「映姫様の善行手本」
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60年に一度の花騒ぎも終わり、幻想郷中に咲き誇った花もやっと収まってきた冬のある日。
三途の川の向こう岸で幻想郷担当の閻魔とその部下の死神が一日の仕事を終えようとしていた・・・。
「うーん、さて、私はこれで・・・」
ひとつ大きく伸びをして退出しようとする死神の小町を上司の映姫が呼び止める。
「ちょっと待ちなさい、小町。霊の数もだいぶ落ち着いてきたので、
明日は生者たちがちゃんと言いつけを守っているかどうか見回りに行くわよ。」
「はぁ、行ってらっしゃいませ。すると霊を運ぶ必要が無いから明日は休みですね。」
「何を行っているの、あなたは。小町も一緒に行くのよ。」
「エ、エエ〜! そんな・・・。」
小町の甘い考えをぴしゃりと封じる映姫。
「小町の『距離を操る能力』があれば色々なところを早く回れるでしょう?
それとも、私が一緒だとサボれないからいやだ、とでも言いたいの?」
小町の不満そうな顔から一瞬にして考えを読み取る映姫。
「・・・はい、わかりました。明日ですね。」
「そう、判れば宜しい。」
そして小町はとぼとぼと退出していった。
翌日。
魔女、メイドなどのニンゲンを始め、妖精や霊などの妖怪にも口煩い・・・モトイ、
ありがたいお説教を終えた閻魔一行は最後に霊夢に会うために博麗神社へと向かっていた。
「映姫さま、もし霊夢が神社にいなかったらどうするのですか?」
一日中飛び回ることとなった小町が疲れた顔で質問する。
「そんなことはまず無いわ。基本的に霊夢が、いや博麗の名を持つものは基本的に神社から離れることはないわ。」
「え、そうなんですか?」
至極当たり前の疑問を口にする小町に対し、映姫が説明する。
「そうよ。それぐらい博麗大結界の監視は必要なことなの。
代役を立てなければ神社を離れることが出来るのはせいぜい1日か2日ところかしらね。
だから、博麗は自由の象徴だけど、霊夢は必ずしもそういうわけではないのよ。」
そのような会話を交わしている間に二人は博麗神社にたどり着く。だが・・・
「映姫さま、あの巫女は見当たりませんねぇ。」
「・・・おかしいわねぇ。」
神社の境内に霊夢は見当たらず、二人が呼んでも出ては来ない。
たまたま運が悪く出かけているというのなら判るが、周りの様子を見てみるとここ数日は全く手入れ、管理されていないようであった。
「小町、これは何かあったのかもしれないわ。調べてみるわよ。」
映姫の真剣な口調に小町もその顔を引き締め、二人で手分けして博麗神社内を調べる。
映姫が部屋の一つ一つを丹念に調べていると、小町が慌てながら呼ぶ声が聞こえてきた。
「えーき様、えーき様、裏の井戸です。霊夢を見つけました。早く来てください。」
映姫が急いで井戸へと駆けつけてみるとソコには、慌てながら井戸から水をくみ上げている小町と、
やせ細り、変わり果てた姿で倒れている霊夢がいた・・・。
小町が水を飲ませると霊夢はうっすらと目を開け、弱弱しくつぶやいた。
「ア・・・、あなたは、あのときの、死神と、閻魔じゃない・・・。ということは、私、死んじゃったのね。」
「いいえ、霊夢、あなたはまだ生きてますよ。いったい何があったというのですか?」
「なぜか判らないけれど、いつの頃からか、お賽銭を入れてくれる人も、よく遊びに着てくれる人も、誰もここに来なくなって、
おかしいなと、思ったときには、もう食べ物も、燃料もなくなっていて、もう、10日以上水しか飲んでなくて、
そして、水を汲もうとしたら、ふっ、と力が抜けて、こうなっていたの・・・。」
そこまで話すと気が抜けたのか、ガクッ、と霊夢の身体から力が抜け、ふたたび気絶した。
「映姫様、調べてみましたけど言っていたとおり神社には何一つ残っていませんでしたよ。
私も幻想郷で死神をやって長いですけど、ここまで飢えた人間は見たことありませんよ。」
映姫が霊夢を寝かせている間、台所周りを調べていた小町がそう報告する。
「小町、霊夢をつれて帰ります。ちょうど空いている部屋が一つあるでしょう。」
「エエッ! 霊夢をつれて帰るって、そこまでする必要があるのですか?」
映姫が当たり前のように言ったことに驚愕する小町。
「そうです。私も飢えている人間全てをすくおうとは思いません。
ですが、目の前で飢えている人間一人救わないのであれば私に善行うんぬん言う資格はありません。
それに、面倒を見るのであれば遠いここにおいておくよりもつれて帰ればよっぽど充実します。」
「ですが、博麗の巫女はここを離れることが出来ないのでは?」
「それは大丈夫です。私は霊夢をつれて帰りますから、小町、あなたはマヨヒガまで行って八雲紫氏に事情を話してここの管理をお願いしなさい。」
「それで大丈夫なのですか?」
「そんなに長くならなければ大丈夫でしょう。それに・・・
彼女は少し怠けすぎる。このまま食っちゃ寝を続けていれば○○地獄に落ちるでしょう。」
このようなことを真顔で言う映姫に思わず顔をほころばせた小町は、そのままマヨヒガへと向かって言った・・・。
「う、うーん、いいにおい・・・。」
次に霊夢が目を覚ましたとき、ソコは見慣れない部屋であった。
部屋の大きさはせいぜい2畳半か3畳であったが暖房は効いており、布団も普段使っているぼろぼろのものよりは厚く、枚数も多かった。
