チョウバエやユスリカの中でも種差があり,相対的に見ると小型チョウバエ,小型ユスリカは前者の傾向,オオチョウバエやセスジユスリカは後者の傾向を示した.
食物残渣に飛来発生するコバエに関する観察 辻 英明 (環境生物研究会) 日本ペストロジー学会 (2004年11月18〜19日,東京,江戸東京博物館)
9月中下旬,定性的な予備実験として,緑茶残渣,メロンの皮,バナナ(皮も),梨果実の芯,柿果実(断片),ハムの薄切り切片(加水)のそれぞれをカップに入れ,隙間のある窓際に9〜12日間置き,12日〜17日目に発生している小型のハエの成虫,蛹,幼虫を検査した.果実類のうち,バナナ,梨,柿にはショウジョウバエが多数発生したが,ノミバエは僅かしか発生しないか,あるいは全く発生したかった.しかし,メロンの皮からはノミバエの発生数の方がショウジョウバエより多かった.ハムからは圧倒的多数のノミバエが発生し,ショウジョウバエの発生は僅かであった.緑茶残渣には多数の小型チョウバエと若干のニセケバエとノミバエが発生した.小型チョウバエとニセケバエは他の残渣には発生していなかった.この小型チョウバエは既報で小型Aと仮称しているもので(辻,2004),屋外から室内に多数侵入する種類である.この観察結果は,明瞭な水系でなくても本種が多数発生できることを示している.
簡易カタラーゼ反応試験そのものによるカタラーゼの活性低下 辻 英明 (環境生物研究会) 日本ペストロジー学会(2004年11月18〜19日,東京,江戸東京博物館)
混入異物としての昆虫死体を過酸化水素水中に浸漬してカタラーゼ反応を簡易に検出し,サンプルが加熱過程を経ているかどうか,長期間乾燥されたものかどうかなどを判断できる場合がある.この試験を二度三度と繰り返すと加湿や変性を繰り返すことになるので,一度だけにすることが望ましい.しかしクレーム処理の過程で,サンプルが関係者の間を移動している間に,2度3度と同じ試験を繰り返し,異なる結果を得て問題となるケースがあるようである.サンプルの加湿による微生物の発生はさておき,長時間反応液に浸漬する影響も確認しておく必要があると考え,ショウジョウバエ3種を用いて実験を行った.その結果,反応液中の1〜2時間の浸漬でサンプルの反応性は明確に低下し,4〜6時間の浸漬では初期の反応性とはかけ離れた(反応性の低い)結果となることが判明した.
発表当日追加事項: 1時間浸漬の影響よりも15分浸漬45分乾燥の4回の影響が大きく,乾燥途中にも失活が進行することが示された.すなわち浸漬回数の影響も多大である.したがって,判定は最初の反応によって行うべきであると言えよう.
異なる餌におけるショウジョウバエ類の飛来発生状況について 辻 英明 (環境生研究会) 日本家屋害虫学会(2005年1月19日,東京大学弥生講堂)
屋内や家屋付近で発生し飛来するコバエの中でも,ショウジョウバエは各種の生産施設やサービス施設で目立つ存在である.施設付近に普通に見られる種類と,異なる餌への飛来状況や,そこからの次世代成虫の発生状況を知ることは,ショウジョウバエが異物として生産工程に混入することを防ぐためにも参考になる.2004年に京都市で,バナナ(果実),メロン(皮などの残渣),ナス(果実),ハムスターフード(いずれも適宜加水)を放置して連日飛来虫と発生虫を捕獲して調査した.その結果,5〜6月にクロツヤショウジョウバエ,ヒョウモンショウジョウバエ,キハダショウジョウバエ,キイロショウジョウバエ,オナジショウジョウバエ,カスリショウジョウバエ,オオショウジョウバエの飛来が若干あるいは多数認められ,ニセオウトウショウジョウバエらしき2匹も得られた.バナナとメロンにはオオ,カスリ,キハダ,キイロ,オナジ,が比較的安定して飛来し,時にヒョウモンがメロンに多く飛来した.ナスとハムスターフードには圧倒的に多数のヒョウモンが飛来し,他の種類は少なかった.クロツヤはメロンとハムスターフードに数匹飛来し,ニセオウトウ(?)はバナナでのみ2匹得られた.
