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第一部 序章
眠らない街ニューヨーク。
世界の中でも最高の栄華を謳歌するこの街には数多くの人種が蠢く。
栄華を極めし者、スラムで廃人になる者、様々な人間模様が流れ移る。
真夜中を過ぎ人通りが疎らな街、そこは危険地帯、スラム。
様々な犯罪者が息を潜め、獲物が迷い込むのをじっと待っている。
その狂暴さ故に警察でさえ立ち寄らない無法地帯。
そのビルはそのスラムの奥に建っていた。
周りには注射器を持ち虚ろな目をした男達がうろつく、しかし誰も近付こうとはしなかった。
ビルはかなり古く、外装は剥がれ落ちて年代を感じさせる。そしてその部屋は在った。
住人でさえ近寄らない部屋、夜な夜な若い女性の悲鳴が聞こえる。
だが住人は知っていた、そこに連れ込まれるのは金髪の白人女性だけだと言う事を。
部屋の中は薄暗く、辺りには腐臭すら臭ってくる。
暗闇に目が慣れてくると部屋の中は乱雑とした様相であると気付く。
それは中世の拷問器具が所狭しと並べられていた。
審問椅子、異端者のフォーク、鉄の猿ぐつわ、吊り籠、車輪轢き、がみがみ女のくつわ、
釘抜きとペンチ、重し付き首かせ、苦行用ベルトそしてもっとも有名な鋼鉄の処女
(アイアン・メイデン)である。
その人類の狂気を形にした道具に囲まれ一人の男が腰掛けていた。
身長は190cm、紺のスーツを着込むほっそりとしたの普通の男。
ふと、その男はその虚ろな瞳をドアに向ける。そこには何時の間にか一人の男が居た。
その男の顔には古代の仮面が着けられていた、中南米の太陽王を象った仮面を着け黒いスーツを着こなす風変わりな男、だがその男が放つ気配は美しい湖を思わせるほ静かさを思わせるが、それで居て目を離す事を許さない。
「シェピロか・・…この神聖な場所に何の用だ。」
椅子に座る男は金髪を掻き上げドアに立つ男、シェピロ・ダンストンに向かいその陰気な声で問いかける。
「封印者の動きが確認された。しかも邪神と紅蓮の二人が動いている様だ。」
その言葉に陰気な男は低く笑い。
「ほう、邪神と紅蓮がね。」
「封印者の中でもトップ・クラスの二人が動く。此方としてもそれなりの対応をしなければならない、そこで館長は私を含め、選りすぐりのハイ・キュレ―ターを三人送る事を決定された。その中の一人にジル・ヘイドマン。お前も決まった。」
その言葉に陰気な男―ジル・ヘイドマンは低く笑う。
「なるほど。館長の命令なら仕方ない、それに楽しめそうだ。確か封印者の紅蓮は美しい金髪を持っていると聞いた事がある!」
ヘイドマンは嬉しそうに笑う、その後ろには鋼鉄の処女の隙間より赤い血と金髪が見える。
その頃 地球の反対側では相模大にて穏やかな日差しの中、何時もの光景があった。
「鷲士く――ん!」
大学にて朝の講義を終え、一人の青年が歩いていた。
とにかく、みすぼらしい。
とことん、みすぼらしい。
なぜかとにかく、みすぼらしい。
最近いろんな出来事に必ず巻き込まれ、安住の地を求める哀れな主人公 草刈鷲士であった。
「あ、美沙ちゃん。」
自分を呼ぶ声に鷲士が振りかえると、そこには此方に向け駆けて来る一人の少女の姿が在った。
流れる栗色の髪、メノウのような瞳は強い意志を感じさせる最高級の美少女 結城美沙であった。
美沙は鷲士の側まで駆けて来ると嬉しそうに鷲士の腕に両手を絡ませる。
その光景に周囲の人は微笑ましそうに見ている。丁度、仲の良い兄妹の様に見えるのだろう。
「もう講義は終わったの?」
鷲士の顔を見ながら美沙がそう訊いてくる。
「うん。考古学の講義だけだからね、今日はもう終わりだよ。」
本来、鷲士は東洋史学を学んでいるが、近頃ダーティ・フェイスとして古代の遺跡に赴く事が多いので自分も少しでも遺跡の事を知っておこうと思い、最近では考古学の講義にもぐり込んでいるのだった。
「ふ〜ん。メリッサ教授の授業だったんだ。」
美沙はそう言って鷲士の腕を引っ張って校門の方へ向かう。
美沙と考古学の教授―メリッサ・パープルトンはひょんな事から顔見知りとなっていた。
(異伝 後日談)最初は美沙もメリッサが鷲士に近付くのを気にしていたが、のほほ〜んとしたメリッサの性格に警戒するのが馬鹿らしくなった様で最近ではそれほど気にしていない様である。
