風、それは力強き大自然の息吹。
ある時は山を穿ち、海の高さすら変えるもの。

風、それは気まぐれなもの。
ある時は人を癒し、またある時は人を打ちのめすもの。

風、それは力強き運び手。
熱を、物を、命を、そして思いを届けるもの。

風、それは、無くてはならぬもの・・・。



僕らはある時そこで出会った。
そこは風の吹き抜ける見晴らしの良い丘。
きっとその出会いは風が運んできてくれたのだろう。

僕らはすぐに仲良くなった。
落ち合う場所はいつもあの丘。
二人の心はどこまでも澄み切っていて
まるで世界中の風が僕たちを祝福してくれている様だった。

ある春の息吹が吹く朝に
その丘で僕らはさよならをした。
まるで風が二人の仲をを引き裂くように。 朝日に照らされた桜が風に乗って舞うさなか。
でもあの子は約束してくれた。
「この約束が風に乗って世界をめぐり、
また此処に戻って来た時、
その時にまた逢いましょう」と。

だから僕は待ち続けた。
あの子が再び風に乗って戻ってきてくれることを。

ある夏の暑い日中も
僕はそこで待っていた。
その日も丘には風が吹いていた。
すべての命を輝かせるような風が。

だから俺は待ち続けた
彼女が再び風に乗って戻って来てくれる時を。
ある冬の凍てついた夕方も
その日も丘には風が吹いていた。
すべての命に眠りを与えるような風が。

それでも俺は待ち続けた。
たとえそれを幾回繰り返そうとも
風が吹き続けている限りは!
ある秋の気配がする夜に
その丘で僕らは再び出会った。
まるで風が運んできてくれたかのように。
満月に照らされた菊が風に乗って散るさなか。
そして彼女は言ってくれた。
「ただいま」と。
此処は世界の風が生まれる場所
そして世界の風が集う場所。
だから俺はこう言った。
「おかえり」と。




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