飛来数が多くても次世代の発生は多いとは限らず,バナナでキイロ,キハダ,カスリ,オナジの増殖が,メロンではヒョウモン,オオの増殖が,ナスではカスリの増殖が目立った.ハムスターフードは乾燥し,ショウジョウバエは羽化せず,数匹のオオイエバエ,ニクバエが羽化した.これは餌の発酵,腐敗や乾燥の進行状況,他種との競合,および幼虫の生息密度効果が影響するものと思われる.
室内に侵入した飛翔性微小昆虫の室内ライトトラップへの反応 辻 英明 (環境生物研究会) 日本家屋害虫学会(2005年1月19日,東京大学弥生講堂)
2003年に調べた結果,微小な飛翔昆虫が侵入した場合,室内に設置された粘着UVライトトラップで1時間以内に100%捕獲された種類から,1時間以内では全く捕獲されなかった種類まで,種々の捕獲率がみられた.一方,100%や0%の捕獲率であっても,侵入個体数が少数のものはデータの信頼性に疑問がある.そこで同様な実験を2004年に行い調査個体数を増加させた.その結果,前回トラップ捕獲率が0%で調査個体数不足の昆虫のうちコナジラミ,コバチ,クロバネキノコバエは,調査個体数の増加に伴い,それぞれ(4→25匹,84%),(1→6匹,50%),(3→13匹,39%)とトラップへの反応が検出された.一方,カ(2→17匹)は依然0%であった.前回の調査個体数が5匹以上の種類では,個体数が増加しても反応傾向に極端な変化はなかった.結局,ハヤトビバエ,小型ハネカクシ,コナジラミ,ヨコバイ,ノミバエ,ヌカカの反応性は高く,小型カメムシ,コバチ,小型チョウバエ,コマユバチ,クロバネキノコバエ,小型ユスリカ,タマバエ,コマユバチ,野外性の小ガがそれに続く反応性を示した.セスジユスリカ,ホシチョウバエ,オオチョウバエ,ガガンボ類,カは相対的に捕獲率が低く0%かそれに近かった.
微小飛来昆虫の屋内侵入 − 昼間と夜間の比較 − 辻 英 明 (環境生物研究会) 日本ペストロジー学会大会(2005年11月10〜11日, 横浜市,はがぎんホール ヴィアマーレ)
工場製品などに混入する微小昆虫の屋内侵入について,埼玉県鳩ヶ谷市の事務所内をモデルとして検討し,夜間の光に対する飛来や,それ以上に屋内気圧の陰圧による流入が多いことなどをすでに報告した. 特に飛来の多い種類としてチョウバエ,ユスリカ,タマバエ,クロバネキノコバエ,ヨコバイ,小型のガ類,ガガンボなどが認められた.これらの観察は夜間に行われたので,今回2005年5〜8月に同じ場所と同じ方法を用いて(室内を陰圧にして侵入昆虫を捕獲し)昼間に観察を行った結果を夜間の結果と比較した.
その結果,昼間の侵入昆虫数は夜間に比較して少数で,種類による頻度パターンも明らかに異なることが判った.すなわち,クロバネキノコバエが多く,コバチ,コマユバチ,アブラムシの頻度が高かった反面,チョウバエ,ユスリカ,タマバエ,小型のガ類などは少なかった.このような差異は,現場において侵入経路や時刻を追求する際に留意する必要があると思われる.
