ぷろろーぐ

ここははるか地。100年以上前に現世から封印され、切り離された地。
その多くの妖怪と少数の人間たちが暮らしているここは、幻想郷と呼ばれている。

・・・幻想郷の中にある大きな湖。そして湖中の小島に建てられた深紅の洋館。
湖の青との対比が美しいその館にはまったく橋が架かっておらず、小船のようなものも見当たらない。
まるで、「空でも飛べなければ出入りできない」かのように・・・。

そしてその紅い館の遥か奥、深淵部とも言える所にひとつの部屋があった。
そこは人一人がやっと暮らせるほど狭いが、無限とも言えるほど広くもあった。
そしてそこにはもはや原型が何かも判らない大量の「モノ」と・・・一人の少女が居た。
その、まったく光の射さない紅い部屋で、少女はつぶやいた。
「久しぶり、本当に久しぶりに面白いことになりそう。このお祭りに参加してくれるのは・・・そう、10人というところかな。」

少女の名はフランドール・スカーレット。破壊を司る幼き悪魔である。



The Incarnation Of Scarret Devil


  人は夜を、闇を本能的に恐れる。なぜならどこに危険な捕食者が息をひそめているかが判らないからだ。
第一話 夜空を駆ける

ある年の初夏、本当にいつのまにか誰にも気がつかない内に異変は起こっていた。
どこからか「日の出と共に現れ、日没と同時に消える」という不思議な霧が幻想郷を少しずつ、だが確実に覆い始めていた。
人々がそのことに気がついたころにはすでに霧は日の光をかなり覆い隠し、いつまでたっても暑くならない、という状態になっていた。


そんなある満月の夜、幻想郷の端にある大きな神社を一人の少女が尋ねた。
少女はまたがっていた愛用の箒から飛び降り、ストン、と綺麗に境内へと降り立った。
そのいでたちは漆黒の服にかわいい白いエプロンとドロワーズ、夜目にもあざやかな金髪にゆったりとしたフリル付の黒帽子というもの。
少女の名前は霧雨魔理沙。見た目どおり「魔法を使う程度の能力」の持ち主であった。

「おーい、霊夢。邪魔するぜ。」
と言いながら魔理沙はまるで我が家のように神社の母屋のほうに入ってゆく。
そして当たり前のように居間へと入るとそこにはもう一人、別の少女がいた。年齢は魔理沙とほとんど同じくらいであろう。

その少女は場所が場所だけに一目見て巫女と判る格好をしていた。まぁ、その巫女服は多少改造がされており妙に脇が強調されていたりするのだが・・・。
巫女の名は博麗霊夢。「空を飛ぶ程度の能力」の持ち主にして、現世と幻想とを分ける「博麗大結界」の守り手である。
幻想郷が外界から封印されたとき、同時に幻想郷の中の人々も外の人々が入ってこれないように結界を引いたのだ。
この中と外との二重の結界により幻想郷と外界との行き来はほとんど無くなり、独自の世界となったのだ。
この結界の名を「博麗大結界」と呼び、代々の博麗神社の主が管理してきたのである。

「勝手に上がりこんでおいてから『邪魔するぜ』も何も無いと思うのだけれど。」
「まぁ、気にするな。ところで霊夢、何時までこのままにしておくつもりだ?」
「このままって、何のことよ?」
「決まっているだろう、この霧のことだよ。それともお前さんは頭が春だから季節もずっと春のままがいいと思っているのか?」
「失礼ね、そんなことあるわけ無いじゃないの。それになんで私がやらなくちゃいけないのよ?」
「決まっているだろう、迷惑な妖怪退治は巫女の役目なんだから。」
「はいはい、判ったわよ。行けばいいんでしょう。でもその代わり魔理沙も一緒に行くわよ。」
「しょうがないなぁ。ついて行ってやるよ。私は誰かさんと違って物わかりが良いからな。」

