DADDYFACE ShortStories
「聖女と侍(6)」
written by REI



フランス・リヨン上空――
輸送ヘリに乗った面々は、冴葉からの説明を受けていた。
「――以上が、作戦の全内容です。ご質問は?」
それに対しヴィンセントが、
「表向き軍部の施設になっている所に踏み込んで問題はないのですか?」
ヴィンセントの最もな疑問に対し、冴葉はあっさりと、
「既にフランス政府に対し、圧力をかけておりますので」
これにはヴィンセントが唖然。
「信じられん。まさかフェイスのバックボーンがあの”フォーチュン・テラー”だとは…」
このセリフを最後に、機内は沈黙に包まれる。
やがて、ヘリが高度を下げ、冴葉とパイロットが2,3会話を交わす。
「現場に到着しました。皆さんはひとまずボスと合流してください。――ではご武運を」
冴葉はそう言い残すと。ヘリと共に闇夜に消えていった。
眼前に現れたのは――何とミュージアムだ。
「ちぃっ!連中にしては行動が早すぎる!」
ヴィンセントが言うと同時にマズルフラッシュが闇夜を引き裂く。
三人は銃撃をかわし、攻撃に転じようとしたその時、黒服の背後から銃撃が鳴り響いた。
黒服たちがなぎ倒され、エンジンの爆音があたりにこだまする。
鷲士たちの正面に現れたのは、黒いランボルギーニ・カウンタックLP500――。
運転手は――言うまでも無く美沙である。
「みんなっ、早く乗った乗った!」
舌ッ足らずな絶叫と共に、ジープが一台カウンタックの後ろに急停車した。
「鷲士くんはこっち、あんたたちは後ろのジープ!」
指示されたとおりに車に乗り込むと、カウンタックが走り出し、ジープが後ろに続く。
向かう先は、フランス軍研究施設――予想だにしない展開と戦慄が待ち受ける場所である。

五日目――任務遂行期限最終日

フランス軍研究施設内部――
さらにその奥にある研究室。
そこにいたのは身長170センチ弱の白衣を着た中年の男。
その部屋に、ノック音がこだまし、一人の黒服が現れた。
「サー、ヴィンセントが現れました。”ダーティ・フェイス”も一緒のようです」
黒服の報告に白衣の男は眉をひそめ、
「フェイスが?」
「はい、いかがいたしましょうか?」
「…”あれ”を出せ。あれならフェイスを葬れるはずだ」
その答えに黒服は驚き、
「なっ…!あ、あれを?!」
「裏切り者のヴィンセントに成り代わりフェイスを抹殺するために手段など選んではおれん。準備しろ」
「は、はぁ。ではそのように」
一礼して黒服は部屋を出る。
部屋に一人佇む白衣の男はやがて陰鬱な笑みを浮かべ、
「くっくっくっ…。フェイスなど”あれ”と私の最高傑作――ジャンヌ・ダルク――にかかれば赤子も同然よ。
フェイスを仕留めたとなれば、私はハイキュレーターに…」
そう言い残すと、この男も部屋を出た。

施設入口付近――
既に突入準備を整えた一行は、入り口に向かって歩き出す。
「これが今回のラスト・バトル…。みんなっ、行くわよっっ!」
美沙の気合の入った掛け声に、何故かヴィンセントが白い目で、
「さっきから思っていたが、何故お前が仕切る?」
「うっ…。べ、別にいいじゃない」
「…、まあ、そういうことにしておこうか」
さらにしばらく歩くと、入り口が見えた。
――だが、そこに人影が見えない。
「…おかしい。本来ならそこに雑魚共がたむろしている筈だが…」
ヴィンセントの呟きを無視するように美沙が、
「そ、そういえばそうよね。けどいないんだからさっさと中に――」
異変はその時起きた。
施設の入り口を突き破り、何者かが現れた。
――高さ5メートルを超える巨大なロボットである。
「雑魚共の代わりがこれか。どうする?」
ヴィンセントが聞くと、何故か美沙が答える。
「スプレイ!あんたの出番よ!やっちゃって!」
「…何で俺なんだよ」
呆れた様に答えるが、スプレイは背中からあるものを取り出す。
――U.S. Mk19 Mod3 オートマチック・グレネードランチャー。
遠距離から民家を一撃で破壊できる威力をもつ、機関式榴弾発射砲である。
本来は、ジープなどに据え付けて使うものだが、チューン・マンには関係ない。
「…プシュー」
口癖と化した擬音とともに、轟音が闇夜を引き裂く。
榴弾が連続でばら撒かれ、ロボットは粉々に砕け散る。
――だけなら良かったが、反動でそれた弾丸が、建物まで粉々にしていく。
爆音と共に、建物の中から人――恐らくミュージアムの狙撃兵――の悲鳴が聞こえてくる。
「やりすぎちまったみたいだが、まあいいか」
「それじゃあ、れっつごー」
子猫さまの声と共に、一行は建物内に入り込む。
進入と同時に、ノイズの混じった声が響く。
『ようこそ、私はこの施設を預かる”マイク・ウェイン”と言うものだ。』
マイクと名乗る男は、陰鬱な声で話を続ける。
『ここまで来てもらって悪いが、君たちには死んでもらう。私の傑作たちの手によってね』
「ふんっ、あんたごときに何が出来るっていうの?」
美沙が鼻息を荒くして言い放つ。
『君たちが先ほど壊してくれたロボット、実はまだ5体ほどいるのだよ』
マイクがそう言うと、突如巨大な影が現れた。
先ほどスプレイが壊したロボット――それと同じものが5体。
「げ…、ま、マジかよ」
スプレイは唖然としたが、ヴィンセントが、
「鷲士!美沙!このガラクタは俺たちが引き受ける!ジャンヌのことは任せた!」
「…わ、わかりました。美沙ちゃん!」
鷲士が絶叫すると同時に、美沙とともに走り出す。
だが、ロボットが2体、二人の行く手を阻もうとした。
鷲士が1体に対し、左手を突き出す。

九頭・左竜雷掌――

鷲士の一撃を受けると、ロボットは動きを止めた。
その隙に二人は階段を上り、奥へと消えていく。
動きを止めていたロボットも再び動き出し、5体で残った二人を囲む。
「スプレイ、お前は手を出すな。そんな物で攻撃しようものならジャンヌを巻き込むかもしれん」
「…ああ、ここはあんたに任せる」
そう言うと、ヴィンセントは刀を抜き、髪と瞳を赤く染める。
そして、階段側にいた2体に対し、刀を振った。
――なんと、ロボットは火花を散らし、木っ端微塵になった。
それを見て、スプレイは階段に向かって全力疾走して、
「ヴィンセント!俺はフェイスを追う!問題あるか?!」
「無い!行け!」
ヴィンセントの絶叫とともにロボットが襲い掛かる。
「おおおおぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」
ヴィンセントが雄叫びを上げるとともに、ヴィンセントの体が霞んだ。
次の瞬間――何とヴィンセントは3体のロボットの背後に立っていた。
刀を鞘に収めると同時に、ロボットから火花が散る。
そして、3体のロボットが音を立てて崩れていく。
「…鷲士、後は任せた…」
ヴィンセントは呟くと、その場に崩れ落ちた。
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