石打ち込みプレキャストコンクリート板

Stone Veneer-Faced Precast Concrete Panels

by Grant Kafarowski

 

1987年にニューヨークで開催されたシンポジウムの論文集「New Stone Technology, Design and Construction for Exterior Wall Systems」からの部分訳。

日本では、一通りの試行錯誤の結果もう一般化したように見える石打ち込みだが、アメリカでは少し事情が違うようである。石の強度評価や責任所在など参考になる点も多い。


天然石は何世紀にも渡って広く建築用に使われてきた。強さ、耐久性、美的効果、有用性、生来の維持費の安さなどがその理由である。もともとは荷重を受ける構造材として用いられたが、建物のラーメン構造の出現によって天然石は薄板にした使い方が注目されるようになった。1960年代に工場生産のコンクリート部材を用いてビル外装を作ることが実施され、工期は短縮しコストは低減された。天然石の豊かな美しさと、PCa の強さ・融通性・経済性が結び付けられたのである。

石打ち込みPCa 板の利点は次のようなものだ。

1)石の支持スパンを小さくできるため薄板ガ使用できる。

2)柱カバー・面台や軒天付きのスパンドレル・見込みの深い窓枠・出隅や入り隅・突出部やセットバック部・パラペットなど複雑な断面形状のとき、PCaに薄い石を打ち込めば経済的である。

3)在来の現場張りに比べると、PCaは何枚もの石を一時に取り付けられるため、施工が早くて経済的である。

4)PCaは柱間スパンに一枚で取り付けられるので、床先端で荷重を受けないですむ。スパンドレル板では1.8×13.1mや2.4×10.7mといった実績があり、層間パネルでは階高×4.0〜9.1mが一般的である。

 

高層ビルでの石打ち込みPCaの歴史は比較的浅い。従って昔の石積み工事であきらかになっているような長期的な性能はまだはっきりとわかっていない。注意すべきことは、必要強度と耐用年数を明確にすることである。また、石の物性とコンクリートへのアンカー方法、安全率、仕上げ方法による石強度への影響などに特に気をつけるとよい。

 

 

検討事項

構造設計・製造・運搬・取付けなどの検討は、石打ち込みPCaの場合も普通のPCaと変わらないが、別に石材とアンカー方法の検討が必要になる。面材の石とコンクリートの物性を比較しないとならないが、その項目は次のようなものだ。

1 引張り、曲げ、圧縮、せん断強度

2 弾性係数(引張り、曲げ、圧縮)

3 熱膨張係数

4 体積変化

石の属性を評価するときに気をつけないとならないのは、天然石の中には方向による差が出るものがあることだ。また、同じ石でもサンプルによりかなりの違いがありえる。薄い断面は厚いものと比べると、鉱物が不完全なことが強度に影響しやすい。さらに、結晶構造が石厚さに及ぶほど大きい場合には、だいたいにおいて強度が弱められる。

石打ち込みの際の配筋は、普通のPCaとおなじように、量やかぶりの設計をおこなえばよい。石裏からのかぶりは最低13mm必要である。かぶりの保持には、プラスチックや、場合によってはコンクリートや石などの腐食しないスぺーサーを用いる。かぶりが19mmよりも小さい場合は、メッキ鉄筋やエポキシ鉄筋を用いる。

いくつかのプロジェクトでPCa板にプレストレスを入れることが採用され、長くてフラットで薄いパネルの反り制御に効果を上げている。概してプレストレス板は反りに対して敏感である。面材のあるPCaパネルでは試作をおこなって、ストランドの位置解析が正しく、反りを押さえられるかどうかを検証する必要がある。

天然石とコンクリートの材料特性の違いにより、コンクリートだけのパネルよりも石打ち込み板は反りに敏感である。しかし、PCaメーカーは反りを最小にする設計方法や製造方法を開発している。多くのメーカーはむくりの付いた型枠で反りを補正している。たとえば長さ12mにつき25mmのむくりで、最初は内向きに反るようにするのである。板の構造設計上も反りを考慮しないとならない。厚さが十分ならばダブル配筋にして、収縮の違いや温度変化によって生じる反りを減らす。ときには剛性をあげるために鉄筋トラスを用いる。また板の裏側にリブをつけることもあるが、型枠が複雑になるためコストがかさむ。打ち込みのフラット板での最小コンクリート厚さは普通13cmから15cmだが、パネルが小さいときや剛性上有利な形状のとき、また石厚が十分なときには10cm厚のパネルが使われることもある。

