ひなたぼっこ

(04/03/17 up)







 我輩はゴキゲンである。何がゴキゲンって、わけもなく気分がいいからゴキ ゲンなのである。 
 今日は天気がいい。絶好の居眠り日和である。こんな日は、何処で寝ればい いか迷うほどだ。秋の日差しがそこらじゅうにふんわり寝床をばらまいている。 もう、ぽかぽかしたベッドを集めて回りたいよ。
 とにかく天下泰平である。というか、台風が来たって、我輩は何処吹く風だ ものね。風雨をしのぐ場所には事欠かないし。何があったって、用事があった ら出かけなきゃならない人間どもは可哀想なものさ。
 さてさて、居眠りする前に、我輩、食事をしたい。といっても、食べるもの には不自由しない。あちこちに穴場があるから、こちとら逆に食べ過ぎに注意 するのに大変なくらい。
 じゃ、どんな食べ物かって。
 それは、惰眠を貪るためのネタさ。
 もう、我輩は噂の種ってのが大好物。で、ネタを仕入れに今日は、近所の奥 さんの台所に行く。
 その奥さんは、ネタの宝庫みたいな人さ。ネタが着膨れして歩いているよう なもの。
 今日だって、自転車に乗って買い物めぐりして、さて、袋を幾つも抱えて台 所に入ろうとした。
 けど、あの入り口を荷物を抱えたまま入ろうなんて無理。あの奥さんじゃ、 裸でだって難しいと我輩は思う。
 奥さん曰く、昔はすすーと通れたって、いつも、入り口で愚痴っている。
 そりゃ、昔のことを言えば切りがないさね。我輩だって、昔は厚顔の、じゃ ない、紅顔の美ネコだったんだから。今は、渋いネコねって評判で、我輩とし ては、今の我輩の貫禄ある風体に満更じゃないんだけどね。
 で、その奥さん、案の定、袋をみんな、ドバーとやっちゃって、店開きさ。 色とりどりの品物が、まあ、綺麗と言えば綺麗。よくもあれだけ買い込むもの だと感心するね。
 あーあ、やっぱり、卵のパックもあるよ。割れちゃってるね。勿体無いな。 どうするんだろ…、どこかに捨てるんだったら、我輩が協力してやってもいい かな…、デザートにちょうどいいし…、そう思って見ていたら、奥さん、パッ クの中の割れた卵を洗面器みたいなものに、ドバーと空けちゃった。
 そうか、パックと生卵を分けてるんだな。ゴミは、やっぱり分別だよね。生 ゴミは最近、不況で悩んでいるカラスにあげないとね。そうそう、殻はまた、 別の袋に入れて、ね。
 そしたら、奥さん、バケツの卵にいろんなものを加えて、出汁巻き卵なんぞ を作っちゃったよ。
 我輩は見てたぞ、床に零れた卵の白身さえ、手ですくっていた。
 奥さん、慌てず騒がずだったのが感動的だった。我輩だったら、辺りをキョ ロキョロ見回して、誰か見てなかったかと気にするけど、奥さん、その素振り は全くなし。堂々たるもんだ。
 余程、慣れてるんだろうね。忙しいから、もう一度買いに行くなんて、余計 な仕事はしないって、断固、決めてるんだろうな。
 それにしても、あんなにまとめて作って、どうするんだろう。まさか…。
 ああ、そのまさかが当ってしまった。



 
  
昼寝の猫   by kei



 そう、奥さん、作りすぎたからって、近所に配って歩いてた。お裾分けだっ て。わしゃ、しーらない。
 そういえば、奥さん、忙しくなると、トイレへ行っても、手を洗ったりしな いからね。我輩など、手足が汚れてると思ったら、気の済むまでなめなめする。 ネコは人間には想像もつかないほど、清潔好きだからね。その点、奥さんは、 なーんにも気にしない。どうやら、かえっていい出汁が出てるって思っている ようだよ。
 おにぎりだって、ああ、あの手で平気で握っちゃうからな。
 凄い。感動する。あれでこそ主婦の鑑だ。無駄なことはしない。無駄が仮に 出たって、とにかく辻褄を合わせちゃう。終わりよければ全て良し。
 そうだよね。そうでなくっちゃ。あれなら、奥さんの来世はネコ族の仲間入 り決定だな。なんたって、我輩のおめがねに叶っちゃったんだからね。
 ま、今日のはご馳走というほどのものじゃないけど、仕入れたネタは早速、 我輩の仲間に広めて回ったし、もう、喋るのも飽きた。
 あとは、もう、今日、海辺でみつけた最高のベッドで寝るだけだ。コンクリ ート製の寝床。固いんじゃないかって。とんでもない! たっぷり日差しを吸 い込んで、まるで巨大な羊羹さ。
 ああ、我が世の春だ。秋の日が全身を包んでくれる。屋根の上と違って、転 寝した挙げ句、転げ落ちるって心配もないし、我輩は寝る。夢を見る。夢の中 では、ネコも人間様もない。みーんな同じ宇宙に浮かんでいる。幸せは、どこ にもあるんだって、心底、感じられる。
 ということで、お休み!



03/11/13記



[ 本作品は、03/11/13 に制作し、同日 up していたものですが、事情があり、削除していたものです。削除の理由などについては、昨年末の日記などに詳細を書いてあるので、繰り返しません。画像を添付しない形で再度、ここに掲載します。改めて、この作品も愛してくださいね。]