場面による分類



『寺院の場』 
寺院にも声明を代表とする立派な音楽がありますね。この仏教音楽を歌舞伎風にアレンジして寺院の雰囲気を表現しております。寺院内で使われているキン、木魚、鉦、れい、寺鐘等を楽器として応用しています。合方としては木魚入り合方、キン入り合方など、また禅寺の仏教音楽を応用した禅の勤め合方などが代表的な合方である。南禅寺山門の場で石川五右衛門の名ゼリフ「絶景かな絶景かな」の所はこの禅勤合方です。長唄「娘道成寺」の合方(梅とさんさんの前)の替手は寺音楽合方という名称で、鳴物は音楽という寺院を表現するものを入れて演奏致します。
 寺院の場面以外にも、寺院イコ−ル淋しいところという意味合いから、山中や峠、また暗い淋しいところなどでも木魚入り合方、禅勤合方などが使われます。「四谷怪談隠亡堀の場」や「忠臣蔵山崎街道の場」などがそうです。
 寺院の場の合方といってもお寺の大小によって合方も変わります。小さい寺や荒寺などは木魚入り合方や禅勤合方で済みますが、大寺院や大伽藍になりますともう少し品格のある曲でなければなりません。雪姫の登場する「金閣寺」という狂言では、大寺院ですから琴唄「心づくし」で幕が明き、合方も花見車合方のような二上がりの華やかで荘厳な感じの曲が使われます。 鳴物は音楽等を使います。唄入りでは「花降りて」が大寺院にはぴったりです。長唄「天人羽衣」より(花降りて妙なりや霊香四方に薫ず面白の今の音楽、面白の楽の音)。これを高僧などの出入りに使います。「時今桔梗旗揚」馬盥の場で信長の出入りに、鳴物は楽、音楽、キンを打ち込んで品格のある曲として使われます。このように荒寺と大伽藍では合方も変わります。
 他に独吟、両吟用に地蔵経という唄がありますがこれは、地蔵経に三味線をつけたものです。(奇妙頂来地蔵経なんまいだなんまいだ悪趣に出現したまいて仏の済度に導かんなんまいだなんまいだ)「四谷怪談」「三人吉三吉祥院の場」などの悲哀な場面に使われております。また空也念仏(空也上人の念仏に三味線をつけたもの)(思えば浮世程もなく栄華は皆これ春の夢祈りの心止めて)は身分の低い者に使われる唄である。それからちょっとおかしみががったものでは「安東合方」、「娘道成寺」の後ジテで、坊主の総踊り(春は花見のところ)なども明るい感じの場面に使われます。 
 
 以上ここでの場面分類は、時代物では宏壮な大伽藍の寺院。世話物では寺町や荒寺、山中、峠、淋しいところまでが範囲になります。

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