| No.557 | |
| 朝日新聞 | 2007.11.09 |
| 2007年(平成19年)11月9日 金曜日 ゴキブリ防ぐ鋼板開発に4年 電子機器の悩み商機 殺虫剤を噴射しなくても、10年間はゴキブリを寄せ付けません…。JFEホールディングス傘下のJFE鋼板がアース製薬、石原薬品と共同した「サニータ」は、防虫効果を持つ鋼板だ。 4年余りの研究による成果を、食品工場や電子機器向けに売り込む考えだ。 (山本精作) 暗く温か、すみ着く 3分でそわそわ 防虫鋼板を使った食器棚と普通の食器棚を並べ、200匹のゴキブリを放って、様子を見る。防虫鋼板の棚にもゴキブリは入るが、3分ほどで落ち着かなくなり、だんだん寄りつかなくなる=図。定着阻止率は95%だ。 一方、普通の食器棚の引き出しの奥には、黒い群れがびっしり。アース製薬研究所(兵庫県赤穂市)での実験の結果だ。 鋼板は、さびないよう表面に亜鉛めっきしている例が多い。防虫鋼板はめっきの上に、防虫成分と樹脂を混ぜた1マイクロメートル(0・001_)の薄い膜を張った。 防虫成分は、除虫菊に含まれるピレスロイドに近い成分を化学的につくったもので、においはなく常温では揮発しない。毒性もコーヒーに含まれるカフェインより弱く、人がなめても危険性はないという。 3社の意見一致 アース製薬は、食品メーカーの業務用機器を組み立てた後に塗る塗料に、防虫機能を持たせる研究を進めてきた。しかし、組み立て後に使う塗料は、素材の段階で塗る場合に比べて厚塗りになりがち。防虫成分が多く必要になり、コストがかさむ。 アース製薬のこんな悩みを、取引相手の工業用薬品メーカー、石原薬品の営業部長山畠一延さん(58)が聞きつけ、やはり取引先であるJFE鋼板の知人に相談したのが、防虫鋼板開発のきっかけだ。 JFE鋼板の商品開発センター試験課長の坂本安平さん(59)は「防虫機能のある鋼板を開発できれば、家電用に需要があると直感した」。坂本さんは北里大学で衛生学を学び、缶詰用鋼板の衛生管理を担当した経験もあった。 坂本さんはさらに、パソコンなどの電子機器の温かさと暗さ、狭さにひかれてゴキブリがすみ着き、メーカーや利用者を悩ませていることも知った。ゴキブリの死体やふんが機器のプリント基板を腐食させ、ショートさせる恐れがあるという。 「やる価値がある」。3社の意見が一致し、共同開発が始まった。03年夏のことだ。 EU規制クリア アース製薬は鋼板にむく防虫成分を研究し、その成分を樹脂になじませる薬剤を石原薬品が提供した。試作品はJFE鋼板がつくり、アース製薬で実験した。 試作改良は40回繰り返し、約1万匹のゴキブリを実験で使った。「家庭に多いクロゴキブリと、電子機器にすみ着くことの多いチャバネゴキブリの両方の雌雄を使い、実験の精度を確保した」と、アース製薬研究担当課長の新田勇さん(57)は話す。 共同開発を始めてから1年半後の04年末には、鋼板に防虫機能を持たせることに、めどが立った。鋼板は防さび効果を高めるため、亜鉛めっきに有害物質の六価クロムを含んでいた。 ところが欧州連合(EU)はこのころまでに、六価クロムの電機・電子機器への使用を制限する方針を固めた。日本の電機メーカーも、六価クロムが使われていない鋼板が必要になった。 こうした流れを受け、JFE鋼板は六価クロムを使わない「クロメートフリー鋼板」を開発。新たな鋼板に合う防虫膜をつくるために、さらに2年半の歳月を要した。 防虫鋼板は原則として受注生産で、販売目標は月100トン。3年後には月500トンに増やす計画だ。業務用だけではなく一般家庭のキッチン向け需要を取り込むため、ステンレスへの応用も検討している。 「団塊世代のしぶとい共同研究」 (坂本さん)の成果が、3億年の歴史を持つというゴキブリをどこまで追いつめるか。関係者の注目が集まっている。 | |
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