アカアシホシカムシの室内周年経過 辻 英 明 (環境生物研究会) 日本ペストロジー学会大会(2005年11月10〜11日, 横浜市,はがぎんホール ヴィアマーレ)
1998年12月15日に,食品原料の調味用プレミックスパウダー(暗黄色,フィッシュミールや乾燥鶏卵の香りのする粉末,パウダーと略称)に発生しているアカアシホシカムシを篩い,成虫18,大型幼虫(終齢)15,中〜小型幼虫27を含むパウダーの3群に分け,前2者はネコ用ペットフードと煮干し魚の混合物中に保ち,それぞれ加温の影響の少ない埼玉県鳩ヶ谷市の事務室内で経過を観察した.成虫は翌1999年4月7日までに83%(15/18)死亡,残りは7月20日までに死亡し,次世代の発生はみられなかった.大型幼虫は4月15日まで73%(11/15)が生存,6月15日〜7月9日の間に羽化を完了,越冬羽化率は47%(7/15)であった.パウダー内の中〜小型幼虫の越冬結果として6月15日〜9月8日の間に19%(5/27)の生存羽化率がみられた.以上の結果から越冬するのは大型幼虫が主体で,その羽化の大部分は6〜7月と言える.
1999年6〜7月成虫が羽化した容器(パウダー使用)には次世代幼虫が発生し,その羽化は9月中旬から11月末までが多かった.したがって年間2世代を経過すると言える.9月以降羽化した2世代目の成虫は,越冬中,翌2000年の1〜4月に死亡し,その容器からは6〜7月に次世代の新成虫が発生した.
タバコシバンムシの産卵餌への移動と日周活動 辻 英明 (環境生物研究会) 日本環境動物昆虫学会大会(2005年11月5〜6日,奈良市, 近畿大学農学部)
大型(底面辺31×17p,上部口辺33.7×19.5p,深さ21p)および中型(底面辺26×15.5p,上部口辺28×17.2p,深さ18.5p)のプラスチック容器をアリーナとして,その中で成虫が餌の入ったカップ(口径9p,底面径7.7p,深さ5.2p)あるいは空のカップから新しい餌のケースに移動侵入する状況を検討した.成虫は羽化して汚れたカップや空のカップからは急速に新しい餌のケースに誘引され移動し産卵するが,羽化場所や置かれたカップ内に新しい餌がある場合は移動しないか,その餌が汚れるまで移動が遅れた.5月上旬には暗い方向(ガラス戸の反対側)への移動が多く,6月下旬には明暗の両方向へ大差なく移動し,8月上旬には明るい方向に多かった.
9月中旬,小型(底面辺14.5×7.5p,上部口辺16×9p,深さ10p)のアリーナ内で,ベニヤ板製のシェルター(5×3p,厚さ3oのベニヤ板2枚で長さ3p,切り口8×8oの角材をはさんで接着)に潜む成虫が外部や餌に移動する活動状況を観察したところ,日没直前から活動が盛んとなり,20時前後にピークに達し,昼間はシェルター外に出る成虫数が大きく低下する傾向を示した.
タバコシバンムシの侵入と産卵 辻 英明 (環境生物研究会) 日本家屋害虫学会大会 (2006年1月23日,東京都,東京農業大学)
大型(底面辺31×17p,上部口辺33.7×19.5p,深さ21p)および中型(底面辺26×15.5p,上部口辺28×17.2p,深さ18.5p)のプラスチック容器をアリーナとして,成虫が新しい餌のケースに侵入や産卵を行う状況や,ふ化幼虫が侵入し生育する様子を調べた.成虫は自らが生育羽化して汚れた餌や空のカップからは急速に新しい餌のケースに誘引され移動し産卵した.また直径6oの小穴からも積極的に餌容器に侵入した.水平に張ったポリエチレン膜やクラフト紙膜で餌の容器の蓋をしてあっても,成虫は餌(の香り)に反応して蓋の膜に接して(膜と周囲のプラスチック部との隙間などに)産卵した.しかしふ化幼虫の侵入は認められず,また成虫がその膜を食い破って産卵することもなかった. 餌容器の蓋の膜の中央に直径0.5o弱のピンホールがある場合は,ふ化幼虫がポリエチレンや紙の膜上を歩行移動してピンホールから餌容器に侵入し餌を食べて生育羽化した.この蓋における水平のポリエチレン膜や紙膜の上をむき出しの幼虫が移動しピンホールから侵入する様子は,実体顕微鏡下での観察によっても直接確認できた.餌容器を倒してポリエチレン膜を垂直にしておいても,産卵はもちろんピンホールのある餌容器内での幼虫生育と成虫発生が認められた.ふ化幼虫が垂直のクラフト紙面でも滑り落ちないことが観察できたが,垂直のポリエチレン面では未確認で,今後確認したい. 甲虫目であるタバコシバンムシの場合も,チョウ目のノシメマダラメイガ同様に,ピンホールや微細な隙間からふ化幼虫の侵入が起こり,容器内や包装内の食品への侵入の大きな原因となると言えよう.