面材の固定方法は以下のような要素を検討しなくてはならない。

1 養生中のコンクリート収縮

2 反転、輸送、取付けの際に生じる応力

3 熱膨張率の違いや温度勾配(室内側は一定温度でも外気温変化は幅広い)に対する応答、あれば断熱材の位置、つまり断熱材やボンドブレーカーによって石がコンクリートと絶縁されているのか、それともサンドイッチパネルの外殻に石がとりつけられているか

4 動荷重

コンクリートは打設後、余剰な水分を放出しながら収縮を始める。打ち込まれた石はコンクリートの屋外面の乾燥を妨げる。とくに石裏面に防水性のボンドブレーカーがある場合は顕著である。結果生じるコンクリートの偏収縮は、単純梁パネルに外向きの反りや分離を起こす。石打ち込みの平たんな表面は、コンクリートだけのパネルに比べ反りがはるかに目立ちやすい。そのため、石や配筋のおかげである程度押さえられるといっても、反りの大きさは慎重に検討しないとならない。パネルの中点を押さえることは凸反りを小さくするのに効果がある。

接着やアンカーの納まりによりパネルの反りに石が従う場合は、石にひび割れが生じることがある。石の割りが大きくて薄いとき、さらにコンクリートの収縮が大きい場合に起こりやすい。コンクリートの収縮管理のため必要な配慮は、調合設計、水・セメント量の管理、適度な湿度での長期養生、コンクリート露出面(裏面や小口)への養生材使用などである。

すべてのコンクリートパネルは通常、板のおもてうらの温度勾配に応じて反るが、石打ち込み板では温度が一様でも反りが生じる。これは石とコンクリートの熱膨張係数の違いによるものである。ライムストーンは平均5.0×10-6 /℃、花崗岩は8.1×10-6 /℃、大理石13.1×10-6 /℃。コンクリートは普通コンで10.8×10-6 /℃、軽量コン(天然骨材)で9.0×10-6 /℃が用いられる。石が薄くなるに従い反りに抵抗するだけの剛性が無くなるため、熱膨張係数の差がより重要になる。面材の石にコンクリートよりも高い熱膨張係数があれば、温度低下の際のパネルの応力と変形は収縮の際のそれとは反対方向に作用する。温度上昇の際には収縮による応力と変形に加担する。石の熱膨張係数がコンクリートよりも小さい場合、状況は反対になる。したがって、収縮が少なく熱膨張係数は石に近いコンクリートがのぞましい。コンクリートの熱膨張係数は骨材の種類によって変化する。

コンクリートの収縮を小さく収めても、接着剤やアンカーを介した石とコンクリートとの相互作用がある。この作用は石とコンクリートの界面にボンドブレーカーを用いることで最小にすることができる。ボンドブレーカーを使用する場合に必要なのは、面内の相対変形に適応できるフレキシブルなアンカーで石とコンクリートを結合することである。例外的なのはライムストーンの業界で、堅固なアンカーと接着剤を使用している。またバーモントのダンビー大理石の加工業者はフレキシブルなアンカーと接着剤を推奨している。

パネル設計は、実際の使用時の要求性能も含まないとならない。つまりパネルが最終的に取り付けられて、温度の年変化や日変化を受けることを想定するのだ。一般的にはパネルの室内側は温度変化が大変少ないが、屋外側は季節や昼夜の大きな変化に曝される。パネル製造業者と設計者は反りをなくすために次のようなことを検討しないとならない。

1 内外の温度差

2 材料の熱膨張係数

3 材料の断面積比率と弾性係数

4 パネルの鉄筋量、配置

5 プレストレスの使用

6 ファスナー型式と配置

7 石とコンクリートのアンカーの剛性(剛性が高すぎると問題)

