遥かなる帰還
まさか再びここに帰ってこれるとは思わなかったわ。」
「そうですね、姫様。年月とは恐ろしいものです・・・。」
そこは荒涼とした所であった。
あたり一面が荒地であり、ところどこのに焼け焦げたような跡や何かの破片がまだ少し残っている。
そして何よりも、そこに空気は無く、空には大きな青い星が浮かんでいた・・・。
そのあたり一面、動いているものは蓬莱山輝夜と八意永琳の二人だけであった・・・。
「もう1000年以上前になりますか。昔、月の都を目前に控えたこの場所で、
仙人掌の力で動く兵器を持った地上人と、月の民との最後の闘いが有った、と聞きます。
その激闘は一月近く続いた末、逃げることに成功したあの子以外は一人も生き残らなかったとのことです・・・。」
「そう、皮肉なものね、永琳。故郷を追放された私たちが月の民の最後の生き残りになるなんて。」
「私たち以外のどんなものにも終わりがある以上、それは仕方が無いでしょう。
ですが、文字通り全滅するまで戦う必要があったのでしょうか? もう少しいい手段があったと思うのですが。」
「無理ね。」
永琳の問いに即座に答えを返す輝夜。
「それは長い間地上で暮らしていた私たちだから思いつくのよ。ここに居た月の民はみな『地上は穢れた地で、そこに住む下界人はみな下等。』と考えていたのでしょう。そして『月の民の名誉』とか言うもののために皆死んでいったのだわ。」
「そうかもしれませんね・・・。そして勝った地上人も今ではもうここに戻ってくることは無いのでしょう。」
永琳は辺りを見回す。立っている月も、宇宙に見える地球も、今では全てが幻想郷となっていた。
「あれから幾星霜、地上人が遥か宇宙の彼方へと飛び出すたびに幻想郷は少しずつ大きくなっていきました。昔は小さな島国の中の、ほんの小さな山の中でしたのに、いつの日か海が見え、島国全てとなり、今では地上全てだけでなく空に浮かぶ月までが幻想郷になってしまいました。」
「そうね。この地上も月も宇宙へと飛び出した人々には完全に忘れられてしまったのね。
荒れ果て、見捨てられた地上が幻想郷となり、美しく再生しても、人々は二度と思い出すことはない・・・。」
「だからこそ、私たちだけは再びここに戻ってくることが出来たのでしょう。そしてこの子もやっと。」
永琳は懐から小さな古ぼけた壺を取り出し、蓋を開ける。
そして中に入っていた灰色の粉末をあたりへと撒き始める。
「イナバもめぐりめぐって、やっとここに帰ってこれたのね。」
「そうです、姫様。あの子はずっと、仲間を見捨てた罪の意識にさいなまれてきました。ですがこれであの子の魂も安らぐことが出来るでしょう。」
そして輝夜は灰を撒き終わった永琳に声をかける。
「さぁ、永琳。帰りましょう。あの竹林に。月の民の生き残りとして、決して消えぬ罪を償うため。」
【後書き】
今から千年以上たったら、地球や月は忘れ去られてしまうのか?
ということを考えながら書いた作品です。(そのイメージの源は銀英伝に出てきた荒れ果てた地球ですが^^;)
ちなみに「仙人掌」は「サボテン」と読みます。つまりはそういうこと。
まぁ、あの時代には既に火星への移住も始まっているみたいですし。
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