紅い聖夜
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「ねぇ、さくや。 サンタさんって居るの?」
「はぁ?」
ここは紅魔館、その地下深くの一室。
破壊の悪魔、フランドール・スカーレットの余りにも突然な問いに瀟洒が売りのメイド長は思わず気の抜けた、芸のない返答を返してしまう…。
「外の世界では12月25日になると赤い服を着た人が子供たちにプレゼントを配って回るらしいの。
でも私、495年も生きてきたけど一回も会ってないの。だから、本当はサンタさんがいないのか、
それとも私が悪い子だから会いに来てくれないのか? どっちなのか知りたいの。私、サンタさんに会いたいの!」
「い、妹様、落ち着いてください。それで、誰にそんなサンタさんのことを聞かれたのですか?」
最近落ち着いてきた破壊のオーラが、情緒不安定気味という事でフランの身体から立ち上っているのを見、
あわててなだめ、落ち着かせようとする咲夜。
その努力が功を奏したのか、不安定さから一転、にこりと笑って機嫌よさそうにフランは答える。
「魔理沙だよ。魔理沙が、外の世界のサンタさんの事、教えてくれたんだよ♪」
あぁ…、と咲夜は頭を抱えた。とりあえず妹様が落ち着いたのはいいが、予想通りあの白黒が難題を持ち込んでくれたのだ。
全く、(自分には大して関係はないが)難題ならあのニートを屋敷の外に出すこと以上のものは無いと思っていたが、いざ持ち込まれ、直面してみると今回の事も十分すぎるほどの難題であった。
何しろうかつな答えを返せば屋敷全てが吹き飛びかねないのだから…。
【全く、あの白黒もいつもいつもコソコソと忍び込んだり、屋敷のものを勝手に持ち出すだけでは飽き足らず、厄介なことを妹様に吹き込んだりして。
全く無責任にもほどがあるわ。…そうよ、中国よ。無責任なのはあの白黒をいつもいつもあっさりと通してしまう中国もだわ!】
とまぁ、最後は何時も全く変わりない結論に達した咲夜は妹様の相手を半ば強制的に美鈴に押し付けて館を離れ、諸悪の根源の住む魔法の森へと向かって行った。
それは12月の半ば、もう暮れもすぐそこに迫った日であった。
「ああ、それを確かに私はそれを言ったぜ。」
魔法の森中心部近く、霧雨魔理沙邸。魔理沙は自室で咲夜の問いにしれっと答える。
「全く、そんな無責任な発言をされたら困るわ。大体、貴女自身サンタに会ったことはあるの?」
「いいや、無いぜ。それにサンタの話をした、といっても『外の世界には居るらしい』と言っただけでこの幻想郷に居るなんて事、一言も言ってないぜ。それを無責任と言われても困るのだが…。」
余計な事をしてくれた、という咲夜に対して憤慨をあらわにする魔理沙。
「それに大体、サンタなんて外の概念なんだろう? それだったら外から来たお前さんのほうが私よりもずっと詳しいだろう。」
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魔理沙が何気なく言ったその言葉。だが、メイド長はそれに答えず、ずっと押し黙っていた。唇をグッ、とかみ締めながら…。
その重く、長い沈黙の末、咲夜は肩を震わせながら低い声で答える。
「居ないわ、外の世界にも。少なくとも私はあったことが無いわ。もし会うことが出来たのなら…。」
「…いや、なんか聞いちゃ悪かったみたいだな。すまなかった。」
咲夜の沈黙、その意味をなんとなくだが察し、魔理沙が素直に頭を下げる。
「別に貴女が気にする必要はないわ。」
その珍しい光景に咲夜も流石に毒気が抜かれる。
「そうか。しかし…外の世界にもサンタは居ないのか。これはもう素直に告げた方がいいんじゃないか?」
「そうね。仕方が無いわ。門番一人程度の犠牲で済めばいいのだけれど。」
これ以上魔理沙の元に居ても有効な手は出てこないと判断し、咲夜は帰り支度を始める。
そんな咲夜が家を出る直前、その背中に魔理沙から声がかかる。
「なぁ、咲夜。外の世界に居ない、という事はもしかしたら幻想郷の中には居るかもしれないぞ? はっきりとしたことは言えないがね。」
「…という事が昼間、あったのです。」
「ふう〜ん。なるほどね。」
その日の夜、咲夜はフランに真実を告げる前に事の顛末を主であるレミリアに報告する。
「でも、懐かしいわね、クリスマスにサンタクロースなんて。ここしばらくは完全に忘れていたけれど。」
「レミリア様はサンタに会ったことがあるのですか?」
「まぁ、まだ幻想郷の結界がゆるくて、まだ私が外の世界でブイブイ言わせていたころの話よ。
苦痢棲魔簾(くりすます)の夜、惨汰は敵の返り血で真っ赤に染まった衣装を着て、奴婢たちの引く橇に乗って逆らったもの達の首級を部下たちに投げながら壇上に向かうの。
壇上には俘虜たちが縄で吊るされていて、惨汰はそれに火を放つの。そして哀れな敗者の「サンタクロースはんたーい!!」という悲鳴と絶叫を聞きながら宴会をする。それが苦痢棲魔簾パーティーといわれる儀式よ。」