8 コンクリートの収縮

石は油や錆でしみになるので、PCa型枠はポリエチレンシートなどの非汚染性材料で被う。厚いライムストーンなどで、石をコンクリートに留めるため機械的なアンカーとともに接着が設計仕様で求められている場合は、石裏面に防湿接着剤を用いてコンクリート中のアルカリ塩で石が汚されることを防ぐ。防湿接着剤の成分は、水溶性アルカリ0.03%以下のポートランドセメント、あるいは防水性の石用接着材、非汚染性のアスファルトや瀝青の防湿剤、湿気硬化型のエポキシ接着剤などである。

 

責任の所在

PCaメーカーの調査によると、石業者が直接、ゼネコンや建物オーナーに石を売るという試みが行われている。以前は石ブローカーや採石業者が出荷を仕切り、製作図を描いて型板を作り、アンカー穴を開け、たいていは製造上のすべての問題を扱った。ゼネコンは普通、石打ち込みPCa工事の経験が少なく、石に関るどんな問題もPCaメーカーの責任にすることを望んだのである。ところが、オーナーやゼネコンから石が支給される場合には、PCaメーカーは石に関する契約上の管理責任はない。

標準的な進め方としては、石の購入者が適当な専門家を雇い、石材の調達や工程あるいは色調の確認といった管理業務の責任を負わせるのがよい。

管理業務は、費用を見積もりできるように設計仕様書に記載する。石工場に何度も足を運ぶことが必要かも知れない。適切な管理と前もっての計画により、製造と出荷はスムースにはこべるだろう。コミュニケーション不足により工程や手配に問題が生じるものだ。

より大きなプロジェクトの実施段階には工場で色合わせを行う。色目や濃さ、仕上げの違い、筋や層や貫入といった欠陥が仕上段階でよく見られるためである。石の色調がよいかどうかは、各々のパネルで見るよりも建物全体の立面で判断するべきである。さらに、オーナーはPCa製造の契約に先立ち、設計厚さの石で物性試験を実施しておくとよい。製造を開始してから石の欠陥が見つかった場合、修理や交換にコストがかかる。

加工の済んだ石は、石工場でパネルごとのマークを付ける。PCaメーカーは石の量とともに、打ち合わせで決まった取付け順番に応じた石の必要順番をゼネコンに届ける。生産効率の問題により、取付け順番から外れて製造するパネルもある。PCaメーカーと石メーカーで梱包を調整して、取り扱い手間や破損を最小にする。予備の石(およそ2〜5%)をPCaメーカーに送り、破損にすぐ対応できるようにする。石が国内産でないときはなおさらである。実際の組み立て作業にできるだけ合わせて、石を供給する。

石とコンクリートのアンカー方法を決定する責任は、プロジェクトにより様々である。アンカー試験では、建築家やエンジニアがときおりアンカー方式を決めるが、実施の責任は石メーカーやPCaメーカーにあるように見える。しかし、共通の情報が入札者全員に知らされるよう、建築家がアンカー間隔を決定することが好ましい。契約書にはアンカー施工について明確に定めないとならない。誰がアンカー穴を開けるか、アンカーの型式・個数・配置、アンカーの製造者などである。ほとんどの場合、石メーカーが石の穴開けを行っている。

 

見本

見本とモックアップは石の仕上と色調の許容範囲を決めるためにとりわけ重要である。

石打ち込みPCaの製造・取付けには、今日しっかりした経験の裏付けがある。それでも新規大型の工事には実大模型により製造の実現性と取付け手順を点検するのがよい。見本パネルの試験は石とアンカーの適合性や反りの出方を確認するために行う。予測される温度変化に対する挙動を試験することも求められるだろう。モックアップを組み立てて、最も厳しい風雨条件での壁面・窓・目地の性能を試験する。石とアンカーの承認基準はプロジェクトの仕様により決定される。

 

施工図

PCaメーカーと石メーカーの間で綿密な調整が必要なので、施工図の準備と提出は普通のPCaでのやりかたと異なることがある。PCaメーカーがPCa板のディテールを決める際、石ピースごとの納まり・寸法・アンカー孔など石メーカーの加工がPCa側と連携するように考えてはどうか。

PCaと石の施工図を合体して同時に提出できれば、チェックや承認が簡単かつスピーディになるだろう。石工事が分離発注や事前契約されることはよくある。そのことが通常の施工図の進め方に影響することはあっても、そのために製品精度の責任がなくなったり増えたりするということはない。言い換えれば、PCaメーカーはPCa板のディテールと寸法に責任があり、石業者には石のディテールと寸法に責任があるということだ。