と魔理沙が言い終わったときには、すでに二人とも神社を離れ空を飛び、異変の中心と思われる場所へと向かっていた。
いや、純粋に向かった方向は霊夢のカンなのだが、それこそ正にあの深紅の洋館への最短経路であった。
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飛んでいる彼女たちを餌と勘違いした(実際間違ってはいないのだが)妖怪たちを苦も無くひねりながら進んでいくと、ふと二人を今まで照らしていた月の光が消えていた。
何事かと思いみてみると、何か黒い円状の影のようなものが半分以上月に覆いかぶさっているのだ。

「月食・・・? いや、アレは違うわ!」
霊夢が叫んだ。
それは地球の影などではなかった。なぜならこちらに近づいてきているから。
それは光の当たらない影ではなかった。それは光を飲み込む漆黒。そしてその中心にたたずむ一人の少女。
白いシャツに黒いワンピース、明るい金髪にかわいい赤いリボン。だが真っ赤に濡れた口と二人を見て輝く目こそが、彼女が人ではなく妖怪であることを示していた。
その妖怪少女の名はルーミア。闇を操る能力の持ち主である。}

「あはははは。久しぶりのお肉だ〜♪ 」
彼女もまた、今までひねられた妖怪同様二人のことを食料としか認識していないのだろう。捕食者の目を輝かせながら攻撃態勢に入る。
そしてそんなルーミアをよそに「やれやれ」と顔を見合わせる霊夢と魔理沙。

「あんまり抵抗しないでね。お肉がまずくなっちゃうから。 夜符『ナイトバード』」
スペルカード。それは自らが得意とする術式が圧縮され、封印された一枚の符。それゆえに自らのアイデンティティを示すともされる物。
ルーミアがそれを使うと同時に彼女を覆っていた漆黒の形が変化する。その形は・・・黒い大鳥。
そしてその漆黒の翼が霊夢たちを空間ごと薙ぎ払う! だが、そこには何も無かった。まるで掻き消えたかのように。
あっけにとられたような顔をしているルーミアの後ろから魔理沙の声が響いた。
「甘いぜ。そんな大味な攻撃じゃ何回やっても無駄だぜ。」
ルーミアが振り返るとニヤニヤした顔の魔理沙がいた。すぐ近くには呆れ顔の霊夢もいる。
馬鹿にされた、と思ったかルーミアは魔理沙に何度も翼による攻撃をかける。だがそれらはすべて紙一重で、しかし体はおろかその帽子にすら触れることが出来ずかわされてゆく。

あせったルーミアが大降りになった瞬間、魔理沙は左右の手から一つづつ、魔力塊を放った。圧縮された魔力で構成されたマジックミサイルである。
そしてそれは大鳥の翼に命中するといともたやすく引きちぎり、爆散させた。
してやったりとばかりに霊夢を見る魔理沙。そんな魔理沙に肩をすくめる霊夢。
そしてルーミアは肩を震わせながら叫んだ。
「もういい!多少お肉が焦げるけどかまうものか。 月符『ムーンライトレイ』」
ルーミアの周りの漆黒がどんどん膨らんでゆき、夜空の星を、そして月を覆い隠してゆく。
漆黒が膨らみ辺りを覆った瞬間、ルーミアから二条の光が放たれ、魔理沙を挟みこんだ。

「なるほどね、漆黒が吸収した光をレーザーのように打ち出しているわけか。」
魔理沙がのんきに納得している間にも、光と光の間隔は狭まってゆく。
そして光が一本に閉じた、と見えた瞬間、魔理沙のいる地点が明るく輝きだした。
ムーンライトレイの光はすべて魔理沙がかざした水晶玉によって拡散、反射されたいた。
「やれやれだぜ。まったく、手間取っては大事に障ると言うからな。」
魔理沙は同じような水晶玉を後3つ取り出すとそれらをルーミアに投げつけ、自分は上空へと飛んだ。
水晶玉は複雑な動きをしながらルーミアの後ろに回り込み、輝きだす。
「お前さんには少々もったいない技だが、本当の光という奴を教えてやるよ。」
と言うが早いかルーミアの漆黒が一条の光に切り裂かれる。
後ろの水晶球が魔法陣を描き、そこから鋭い光が放たれているのだ。そしてその光はどんどんと増え、漆黒を千々に散らしてゆく。
「光符『アースライトレイ』」
魔理沙の声が響いた瞬間、それらの光は一つとなり、洪水のようにルーミアを押し流していった。