しかも、どうやら美沙とメリッサは馬が合う様で、大学で遺跡の談義をよく語り合っている様である。
「うん。少しでも遺跡の調査に役立てばと思ってね。」
笑いながら鷲士は答える。数ヶ月前、ある事件により鷲士達は来訪者の残したある遺産を捜している。(異伝 力を継ぐ者)
今の二人は己のルーツ捜しだけでなく未来を手にする為に宝捜しをやっているのである。
「頼りにしてるね鷲士くん。」
鷲士の優しい微笑みに美沙は少し頬を赤らめながら微笑み返す。
親子の会話に花が咲いていると校舎の方から二人を呼ぶ声がする。
「草刈君〜!美沙ちゃん〜!」
その声に二人が振り向くと、校舎の方から一人の女性が呼んでいた。
美しい金髪を風になびかせ、その瞳は透通る様に青く見るものを魅了する。
身長は170cmと高く、ナイス・バディな美人であった。
その女性は鷲士達の方に向かって駆け寄ってくる。
「置いて行かないでくださ〜い。」
その女性は息を切らせながらもそう抗議する。
「パープルトン教授。」
「こんにちは!メリッサ教授。」
「やっと追いついたわ、こんにちは美沙ちゃん。それと草刈君、私の事はメリッサでいいわよ。」
鷲士達に追いつき、メリッサは流暢な日本語でそう言った。
第一章 冒険への誘い
穏やかな日差しの中、美沙と相模大の教授 メリッサ・パープルトンは世界の遺跡に付いての談義に華が咲いていた。
「へ〜そんな話も有るんだ!?」
「勉強になった?」
メリッサの話に素直に感心する美沙。
その側では美沙の笑顔を優しい瞳で見守る鷲士が在った。
だが、鷲士達は気付いていなかった。
校舎の影から怒りのオーラが迸っている事に。
そこには校舎の柱に身体を預け、爪を噛む一人の麗女の姿が在った。
モデルですら足元にも及ばない美貌、その場に居るだけで人の目を引く存在感。
美沙と樫緒の実の母親、麻当美貴であった。
「鷲士ったら!!あんな女に鼻の下を伸ばして〜!!美沙も美沙よ!なんであんな女をしゅ〜くんに近づけるのよ!?」
美貴はその形の良い唇で爪を噛みながら、語り合いながら歩く鷲士達に嫉妬の眼差しを向ける。
「あの新人教授!鷲士に色目を使って!!!けど、鷲士ならあの女の色香に惑わされないと思うけど・…でも鷲士も男だから…もしかしたら?……」
目の前にある光景に嫉妬ゲージがMAXに成りつつある美貴、しかし彼女は校舎の影から出るに出られなかった。
楽しそうに話しながら歩く三人に呆気にとられている内に、出るタイミングを逃してしまっていたのだった。
今までは鷲士に近付く女は全て美沙が邪魔をしていた。
それゆえに美貴も安心していたのだが今回はその防壁とも言うべき美沙が手懐けられ、防壁としての役目を成さない。
そしてその光景に驚き、怒りに駆られ出るべきか?それとも鷲士を信じるべきか?
迷っている内に三人はどんどん先に進んでいく。
このまま飛び出したら、鷲士に嫉妬に駆られた醜い女に見られないか?と考えたのだ。
それはプライドが許さない。しかし嫉妬ゲージがMAXを越えればどうなるか・…
女・ご・こ・ろ・は複雑なのである。
美貴の葛藤を知らず、鷲士はのん気な声を出していた。
「流石考古学の教授ですねパープルトン教授、そんな事まで知っているなんて。」
メリッサの知識の豊富さに鷲士は驚き賞賛した。
「あのね草刈君?私は考古学専門よ!これでも世界一周遺跡めぐりの旅をした事も有るのよ。」
エッヘン と言って胸を張るメリッサ。
何故か美沙と同じリアクションをするメリッサ。もしかしたら二人は似ているのかもしれない。
校門が近付いて来た時、不意にメリッサは何かを思い出した様に美沙の方に向く。
「そう言えば!ねえ美沙ちゃんこんな話を知ってる?」
「え?なになに!」
メリッサの話に興味津々と言った感じの子猫様。
「ナスカの地上絵、イギリスのストーン・サークル、など古代の遺跡には実は規則性があるのよ、竜脈と呼ばれる大地のエネルギーの通り道の上に存在する訳。」
「その話なら知っているわ!ガイア仮説―地球が一つの生命と言う理論。レイ・ラインつまり地球のエネルギーの通り道の上に様々な遺跡があるって話しでしょう?」
正解。 そう言ってメリッサは美沙に一つの金属製のプレートを見せる。
「このプレートは古代ヘブライ語で書かれているの、そこには竜脈を操る四つの遺跡が有ると書かれているわ。もっとも事実かどうかは分らないけどね。」