工事工程を遅らさないために、石メーカーには十分な時間的余裕が必要である。従って施工図が迅速に承認されることが重要になる。さらに、望ましいのは未決定段階に施工図が提出されることを設計者が了解することである。そうすれば製作になるべく早くとりかかることができるし、タイミングよく決定事項が伝達できて製作が中断されない。

 

石の属性

石は自然の産物であり、コンクリートのような工業製品に当てはまる安定した性質をいつでも示すわけではない。天然石の強度はいくつかの要素に左右される。つまり、寸法、石目、劈開、密度、結晶構造、膠着物質などである。石の属性は採掘位置によって異なる。ライムストーンのような堆積岩や大理石のような変成岩は、試験方向がもとの岩床の面に平行か直交しているかによって異なった強度を示す。

加えて、表面仕上、凍結融解、大きな温度変化などが強度に関連し、その結果、アンカー方式にまで影響が及ぶ。

予定している石材の耐久性については原石業者から、あるいは実際の使用例を見ることである程度、情報が得られる。それからわかることは、反りの傾向、風雨に対する反応、化学汚染への抵抗性、接触物質との化学反応、風化による強度低下などである。

石の最終的な設計に先立ち、設計者は試験に参画すべきである。試験は実際と同じ仕上、同じ厚さでおこなう。試験体は十分な数量を選び出し、結果を統計的に評価して設計用の値を得る。この数値はアンカーの耐力とともに、パネルの製造・運搬・取付け時および使用時に十分な強さがあるかどうかを判断するのに用いられる。

花崗岩のバーナー仕上げに用いられる処理は、有効厚さを3mmほど減らし、機械的強度をかなり下げる。叩き仕上などの系統でも有効厚さが減る。3cm厚の石材が3mm薄くなれば、理論的な曲げ強度は20%低下し、風荷重による曲げ変形は約37%増加する。3cm厚のバーナー仕上げ花崗岩(新品)で行った試験によれば、熱処理の影響で25%から30%の曲げ強度の低下が見られた。強度低下はおもに造岩鉱物の物理的性質や石の密度、微細なクラックによるものである。

バーナー処理した花崗岩表面には、とくに石英と長石の微細クラックが生じる。このクラックにより、傷んだ表面からはおよそ6mmの深さまでまで水がしみるため、曲げ強度がさらに低下したり凍結繰り返しに弱くなったりする。

風化は化学的溶解と機械的分解の両方であり、石材が薄く加工されるほどその影響を受けやすくなる。簡単にいって、薄くしすぎれば岩石の粒どうしのかみ合いを弱めてしまうということだろう。

どんな天然石でも劣化試験(例:66℃〜-23℃、乾湿繰り返し)により強度が低下する。建築用石材の破壊係数もまた凍結融解の影響を受けることがある。破壊係数試験には使用予定の石厚および仕上方法の石材を用い、新規材とともにできたら50サイクルの凍結融解試験をかけた材料を用意して強度低下を調べる。【凍結融解試験の案:1)乾燥状態での77℃〜-23℃繰り返し 2)水中で凍らせて-23℃にし室温で解かす】 また吸水率の高い石では、濡れたときに曲げ、せん断、引張り強度が大きく低下するため、飽水状態での試験が必要である。石打ち込みアンカー部も劣化によりせん断・引張耐力の低下が考えられるので、促進試験をおこなわないとならない。

 

表1  石材の透水係数 cm3/h/cm

石種

圧力(kg/cm2

0.2

8

15

花崗岩

0.8〜1.0

1.4

3.5

ライムストーン

4.5〜28.2

52.9〜565

11.3〜1370

大理石

0.8〜4.4

16.4〜212

11.3〜353

砂岩

52.9〜2190

645

2780

スレート

0.1

1.0〜1.4

1.4

多くの石種では熱膨張は可逆性がある。しかしある種の、とくに均質な目の細かい、比較的純粋な大理石では、回数の多い熱サイクルを受けると不可逆的な膨張が生じ、その量は本来の熱伸び量の20%に及ぶ。この余分な伸びは方解石結晶どうしの滑りによるものである。このことを考えずに、石のサイズやアンカーや石目地の設計を行うと、薄い大理石のゆがみや反りの原因になる。ある程度厚い大理石ならば、熱影響の少ない部分に全体が順応するために、影響はでにくい。