「魔理沙」
「大丈夫、安心しろ。ちゃんと出力は抑えてある。」
「そんなことじゃ無いわよ。遊びすぎよ、まったく。アレだけ私に無理を言って連れ出しておいて自分は遊んでいるなんて!」
霊夢がすざまじい圧力をかけながら魔理沙に迫る。
「判った、判ったから。次からはちゃんとやるから。」
「判ったらさっさと進む。のんびりしている暇なんて無いのだから。」
そうして二人は湖のほうへと向かっていった。


そのころ、紅き館の深淵部、少女は一人つぶやいた。
「一人は光によってかき消されて、残りは9人となった・・・。」


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   暗き闇を抜け、白き闇を通り紅き闇へ向かう。
第二話 ホワイトアウト

ルーミアを倒した霊夢と魔理沙は再び雑魚妖怪たちを蹴散らしながら異変の中心へと向かっていた。
徐々に表情を厳しくしながら霊夢が言った。
「やっぱりね、間違いないわ、徐々に妖気が強くなってきている。私のカンは間違っていなかったわ。この湖を越えれば原因がつかめるはず。」
「エ〜! 霊夢、お前さん目的地がわかっていて飛んでいたんじゃなかったのか?」
魔理沙が驚いた声で聞いた。
「こんなときの私のカンに間違いはほとんど無いわ。普段の生活にも役立ってくれれば良いんだけどね・・・。」
「やれやれ、本当に『無・駄・に』カンや運はいいよなぁ、お前。」
「何よ、何か不満でもあるの?」
「いいや、別に・・・ん?霧が出てきたぞ。夜なのに。」
「そうね。でもおかしいわ。この霧から感じられる妖気は今まで感じていたものとは違うわ。」
二人がいぶかしみながら進んでいくと、
「!!」
突然霧の中から氷の礫が飛んできた。
二人ともかろうじて反応でかわし、魔理沙がすばやく撃ってきた方角へ弾幕を張る。だが、手ごたえが無い。
次の瞬間、さっきとはまったく別の方角から攻撃が来る。今度は反応が完全には間に合わず、服をかする。

「な、何だ? 霧にまぎれての攻撃か?」
このような攻撃が数回繰り返され、魔理沙が少々不機嫌な声で言う。
「それと、さらに短距離での瞬間移動も使っているみたいね。まぁ、ここは私に任せなさい。」
魔理沙とは対称に落ち着き払った声で霊夢が言う。
「どうするんだよ、またお得意の『カンと運』か?」
「それも悪くは無いけれど・・・もっと確実でいい手があるわ。」
と言うと霊夢は懐から数枚の護符を取り出し、宙に投げつけた。
「行け、ホーミングアミュレット!」

次の瞬間、護符はまるで生き物のように複雑な動きをし、ついに霧の中にいた大妖精を捉えた。
ウワ! と言う悲鳴と共に再び霧の中に身を隠し、瞬間移動しようとする大妖精。
が、その時にはもうすでに次のアミュレットが目の前まで迫って居た。全弾命中し、あっけなく湖へと落ちて行く大妖精。
それと共に今まではっていた霧が晴れ始め、少し進んだころにはもう完全に無くなっていた。
そしてそこには一人の少女が待っていた。彼女の名はチルノ、夏に似合わぬ氷精であった。

「大妖精ちゃんを打ち落としたのはお前たちね!」
氷精はいかにも怒った口調で叫んだ。
「お前たちなんかカエルと同じようにカチコチに凍らせて、カエルを砕かずに後ろの岩だけを砕く練習台にしてやるんだから!!!」
相当興奮しているのだろう、顔の赤さが着ている青い服との対比でことさら強調されている。言っている事もかなり意味不明だ。
その姿を見て、霊夢と魔理沙はやれやれな顔でいった。
「必死だな。」「必死ね。」

