矛盾だらけの外来動物駆除
2005年6月に外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)が施行されました。これにより、アライグマやブラックバスなどいくつかの外来生物が、日本の生態系に悪影響を与える恐れがある、農業被害等を起こすといった理由で「特定外来生物」に指定され、輸入禁止になると同時に、日本の在来生態系からの完全排除、つまり動物については皆殺しを目指すこととされました。
しかし実際には外来動物駆除は、矛盾だらけです。
■日本の生態系は、既に外来種だらけ
外来種についての考え方は、時代によって様々です。近年は、地域固有の生態系を乱す要因として、外来種が問題視されるようになっていますが、かつては、外来種をどんどん取り入れるのが良いとして、積極的に導入された時代もありました。その結果、現在、東京をはじめ大都市の
雑草の9割は外来種
ですし、日本で栽培されている殆どの穀類や野菜類も外来種です。日本のものだと思われているような生物、スズメやモンシロチョウ、イヌ、ネコ、ヨモギ、キク、ウメといったものも、全て外来種です。既に日本は外来種でいっぱいで、日本から外来種が全ていなくなってしまったら、日本の生態系も私たちの生活も成り立たなくなるほどです。「日本固有の生態系を守るために、外来種を駆除しなければならない」と言われると、一見正しいように聞こえますが、実際には、一体何をもって「日本固有の生態系」と言うのか非常に曖昧です。
↓まるで日本のものだと思われているような動植物も外来種。
ウメ(平安時代に中国から)
ヨモギ(縄文時代に大陸から)
スズメ(稲作とともに大陸から)
モンシロチョウ(畑作とともに大陸から)
■時が経てば、外来種も在来生態系の一員に
日本の生態系に組み込まれた外来種は、そのうち新しい生態系の中で、何らかの役割を果たすようになります。
明治期に日本に導入された北米原産の樹木ハリエンジュ(ニセアカシア)は、外来生物法で要注意外来生物に指定されていますが、生態系に役立っている側面があります。例えば在来希少種の昆虫クロサワヘリグロハナカミキリは、近年食性を転換してハリエンジュを食べるようになったことから個体数が回復し、今では比較的普通に見られるようになっています。またハリエンジュはすぐれた蜜源植物で、国産ハチミツの約半分を生産しています。自然界で、ハリエンジュはミツバチが生きるために必要であり、もしハリエンジュが日本から消えたら、ミツバチも生き残ることができず、ひいては在来生態系に大きく影響を及ぼします。
また兵庫県立コウノトリの郷公園で人工繁殖させ、放鳥したコウノトリ(実は中国からの外来種)は、エサが減る冬場に、外来種のアメリカザリガニ(要注意外来生物に指定)やウシガエル(特定外来生物に指定)のオタマジャクシを食べていることが報告されています。外来種が、野生復帰の過程にあるコウノトリを支えているのです。
ほかにも外来魚のブルーギルの卵は、在来魚のウグイにエサとして利用されているなど、日本の生態系に導入されて数十年も経つと、外来種も日本の生態系に組み込まれ、それぞれ役割を果すようになります。
←ハリエンジュ。
他の樹木が生育できない痩せた土地でもよく育ち、古くから日本の治山事業にも大きく貢献してきた。
↑アメリカザリガニやウシガエルのオタマジャクシは、コウノトリの貴重なエサになっている。
■既に生態系に組み込まれた外来種駆除は、生態系を乱す
今、各地のため池などで、ブラックバスの駆除が行われています。ブラックバスを駆除すると、しばしば、アメリカザリガニが増え、在来種の水草やトンボが減ってしまうということが起こります。既に外来種が生態系に組み込まれて落ち着いている場合には、その外来種を駆除することで、安定していた生態系をかえって乱すことになってしまいます。
外来動物駆除は、全く現実を無視したものであり、人道的にも問題です。人間が原因を作った外来動物問題は、人道的見地、費用対効果面からも、以下のような対応に変えるべきです。
1.新たな外来動物問題を生み出さないため、外来動物の輸入は全種禁止する方向で検討する。
2.既に日本で野生化してしまった外来動物の根絶は不可能なので、駆除は中止し、日本の生態系に組み込まれ落ち着くのを待つ。
3.農業被害等がある場合は、イノシシやシカなどの在来動物と同様、まずは柵の設置等、捕殺以外の方法で対応する。
4.外来動物は原生的な自然環境では繁殖しにくいため、乱開発をやめ、既に開発された場所は、なるべく自然に近い状態に復元していく。
かつては当たり前のことだと考えられていた人種差別が、今では国際社会から非難されるように、外来動物駆除に関しても、近い将来、「平成の日本人は、何て残虐なことをしたんだ」と省みられる時代が必ず来ると確信します。無用の殺生以外の何ものでもない外来動物駆除に、一刻も早く終止符を打つべく、早急に外来生物法を改正すべきです。