メリッサの見せる金属のプレートに興味津々の子猫様。
「ふ〜ん。これがそのプレート?」
メリッサに手渡され、美沙はそのプレートを調べる。
その金属は直径五cm。正方形の黄金の様な輝きを放ち、人の顔が写るほど磨き抜かれている。
「もしかして…このプレートって古代人のメッセージが書かれていると言う、あの?」
またまた正解。 と言ってメリッサは悪戯っぽい笑みをこぼす。
「そうよ。時々出土しているみたいね、美沙ちゃんの見立ては正しいわ。」
「これが・・伝説の。」
美沙はその金属プレートをマジマジと見つめる。かねてから遺跡を発掘している時に出土すると言う古代人のメッセージ・プレートは噂が在った。
FTIの商売敵のアーカム財団がこれを発掘し裏の世界で遺跡を悪用されない様にアーカム考古学研究所を設立し特務工作員を編成していると言う。
美沙のその反応を楽しげに見ながら、メリッサは美沙からプレートを返してもらう。
「このプレートはまだ解析しなければいけない所があるの。結果は出来次第教えてあげるね♪」
メリッサは楽しげに言って美沙を見る
「その前に、まずはご飯を食べなきゃね!二人共お昼ご飯まだでしょう?一緒に食べない。実は良い所を見つけたのよ!」
メリッサの提案により鷲士と美沙は三人で昼食を取る為、相模大を後にした。
嫉妬に燃える美貴は密かに三人の後を付けるが、通りの角を曲がった所で見失っていた。
「え!?さっきここを曲がったばかりなのに?どうして!!」
彼女は天にも見放されていた。
メリッサとの昼食を済ませ、美沙はホテル・ラマダンに来ていた。
メリッサの言っていた龍脈を操る四つの遺跡の話が気になったからである。
地球の生命力その物でもある龍脈を操る。それは来訪者の遺跡の中でも重要な分類に入るに違いない、ならば自分の求める物もここに有るのではないか?美沙はそう考えていた。
ラマダンにあるFTIの端末でアクセスして情報を検索しようとしたのだっだ。
しかし、部屋で一息付こうとしたのが過ちだった。
美沙がラマダンに着き、自室にてアイス・ココアを飲んでいると突然、携帯が何時もの様に軍艦マーチを鳴らす。
「はい?」
『美沙!!!!!』
「い!?美貴ちゃん?どうしたの?」
『どうしたじゃな――い!!!!!』
美沙の携帯に怒りの電話を掛けた美貴は恐ろしい勢いで怒鳴り散らす。
『一体!どう言うつもり!?しゅーくんにあんな女を近づけるなんて!!!!!』
「ち、ちょっと落ち着いて!血圧上がるわよ?」
あまりの剣幕に美沙は額に汗を流しながら、若き母親を宥め様とする。
『そんな事はどうでも良いのよ!一体何なのあの女は!?』
「女ってメリッサ教授の事?」
『他に誰がいるのよ?まさか……他にも!!?』
「落ち着きなさいよ!そんな事、有る訳無いじゃない!!」
在らぬ方向に妄想を始める美貴を美沙は必死になって引き戻す。
「あのね美貴ちゃん!?あの人は鷲士くんの先生なんだよ?そんな訳ないでしょ。」
『でも!!しゅーくんの側に居るのは私じゃなきゃいやだ〜!』
電話の先で半泣きになりながら美貴が訴えてくる。
「あのね、考えてもみなさい。言っちゃ悪いけど、のほほ〜んとしたメリッサさんとボケボケとした鷲士くんがどうにか為る訳ないでしょ?」
無茶苦茶な事を言いながら美沙は歳若い母親を慰めようとする。
『けど〜』
「あのね!鷲士くんは今でもゆ・う・ち・ゃ・ん・一筋なんだよ!!」
『ホント?』
「ほんと、ほんと。樫緒にでも訊いてみなさい?」
『う〜ん』
美貴はまだ半信半疑のようだ。
「まったく、だから何時も言ってるでしょう?機会を見つけて、早く自分がゆうちゃんだって告白しなさいって。」
『う、そうしたいのは山々なんだけど。中々タイミングがどうも・・…』
痛い所を突かれ、美貴は言葉を濁す。
「まったく。子供を二人も産んどいて、今更タイミングも何も無いでしょう?」
『ああ!そうだ。実は麗華と友達の結婚式の事でうち合わせが有ったんだ!?こめん!これで切るね。』
形勢不利とみた美貴は、麗華をダシに早々に電話を切る。
まったく。 そう言って携帯を机に置く、美沙はため息を一つ付く。
「美貴ちゃんにも困ったもんだわ。」
その時、内線が鳴る。
「もしもし!…・・あ、支配人?ごめんなさい、ちょっとね。」