その言葉にますます顔を赤くしたチルノはいきなり猛烈な吹雪と共に雹弾を打ちつけてきた。
だが魔理沙は持ち前の速度を生かして早々と威力範囲外へと逃れ、霊夢に至ってはまるで涼風のようにノラリクラリとかわしている。
そして嵐の隙間をぬって霊夢が放った護符は確実のチルノにダメージを与えてゆく。
「ほら・・・もうそれぐらいにしておとなしく帰ったらどうなの?」
もちろん霊夢としては結果がわかりきっているからこそ言ったのだが、それが帰ってチルノの怒りに油を注ぐことになった。
「ふざけないで!凍符『パーフェクトフリーズ』!!!」
完全に『キレタ』チルノがスペルカードを使い、同時に大量の雹弾をばら撒く。
だがそれらは全てさっきと同じように霊夢にかわされた、と思った瞬間、全ての雹弾がまるで凍りついたかのように動きを止めた。
これこそが『パーフェクトフリーズ』の名の由来であり、最大の特徴であった。
霊夢はあわてて自分も止まろうとしたが慣性を殺しきれず、雹のひとつに頭からぶつかる羽目になってしまった。
それをみて鬱憤晴らしとばかりに大笑いするチルノ。いや、よく見てみると上空の魔理沙も顔をうつむかせて笑いをこらえるのに必死になっている。
流石の霊夢もこれには怒り大量の護符を投げつける。だがそれらは全てチルノ近くの氷の壁ともいえる高密度の雹弾幕を抜けることが出来ず、跳弾となって跳ね返る。
そして凍っていた雹弾も再び動き出し、霊夢もそれら二つをかわすので精一杯となる。
それをみてまた笑うチルノ、そしてニヤニヤしながら「手伝ってやろうか?」などと言い出す魔理沙。
霊夢は懐から長い針を取り出すと、壮絶な笑顔をチルノに向けていった。
「どうやらあなたには『お仕置き』が必要なようね。」
「あはは、やれるもんならやってみなさい。」

再びチルノがパーフェトフリーズを使い、今度は霊夢の周りを完全に包囲した形で止める。
勝ち誇った顔のチルノに対し霊夢は全く表情を変えない。
だが、チルノが氷塊で霊夢を押しつぶそうとした瞬間、顔色が変わった。先ほどとは替わって真っ青に。
固定された雹弾全てに先ほどの針が刺さっており、全てその位置に固定封印されている。
「へ、へん。そんなことしたってそこからじゃ私を攻撃できないでしょう。」 狼狽しながらもいまだ強がるチルノ。それに対し霊夢は符をくくりつけた退魔針を高速で投げつける。
エクスターミネーション。ただ前方への貫通力のみに特化したそれは紅い光を放ちながら次々と氷を砕き、チルノを縫いとめる。
体こそまったく傷つけていないが、全てが紙一重で服に突き刺さっている針。
それを見たチルノは・・・大泣きをしながら湖中へと逃げていった。

「さあ、邪魔者も消えたし先に進むわよ。」
いかにも不機嫌そうな声の霊夢に対し、魔理沙は・・・
「いや、プププ・・待て、お前の、顔の、ククク・・・血を止めないとなぁ。」
笑いをこらえるのも一苦労、といった顔でハンカチを持って霊夢に迫る。そしてそれから逃げる霊夢。
二人が進む先には・・・あの紅き洋館があった。

そのころ、紅き館の深淵部、少女は一人つぶやいた。
「一人は湖に打ち落とされて、一人は針で縫いとめられた。残るは7人となった・・・。」

 我輩は門番である、名前は(まだ)無い。
第3話 闇夜を貫く、恋の魔法

紅き館の入り口、「紅魔館」と書かれた大きな看板にこれまた大きな門扉。
一目でわかるくらい厳重な封印が施され、簡単には開けることが出来なさそうなそれを見ながら、魔理沙は少し前のことを思い出していた・・・。