石材の湿度による体積変化はたいていはかなり少なく、反りの危険性を除けば設計上の問題とならない。石の透湿性は概して問題ではない。しかし石を薄くすると、普通考えている以上に水が速く、多量にしみこむため、外部表面に濡れ色がひんぱんにおきる。濡れ色は、水が石表面に移動するよりも蒸発のほうが遅い場合に生じる。

 

石のサイズ

PCa打ち込みに使う石材は、在来工法で石の強度から厚さが決まったものに比べて通常薄い。大理石の面材では、2.2cm、2.5cm、3cm、4cm、5cm厚が使われている。2.2cm以下では、アンカーが外側に映ることがあるし強度の点でも問題がある。石の大きさは長さ0.9〜1.5m、幅0.6〜1.5m、最大面積1.9m2 が基準である。トラバーチンは両面とも穴埋めを行なった、2cm、2.5cm、3cm、4cm厚のものが使われている。2cmと2.5cmは割れることが多くてお薦めできない。ピースの大きさは長さ0.6〜1.5m、幅0.3〜1.2m、最大面積1.5m2 などである。

花崗岩は、2cm、2.2cm、2.5cm、3cm、4.1cm、5cm、6.4cm厚が使われている。試験による強度の裏付けがなければ、3cmより厚いものを使うべきである。大きさは長さ0.9〜2.1m、幅0.3〜1.5m、最大面積2.8m2 である。

ライムストーンでは3cm、3.8cm、4.4cm、5cmが基本厚さだが、13cmという例もある。4.4cm以下の石厚では、厚ければ気が付かなかった透水性や強度の問題が出る恐れがある。使用サイズは長さ1.2〜1.5m、幅0.6〜1.2m、最大面積1.4m2 である。

製品の縦横寸法の許容誤差は、+0mm、-3mmとするが、プラス誤差はPCa板では問題になるためである。許容値が重要なのは、石が何枚も打ち込まれるパネルで、石目地を上下に通そうとする場合である。ひし形誤差は、対角線長の差を±1.6mm以内とする。表面の平滑度は仕上の方法による。たとえば石材工業会の許容値は、1.2mの直線定規を当てて、磨きで1.2mm、バーナーで4.8mmとなる。厚さのばらつきは、パネル裏面はコンクリートなので、さほど重要ではない。ただしコーナーの付きあわせジョイントの場合は別で、決められた厚さの±1.6mmでエッジを仕上げないとならない。しかしながら、厚さの誤差があまり大きいと、石材端部がコンクリートに押さえられることになり、石が自由に動けなくなる。許容値に関して起きたことのある意匠上のトラブルは、露出面のフラットネス不良と、製品の直角度不良(ひし形)であった。

 

石アンカー

PCa工業会では石裏面とコンクリートの接着を行わないことを奨励している。石の反りやひび割れ、しみを最小にするためである。機械式アンカーを用いて石材を固定する。

石とコンクリートの接着を避けそれぞれが動くことができるようにするため、次のような方法が行なわれている。

(1)十分にせん断変形できる厚さをもった液状ボンドブレーカーをコンクリート打設前に石裏面に塗布する

(2)一成分の透明ポリエチレンコーティング、あるいは他の薄い液状ボンドブレーカー

(3)0.15から0.25mmのポリエチレンシート

(4)3〜6mmの独立気泡の発泡ポリエチレンパッド

 

石の裏面あるいは石目地間で、凹凸があっても変形能があるように圧縮性のある液状ボンドブレーカーを使用するのが好ましい。

打ち込み石材は通常、設計仕様と設計図にしたがって石裏にアンカー孔を前もって加工して供給される。震動ドリルによる孔開けは温度差による内部応力を花崗岩に生じさせる。例えば、劈開のある長石などの大きな結晶があった場合、この内部応力によりドリル孔周辺には劈開面に沿ってかなりはなれたところまで微細なクラックが走ることがある。そのためダイアモンドコアで孔開けするのがよい。

