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朝日新聞
2008.05.30

2008年(平成20年)5月30日  金曜日         朝日新聞
光から電気効率世界一
三洋のHIT太陽電池

 発電時に二酸化炭素を出さないことから、世界中で需要が高まっている太陽電池。同じ設置面積でより多くの電力を得ようと、世界中のメーカーが光エネルギーをどのぐらい電気に変えられるかを表す「変換効率」の向上にしのぎを削っている。現在、変換効率22・3%で世界トップを走るのが、独特の構造を持つ三洋電機のHIT太陽電池だ。    (上栗崇)

無駄省く「ギザギザ」

 潔く、すすけたようにツヤのない表面。三洋のHIT太陽電池は、他社製が青や紺にギラリと光るのに比べ、かなり地味だ=図上。だがこの見た目の「地味さ」に、高効率の秘密の一つが隠されている。
 太陽電池の発電効率は大きく分けて、@光を電池内部にどれだけ吸収できるかA吸収した光をいかに効率よく電気に変えられるか、の2点で決まる。@にとって最大の敵は表面で起きる光の反射。HlTの表面が光らないのは、表面に高さ千分の数_の微細なギザギザをつくり、反射した光も太陽電池の内部に向かって進むように設計されているため=図中央。他社製のギラつきは、太陽光が「無駄遣い」されている証拠ともいえる。
 HITは開発レベルの変換効率が22・3%で、量産品も同19・7%。他社の量産品は17%程度が中心で、同じ面積に設置すれば発電量で15%以上の差が付く。

独自の3層構造

 HITの高効率のもう一つの理由は、独自の「3層構造」にある。
 太陽電池で電気が起きるのは、原料となるシリコンの特性と半導体の原理による。シリコンの結晶は光が当たると原子同士をつないでいる電子(この一部が外れる特性を持つ。電子が入っていた「穴」はプラスの電荷を帯びた「正孔」になり、電子(ー)と正孔(+)がシリコンの内部を自由に動き回り始める。
 自由に動き回る電子を、決まった方向の流れ、つまり電流にするのが、「性質の違う2種類のシリコンを接合すると電子や正孔を一方向だけに通す『フィルター』のような働きをする」という半導体の原理。他社製の多くは、スライスしたシリコンの表面を薬品と反応させて電子を引き寄せやすいシリコン層を作り、電子を表面側に集めることで裏面との間に電圧差をつけて電流を生み出す構造だ。
一方、三洋のHITはスライスしたシリコンの表には正孔を、裏には電子を引き寄せる性質のあるシリコンの膜を付着させる。表裏それぞれの膜にプラスとマイナスを集めることで、一般の太陽電池より裏表の電圧差を大きくすることができる=図下。
 表裏対称の構造なので、熱などによって反り返る心配がない。このため、シリコンをより薄くスライスして使うことが可能で、価格高騰が続くシリコンの使用量を減らせる利点もある。

電卓電池を応用

 HITの基礎になっているのは、実は電卓や腕時計などでおなじみの小型太陽電池。三洋は1980年、ガラスの表面にシリコン膜を作る「薄膜型」と呼ばれる小型太陽電池を世界で初めて量産化し、他社製のソーラー電卓などに広く使われてきた。現在も時計用で50%以上のシェアを持つ。シリコン膜の製造技術で多くの特許を握っていることが、シリコンの両面に高品質なシリコン膜を作るHIT太陽電池の開発につながった。
 三洋は、HITを中心とした太陽電池事業に今後3年間で700億円を投資し、10年度には連結売上高の約7%を占める中核事業に育てる計画だ。薄型テレビのような華やかさとは縁遠いところで積み重ねてきた技術が今、三洋の屋台骨を支える存在になりつつある。