霊夢と二人でこの洋館を発見したとき、霊夢は「犯人は間違いなくここに居る」と断言した。
だが、いかにも、な佇まい。それに内部から感じられる妖気にただ単純に突っ込むのは流石に躊躇われた。
その時霊夢が「名案を思いついた!」と言うような顔で魔理沙に話しかけてきた。
「ねぇ魔理沙、ここは二手に分かれましょう。私が裏門に回りこむから魔理沙は正門から強行突破して。」
「な、何で私がお前の囮役をやらなくちゃならないんだよ。」
「そんなの決まっているじゃない。派手にやるのはあなたの得意技でしょう? それにいざとなったらその自慢のスピードで離脱することも可能じゃない。」
「反論の余地はないわけだな・・・。」
「もちろん♪ それともまさか魔理沙は私に「素直に突っ込んで来い」なんて言わないわよねぇ。」 怪しい笑顔を浮かべながらしゃべる霊夢。
それに対して魔理沙は半ばあきらめ顔で
「その顔を見たらとても言いたくなったよ・・・。まぁ、いいぜ。お前さんが裏口から忍び込むころに表で派手に騒げばいいんだろ。判ったからさっさと裏口探してこい。」
とぶっきらぼうに言う。
そして、「じゃあ、お願いね〜」と満面の笑顔で裏に回る霊夢・・・。

「さて、そろそろあいつも配置についたころかな?」
魔理沙は回想をやめ、館の正門へと近づく。

館の正門前ではチャイナ服を着た警備隊長らしき少女がいかにも下っ端らしい戦闘メイド隊(もっとも彼女たちも下級妖怪だが)に対して何かを行っていた。
「な、何だありゃ、右腕をぶんぶん振って・・・。新手の体操か? しかも何だよあの訓示、『私の名前を言ってみろ』って。」
どうやら中国っぽい少女達はまったく魔理沙に気がついてないようだ。そのまますり抜けても良かったのだがそれでは大扉から入ることが出来ず、霊夢との約束も果たせないため魔理沙は彼女たちの方に近づいていった。

「ちょっと美鈴さん!大変ですよ。」
「あー、あなた今「みすず」って言ったわね!私はメイリン ホンメイリンよ!」
「いや、そうじゃなくって、後ろに侵入者が居ますよ!」
部下のメイドと気の抜けるやり取りをやっていた少女もやっと魔理沙に気がついたようだ。もっともその時には魔理沙はすでにすぐ後ろに居たのが。

彼女の名前は紅美鈴(ホンメイリン)。気を操る能力を持つここ紅魔館の門番である。
「ちょっとそこの怪しい人、ここは私有地ですので立ち入り禁止ですよ。早く退出してくれませんか?」
魔理沙を追い出そうとする美鈴に対し魔理沙は落ち着き払って言った。
「いや、この霧を出すのを辞めてくれればすぐにでも帰ってやるぜ。」
「え、この霧ですか?ちょっと待ってくださいね。」
そういって美鈴は近くの小屋に入って誰かと内線で話している。それを見て犯人が中に居ることを確認する魔理沙。
「いや、だめでした。やっぱり霧は止められないそうです。後、それから『そんな奴は力ずくで追い出すのよ!!』とも言われました。」
言うが早いか周りのメイド隊に攻撃指示を出す美鈴。
「じゃあ私も力ずくで通らせてもらうぜ。」
こうなることを予想していた魔理沙はすばやく水晶玉を取り出すと、それにレーザーを打ち込んだ。
打ち込まれたレーザーは水晶玉の中で反射し、拡散し、後ろから襲いかかろうとしたメイドたちを薙ぎ払う。
イリュージョンレーザー。真横はおろか真後ろにすら振り向かずに攻撃できる強力な魔力レーザーである。
続いて腰に紐でくくり付けてある箒を正面に向けると、そこから大量の弾幕を発射し、前方に立ちふさがる戦闘メイドたちを打ち落とす。
「まずい、一度引いて、体勢立て直すわよ。」
美鈴とメイドたちが一度撤退する。そしてそれをゆっくりと追う魔理沙。行き先はひとつしかないのだから・・・。