成形したアンカー金物は、直径3または4、5、6mmのステンレス304材や場合によっては302材で作り、石メーカーや契約内容によってときにはPCaメーカーが準備する。アンカー数量や位置は、石とコンクリートにアンカーを埋め込んだ試験体でパネルに加わる風荷重とせん断力を試験して決定する。強度の疑わしいもの、また弱い部分のある石ではアンカーの寸法と間隔決定には特別の分析が必要だろう。

 

石材一枚当たり最小で2個、通常は4個のアンカーを使用する。アンカーの個数は平米あたり1から10の幅があり、3〜5個が一般的である。アンカー位置は端部から150〜230mmとし、アンカーの間隔は760mmを超えないこと。ばねクリップ(ヘアピン)アンカーのせん断耐力は、アンカー足間に直交方向のほうが平行方向よりも大きく、また石材に左右される。大理石に用いる基準的な内向きのクリップアンカーをFIG.2に、花崗岩用の基準的なアンカーをFIG.3に示す。足が外向きのアンカーは、石の強度にもよるが、内向きのものよりも引張耐力が50%大きい。

表2 クリップアンカーのせん断耐力

試験体(花崗岩)

平行方向 kgf

直交方向 kgf

1

1090〜1200

1450〜1590

2

815

1135

3

680

680

4

1135

1540

5

1270

1815

6

1540

1905

7

455

725

アンカー孔の深さは石厚のおよそ半分(最小深さ19mm)で、たいてい石の面に30°から45°の角度に穿孔される。石とコンクリートの動きの違いを逃がすために、アンカー径より50%ぐらい大きい孔が使われてきたが、大きすぎる孔は保持力が低下するため多くの場合、2〜3mm大きい孔が一般的である。

細く滑らかなステンレス製の合釘は石厚の2/3、最大で5cmの深さに埋め込まれ、取付け角度は石面に45°から70°である。必要な付着を得るためのコンクリートへの最小埋め込み寸法は図-5に示す。合釘のサイズは、多くの石では5〜16mm、ただし軟質のライムストーンや砂岩では6〜16mmとし、石の厚さや強度によって異なる。合釘の孔は径よりも2〜3mm大きくする。

ライムストーンは最も膨張係数が低いため昔からコンクリートに接着固定してきた。ライムストーンはまた古くから8〜13cm厚で使用されたが、最近では3cm厚である。5cmよりも薄くする場合は、機械的アンカーとともにボンドブレーカーを用いるのが手堅いやり方である。合釘とクリップアンカーがライムストーン用に使われてきた。ライムストーンの合釘の標準的な納まりをFIG.4とFIG.5に示す。FIG.4の合釘は取付け角度を上下交互にして、石をコンクリートに留め付ける。

 

 

PCa打ち込み用の石アンカーには柔軟性があることが重要で、温度変化やコンクリート収縮によって起きる相対変形を逃がせるようにアンカー径を最小にすることが例としてあげられる。相対変形によりアンカー周辺の応力が過大になり長期的な欠陥を引き起こすことがある。

最近の傾向として、クリップアンカーや合い釘の孔をエポキシで埋め、孔に水が入って石表面に濡れ色が出ないようにする設計者もいる。エポキシはアンカーのせん断耐力や剛性を高める。長さ18mmの圧縮性のゴムやネオプレンのハトメやスリーブを石裏のアンカーに取り付けることで、アンカー剛性はやや弱くなる。石とエポキシの熱伸びの違いがクラックを引き起こす心配もある。だが、アンカー孔の径を小さくとどめエポキシの量を減らせば問題は解消する。より良い方法はアンカー孔を、石を汚さないことが確かな速硬性弾性シリコーンか低モジュラスのウレタンシールで充填することである。石材の動きに対するエポキシやシール材の総合的な効果は事前に確認しないとならない。エポキシの長期有用性は疑問であるためせん断力のアップ分は長期耐力の計算に入れないこと。

