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朝日新聞 2008.04.24

2008.04.26  朝日新聞
 

朝日歌壇
「後期高齢者」歌に続々
にじむ反発・寂蓼感

 朝日歌壇に「後期高齢者」歌の投稿が増えている。入選作には75歳以上の年齢層を指す用語「後期高齢者」に対する当事者の反発、深い寂蓼(せきりよう)感がにじむ。
 投稿歌数は毎週平均3千首。4選者が週1度の歌壇俳壇面に掲載の10首を選ぶが過去2週間にわたって「後期高齢者」歌の入選が顕著。4月13日付紙面には5首が入った。例えば

 懸命に生きたる罪か人間
 の枠外されし後期高齢者
   (熊本県)三池淑恵

 三池さん(73)は、初投稿のこの歌で入選した。「二十年来リウマチで、保険証を使い通し。どこか申し訳ない気持ちもあった。今回身体障害者として、75歳未満だけど後期高齢者医療制度の対象になることとわかった時には、生きてゆくのがはばかられる、そんな思いがした」

 4月21日付は6首だ。

 「後期」高齢者手話表現
 に迷いつつおわりは近い
 と手を動かしぬ
  (沼津市)渡辺 裕子

 サークル活動で手話を学ぶ77歳の渡辺さんは、被保険証を手にした瞬間、とっさに「後期高齢者とはどのような存在かを手話で伝えるのはどうしたら? と手を動かしてみた」という。「人生の終わりが近いひとたちのこと、そう表現するしかなかった」

 「後期高齢者」言わして
 おけば言うものぞ奮然と
 して春の雪掻(ゆきか)く
   (伊那市)小林勝幸

 「もう用はないといわんばかりの切り捨てる響きがなんともくやしかった」と76歳小林さん。4月初旬、被保険証が届いた。在所の長野県南部・伊那谷の春はまだ浅い。怒り心頭に発して残雪をかいたという。
 この日の佐佐木幸綱選歌欄は10首中第1席から4席までが後期高齢者の歌。投稿作品におけるその数の多さに市民感覚の縮図を見た選者の編集者的感覚だ。
 「まさに当事者として」と選者の一人、馬場あき子さん(80)はいう。「政治は非情とわかってはいても、被保険証が届いた時、『あなたは後期高齢者の資格を得ました』という文面にカッとした」
 「侮蔑(ぶべつ)の言葉です。役所の非人間性には愕然(がくぜん)とする。
入選作の背後には何十倍もの同様の歌、戦中戦後を必死で生きて今、後期高齢者と呼ばれる人の傷心がある。想像力というものを官僚に求めたい」(河合真帆)