紅魔館大門扉前、そこで第2ラウンドは始まった。今度は美鈴が先頭に立ち、残りのメイドたちは援護射撃をするという態勢。
美鈴は虹色の弾幕を、魔理沙はレーザーやマジックミサイルを打ち合う。
そして時間が経つにつれ、後方のメイドたちの援護射撃の甲斐も無く射撃戦は徐々に美鈴に不利となってゆく。

だが、「このままいける」と魔理沙が思いながらメイドたちの一斉射撃をかわした瞬間、魔理沙は美鈴の姿を一瞬見失った。
距離を一気に詰め、瞬時に近距離にまで近寄っていたのだ。
「お前、格闘戦の方が得意なのか!」
美鈴の突き出した拳を、蹴りを、体当たりを、魔理沙は辛うじて箒で受け止め、さばいてゆく。
至近距離での格闘戦はさっきと変わってほぼ互角からわずかに美鈴優勢。痺れを切らせた魔理沙がほぼ零距離でマジックミサイルを爆発させ、その爆風と閃光を利用して一気に距離をとる。

「逃がさないわ。彩符『極彩颱風』」
ここで美鈴が勝負を決めるべく、切り札のスペルカードを使った。渦を巻く虹が後退した魔理沙に襲い掛かり、包み込もうとする。
魔理沙も懐から一枚のスペルカードを取り出し、かざす。するとそのスペルカードが輝きだし、その光はどんどん強くなってゆく。
大津波のような虹が魔理沙を飲み込む瞬間、魔理沙がそれを使った。
「派手にいかせてもらうぜ、霊夢。恋符『マスタースパーク』!」
マスタースパーク。それは光の魔法のように思われがちだがそうではない。それは位相が整えられた光であるレーザーとも、重粒子を高速で打ち出すビームとも違う、魔理沙の魔力によって生み出された純粋な破壊エネルギーなのである。
あの眩いばかりの光は空気分子などとの衝突によってロスしたエネルギーの残滓に過ぎないのだ。
そして放たれたそれは虹を飲み込み、美鈴とメイド隊を跳ね飛ばし、大扉へと命中する。
そのエネルギーにより館中に激震が走り、大扉は封印ごと粉々になっていた。

「まぁ、これだけやれば十分だろう。おお、そうだ。」
魔理沙は瓦礫の中で伸びている美鈴を引っ張り出し、ビンタでたたき起こした。
「おい、おきろ、この中国。」
「う、うう・・・。ひどいです。ちゃんと名前で呼んでください。」
「さっき内線をかけた奴のところまで案内しろ。」
「そ、そんなことしたら私殺されちゃいますよ・・・。」
「そうか・・・。もう一発アレを食らいたいのか。」
もう泣きそうな美鈴に対してさらに魔理沙は無慈悲にいう。そしてまだひるむ美鈴の頭から星を取り上げると、懐に入れてしまった。
「あ、ひどい。それは・・・。」
「はいはい、案内したら返してやるし名前でも読んでやるよ。」
こうして魔理沙は美鈴を先頭に立て、館の奥へと進んでいった。

「ところで、だ。あんなに門が厳重に封印されているのにお前達はどうやって出入りしているんだ?」
「あ、それはあそこです。」
美鈴が指をさしたところを見て魔理沙はすぐに納得した。
全壊した大扉のすぐ側に、「通用口」とかかれた小さな半壊ドアがあったからだ・・・。


赤き館の深淵部、館が大きく揺れたとき、少女は始めて喜びの感情を出しながら言った。
「一人が魔法に吹き飛ばされて、残るは6人となった。」




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