アンカー孔にエポキシを使う場合、メーカーの推奨する混練や養生の温度制限を守る。

アンカー方法の最終設計と石材寸法は、実際の予定の石を用いた試験に基づいて決定する。アンカーの試験方法は標準化されていない。試験体は30cm角程度のなるべく実際の状況に近い断面を使用する。石とコンクリート間の接着をなくすため試験体製作の際にボンドブレーカーを使用する。試験体一個につきアンカーを一カ所取付け、引張りとせん断それぞれに最低5ピースの試験を行う。プロジェクトの規模によっては、製造期間中の節目ごとにアンカー試験を行うとよい。

 

普通は風向きに平行な、または風下の外壁面に生じる負圧で設計が決まる。有限要素解析は板構造の応力を評価する際、役に立つ技術である。モデル化のために、パネルの材料のばね定数を決定する試験が必要になる。石材は曲げ試験を行い、断面の性能や弾性係数を決定する。アンカーのせん断、引張試験が必要である。圧縮性のボンドブレーカーのばね定数を決める。断熱材があってボンドブレーカーを使用しない場合は圧縮ばね定数とせん断ばね定数を決める。アンカーを埋め込んだ10cm径のコンクリート栓(FIG.8)は、空気層を設けた場合、短い円形梁とみなせる。この円形梁と周りのコンクリートの属性は計算により求めモデル化に使う。

天然石は物性のばらつきや自然劣化が考えられるので、鉄やコンクリートといった人工の材料よりも安全率を大きくとる。石材工業会あるいはいろいろな原石業者により、石の安全率がいろいろ提案されている。試験結果の平均値をベースにした最小の設計用安全率は、花崗岩が3、花崗岩のアンカー部が4、ライムストーンが8、大理石は5である。試験の値の幅が平均値と±20%以上異なる場合は、最小値に安全率を用いる。また、試験結果のばらつき指数に基づいた安全率(表-3)も用いることができる。

表3 各種石材の安全率

分類

石種

ばらつき指数

安全率

火成岩

-

<10

4.5

花崗岩

10〜20

6.0

蛇紋岩

>20

8.0

変成岩

-

<10

6.0

大理石

10〜20

7.5

スレート

>20

10.0

堆積岩

ライムストーン

<10

7.5

砂岩

10〜20

9.0

トラバーチン

>20

12.0

 

パネルの水密性能

石とコンクリート間のボンドブレーカーはコンクリートの外部面の防湿層として働き、また排水装置がなければ水分を石の内部や界面にとどめがちである。また、時間が経つと石とコンクリートの間ボンドブレーカーの所に隙間が生じ、毛細管現象や重力効果による浸入水のたまり場となる。とくに開口部や笠木の設計によりパネル天端に水が溜まる場合はなおさらである。この問題に対する解決法の一つはFIG.6の改良型止水目地(二段階目地)である。まずは、パネルの両サイドと天端に連続した25mm幅の気密ウレタンシールを石とコンクリートに打つことである。パネル打設後に天端と両サイドの石コンクリート界面にシールを打つという設計者もある。この際のシールは、パネル取付け後の目地シールと打ち継ぎ可能なものであるよう気をつける。パネル下端でボンドブレーカーをふさがないようにして、石裏で生じた水分が自由に排出できるようにする。長いパネルでは、サッシ下部だけではなくフロアごとの水平目地にも傾斜溝を付けることがある。FIG.7は断熱材複合PCa板のしくみで、改良型止水目地の考え方を拡大している。断熱材自体と、FIG.2やFIG.5に示したのと同じアンカーにより石は自由に動くことができる。空気層は設けず、パネル下面は開放して水分を逃がせるようにしている。13mmないし19mmの空気層を持つ断熱材複合PCa板をFIG.8に示す。

 

ワイヤーアンカーにかかる曲げを小さくするためアンカーは10cm径のコンクリート栓に埋め込み、断熱材を貫通させる。コンクリート栓はプラスチック製の波型成型ライナーか卵容器型のピースを用いて石裏と絶縁し空気を流通させるか、さもなければポリエチレンの発泡パッドを用いる。ほとんどの場合わかっているのは、コンクリート栓が石から離れているのでヒートブリッジにはならず、いまのところ外壁面の重大な結露や変色は聞かないということである。

空気層は目地を介して外気とつながっているので等圧になっている。等圧化は窓部の水平目地を開放することで完成するが、この場合適切な水きりのディテールが必要である。あるいは、下見板型の開放目地でも等圧化できる。等圧のおかげで水が外装材内に浸入して問題を起こすということがない。

