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第六章 機械化小隊
自宅のマザーコンピューターの報告に八頭大は少なからず驚いた。
巨大企業FTIの創始者がこんな子供で在ると言う。
大はスクリーンに映る美沙の写真を見ながらぼやいた。
「あと、5,6年したら声を掛ける気になるがな〜」
それよりも問題は九頭竜の方だ と大は思った。
最強の陸戦生物と言われる九頭竜。その使い手が相模大に居た。
その時、ふと大の頭に引っかかる物が在った。
「コンピューター、此数ヶ月の事件をピックアップしてくれ」
そして、スクリーンに並べれる事件の中に大の疑問に答えるものが有った。
「これだ!相模大の構内に武装集団が乱入。それだけじゃない、戦闘ヘリまで落ちてやがる…おまけに風刈町駅の大爆発に宇宙兵器が関与・…これだけの無茶をする奴なんて、そうは居ないぞ」
大の頭に一つの言葉が浮かび上がる―"ダーティフェイス"
そしてその言葉は草刈鷲士と結びつく。
「奴がダーティフェイスか」
誤解は時として真実を突く。もっとも、その真実には(仮)が付くのだが。
セントラルパークにおいて、結城美沙と八頭大の不毛なにらみ合いは続く。
「アンタね!私の何処がガキだって言うのよ!!」
「そうやって直ぐに頭に血が上るとこがガキだって言うんだよ!」
不毛な言い争いに鷲士を初め、その場にいる全員が呆れ返っていた。
だが、その場からコソコソと逃げ出す影が在った。
「!?」
忍び足で遠ざかるその影ダニーの姿を見て、大はこの状況の張本人が誰なのか分った。
「テメ!?俺を売りやがったな!!」
即座にダニーの胸倉を掴み上げ,大は凄みを効かせた声でダニーに詰め寄る。
「いや〜、FTIから多額の情報料を貰ってね♪」
その言葉に大の腕に力がこもる。
「ほら、お前も言ってたじゃないか!?金に転ばない奴は信用出来ないって?」
その言葉に大は苦虫をかみ締めた様な顔をする。
確かに言った。倫理に忠実な奴は己の正義に絶対の自信を持つ、正義に忠実な奴ほど騙される。
それゆえに俺は金に転ぶ奴しか信じないと。
その人物の重要性の度合いにて出せる金額は自ずと決まってくる。
ならば、その十倍の金額を掴めばいい。
金が続く限りそいつは俺を裏切らないと。
「どうやら、此方の方が一枚上手だったようね」
勝ち誇った様に美沙が笑う。
(このクソガキ!)
内心で悪態を吐きながら、大はこの状況を打破する術を探っていた。
だがセントラルパークの外では不穏な空気が流れていた。
「ここに、あの卑しいイエローモンキーが居るのだな?」
セントラルパークの入り口にてアメリカ軍の迷彩服を着込んだ大柄な男は問う。
「サー。間違い在りません」
背後に控えた男が答える。その男の背後には、やはり迷彩服を着た二十名ほどの男達が控えていた。
「末に公園付近は封鎖済みです、何時でも突入できます」
別の男は準備の完了を報告する。
「第一目的はプレートの回収。第二目的はメリッサ・パープルトンの身柄の確保。後の者は殺しても構わん」
指揮を取る男の目は狂気に包まれて居た。
「ゆくぞ」
短く号令を掛け男は公園内に踏み入る、その後を男達が続く。
その光景は異様だった。
全員がP90やH&K社のMP5KA4など自動小銃で武装している。
ここまでは良くある話だが、男達の風貌が異様だった。
皆、ギラギラした目をし、殺気と言うより殺人への渇望を感じさせる。
そして皆、身体の一部が金属で覆われているのだ。
「アンタみたいな落ち目のハンターに言われたくないわ!!」
「なんだと!?ガキ丸出しの髪型しやがって!」
公園内では、まだ不毛な言い争いが続いていた。
ダニーは鼻血を出して倒れている。(大の殴られたのだ)
そろそろ止めなきゃ そう考え、鷲士が美沙達に近付こうとした時、不意に鷲士が辺りを見まわす。
「?どうしました父さん」
鷲士の変化に、こめかみを押さえていた樫緒が声を掛ける。
見ると大の方も周囲を警戒している。
「どうしたのよ?」
口喧嘩の相手の突然の変わり様に美沙は訝り、大に訊く。
「気づかないのか?囲まれたぞ!」
「え?」
「美沙ちゃん!こっちに!!」
大の言葉に美沙は辺りを警戒しながら鷲士の元に駆け寄る。
「鷲士くん!?」
「美沙ちゃん、この気は常人の者じゃない」
既に眼鏡を外し、両手にアーマーグローブをはめ完全に戦闘態勢を取る。
樫緒も油断なく構え、冴葉と美沙はそれぞれ銃を取り出す。
