捨  01・水無月  70cm×135cm


使用筆・唐筆二号京サ 使用紙・紅星牌棉料単宣 使用墨・濃墨液

「捨」という一文字。手島右卿先生・川崎白雲先生・恩地春洋先生など、大変な先生方が作品として発表なさってる字です。これらの先生方の作品が頭をかすめないように、作品を作ったつもりです。この先生方の作品は、どれも「あっさり」物事お捨てになっているような、そんな雰囲気がしてかっこいいです。

「捨てる」と一言で言っても、それは対象によって中身が大分変わってくる言葉だと思います。汚れた物を脱ぎ捨てる、食べカスを捨てる、チリを捨てるなどは、比較的簡単に捨てられるというか、捨てなきゃどうしようもないですよね。
でも、世を捨てる、人生を捨てる、仕事を捨てるなどとなると、そう「捨てる」という事でも簡単ではないはずです。
ですが、先に挙げた先生方の作品は一種の解脱とでも言いましょうか、そういう捨てるのが大変な物まで捨ててしまっているのではないか?という感じがする作品なのです。それもサラリと。

さて、私の場合はどうでしょうか?私は逃げたもの、無くなったものを追うことはしない性質なので、そういうものはなくなってしまえばそれでお終いにしてます。が、握ってる物はなかなか捨てられない性質なのです。
ですが、時折何もかも全てを捨ててしまいたくなる事があります。が、捨てられないためにとてつもなくジレンマを感じるのです。この文字を書く事で、そういうジレンマが少しは解消されるかな?と思い書いてみました。が、捨てきれてないですね〜。というか、一応捨ててはいるのですが、捨てるまでに時間がかかってるような、そんな感じのする「捨」という字です。私にとって全てを捨てる事は大変!という事を匂わせるそんな作品です。たまにそういう「捨」という字の作品があってもいいかな?とまたまた自分を甘やかしたりもしています。

井上有一という私の尊敬する先生が、「文字を紙の上に書くのは、ビルの上から飛び降りるような感じで書くようなものだ。そして、そこに書かれた文字は自分の死骸である。」というような事をおっしゃってました。
この「捨」という私の作品は、捨てたくてもなかなか捨てられない私がそのまま映っているようで、そういった面ではまあまあかなとも思ってます。

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