美貴との会話の勢いで内線にでた美沙は支配人からの電話に気を取りなおす。
「それでどうしたの?…え、樫緒が?うん、通して。」
第二章 ティータイム
ホテル・ラマダン、都内でも最高級ホテルである。
鮮やかなシャンデリアの下、普段なら賑やかなロビーなのだが今日は違っていた。
ロビーにいる全ての者の眼はある人物に注がれていた、フロントにいるタキシード姿の少年に。
黒を基調としたシックな姿はそこに居る全ての者を魅了する。
そして同年代には無い冷たい表情も女性を中心にため息を付かせている。
「お待たせ致しました。」
少年に向け、一人の老紳士が声を掛ける。このホテルの支配人である。
「オーナーがお会いになられるそうです、どうぞ此方へ。」
少年を案内し、支配人は45階への直通エレベーターへと向かった。
「いえ、大丈夫ですから。」
その少年―結城樫緒は支配人の案内を丁重に断り、直通エレベーターに乗り込んだ。
エレベーターが動き出し、樫緒はエレベーターの中から外の景色を見る。
(思えば、僕達の関係も変ったものです。)
外の景色を見ながら樫緒はそう思った、彼の双子の姉は結城の家を出て自らの力で生きる事を選んだ。
その後、彼女が苦難の道を歩んだ事は知っている。
しかし、手助けをしようとする自分を彼女は拒絶した。
彼女にとって、結城財閥の次期総帥たる自分は結城の家そのものだったのだろう。
いつかは分かり合える、樫緒はそう思って何度も双子の姉に会った。
しかしその都度拒絶された。
そんな自分がこうやって姉の待つ部屋に向かっている。
そして、自分達の関係を変えたのは一人の男の存在だった。
樫緒達双子の実の父親、姉はその男に自分の居場所を求めた。
だが樫緒はその男が許せなかった。
自分達がもっとも苦しい時に何の手も差し伸べてくれなかった。
それが今になった何が父親だ!
だが実際に会った男は想像していた物とは違った。
一言で言えばお人よし、例えるならば海。
大きく包み込むような暖かさ、寄せては帰す波のような暖かさ。
その暖かさ、穏やかさは冷たく凍っていた自分達家族を優しく包み込み溶かしていった。
その暖かさを樫緒は心地よい、と思えるようになった。
外の景色を見ながら考えていると、エレベーターが目的地に着いたようだ。
(姉さま、喜んでくれるかな?)
樫緒は右手の脇に持っていた、美沙の好物を見ながら彼女の待つ部屋へと向かった。
部屋に近付くと扉の前に人影が有るのが判る。
「よ、遅かったわね。」
人影は美沙であった。
「お出迎え有難う御座います。」
樫緒はそう礼を言って美沙と共に部屋の中に入る。
「姉さま、これは近くで買ってきた物ですが。」
そう言って樫緒は右手に持っていた包みを美沙に渡す。
「お土産?有難う樫緒。」
「前に姉さまが『余裕だニャン』さまとか言う物を好まれると訊いたので、何でも新製品だそですが。」
嬉しそうに包みを開ける子猫様、猫にマタタビとはこの事だろう。
「へ〜〜!新製品?どんなんだろう。」
「何でもお好み焼きバージョンだそうですが。」
その言葉を聞いた途端、美沙の手の動きが止まる。
「……樫緒。」
美沙の表情の余りの変わり様に樫緒は額に汗を流しながら答えた。
「なんでしょう?」
「あんた、もうちょっと世の中の常識を身に付けた方が良いわよ?」
「は?」
美沙の言葉の意味が判らず、間の抜けた声をだす樫緒。
「あのね、何処の世界にお好み焼き味の『余裕だニャン』さまを食べたがる人間がいるって言のよ!?」
「お気に召しませんでしたか?」
「当たり前でしょ!」
美沙の言葉に樫緒は目に見えるほど落胆した。
喜んで貰えると思ったのにと、樫緒の目がそう言っていた。
「まあ、私の好きな物を覚えてくれたのは嬉しいけど。」
流石に罪悪感を感じたのか、子猫様はそうフォローする。
美沙の言葉に少しは気を良くしたのか、樫緒は美沙の進めるがままにソファーに腰を下してコーヒーを飲んでいた。
(こう言う雰囲気も悪くないな。)
兄弟で他愛も無い会話をする、今までは求めても手に入らない物だった。
樫緒はこの至福の時間を心から楽しんだ。
美沙との会話に一区切り付いた時、ふと樫緒の目にコンピューターの画面が目に止まる。
「?姉さま、これは?」
「ん、これ?これはね、鷲士くんの大学の先生から教えてもらった遺跡を検索していたんだけどね・…」