「隙間妖怪並みに胡散臭い話なのですが^^; 少なくとも人間はそんなことしませんよ。」
「まぁ、【『神の手‐零』民明書房刊】という変な本を基にした儀式だから人間流とは違って当たり前だけどね。」
主従のそんなたわいのない会話。その最中、レミリアは思い出したかのようにフッ、メイド長に告げる。
「それにしても、あの白黒も十数年しか生きていない割にはいいことを言うわね。」
「そうですか? 私にはそうは思えないのですが…。」
いまいち理解できてないメイドに対し、レミリアは言い聞かせるように告げる。
「たぶん本人も意識して喋ったわけじゃないでしょうけど、求める答えのヒントは言っているのよ。
『咲夜』に向かって『サンタには誰も会った事が無い。』『幻想郷の中には居るかも知れない。』とね。」
「はぁ? そんなによい手があるのですか?」
やっぱりいまいち理解できていない咲夜。レミリアはそんな咲夜を近くに呼び、耳元にそっと何かを囁いてゆく……。
それから数日後、12月25日の夜。
魔法の森の上空に透き通った鈴の音がシャンシャンと響いていた。
その音色は寝ようかと布団に入ろうとした魔理沙の耳にもとどく。
最初はごくごく小さな音色だったので気にも留めなかったが、徐々に大きくなってゆくので流石に気になって窓を開ける。
すると、何か赤いものが月明かりに照らされ、こちらのほうに近づいてくるではないか!
それはあれよあれよという間に接近し、魔理沙の家の前で止まる。その正体は大きな深紅の橇であった。
「ジャーン、メリークリスマース♪」
するとその中から伝え聞いたサンタクロースそっくりの格好をしたフランが飛び出てくる。
よくよく見てみれば橇を引いているのは同じような格好をした美鈴と咲夜である。
「ド、どういうことだよ、これは…。」
流石に唖然とする魔理沙に対し、フランが笑いながら答える。
「えへっ♪ 咲夜がいいことを教えてくれたの。
『もう外の世界にもサンタクロースは居なくなってしまった、でも、サンタが居ないのならサンタになれば良い。ここは幻想郷なのだから、それでサンタクロースは復活する。』、てね。」
「そうか、それでそんな格好をしているのか。」
「そうだよ。そしてハイ、プレゼント♪ 私と咲夜で作ったケーキだよ。」
フランは橇の中から小奇麗にラップされた箱を取り出し、魔理沙に手渡す。
「あ、ありがとうな。とってもうれしいぜ。でも…。」
そこで魔理沙は咲夜をチラリと見る。
「ちゃんと材料については吟味したから、あなたの心配しているようなことは無いわよ。」
こういったことには目ざとい咲夜が素早く答え、魔理沙を安心させる。
「じゃあ魔理沙、私、ほかのところも回らなくちゃいけないからもう行くね。メリークリスマス♪」
フランが飛び乗ると橇はすぐさま動き出し、空へと飛び去ってゆく。
「ああ、メリークリスマスだぜ。」
その背中を見ながら魔理沙は一言つぶやく。その祝福の言葉は白いものが降り始めた空へと吸い込まれていった……。
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「ところで咲夜さん、寒いし、眠いし、はっきり言って本当に辛いのですが…。」
橇をを引く美鈴がつかれきった顔で咲夜に訴える。
「我慢しなさい、私だって同じなんだから。それにあんな上機嫌な妹様、止められると思う?
レーヴァンテインで焼かれるのは自由だけど、私一人で橇を引く事になるのは勘弁してもらいたいわね。」
「ふぇぇぇぇぇん。サンタクロースはんたーい。」
……美鈴の嘆きもまた、夜空へと吸い込まれていった。
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後書き
とりあえず自分で自分の首を絞めているなOTZ
というわけで始めてクリスマス物に挑戦してみました。といっても書こうと思い立ったのが21日のなのですが^^;
どんな話にしようかと考えていたのですが、22日の昼あたりに【ゼロ】の『サンタクロース反対!』のネタ絵を思い出して(12月20日の日記にあるやつ)採用決定。
最初はオーソドックスに魔理沙がサンタ役だったのですが、自称羆で雛落としで投げられた工藤さんの台詞、
『人は羆には勝てない、ならなっちゃえばいいじゃん。羆に』、を思い出し、採用決定。
後「蒼い空のネオスフィア」のクリスマスイベントを思い出し、採用決定w
こんなネタをミックスさせて完成したのがこれです^^; 正直急造なのは申し訳ないです。
そして製作時のBGMはモエかんのサントラw
そんなにジサーズ&メリーチェインを引き起こしたいのか、自分。
でもどんな物を書いているときは大概このサントラのTempestをかけているんですよね。
テンションの上がるお気に入りの曲なので。
と、まぁ、珍しく作品の製作過程を細かく明らかにしてみたりw
PS、NGワード『ネタの詰め込みすぎ』
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