微小飛来昆虫の屋内侵入と屋内気圧および吸入風速との関係 辻 英明 (環境生物研究会) 日本環境動物昆虫学会大会 (3学会合同, 2006年11月12日,藤沢市,日本大学)
工場などの施設に微小昆虫が侵入するメカニズムとして,屋内換気扇の稼働による排気が屋内気圧の陰圧化を引き起こし,微小昆虫を不特定の隙間から吸い込むことが非常に重要であることはすでに報告した.今回は,それを示した家屋条件下で,実際にどの程度の陰圧化が起こり,飛来昆虫が侵入する特定のルーバー式窓の隙間の内外においてどの程度の風速が吸入をもたらしているのか,簡易気象計を用いて計測を行った.
その窓に隙間がない時,直径25pの排気式換気扇の稼働により,密閉室内の気圧は0.26へクトパスカル陰圧となった.その窓に隙間をつくると,その隙間からは室内に向かって最大風速1.8〜2.1メートルの風が流入した(陰圧の程度は緩む).しかし室外から同じ隙間に入る空気の流入速度は最大0.5〜0.7メートル程度であった.これは同じ隙間に室外からは多方向から吸い込まれ,室内へはその隙間によって絞られた方向に流入するためと言える.したがって,侵入する微小飛来昆虫は0.5〜0.7メートル以下の風速によって吸い込まれ,それは0.26ヘクトパスカル程度の室内気圧低下によって引き起こされると言える. (この要旨は2007年1月に一部訂正しました)
UVライトトラップによるタバコシバンムシ成虫の捕獲効率 辻 英明 (環境生物研究会) 日本家屋害虫学会大会 (3学会合同,2006年11月12日,藤沢市,日本大学)
2006年8月に,東西両壁(窓面内側)にUVトラップ1台ずつを設置した540p×360pの室内の床面中心に成虫の入った放飼カップを置き,カップから脱出した成虫がトラップに捕獲される数を調査した.参考用にライトトラップ直下の壁面にフェロモントラップ1個ずつを貼り付けた.8月23日17時30分,2個のカップに成虫を計245匹入れて設置し,翌24日17時に154匹を入れたカップ1個を追加設置,それぞれの夕方から翌日の朝までライトトラップを点灯した.設置成虫合計399匹のうち,8月25日朝までにカップから室内に脱出した個体は245匹(61.4%)で,残留個体は弱っているようで,一部死体であった.脱出成虫245匹のうちライトトラップに119匹(48.6%)が捕獲され,フェロモントラップには計4匹(1.6%)が捕獲された.前報によると,成虫は歩行移動のほか高温条件下では飛翔によって移動する個体がみられるが,その割合は半数以下らしいので,今回のライトトラップによる捕獲(48.6%)は,雌を含む飛翔個体の大部分を捕獲し防除した可能性を示す.一方,フェロモントラップは成虫のモニタリング用に極めて有用であるが,UVライトトラップ直近で使用すると捕獲個体数が少なくなるようである.