樫緒の質問に美沙は手をパラパラさせ、情報が全く無いのよ と言って笑った。
「FTIの情報網に引っかからないとは。その情報の信憑性は?」
「考古学の先生から聞いただけだからね、正直判んないわ……そうだ!判んないなら今から訊けばいいのよ!」
突然、立ち上がり美沙は己が考えに、我ながらナイスと喜んでいた。
美沙の言葉に樫緒は驚いた。
「姉さま!もう夜の8時ですよ?明日にしたらどうですか。」
樫緒は必死になって美沙を止めようとするが、彼女は行動派(?)なのである。
「何言ってんの!昔から言うでしょう?思い立ったら吉日って。」
樫緒が美沙に逆らえる訳が無かった……
第三章 謎の男(笑)
美沙と樫緒それに途中で合流した鷲士が相模大に着いたのは午後9時前だった。
ラマダンから美沙は鷲士に遅くなると電話をいれた。
「鷲士くん。実はちょっと気になる事が有るんで、今からメリッサさんの所に行って来るからね。あ、メリッサさんにはOKって許可をもらっているから。」
その電話に驚いたのは鷲士だった。
『今からって!もう8時だよ!?明日にしたら?』
「だって、どうしても気になる事が有るんだもん。大丈夫、樫緒も一緒だから♪」
その横では樫緒が諦めた表情をしていた。
「だって、だって!どうしても気になるんだもん!お願〜い鷲士く〜ん。」
鷲士がおねだりバージョンの美沙に敵う訳が無かった。
それならば僕も行く と鷲士はこんな夜遅くに子供二人だけで行かせられないと言って、ついてくる事なった…子煩悩なのである。
そして、三人は相模大の正門前に居た。
「それじゃ、行こうか。」
既に美沙はメリッサに連絡を取っている。調べ物が有るので夜遅くまで大学の研究室に居るからいいわよ、と快く快諾してくれたと言う。
三人は正門から、メリッサの研究室がある別館を目指す。
だが別館に近付いた時、突然一階の窓が破られ、一人の人物が飛び出してきた。
「あそこは!?パープルトン教授の研究室!!」
「え!?」
突然の事で鷲士達が唖然としている内に、その人物は鷲士達とは反対方向に向かい走り出す。
「美沙ちゃんと樫緒君は教授の研究室へ!」
二人にそう言って、鷲士は遠ざかる人影を追いかける。
走りながら眼鏡を取り、持ち歩いているアーマーグローブをはめ、完全に戦闘態勢に入る。
程なくして鷲士は人影に追いついた。
「まて!」
それで止まるとは思っていなかったが、驚く事にその人影は立ち止まり鷲士が追いつくのを待っていた。
鷲士は油断なく構えその人影と対峙する。
(何者だ?)
鷲士は警戒しながらも相手を観察した。東洋人の男だ、背はかなり高く、かなり鍛えているらしく動きに無駄が無い、そしてその男は着込んだ黒のスーツの懐から拳銃―コルト・ガバメント・MKW―を取りだし、鷲士に向ける。
「!?」
黒い手袋で銃を握り、鷲士に照準を定め初めて言葉を投げ掛ける。
「何か用か?」
男は鷲士に向かってそう訊く、鷲士は銃を警戒しながら逆に問いただす。
「貴方は何者です!?何故パープルトン教授の研究室を襲ったのです?」
逆に問いただされた男はそれに答えず、鷲士の足に向かい銃を撃った。
だが鷲士もその事は予期していたので軽い動作で弾丸を避ける、その光景を見て今度は鷲士心臓目掛け銃を連射する。
だがその銃弾も既に装着済みのアーマーグローブで弾かれる。
「ほう!銃弾を弾くとは、サイボーグ?いや古武術か。」
その光景を見て男は嬉しそうに笑った。
そして男は銃を懐にしまうと、ニャと笑って構える―空手…いや古武術だろう。
どっしりとした構え、それでいて猫科の動物を思わせる雰囲気。
「きな?」
男が嘲笑しながら手を自分に向けおいで、おいでをする 挑発だと言う事は判っていた。
だが鷲士は敢えて男の挑発に乗る事にした。
次の瞬間、鷲士の姿が霞む、男との距離は五mそれを一気に詰め右手が霞む。
―九頭・右竜翔扇―
だが男は即座に左へと回避し、空振りに終わる――何たる反射神経!
男は大きく開いた鷲士の背中に向け迫る、しかし鷲士もそのまま回転し腰を低く落とし左手を男に打ち出す。
―九頭・左竜落崩―
左手は男の足を切断する筈だった。だがまたしても男はその攻撃に反応し、後退する。
男はそのまま距離を取り、鷲士と対峙する。
鷲士は油断なく構えながらも内心舌を巻いていた。
(なんてカンの良い男だ!)
