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「きよし この夜」
一年の総決算の時期、何となく忙しない。その中で讃美歌の楽譜をめくってみた。「きよし この夜(讃美歌109番)」は、この時期良く耳に届く讃美歌の一つだろう。教会では、12月24日の夜、つまりクリスマス・イブに歌われることが多いが、この曲は商店街や店内の音楽として、特にこの時期流れている。ふと気になって、この曲の成立や解説について調べてみた。正確な所は分からない。だが、いくつかの情報を総合すると、この曲にはクリスマスにふさわしく、クリスマスを発祥とする、小さな物語が残されていると教えられた。
19世紀のオーストリアに、ヨーゼフという名前の助祭がいた。12月24日の早朝、ヨーゼフは自分の教会を見回っていた。その日の夜に行われるイブ礼拝に際して、不都合がないように、との配慮からだった。ところが異変に気付く。パイプオルガンが鳴らない。良く見ると、パイプに空気を送り込む「ふいご」の所にネズミのカジリ跡があった。12月、オーストリアは雪深くなる。オルガンの修理工は直ぐには来ることが出来ない。一方でイブ礼拝の時間は刻々と迫る。困り果ててしまったヨーゼフは、それでも聖書に目を通して、考えた。
その日の夜読まれる聖書は、イエスの誕生を語った個所。出産間近のマリアとその夫ヨセフは、泊まる場所を求めて宿屋を探していた。出産のときは迫っているのに、しかし宿屋の空きはない。困り果てているヨセフとマリアの姿が、今のヨーゼフ自身の姿と重なったのだ。ヨーゼフはクリスマス物語を短い詩にして、友人のオルガニストに「ギターで弾いて」と頼む。そうして曲が出来上がった。24日の夜、聴衆は初めて聞くギターでの讃美歌に驚いた。しかし、その曲にも、また歌詞にも心打たれた。一人、ヨーゼフの上司の司祭を除いて。
ヨーゼフも、その友人のオルガニストも「ギターで讃美歌を弾くなんて」と、司祭からの叱責を受けた。そして二人はそれぞれ別の場所に転勤となった。時が経って、司祭はオルガンの修理工を呼び、ネズミにかじられた「ふいご」を修理させた。修理工はオルガンの隅にあるギターコード付きの楽譜を見つける。素朴な歌詞、美しいメロディ。修理工はその曲を、各地に紹介し回る。もう少しの続きがあるのだが、こうして「きよし この夜」は世に出た。私たちにも関わりのある不安や困惑は、必ず良い実を結ぶと、この小話は語っている。
日本福音ルーテル久留米教会
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牧師 水原 一郎
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