コクヌストモドキ成虫の高所侵入と飛翔条件との関係 辻 英明 (環境生物研究会) 日本家屋害虫学会大会 (3学会合同,2006年11月12日,藤沢市,日本大学)
コクヌストモドキ成虫は硬質プラスチック面(市販飼育容器や放飼用の透明カップの壁)も軟質プラスチック面(市販35oフィルム・パトローネの容器の壁)も登攀できず,カップ内からの脱出も直立した開口フィルム容器内の餌に外側から侵入することもできなかった.深さ5pの放飼カップの底から直接,あるいはアリーナ床面から飛翔上昇することもできず,したがって14p上のフィルム容器開口部から中の餌に侵入することができなかった.
一方,放飼カップの中心に高さ13.5pの紙製タワーを与えた場合,登攀したコクヌストモドキ成虫の多くはタワー頂点から水平気味に飛び出し,カップ外のアリーナ床面に落下した.しかし依然14p上の餌容器開口部までの飛翔はできなかった.
開放状態(室内)で高さ1m弱の柱上で同様の放虫を行うと,カップを飛び出したコクヌストモドキ成虫は30〜50p下降した後,水平あるいは上昇ぎみに飛び去るものが多かった.コクヌストモドキ成虫の飛翔条件の一つを示すものと言えよう.
タバコシバンムシ成虫の室内移動実験 辻 英明 (環境生物研究会) 日本ペストロジー学会大会 (2006年11月22日,岡山市,岡山大学)
アリーナ内実験では,タバコシバンムシ成虫は夕方から潜伏場所から出て20時過ぎに活動のピークを示し,5〜6月には歩行によって暗い方向に移動する傾向があり,夏期には明るい方向に飛翔移動する個体も多いが,明暗差別なく歩行移動する個体も多かった.今回,より広い空間で観察する目的で,540p×360pの室内の中央で成虫とシェルターの入ったカップを開放し,周囲に設置した餌入りの容器12個と,水または蜂蜜水を含んだ脱脂綿の入った容器12個への侵入状況を調査し,床に残された個体の回収も行った.6月4〜5日(A)と16〜17日(B)の実験の結果,周囲の容器への侵入は開放直後を除けば,やはり夕方から夜間にかけて盛んであった.シェルター入りカップを離れた個体のうち周囲の容器に侵入した個体の割合はA=11%とB=29%,容器以外で翌朝回収できた個体はA=13%とB=8%,その他は行方不明であった.餌場以外での活動も多いことはアリーナ実験と共通の結果と言える.侵入した容器の位置にはある程度の方向性があり,散光ガラス窓(南側)に対面する明るい白壁(北側)の方向は少なかった.むしろ散光ガラス窓の下の逆光となる壁側(南側)に侵入が多かった.
コクヌストモドキ成虫の日周活動 辻 英明 (環境生物研究会) 日本ペストロジー学会大会 (2006年11月22日,岡山市,岡山大学)
2006年6月に室内のアリーナ内でコクヌストモドキ成虫に木製のシェルターと南北各2カ所に成虫が出入りできる餌場(浅いトレイに薄く小麦粉を入れたもの)を与えて2時間ごとに成虫の位置を記録した.成虫がシェルターに付着している割合が高いのは昼10時から18時の間であり,シェルターを離れる割合が高いのは夜20時から朝8時の間でであった.シェルターを出た個体は,餌場に入るものと餌場以外を徘徊あるいは静止するものがあり,個体数の割合は,二晩目までは餌場より餌場以外の方が多い傾向があったが,3回目の夜以後には餌場に多くなった. 入った成虫が出られないトラップ餌場(紙を巻いた外壁で,深さ5pのプラスチック製)の場合,18時から24時(0時)にかけて70%が,明朝8時までに85%が餌場に捕獲された.外壁に紙を巻かず,すべって成虫が入れない餌場の場合,18時から翌朝7時にかけてシェルターを離れ,シェルター上下を含めて徘徊する個体が多かったが,シェルター上下の個体は全体の50%以下にはならなかった.シェルターを出た個体は早朝から昼間にアリーナの南側(明るい方向)に分布する傾向があり,夜中の分布には南北の差がなくなる傾向を示した.