今の応酬で鷲士の技は、後一歩と言う所でかわされた。
天性の才能だろう。男は鷲士に向け笑いかける。
「やるじゃないか!プレートを貰い受けるだけの仕事だと思っていたのに、こんな美味しい奴とやり合えるとは思っても見なかったぜ!!」
そう言うなり男は鷲士に向かい突っ込んでいく。
電光石火の掌底を紙一重で避け、鷲士は男の足に向けローキックを放つ。
しかし男は飛び上がり、何と鷲士のローキックに足底を乗せるとキックの威力を殺し、そのまま飛んでいく。
その光景に鷲士は唖然となった。
「まさか!?貴方はミュージアムですか?」
これだけの動きを見せる男に鷲士はそう問い掛ける、しかし男は。
「ミュージアム?あんなサイコ野郎達の集団と一緒にしてもらっちゃ困るぜ!」
そう言って不敵に笑う。
鷲士と男が再び対峙していると、後ろから声が近付いてくる。
「鷲士く〜ん!大丈夫!?」
「貴方!!そのプレートは考古学上大切な物なの!すぐに返してちょうだい!!」
鷲士達の方に向かって美沙と樫緒それにメリッサが駆け寄って来る。
その光景に男は踵を返すと駆け出した。
「あ!待て!!」
鷲士が男を追いかけ様とするが子猫様はもっととんでもない行動に出た。
「逃がすか――!!」
美沙はミニのスカートを捲るとグロック26を取り出し、男に向かい発砲した。
「おら、おら!死んじゃえ〜!!」
その光景に鷲士は顔を真っ青にすると
「ああ〜!美沙ちゃん!またそんな無茶をして!!!!!」
そう絶叫するが美沙は全く聞いていなかった。
「ち、ちょうっと!プレートに当ったらどうするのよ!?」
何故か顔を赤くする樫緒の横でメリッサが薄情な事を言っていた。
だが幸か不幸か、銃弾は男には命中せず男はそのまま外壁に向かう。
「待て―――!」
美沙達は急いで男の後を追うが男の逃げ足は速かった。
「はん!待て、と言われて誰が待つか!!。」
男は一度だけ振りかえり、そう捨て台詞を残して外壁を跳躍した。
「まて!」
鷲士が男の後を追って外壁を飛び越えるが、その目には男を乗せた黒いポルシェが加速して走り去った後だった。
第四章 ニューヨークへ
先の強奪事件より一時間後、美沙と樫緒と鷲士それにメリッサの四人はホテル・ラマダンに着いていた。
もっともメリッサは、私も関係が有りますと言って、無理矢理付いてきたのだが。
ホテルの45階には既に美沙から連絡を受けていた冴葉が待機していた。
「お帰りなさいボス、そちらが相模大のパープルトン教授ですね。初めまして私は会長秘書の片桐冴葉と申します」
そして冴葉はメリッサに名刺を渡す。
「FTIの秘書さんですか…では、さっき車の中で言っていた事は本当だったんですね」
この間の抜けた女性でも、流石に驚く事は有るようだ。
その言葉を聞き、子猫様はウガ〜と唸り。
「あ〜!信じて無かったな!?」
「ごめんなさい美沙ちゃん(汗)だってそんなとんでもない話をすぐに信じろと言われても・…ねえ?」
そう言って美沙に謝るメリッサ。
「よろしいですか?」
話は長くなる前に、冴葉は言葉を続ける。
「既にボスより画像が送られて来ました男に付いて、FTIの情報網にて検索しました」
あの時、美沙は小型のデジカメで謎の男を写していたのだった。
それで?美沙はそう続きを促す。
「彼の行動から判断するに、恐らくトレジャーハンターと推察しメリーアンに照会しました、ですが、結果は該当する人物は有りませんでした」
「そんな〜!絶対そうだと思ったのに!?」
美沙は自分のカンが外れたと思い落胆した。
「ですか、ITHAに照合した結果、一人の人物が浮かび上がりました」
「あのね!?そう言う事は早く言いなさいよ!!」
冴葉の報告に美沙はそう唸る、流石に良いコンビだ。
「ITHAって?」
鷲士が訊いてくる。
「ITHA、(インターナショナル・トレジャー・ハンターズ・アソシエーション)世界宝捜し協会よ、メリー・アンの前から在る宝捜しの組織なんだけど古臭い組織でね、色々規定がうるさいから私はメリー・アンに加入したって言う訳」
「ふ〜ん。商売敵みたいなものなんだ」
ま、似たような物ね と美沙は答える、その時メリッサが間の抜けた声で訊く。
「あのぉ?もしかして美沙ちゃんって、トレジャーハンター?」
まあね とエッヘン、美沙は胸を張って威張る。
「そう言えばさっきの草刈君の体術と言い…・聞いた事が有るわ。数ヶ月前に伝説のトレジャーハンター"ダーティフェイス"が相模大に現れたって。もしかして…・」
「察しが良いわね」
メリッサの言葉に美沙は不敵な笑いをする、しかし鷲士は慌てて。
「違うんです教授!!ダーティフェイスと言うのは架空の人物で!」