 

石目地

パネル製造の際、石のおのおのピースは許容値内に敷き並べする。石目地は基本的に最小6mmだが、パネル目地がパネルサイズによって13、19、25mmなどと決められるのと同じように石目地の幅もいろいろに設定される。実際のパネル目地幅は躯体の精度に大きく左右されるので、石目地とパネル目地の幅を同じにするというのは現実的でない。

とくに磨き仕上の場合、5mm幅以下のめくら目地が指定されることがよくある。目地は動きや誤差などを吸収するための大きさが必要なので、これは不可能なことだ。また、誤差やゆがみのせいで、隣り合ったパネルは目地部では完全に平らではなく影の線が現れる。目地を隠そうとするよりも、幅をふかして美しいパターンを見付け、目地を強調したほうがよい。

石ピースの敷き並べの際、非汚染性の弾性スペーサーを使用する。たとえばゴム、ネオプレン、軟質プラッスチックくさび、あるいはシールバッカーのような中性で弾力のある詰め物など。これらは石にしみを出さず、後から打つシールにも影響がない。

スペーサーのショアーA 硬度は20以下がよい。寸法と形状は、シール受けになりさらにのろ止めとなるものでないとならない。無酸型のマスキングテープやダクトテープものろ止めに用いて、漏れたのろが石の動きを妨げるのを防ぐ。パネルの脱型後、バッカー兼用でないスぺーサーは取り外す。

石目地、パネル目地のシールは、通常ウレタン、ポリサル、シリコーンなど弾性があって、石を汚染しない材料を用いる。シリコーンのなかには、方解石含有量の多い材料(大理石)に用いないようメーカーが薦めるものがある。そういう材料は淡色の石を汚染する可能性がある。プロジェクトによっては、より経済的にかつ見た目よく石目地シールをするためにパネル目地と同時に施工するが、いっぽうでは工場での先施工が考えられる。パネルを冬季に長期保管するときに凍結融解を受ける地域では石目地の工場施工をするとよい。

 

製作・保管・輸送

石打ち込みパネル脱型後の作業のうち、仮置き・保管・輸送時にはコンクリート小口面や石を打ち込んだ裏面を下にする。どんな場合も、石を打ち込んだおもての面や小口、コーナー部を下にして置いてはいけない。日照による反りを最小にするため、パネルは小口を下に南北に沿わせて置くことがときおり行なわれる。しみを避けるため木製のスぺーサーにはプラスチックフィルムや非汚染性の材料をかぶせ、石と直に触れないようにする。また、油やアスファルト系の混合物が石と触れることを避ける。契約に含まれている場合、出荷前に硬質繊維あるいはステンレスやブロンズのブラシと粉石鹸や洗剤を使ってパネルの清掃をおこない、水洗いまたは必要ならば高圧洗浄をする。石を傷めたりしみを付けるような酸や他の強い薬品は使わない。石についた油、さび、よごれを清掃する際、原石業者がもっている情報をPCaメーカーで役立てるべきである。

輸送の際は特別のゴムパッド付きの架台にパネルを置き、小口の欠けや水返しの損傷がないようにする。スパンドレル板上下の長い水返しは、前もって処置をしておかないと取扱い時によく問題が生じる。

運送中あるいは取り扱いや取付けの際に石に小さな損傷が生じたら、現場での補修作業をうまくおこなう。こうした補修は通常PCaメーカーによって行なわれ、方法は石メーカーの支援による。エポキシ、石粉、必要ならば着色剤を用い、小さなかけや剥落を補修する。補修あとは石表面の肌あいと同じに仕上げる。石をピースごと交換する必要があっても現在は良い方法が考えられていて、パネル裏面からの作業ができる場合、あるいは取付け後で裏面に入れない場合でも大丈夫である。

 

要約

石打ち込みPCa板には過去25年にわたる素晴らしい成果がある。今日の建物外装材として石打ち込みPCa板は経済的な工法である。

PCaメーカーと石メーカーの目的はひとつ、設計にもとづき最良の仕事を発注者に届けることである。そのためには時間とともに、工程と製品の管理を行う専門家のコストを組み込んでおくことだ。

   

最初に戻る

ホームページに戻る