ESPERANTA SCENARO

夏の別荘にて

登場人物 夫:加藤のりお 妻:アレクサンドラ加藤 いとこ:マルコ・ゲパルド 家政婦:水戸さん 郵便配達人 美人

第1景

別荘の前。主人公たちが別荘に到着。

家政婦:いらっしゃい、皆さん!
妻:ああ、水戸さん。こんにちは!
夫:こんにちは。
いとこ:こんにちは。
妻:こちらは水戸さん。この別荘の新しい家政婦さんよ。水戸さん、こっちが私の夫で、こっちが私のいとこのマルコ・ゲパルド。
夫:よろしく、水戸さん。
いとこ:よろしく。
家政婦:お二人にお会いできてとてもうれしいわ。この別荘で素敵な夏を過ごされますように。
夫:ありがとう。

夫:しかし、ここは本当に暑いね。都会と同じじゃないかい。
いとこ:まったくだね! 今年の夏は普通じゃない。狂いそうだ!  ここでも小説の筆があんまり進まないんじゃないかともう心配だよ。いや・・・招待してくれたのは感謝してるよ、本当に、でも・・・
夫:わかるよ。でも僕は満足だよ。仕事から解放されたんだし。とにかくここへは骨休めに来たんだ。

第2景

妻が散策している。地図を見ながら、土地の人に道を聞いている。

いとこが部屋を出ていく。机の上には彼のパソコンと書きかけの小説。

夫はテレビを見て退屈している。テレビを消し、ギターで遊ぼうと手にとる。

妻が別荘に戻ってくる。

妻: のりお! マルコ!

いとこは部屋におらず、妻はテレビの部屋に上がっていき、眠ってる夫を見つける。彼が気づかずに抱えているギターを取り除く。

日々が過ぎていく。

第3景

別荘の中。家政婦が戸を開ける。

家政婦:おはようございます。アレクサンドラさん!
妻:おはよう!
家政婦:今朝も走っていらしたんですか。
妻:もちろん。来てから1週間、お天気続きでとってもうれしいわ。
家政婦:でも日差しが強すぎると思いません?
妻:どうして! 全然! 夏はこうでなくちゃ。それにここの朝はとっても気持ちいいわ。
家政婦:そうですね。ここの朝はいいですね。ですからいっそう不思議ですわ、男の人たちはいつもそれから逃げようとしてるみたいで。

妻:まだ寝ているの?
家政婦:もちろんですとも。もう驚きませんわ。今までちっとも満足に部屋の掃除ができやしない。
妻:そうね。それはあなたの責任じゃないわ。
家政婦:もうまるまる1週間ですよ。
妻:そうね、でも今日こそはやりましょう。絶対に。
家政婦:ふうん。たぶん・・
妻:朝食はいつできるかしら?
家政婦:30分後には。
妻:いいわ。その間にシャワーを浴びて、あの寝坊助たちを起こしてくるわ。

第4景

そろって朝食のテーブルで。

妻:さあ、今日はどんな予定なのかしら。
いとこ:今、小説の3章まで来てて、特に予定はないよ。はっー、この暑さで頭がとけちゃうよ。
妻:頭、お大事に。あなたは?
夫:このあと、またベッドに戻るよ。
妻:それから?
夫:それから・・・ あっ、そうだ。3時半にテレビで(サッカーの)試合があるんだ。これは見なくちゃ。
妻:なんて出不精な人たちでしょう。こんなに天気が素晴らしいのに。
いとこ:何ですって? 何が素晴らしい? このくそ暑い、蒸し蒸しした、汗だくだくの天気が?

玄関で音がする。

夫:あやっ。お願いします。
家政婦:はい。
妻:のりお、あなたが行くの。誰がここの主人なの?
夫:はあい。いいよ。僕が行く。

第5景

玄関で。

郵便配達人:おはようございます。
夫:おはようございます。
郵便配達人:加藤のりおさん・・・
夫:私です。
郵便配達人:あなたに書留です。ここにサインをお願いします。ここです。
夫:ああ、どうもすみません。
郵便配達人:もうひとつあります。普通郵便で・・・同じ住所でマルコ・ゲパルドさん。
夫:はい、一緒ですが。
郵便配達人:よかった。渡してもらえますか。
夫:はい。どうも。
郵便配達人:ありがとう。ではまた。
夫:はい、また。

夫:げえ、何て馬鹿げた冗談だ。

夫:でも・・・・そうでもないかもよ。

第6景

夫が食堂に戻る。

妻:誰だったの?
夫:郵便屋さん。それで、これ君に。
いとこ:はあん。
妻:他には?
妻:のりお!
夫:えっ、あっ、いや、何も。
妻:さっ、いいでしょう。コーヒーの用意をお願いね。
家政婦:はい、すぐに。
妻:どうして座ったままなの。食器を台所に運んでちょうだい。

第7景

夫、誰もいない食堂に戻る。

夫:親愛なる大好きな・・・
私はもう自分の気持ちを押さえることができません。あなたに初めて会った時から・・・・

女性の声:あなたに初めて会った時から他の事は考えられません。あなたのことだけなのです。忘れようともしましたが、できませんでした。あなたを何度かお見かけした時、私の心臓は止まりそうでした。でも、あなたは私に気づいてはくれません。私は若くて、美しくて、足が長くて、目もぱっちり・・・ あなたに一度でもお会いしてお話がしたいのです。今日の4時に公園の東屋に来てください。あなたに夢中なのです。