だがメリッサは鷲士の必死の話を聴いてはいなかった。
「ま、それはそれとして。先ほどの泥棒さんは何者なのかしら?」
「えらく切り替えが早いわね…・」
美沙はメリッサの切り替えの早さに呆れ、鷲士はガクっと肩を落とした。
「続きを話してもよろしいですか?」
メリッサにペースを乱され、才女は額に汗を流していた。
「ITHAに照合した結果、恐らくその人物は八頭大だと推察されます」
「げ!八頭!?」
冴葉の言葉に美沙の表情が引きつる。
「知っているのですか姉さま?」
長らく沈黙していた樫緒が訪ねる。
「八頭大。ITHAにおいて最高位GGG(トリプルG)に有る凄腕のハンターよ」
その言葉に、樫緒は暫し考え。
「そう言えば、訊いた事が有ります。何でも恐ろしく広い人脈と豊富な資金を兼ね備えた世界に影響力を持つ人物の名を・…確か八頭と。」
樫緒の言葉を美沙が引き継いだ。
「八頭…先祖代々からトレジャーハンターをしている悪党よ!豊富な資金と人脈でアメリカの大統領すら変える事が出来る奴よ、それだけじゃ無いわ、裏では軍事産業にも食い込んでいるらしいわ」
美沙の言葉に鷲士は青くなった。
「そんな人物が絡んでくるなんて!?」
だが子猫様は逆に闘志が湧いてきた様だ。
「面白いじゃない!!そんなのが絡んできた以上、あのプレートにはかなりの信憑性が有るって事よね!誰に喧嘩を売ったか教えてあげようじゃないの!!」
美沙の言葉に鷲士は真っ青になって止めようとする、しかし聞くような子猫様では無かった。
その時、冴葉の携帯が鳴った。
「はい・…判ったわ。ボス、八頭大の居場所が判りました」
「え!?今どこに居るの?」
冴葉の言葉に今でも飛び出して行きそうな勢いで美沙は聴く。
「現在、八頭は自家用ジャンボで空港から離陸したそうです。目的地はアメリカ、ニューヨークです」
「直ぐに追い掛けるわよ!」
美沙の号令の下、八頭を追いかけ、一行は一路、ニューヨークへと向かう。
そこには恐るべき敵が待ちうけているとも知らずに。
第五章 遭遇
ホテル・ラマダンを出て数時間後、鷲士は美沙の自家用ジャンボに乗り込んで居た。
何故?鷲士は真っ白な頭で自問を繰り返していた。
研究室を襲った相手、八頭大がニューヨークに向かったのを知り、美沙は直ちにFTI特製自家用ジャンボを用意させた。
只のジャンボではない、内部は徹底的に改造され並の電子偵察機など歯牙にも掛けない電子制御の動く要塞と化していたのである。流石、OSのFTIと言った所だ。
「あ!見て鷲士くん!?ニューヨークが見えてきたよ」
美沙は無邪気な声を上げ若き父親を呼ぶ、もっとも鷲士はまだ立ち直っていなかったが。
「懐かしいですわ。」
百万ドルの夜景とまで賞された街の明りにメリッサはそう呟く。
「メリッサさん、来た事があるの?」
「言ったでしょう?昔、世界一周遺跡巡りをした事が有るって」
美沙と鷲士が座る席の反対側、そこに座って居たメリッサはそう答える。
危険だから待っていて下さいと言う鷲士達にメリッサは私も行きますと言って無理矢理付いて来たのである。
美沙と鷲士と冴葉、それに心配だからと同行した樫緒とメリッサの五人は程なくJ.F.ケネディ国際空港に到着した。
「それで、これからどうするのです?」
樫緒の言葉に暫し考える美沙、しかし既に冴葉は次の行動に移っていた。
「どう?…・・分ったわ」
携帯で2、3言話した後、冴葉は電話を切り美沙に向かって告げた。
「ボス。FTIのニューヨーク支社からの情報では八頭はセントラル・パークに居るらしいです。」
「どうしてそんな事が判ったんですか?」
鷲士は冴葉に問いかける。
「有益な情報提供が有ったんです」
淡々と答える冴葉。意味が良く分らなかった鷲士は再度問い掛け様とするが、その疑問は代わりに樫緒が答えた。
「買収しましたね」
「・…」
冴葉は薄ら笑いをし、樫緒もまた冷たく微笑していた。二人は事実上、企業のトップに立っている、それだけに裏の手法も熟知していた。
「ほらそこ!妙な雰囲気を作らないの!!」
冷たい雰囲気に包まれかけたその場を和ませる様に美沙の涼やかな声が響く。
その声に二人は苦笑していた。自分達には無い物をこの少女は持っている。
だからこそこの少女を守りたい、二人はそう考えていた。
「さあ!いくわよ!!」
美沙の号令の下、一同は目的地に向かう―セントラル・パークへと。
セントラル・パークは穏やかな日差しに包まれていた。ニューヨークは日本の青森とほぼ同じ緯度に位置している。
ニューヨーク名物「五番街」を歩くカップルを冷やかしながら一人の日本人が公園内に入っていく――八頭大だ。
