もう一つの木馬館
明治四十年元旦の都新聞に浅草の娯楽施設についての記事がある。十 二階、江川の玉乗り、珍世界、電気館などが紹介されている中に木馬館もある。木馬
館の前身の昆虫館が開館したのがこの年四月だから、この木馬館は明らかに現在の木馬館ではない。しかしその前年の正月案内にも木馬という記述がある。
明治四十一年二月十八日の東京朝日新聞に前日未明の浅草公園の大火 の記事が出ている。火元は常盤座で、その「前面は日本パノラマ館の大建物あり木馬館あり珍世界あり」と記されている。この記事によると木馬館の場所は現在のROX
辺りで、風向きの関係で延焼は免れている。
大正四年七月十二日の都新聞には現在のチケット屋が浅草各所にでき たという記事がある。その中に「門跡方面は木馬館前」とある。門跡は本願寺のこと
なので最前の場所にまだ木馬館があったと推測できる。また「写真にみる浅草芸能
伝」掲載の大正五年の地図にも同所に木馬館が記されている。ちなみに現木馬館は昆虫
館となっている。
いったいこの木馬館はいつまであったのだろう。関東大震災の前にはなくなったようだ。現木馬館に回転木馬が設置されたのを受けて、その役目を終えたのかも知れない。