タバコシバンムシ成虫の探索移動と滞在に関する実験 辻 英明 (環境生物研究会) 日本環境動物昆虫学会大会 (2007年10月13日,亀岡市,京都学園大学)
新しい餌(小麦粉)の表面に成虫が移動し集合状態となっているトレイ2個を空の飼育カップに移し,5%ハチミツ水を含ませた脱脂綿入りの小型トレイを併置すると,直ちに多くの個体がハチミツ水のトレイに移動し,30分以内に餌のトレイの1個では成虫がゼロとなり,この状態は8時間続いた.大型プラスチック容器中で空のフィルムケースとハチミツ水(綿)入りのフィルムケースを置いて成虫を放すと,侵入数はハチミツ水(綿)>空ケースだったが,餌入りのケースを追加すると,それまで無反応だった個体を含めて,より多くの個体が餌入りケースに侵入した.一方,ハチミツ水(綿)と脱脂綿のみの比較では,ハチミツ水(綿)>脱脂綿の場合と,両ケースで同等の場合とがあった.さらに空のケースと脱脂綿のみのケースとを比較すると,両ケースが同等の場合と,脱脂綿の方に多い場合とがあった.後で餌入りケースを加えると,より多くが餌入りケースに侵入し,脱脂綿ケースの個体の多くが餌入りケースに移動した.成虫の探索や滞在の優先順位は餌>ハチミツ水>脱脂綿>空で,餌の摂取や産卵の経過に応じて探索や滞在の行動を変化させているとみられる.
タバコシバンムシ成虫に対するUVライトトラップの捕獲効果辻 英明 (環境生物研究会) 日本衛生動物学会西日本支部大会 (2007 年10月21日,大津市,滋賀県立県民交流センター,ピアザ淡海)
家屋内に多いタバコシバンムシは,乾燥食品を加害するだけでなく,オクラトキシンなどカビ毒を産生する真菌類が検出され,衛生上も注意が必要と思われる.本種の防除対策として産卵前の成虫の駆除が必要である.成虫の行動を検討すると,主として夜間に活動し,乾燥餌(エビオス入り小麦粉)に誘引される.24向℃以下など気温が低い時には歩行により暗い方向に向かうが,夏期などの高温時には飛翔して明るい方に移動した.UVライトトラップを設置した室内で成虫を放すと,高温時の1〜2晩で自由行動成虫の50%が捕獲され,高温時の成虫対策に有効であることが示された.
コクヌストモドキ成虫の歩行移動の方向性
辻 英 明 (環境生物研究会) 日本ペストロジー学会大会 (2008年10月16〜17日,大阪 市 メルパルク)
コクヌストモドキ成虫が隠れ場所を離れる割合が高いのは夜20時から朝8時の間であり,実験容器の中を徘徊する個体は早朝から昼間に容器の南側(明るい方向)により多く分布し,夜中の分布は南北の差がなくなる傾向のあることは2006年に発表した.今回この傾向をさらに確認し,トラップ餌場(紙を巻いた外壁で,深さ5pのプラスチック製)に入る場合も,あらかじめ別の成虫を入れておいたものに誘引される傾向はなく,やはり明るい方向の餌場に入る傾向が強かった.さらに,より広い空間で観察する目的で,6〜8月の夕刻に540p×360pの室内中央に成虫を放し(付着したシェルターを置き)周囲に設置した餌入りの容器12個への侵入状況を2日間ずつ調査した.たまたま比較的低温であった時(7月19〜21日)には餌場への侵入は少なく(7%),高温であった時は侵入が増加した(6月29〜7月1日,34%)(8月8〜10日,30%).移動にはある程度の方向性があり,大局的に室内の南側の散光ガラス窓の方向の餌場に入る傾向が認められた.