大は公園内を歩き、一人のスーツ姿の男が座るベンチに腰掛ける。
「中々良い格好だなダニー?似合ってるぜ」
何抜かせ とスーツ姿ダニーは言う、五十代後半と言った感じのその男はアラブ系の濃い顔つきをしていた。
興味深そうに此方を見る金髪グラマーに軽くウインクをしながら大はダニーに訊く。
「で、調べはついたのか?」
「残念ながら」
その言葉に大はしかめっ面をして。
「なにがニューヨーク一の情報通だ。今日この場で看板を下すんだな」
と、冷たい声で毒づいた。
「相変らず、せっかちな男だな」
そう言ってダニーは格好にデジタルカメラ―ミノルタの524万画素の新製品を投げてよこす。
「良かったら、ニューヨーク観光の記念に、アベックの激しいシーンでも写しておくんなさいよ、フィルムはサービス。場所は案内しますぜ」
その言葉に大は黙ってファインダーを覗く、そこには景色と一緒に大が頼んだ依頼の調査結果が表示されていた。
「中々細かい報告だな。しかし…手の込んだ事をしてやがるな?」
「なに、商売上の知恵と言う奴さ。情報は財産なり」
大の悪態にダニーはその白い歯と同じくらい明るい笑顔を見せ。
「そのデジカメは別料金だ」
「この根性悪」
ぶつぶつ言いながら大はデジカメの情報を読み取り、目を離す。
「なるほどな」
大の呟きにダニーは、恐らく情報屋としては珍しく相手の目的に興味が湧いてきたようだった。
「しかし、今更何でナスカなんだ?あそこら辺のお宝はお前さんが皆頂戴した後なんだろう?」
小声で話しかけるダニー、しかし大はニカァと笑い。
「情報屋がよけいな詮索をすると長生き出来ないぜ」
大の言葉にダニーは大笑いしながら言った。
「確かに、確かにそうだ!ははは、だがな」
不意にダニーは真剣な趣で。
「どうやらきな臭いにおいがして来るんだよ、ナスカの周辺で。米軍の機械化小隊が裏で
動いているとか、アーカムの妖精どもが出てきたとかな」
これはサービスな、 とダニーは言う、つまりこの話は奴が扱う商品だと言う事だ。
どうやら俺好みの展開になって来た、と大は考えた。
(つまり米軍やスプリガンが動き出した以上、ぼやぼやしちゃいられないと言う事だ)
獰猛な笑みを浮かべながら大は静かに闘志を燃やしていた。
だが、その静寂は突然破られる。
「そこまでよ!八頭大!!」
不意に辺りに響く涼やかな声に,己が世界にいた大はギョッとして声のした方へ向く。
そこには美沙を始め、FTIの一行が立っていた。
「お前は!あん時のガキ!?」
その言葉に美沙は額に青筋を立て。
「誰がガキよ!?これでも十二歳よ!」
と、律儀に怒鳴り返す。
「それをガキって言うんだよ!ションベン臭いガキが何でこんな所に居るんだよ!?」
「なんですって〜!!」
大の暴言に青筋立てて怒る子猫様、その姿を見て樫緒はため息を一つ付き。
「姉さま……話の論点がズレて居ますよ」
その言葉に我に返る美沙。
だが、大の方はこの場を如何に切り抜けるかを考えて居た。
(あのガキはFTIの会長、結城美沙そしてその横の美人は秘書の片桐冴葉、その隣に居るのは結城財閥の御曹司。そして何より仙術の流れを受け継ぐ古武術―九頭竜を操る草刈鷲士・…)
先の戦いの後、大は六本木の自宅マンションに戻り、地下のマザーコンピューターに戦いの折に撮影した二人の身元を調査させた。
あの時、大はボタン型の小型デジカメを持っていて鷲士と美沙の顔を撮影していたのだ。
二人の身元は直ぐに判明したー賄賂を贈っている各官庁や機関から膨大なデーターがストックされている故の早業である。
『姓名:草刈鷲士。年齢21歳。保護施設"青葉学園"出身。公立中学、高校を卒業後、現在、相模大の二回生。特記事項、草刈鷲士は年齢八歳の頃より古武術―九頭竜に入門、現在に至る』
「何!?九頭竜だと!!」
マンションのソファーでくつろぎ、報告を聞いていた大は驚いた。
「あの地上最強の陸戦生物と言われる九頭竜か、道理で歯ごたえが有った訳だ」
大は対峙した鷲士を思い出していた。
(アイツは一見穏やかそうに見えるが、あの瞳の奥にある光、あれは猛禽類を思わせる眼光だ)
大は身体の奥から闘志が湧き立つのを感じた――彼もまた同類なのである。
そしてコンピューターは美沙の事を報告する。
『姓名結城美沙。年齢12歳。結城美貴の長女として生まれる―父親不明。現在、私立カトレア女学院中等部に在籍。特記事項―FTIの創始者である』
その報告に又も驚いた。
『このガキが!あの怪物企業FTIの創始者!?』
大の絶叫は真夜中に響いた。
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