夫:馬鹿馬鹿しい!
うむ、でもまったくありえないことでもないぞ。まだじいさんでもないし。

いとこが入ってくる。

いとこ:ああ、そこにいたの。3時半に試合を一緒に見ようと思ってたけど、用事ができちゃった。午後、町まで行かなくちゃならなくて、編集者と会うんだ。

いとこ、立ち去る。

夫:しかし、一体彼女は誰なんだろう。この辺で知ってる人はいないし・・・ 若くて、美しくて、足が長くて、目もぱっちり・・・

第8景

テニスコート。

夫:あっ、ごめんなさい。

第9景

夫と妻、鏡の前。

妻:聞こえないの? どうしたの? 具合悪いんじゃないの?
夫:わおっ。いやいやいや。ちょっと、眠いんだ。そう、単に眠いだけだよ。
妻:でもあなたの目、変に輝いてるわよ。熱のせいじゃないの。
夫:いやいや。何にも悪いとこなんかないよ。

第10景

洗面所。

夫:ただ本当に彼女なのか見てくるだけだよん。すぐ帰ってくるんだから。

第11景

別荘の客間。

夫:おっ。
妻:あらっ、どこかへ行くの?
夫:あっ、うん。散歩に行ってくる。
妻:でも、具合悪いんじゃないの?
夫:言ったでしょ、どこも悪くないって。それに君だよ、いつも言うのは、健康のために少なくとも定期的に散歩ぐらいしなさいっていうのは。
妻:ならいいわ。散歩を楽しんできて。
妻:それと、私のいとこを見かけないんだけど。どこにいるか知ってる?
夫:編集者に会いに町まで行ったよ。
妻:ああ、そう。じゃ、あとで。 あっでも、試合見るんじゃなかったの?

第12景

夫が東屋に近づいていく。

夫:な、何してんだよ、ここで。
いとこ:ど、どうしてここへ。
夫:町で編集者と会ってるんじゃなかったのか。
いとこ:もう終わって帰って来たんだ。あんたこそどうしてここに来たんだ。
夫:うー、いいじゃないか。ここは散歩のあと昼寝するのにいいとこなんだ。それより君だ。ここで何してるんだ。
いとこ:僕? 本を書いてるんだよ。だから他で寝てくれ。仕事に集中するのには一人でいたいんだ。
夫:何だって? 仕事? そんなことあるかい。 ペンも机もなくてどうやってやるんだい。僕が来たとき何か踊ってたぞ。
いとこ:違うね。小説のワン・シーンのこと考えて、主人公の心理を研究するためにそれを演じてみてたのさ。それにペンや机じゃなく、始めは頭で考えるんだ。
夫:があ、そんなのどこででもできるじゃないか。さあそこどいてくれよ。
いとこ:だめだ。 もう邪魔するな。 出てけ!

その時、笑い声が聞こえる。2人は東屋を駆け出る。

いとこ:ありゃ。あっち行け!
夫:この無礼者! 恩知らず! よおし、行くよ。でも覚えとけ。君を別荘に招くのはこれきりだ。

第13景

別荘の客間。

夫:何が始まるの? 晩餐会?
妻:そうよ、いとこが戻ったら始めるわよ。
夫:でも何で?
妻:まあ、忘れちゃったのね。今日はこの別荘ができてから1周年の日じゃない。
夫:ああ。水戸さんが料理したの?
妻:そうよ。どの料理もおいしそうでしょう。
夫:うん。本当だ。
家政婦:ありがとうございます。

廊下でいとこの声が聞こえる。

妻:あっ、彼だわ。呼んできて。すぐ始めるわよ。
夫:ああいいよ。

第14景

食堂にて。

妻:じゃあ、始める前に2人に聞きたいことがあるんだけど、いい?
夫:いいよ。
妻:今朝あなたたちがもらった手紙のことなんだけど。
夫:彼はもらったけど、僕はもらってないよ。
妻:誓える?
妻:のりお、あなた公園に行ったでしょ。美しくて、足が長くて、目もぱっちりの若い子に会うために。
いとこ:げぼっ。
夫:あーあ、冗談か、ああ冗談か。そりゃそうだよなあ。でも何で? いったいどういうつもりでそんなことを?
妻:気がつかない? 床がとってもきれいになってるのを。ここだけじゃないわ。あなたたちの部屋の床もしっかり磨かれてるわ。
夫:ゆ、床の掃除だって? そんなの言ってくれればいいじゃないか。喜んで手伝うのに。
妻:本当?
家政婦:とにかくこの1週間の夢がかなえられて満足ですわ。
妻:私もよ。さて、今回は大事な奥さんを裏切ろうとしたあなたを責めるのはやめにしとくわ。
夫:ぼ、僕はただ、いたずら者をこらしめたかっただけだよ。

夫:じゃあマルコ、君もあそこでその美人を待ってたのかい。
夫:ははは。
いとこ:ははは。
妻:じゃあ、乾杯しましょう。

終わり

(日本語訳 NORI)


REIRU

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