コクヌストモドキ成虫の容器内歩行移動の観察
辻 英 明 (環境生物研究会) 日本環境動物昆虫学会大会 (2008年11月16〜17日,京都大学)
今までの検討で,餌場とシェルターのある容器内のコクヌストモドキ成虫の多くは,昼10時から18時の間はシェルターに静止し,シェルターを離れる割合が高いのは夜20時から朝8時の間であり,またシェルターを出た個体は夕方あるいは早朝から昼間に容器内の南側(明るい方向)に分布するものが多く,次第に昼の静止場所を餌容器とする傾向を示した. 今回は,室内の容器床面に置かれた個体の明暗2方向への反応,新餌に潜入中の個体の反応,室外の直射日光と日陰との間の反応,UVライトに対するカップ内の反応を観察した.越冬後の成虫は,7月の空腹時に80〜100%が明るい方向に急速に移動し,新餌中の潜伏個体は85〜90%暗い方向に移動したが,8月の空腹時の明るい方向への移動が50%前後に低下し,明暗の差は減少した.当年羽化した成虫も,8月の空腹時には明環境への移動が多かったが,餌中の潜伏個体でも明るい方向に移動する個体の割合が多く,時に80%以上あり,越冬成虫よりも外向きの移動傾向が強いことが示された.越冬個体も新羽化個体も,少なくとも最初は直射日光環境にもプラスに反応した.しかし輻射熱による温度上昇に伴い日陰に戻る傾向を示し,50℃に近くなった部分からは運動不能となり戻れなくなる個体もみられた.暗黒中の成虫はUVライトトラップの方向に対してもプラスに定位した.歩行成虫はとりあえずひらけた(明るい)方向に移動し,新しい餌や異性への誘引や飛翔態勢に移行すると言える.餌から離れる傾向は当年羽化成虫の方が強いようである.
コクヌストモドキ成虫のタワー先端からの飛び出し方向と着陸成虫の歩行方向
辻 英 明 (環境生物研究会) 日本家屋害虫学会大会 (2009年2月28日,藤沢市,日本大学)
2008年,自然光室内ケージ実験で,成虫が高所先端部から飛び出す方向と,床に落下着陸後の歩行移動方向を観察すると,越冬直後(5月)の試験では,飢えた成虫は,明るい方向に飛び出す傾向が明瞭だった.越冬後餌を与え,さらに7月の試験前に新餌中で3日間過ごした成虫の飛び出し方向は明暗と関係なくランダムだった.しかし,その後(条件A)1日,あるいは3日間絶食させた成虫は,明るい方向に飛び出す傾向が多少増加した.年内羽化虫で,7月に新餌中で3日間過ごした成虫も,その後24時間程度絶食させた成虫も,飛び出し方向はランダムの傾向が強かった.しかし,4日間絶食させた成虫は明るい方向に飛び出す傾向が認められた.年内羽化虫で,9〜10月に2〜6日絶食させても,飛び出し方向はランダム傾向であったが,46日間絶食させた成虫は明るい方向に向かった.しかし,その後2日間新餌中に保った成虫の飛び出し方向はランダム化した.夜間にUV光源を設置して観察すると,越冬後,上記(条件A)で4日間絶食させた成虫のUV光源設置下での7月の飛び出し方向はほぼランダムに近かった.年内羽化虫の7月のUV光源設置下の反応をみると,汚染餌から取りだした成虫も,新餌を3日間与えた成虫も,飛び出し方向はランダムであった.いっぽう,落下着陸後の歩行移動の方向は,越冬成虫も新成虫も,明るい方向に向かう傾向を示した.
