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「鷲士くん、それじゃ頼んだよ」 「うん、まあ努力はしてみるけど、うまくできなかったらごめんね」 そう答えた鷲士の前には全身を隙間なくアーマーで覆った奇妙な人影があった。 「それじゃ、前の時は鷲士くんがちゃんと聞いてなかったみたいだからもう1回説明するね。その人形はこんど新開発したバイオボーグのだーてぃー君1号。このだーてぃー君1号はようするにロボットで、ダーティーフェイス関連の仕事に連れて行って鷲士くんの身代わりに使うつもりで作ったの。いつも鷲士くんを連れ出す訳にはいかないからね」 「うん、ありがとう。助かるよ。もう単位が・・・」 「いいからもう少し黙って聞いて。それで、最初は似たような背丈にして動くだけのつもりだったんだけど、開発部がノリにのっちゃってさ、機械式から鷲士くんの細胞を培養した筋肉繊維を使うバイオボーグにしちゃったのよ。これだったらかなり人間的な動きができるし、ついでだから格闘技とかの戦闘技術も仕込んじゃえって事になって、鷲士くんのデータとか色んな格闘技のデータを詰め込んだらしいの。それでどれぐらい実戦で使えるのか鷲士くんにちょっと闘って欲しいのよ。ウチの保安部で実験したらしいんだけど、何か1分程でノックアウトされたらしくて。結構強いみたいだから鷲士くんも気をつけてね」 「うん、気をつけるよ。ありがとう」 「それじゃ、だーてぃー君1号を起動するから待っててね」 そういって美沙はコントロールルームへ駆けて行った。 この部屋は実験室だそうで、縦横100mの正方形をしていた。4面の壁のうち1面に出入り口と超硬度ガラスで区切られたコントロールルームになっていた。 ウイィィィィィィン そんな起動音をたてながらだーてぃー君が動き出す。 『メインシステム起動確認・・・セルフチェック実行・・・・・・・・オールグリーン』 だーてぃー君のフルフェイスのような頭部の目にあたりそうな部分に白っぽい光が宿った。体の動きはとても滑らかで、普通の人間よりもより自然な動きをしていた。 『それじゃ戦闘モードを起動するからね』 位置の確認できないスピーカーから美沙の声が響いた。 『戦闘モード起動確認。目標・・・ダーティーフェイス・・・セット確認。RUN』 次の瞬間、だーてぃー君1号の頭部の光が赤くなり、鷲士に襲いかかった。 − − − だーてぃー君は瞬間的に間合いを詰めてフックを放ち、鷲士がバックステップでかわすとフックの勢い利用して後ろ回し蹴りを放った。 鷲士は回し蹴りを腕で受け止めると右竜翔扇を放つ。 − − だーてぃー君は受け止められた脚に力をこめて反動をつけ、その脚で鷲士の腕を蹴って横に飛び右竜翔扇をかわす。 − − − − その横飛び状態から前方宙返りに持って行き、半身を捻りながら着地すると油断なく構える。 右竜翔扇がかわされて即座にだーてぃー君を追っていた鷲士はだーてぃー君にローキックを放つ。 − − − 鷲士のローキックを脚で受け止めると外へ強く払い、その脚で踏みこんで正拳続いて肘を叩き込む。 「ぐはっっ」 その威力に鷲士は後ろに数メートルも飛ばされたが、なんとか倒れずに踏みとどまる。 − − − だーてぃー君は突き飛ばした鷲士を走って追い、その勢いを乗せて蹴りを放つ。 鷲士はその蹴りを左竜輪剄で流し払う。 − − − だーてぃー君は左竜輪剄でベクトルを変えられた蹴りの力をそのまま利用して空中回し蹴りを放つ。 だが、鷲士はその蹴りが届く前に右竜徹陣を撃ち込んだ。 − − − 右竜徹陣の直撃によりだーてぃー君は数十メートルは離れていた壁にまで吹き飛んで激しく叩きつけられた。そのまま崩れ落ちて動かなくなる。 それを見て大きく一息つくと、鷲士は額の汗を拭った。 「美沙ちゃん、終ったよ。これでいいのかい?」 『あ、鷲士くんまだ。開発部がなにか試したい事があるんだって。だーてぃー君1号は衝撃でコントロールシステムがフリーズしただけだからすぐに再起動するよ。鷲士くん、もう少しがんばってね♪』 「うーん、もうすぐバイトの時間だからあと一回だけね」 『うん、それでいいからお願いね♪』 翌日、鷲士はここで美沙の頼みを聞いた事を後悔するが後の祭りだった。 『メインシステム起動確認・・・セルフチェック実行・・・・・・・・オールグリーン』 だーてぃー君はそう言って立ち上がる。 『戦闘モード起動確認。目標・・・ダーティーフェイス・・・セット確認。リミッター解除。RUN』 先ほどの戦闘モードでは赤かった頭部の光が緑色に変わった。 − − − − − だーてぃー君が両手を前に出すとその両手に淡い光のような物が纏わりついて小型のつむじ風を2つ生み出した。そしてその小さなつむじ風を踏みしめると、竜巻が思いもよらぬ高速で移動して鷲士に迫った。