場面による分類
ー合戦の場及び立ち回りー 今回は時代狂言の立ち回りの場面です。熊谷陣屋、孤城落月、忠臣蔵などの合戦場面が有名ですね。立ち回りにも色々な種類がありまして、その中でも最も動きが激しく大勢の立ち回りが合戦で、歴史にも残る何々の合戦と言うのがそれです。多勢、一人対多数、一対一の立ち回りとそれぞれ合方が変わります。合戦を表現する最も代表的なもは「遠寄せ」です。ドロン、ジャランと大太鼓と銅鑼縁で、遠くから陣太鼓、法螺貝、合戦のざわめきがきこえてくるという設定です。孤城落月の合戦の場面で(つなぎ幕も含めてですが)かなり長く弾く合方があります。乱戦合方と呼んでいますが、テンポも速く、間のない合方なので腕の疲れる合方ですね。
一対一の立ち回りでは石段合方。これは「曽我のだんまり」という狂言で石段を使っての立ち回りに使ったことから付いた名称で大小鼓が入ります。それから早間の立ち回りでは忠弥合方。「丸橋忠弥」で使われたことからその名が付き、長唄「楠公」にも使われておりますね。
実際の戦いではなく武芸の試合では修羅囃子という大小鼓が入った鳴り物に合方入りのものが使われます。「鏡山試合の場」「毛谷村」など。合戦の場の幕切れ用合方としては初月合方。これは汽車が走り去るときの音の感じを表現したもので緊迫した局面の感じが良くでております。だんだんノッテいく合方。大時代の立ち回りになりますと、テンポの速さではなく型を見せるものになり、一人対多勢のものがほとんど。大太鼓入りの合方で、長唄「山姥の合方」が代表的なものです。
また歌舞伎の立ち回りで最も代表的なものは「ドンタッポ合方」。これは捕り物の合方でドンが大太鼓、タッポが鼓の音を表し通称「ドンタッポ」と呼んでいる。「義経千本桜小金吾」の立ち回り、「弁天小僧」大屋根の立ち回りなど。中庸な速さでリズムに合わせて、様々な立ち回りの型を見せるものです。
これをさらに形式化したものが「だんまり」の場の立ち回りです。「露は尾花」という音頭の曲を唄入りで演奏します。「伊勢音頭大詰殺しの場」では「待宵」とか「桜花」、「流れの泉」というような音頭を唄入りで使います。これらは歌舞伎の様式美の最たるものであり、立ち回りは速いものであるという観念を逆手にとり、優雅に踊るような型を見せる歌舞伎独特のものです。
海や船を表す「千鳥合方」は浜辺などでの立ち回りに使います。他には三枚橋合方。神社の場では「四社にあれます」という曲を合方或いは唄入りで。川端などでは佃合方を早間に弾いて。というように場面によっても合方を替えます。概して歌舞伎の立ち回りは型を見せるものであり、かっての新国劇のような写実的なものではありませんから曲も幅が広く、曲数も多いですね。
立ち回りの合方ではありませんが、武将の出入りに「一調入り合方」があります。大小鼓のうち小鼓だけが使われるところから一調入りと称しています。また大名の鷹狩りの行列には「鷹野」という大小鼓が入って狩場の雰囲気を表現した合方があります。合戦の最中の緊迫した中、陣屋などでの鎧武者の出入りに、またセリフにも使える合方が「陣立合方」。緊迫した感じが良く出ている合方です。
「御殿の場」でも説明しましたが、御殿、武家屋敷などでの立ち回りには、琴入りの合方が使われています。品格を出すのに琴を使っているのはかしこいやり方ですね。箏曲の「八千代獅子」、「六段」などを琴入り合方として女形の立ち回りに使っています。「鏡山奥庭」などで。
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