UVライトトラップ条件下でのコクヌストモドキ成虫の飛翔方向
辻 英 明 (環境生物研究会)日本家屋害虫学会大会 (2009年2月28日,藤沢市,日本大学)
2008年,室内で高所先端から飛翔するコクヌストモドキ成虫の,1.5メートル前方に設置したUVライト粘着トラップへの反応を調べた.5月25日(23℃),越冬後,新餌なしの成虫は,30分以内に30匹中11匹が飛翔したがトラップに捕獲されなかった.7月18日(31℃),越冬後新餌を与えられ産卵中の成虫は,40分以内に20匹中13匹が飛翔したがトラップに捕獲されなかった.7月18日(31℃),当年羽化成虫(親は越冬成虫で5月8〜18日に産卵)は,40分以内に20匹中15匹が飛翔したがトラップ捕獲されなかった.上記の飛翔個体39匹のうち,着地や飛翔方向を確認できた個体は10匹で,1匹がランプの直前に着陸したが,それ以外はトラップから離れた場所や異なる方向で確認された.5月25日の別観察で,トラップから1.4メートル離れた場所のカップ内の成虫(越冬品)は,UVランプ点灯1〜2分でUVランプ側に歩行移動した
点光源に対するコクヌストモドキ成虫の飛翔開始反応
辻 英明 (環境生物研究会) 日本ペストロジー学会誌大会 (2009年11月12〜13日,つくば市)
昼間部屋に置かれたケージ内で,コクヌストモドキ成虫が尖塔の先端から飛翔を開始する場合,越冬成虫も年内羽化成虫も新餌内で3日間以上過ごした後はランダムの方向に飛び出す傾向があり,餌を数日間以上与えない状態が続くと,明るい方向(南側のガラス戸の方向)に飛び出す傾向がみられた.しかし,尖塔の高さが低いので,すべてケージ内の床に落下し,その後はすべて明るい方向に歩行する傾向を示した.夜間に90p離れた位置に白色LEDを点灯し,弱い点光源に対する反応を調べると,光源側に飛び出す傾向が見られたが,点光源そのものを目指しているような鋭い方向性ではなかった.すなわち,光源への直接飛来はなかったが,温度の不足による可能性もある.白色のビニル膜をケージの光源側に置き光を散光面とした場合は一層微弱な明るさとなるが,その方向に反応する傾向があった.これらの反応は,成虫が飛翔を開始する際,隙間や孔からの光を含めて明るい方向に向かうことを示唆する.点光源とし白色,青色,紫外線,赤外線,のいずれのLEDも類似の効果を示した.赤外線への反応は,成虫が温度にも飛翔反応する可能性を示唆している.
コクヌストモドキ成虫の餌とシェルターを巡る行動の変遷
辻 英 明 (環境生物研究会) 日本環境動物昆虫学会大会 (2009年11月14〜15日,箕面市,大阪青山大学)
昼間シェルターに静止している成虫は夜間に活発に活動し交配や新しい餌場への移動などを行う.前報までの観察では,それらの移動方向は明るい方向に向かうが,次第に昼間の静止場所をシェルターから餌容器へと変更する傾向があった.いっぽう,昼間新しい餌の中に潜入している成虫を取り出し,餌のない室内容器の床上に置くと,ほとんどが暗い方向に移動する場合と,むしろ明るい方向へ移動する個体が多い場合とがあった.
そこで,昼間のシェルター上の静止状態と,餌の中での潜入状態との間で,成虫はどのような経過をたどっているのかを調べようとした.その結果,空腹個体に新しい餌を与えた場合でも,餌への潜入期間が2日間以下など不十分な場合,取り出された個体は明るい方に向かう傾向を示し,より長く潜入した個体は暗い方向に移動するようになった.同時に産卵開始時期を調べたところ,4〜5日目から開始したので,暗い方へ移動する行動は産卵行動の開始と連動するものと思われる.逆に,餌中から取りだして3日以上など絶食期間が長いほど,明るい方向へ移動する傾向が強くなった.昼間シェルター上に静止している個体は,夜間新しい餌を求め,あるいは交配するために外部へ移動する生理条件となっていると言える.