だーてぃー君はその間に再びつむじ風を生み出して拳に纏わり付かせると、鷲士の真正面から拳を打ち出した。 鷲士はだーてぃー君の行動に驚いて一瞬動きは止まってしまい、なんとか受ける事はできたが、その高速移動+竜巻による拳撃は相当な衝撃を持っており、そのまま大きく弾き飛ばされてしまう。 『ちょ、ちょっと、アレは一体なんなのよ!?あんなの聞いてないわよ?!』 『え〜あれは神器と言いまして、保安部第3制圧部隊隊長のデータを元にして組み込んだ戦闘データです。つい昨日に完成したのですが、実験ではバイオボーグのポテンシャルを最高で400%程に上昇させる事が可能となっています』 そんな慌てた美沙と自慢気な技術者の会話がスピーカーから流れている。 − − − 飛ばされた鷲士を追うように大きく跳んだだーてぃー君は、今度は足に黒い光のような物を纏わり付かせて胴狙いの急角度な飛び蹴りを放った。 鷲士は先程の攻撃からその蹴りを受けるのは危険だと判断し、かわしてから左竜の技を叩き込もうとしたが、かわした瞬間に圧神が消されて今まで圧縮されていた空間が弾ける衝撃に吹き飛ばされた。 『400%の能力アップって、あれは一体なんだっていう訳?!』 『その隊長が言うには、空間に対してある種の振動を一定のリズムで流す事で、あのように意図的に物理現象を引き起こす事が可能だという事です。法則に基づく物なのでバイオボーグでも使えるのではないかと思って組み込んでみたのですが、思いのほか優れた能力になりました。』 − − − − だーてぃー君は着地すると手に青い光のような物を纏わり付かせると拳程の水の球を生み出して鷲士に投げつけた。 鷲士は飛ばされてまだ体勢が崩れていたが、水球を拳で弾き飛ばそうとした。だが相手は水の為に飛び散り、鷲士の視界を妨げる。 − − − 水球を目くらましにして鷲士に近づくと、足に白い光を纏わり付かせ、踏み込んできた足首を蹴った。 飛沫でだーてぃー君に気付くのが遅れた鷲士は、避けずに踏み込んで蹴られると同時に肘を叩き込んだ。 − − 鷲士の肘はだーてぃー君に突き刺さり吹き飛ばした。 そのまま追撃に移ろうとした鷲士だったが、だーてぃー君に蹴られた足の膝から下が氷の覆われているのを見て愕然と動きを止めた。 だーてぃー君はその間に立ち上がり、片足の動かない鷲士は次の左竜にかけるべく構える。 − − − − だーてぃー君は鷲士に駆け寄りながら拳に黄色い光を纏わり付かせ、鷲士の胸に正拳を叩き込んだ。 鷲士は正面から来るだーてぃー君に左竜雷掌を叩き込んだ。 両者の技が命中したのはほぼ同時だったが、だーてぃー君は緑の閃光に吹き飛ばされ、鷲士は左竜雷掌を放った左腕を突き出したまま仰向けに倒れた。 『鷲士くん!?救護班、第六実験室まで急いで!』 美沙の慌てた声がスピーカーから響き、五分後には鷲士は担架に乗せられていた。 「大丈夫、気を失っているだけです。怪我の方も大した事はありませんので1週間もすれば完治するでしょう」 「そう、良かった。鷲士くんは任せるから治療室に運んで手当てしてあげて」 美沙はホッと溜息をつくとだーてぃー君の方へ向かった。 だーてぃー君は周りを開発者達に囲まれて色々とチェックされている。 同じ電撃の技でも左竜雷掌の方が遥かに破壊力が強かったようだ。鷲士の方はTシャツの胸元が焦げて胸に火傷を負っているぐらいだが、だーてぃー君の方はボディースーツが弾け飛び胸部が抉れてしまっていた。 「もう、あんな危ない機能があるんだったらどうして先に言っておかないのよ!」 どうやら鷲士が怪我をしてご立腹のようだ。 「は、しかし、昨日の実験後すぐに報告書を会長の方へ回しましたが・・・まだ御覧になってなかったので?」 「へ?」 思わず昨日の行動を思い出したが、学校が終わるとその足で鷲士を迎えに行ってその帰りに買い物へ。あとは鷲士の手料理を食べて鷲士をトレジャーハンターにするべく教育。つまり仕事は一切していない。 「あ、そ、そうなんだ、それならいいわ」 汗じとでそう言って話をそらす。 「それにしても、だーてぃー君1号はいい出来ね。鷲士くんと引き分けるなんて」 「ええ、プロトタイプとしては大成功です。まだ 「この神器っていうのはまだ未完成なわけ?」 「ええ、これで隊長の50分の1ぐらいでしょうね。まだもう少しは出力も上げられるでしょう。こうして機械でも利用できる事が判明しましたし、他にも色々と応用できそうです」 「そうね。開発資金を5倍にするわ。頑張ってちょうだい」 「はい、ありがとうございます」 等というやり取りがあったのは鷲士の知らぬことで、結局鷲士が目覚めたのは翌日の昼過ぎ。こうして鷲士はまたバイトをサボり、さらには午前中にあった大切な講義にも出れなかったのである。 「うう、今度こそ絶対に断るぞ」 その後暫く、こんな出来もしない事をぼやく鷲士が見受けられたそうな。(笑) |