「やっと目を覚ましたようね。」
霊夢が声のしたほうを見ると普段の衣装の上にエプロンとキッチンミトンという珍しい格好をした映姫がおり、その手には何か小型のなべのようなものがあった。
「え・・・!?」
思わず上半身を上げようとする霊夢。それを見た英気はなべを置くとすぐに霊夢の背中に手を回し、起き上がるのを助ける。
「あわてなくてもちゃんと説明してあげるから。まずはこれをたべなさい。しばらく食べてないみたいだからやわらかいものの方がいいと思って作ってみたの。」
そう言いながら映姫はなべの中から湯気を上げるおかゆを皿に取り、霊夢へと差し出す。
その匂いをかいで、今更ながらに空腹を思い出したのかすごい速度でかきこみ始める霊夢。
「はいはい、慌てなくてもちゃんとありますからね。」
そしてそんな霊夢をほほえましく見つめる映姫様がいた。
食事も終わり一段落した後、「なぜたすけたのか?」という霊夢の質問に答える映姫。
それを聞いた霊夢が、思ってきたことを言う。
「私ね、誰も来なくなって、食べるものも無くなったとき、『嗚呼、これが報い、罰なのかなぁ・・・。』って、おもっていたの。」
「報い?」
「そう、前に言っていたじゃない。『あなたは妖怪を殺しすぎる。』って。ここで一人寂しく飢えて死ぬことがその報いなのかな・・・。ってずっと考えていたの。」
「それは違うわ。報いにしろ罰にしろ、本来は現世を正しく生きるためにあるものよ。
現世でそんな死ぬような苦しみが罰として与えられるわけも無くて、そして犯した罪はそれこそ地獄や来世で清めていくものなのよ・・・。」
「え、そうなの。じゃあ・・・」
「そう、あなたはそんなに心配しなくてもよかったのよ。」
その夜、霊夢は映姫のひざの上でないていた。そして泣き疲れて眠ったとき、一言だけつぶやいた。
「お母さん。」
と。
それからしばらく後のこと、映姫が体力の回復してきた霊夢と
「ねぇ、霊夢、あんまり神社を空けておくわけにも行かないでしょうし、そろそろ戻ることにしたら?」
「ウン、それは判っているんだけど、あそこに戻ったらまた誰も尋ねてこない生活が待っていそうでなんか怖いのよね・・・。」
「そうよね。でもそうなったのには原因があるはずなんだけれど・・・。心当たりは無いんでしょ?」
「ええ、全く無いわ。」
そんな会話をしているとドタドタという足音が近づいてきた。
「えーき様、えーき様、大変です。これを、これを見てください。」
「どうしたの小町? ここでは静かにしなさいといつも・・・。」
そんなことを言いながら小町の手にあった紙を見た瞬間、映姫の表情が変わった。
(余談だが後に小町は魔理沙に「その瞬間映姫様の顔が仁王に変わった。」と述べている。)
映姫は手を震わせながらその紙を霊夢に見せる。次の瞬間、霊夢の表情が憤怒へと変わった。
(これまた余談だが後に小町は魔理沙に「その瞬間霊夢の顔が般若へと変わった。」と述べている。)
二人をこれほどまでに怒らせた紙、そこには、
「文文。新聞 号外 楽園の飢餓巫女、博麗霊夢特集。」
「以前、飢えの余り人間を襲っている妖怪を襲って貪り食った・・・。」
「神社の周りの木の皮はみな裸にされている・・・。」
「わずかに生えた雑草をそのまま口に入れた・・・。」
「紅魔館のゴミ箱をあさっていた・・・。」
などのさまざまなセンセーショナルなウソ記事が書かれてあった。
「・・・どうやらあの鴉は私が前に言ったことを全く理解していない、もしくは判っていてやっているみたいね。これは厳しい矯正が必要ね。」
映姫が苦々しさと怒りを隠さずに言う。
霊夢に至ってはもはや怒りの余りしゃべることすら出来ないようであった。
もはや誰も近づくことが出来ないようなオーラを放ちながら二人が文の下へと向かった後、
小町はヤレヤレ、というように大きなため息をついて言った。
「まぁ、こんな記事を読んだ後じゃ誰も神社に行こうなんて思わないだろね。」
数日後・・・。
文はそれまで霊夢がいた部屋の中に居た。
あの後、それこそ完全に力ずくで今までの記事の訂正、及び謝罪文を書かされた後、
文の家にある食料、燃料、その他金目のもの一切合財を霊夢に奪われ、
おまけにそれらを運び出すときに家をぼろぼろにされてしまったため、冬を越すことの出来なくなった文が泊まっているという状況であった。
そんな中、部屋を映姫がのぞく。
「あのー、足がとてもしびれてきたのですが・・・。」
「ダメです。起きてから寝るときまでそこで正座を崩さない。それが今のあなたに出来る唯一の善行です。」
「いや、流石に毎日それは・・・。」
「さもなくば、この寒空に放り出しますよ?」
「いや、それだけはご勘弁を!」
「じゃあ、大人しくしていなさい。見ていないからと言って足を崩してはいけませんよ。ちゃんと判るのですから。」
そう言って映姫は扉を閉め、文はあきらめたように正座を続ける。
その扉の上には「自修室」とかかれたプレートがあった・・・。
後書き
何というか何というか・・・。
ペーパー予定版より結構加筆したりしています。(最後とかね
。
もう少し短くまとめることも練習しないとダメだね^^;
ところで、自修室といえばカツだと思います。D・Q・N! D・Q・N! D・V・D!(チガ
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