そして、その男は姿を現した。
「なんだ?」
鷲士はその男を包む奇妙な雰囲気に戸惑いを感じた。
年齢は50歳位だろうか、鍛えられた身体をアメリカ軍の迷彩服で包み鋭い眼光を持った白人男性。そして、その両腕は義手だっだ。
「ミスター八頭、私の要求は一つ。君の持っているプレートを渡してもらおうか?」
その男は感情を押し殺した声でそう告げた。
「はん!冗談じゃない。これは俺のだぜ!」
そう答えて大はグロック34を抜き放ち、男の眉間にポイントする。
「何言ってんですか!?それは私のです!!」
メリッサが突っ込みを入れながら鷲士の側に寄り添う、美沙の片眉がつり上がる。
「先生、あんまり鷲士くんに近付かないで!」
「だって。あの人、何か変よ!?」
そう言ってメリッサが現れた男を指差す、男は低く笑い。
「これは失礼。私はアメリカ軍 特殊部隊 機械化小隊の隊長 ジェイムス・ゲイルマン、宜しくお見知りおきを、メリッサ・パープルトン教授」
「機械化小隊?」
その言葉に美沙が反応すると。
「聞いた事が有ります。米軍の一部勢力が独自に来訪者の遺跡を調査、その超技術を利用して様々な実験を行なっていると」
冴葉はそう説明する。
「つまりアイツは来訪者バージョンのチューンマンって訳ね」
その言葉に男、ジェイムス・ゲイルマンは醜く顔を歪ませる。
「我々は最強の兵士だよ」
第七章 戦闘
セントラル・パークにて鷲士達と対峙する男、ジェイムス・ゲイルマンは低く笑う。
「我々機械化小隊は最強の兵士に為るべく生み出されたエリートなのだよ!さあ、大人しくプレートを渡せばよし。さもなくば!」
だが八頭大と言う男は一筋縄でいく男ではない。
「やかましい!!」
そう言ってグロック34をゲイルマンに向け発砲。 それが始まりの合図となった。
「パープルトン教授を除き、皆殺しにしろ!」
銃弾を右手の義手で防いたゲイルマンの合図と共に付近に隠れて居た機械化小隊が鷲士達に襲いかかってきた。
だが鷲士は慌てなかった、伏兵は戦術の基本である。
なにより鷲士は気を感じ、隠れている事が分っていた。
四方から襲い来る機械化兵士に向かい、鷲士は一気に跳躍!右正拳を叩き込む。
―九頭・右竜徹陣―
機械化兵士の腹部に拳がめり込む。兵士は強烈な打撃を受け、背後にいる仲間共々吹き飛んだ。
「鷲士くん!すご〜い!!」
その光景を見て、美沙が感嘆の声を上げる。
事実、鷲士の技の切れは凄まじく、襲い来る兵士を軽々と吹き飛ばす。
機械化小隊はそれぞれがサイボーグ手術を受け、筋力を大幅に強化され、高出力の放電装置とチタン・ブレードを搭載している。
9ミリ・パラペラム弾くらいなら筋肉が容易く弾き返す。
美沙や冴葉それに大の使う拳銃は足止め程度の意味しかなさない、だが鷲士の技は確実に兵士を吹き飛ばし、剄を使い内部に威力を浸透させ相手の行動力を奪う。
かつて、九頭竜の師匠 鈴木哲郎より気脈を操る術を伝授され、鷲士の戦闘力は飛躍的に高まった――人間相手には危険な程に。
それゆえ、鷲士はミュージアムの戦闘員や先の八頭大との戦いにおいて、かなりの手加減をしていた――相手を殺す事が無い様に。
そして、幾人の兵士が鷲士一人に倒されたのを見て、機械化兵は第一目標を鷲士に定めた。
四方から鷲士に向かい電撃が放たれる、だがそれすらも無意味だった。
―九頭・左竜雷掌(改)―
本来、一点に集中されるべき生体電流を気の力で増幅、周囲に電撃のシールドを張る。
その電圧は機械化兵の電撃より高く、敵の電撃を弾き飛ばす。
そして、怯んだ敵に向かい突き進む。
―九頭・右竜翔扇―
敵の集団に向け右手が霞む。次の瞬間、機械化兵は空高く吹き飛ばされた。
鷲士の後ろで飛ばされた兵士が大きな音を立て地面に激突する、機械化により体重がかなり重たくなっている為、衝撃は兵士を戦闘不能にするには十分だった。
「九頭竜ってのは、やっぱり人間技じゃねえな・・…」
その光景を見て大はぼやく様に呟いた。
その時、大の目は背後から美沙に近付く機械化兵を発見した。
「やばい!」
その声に美沙を始め、敵を吹き飛ばしていた樫緒や牽制をしていた冴葉が、美沙の背後から近付く機械化兵に気付く。
だが、一瞬反応が遅れた為、樫緒も冴葉も間に合わなかった。
振り返る美沙に機械化兵のチタン・ブレードが振り下ろされる。
「!!………?」
思わず目をつむった美沙はブレードが何時まで立っても振り下ろされない事に気付き、恐る恐る目を開けてみる。そこには黒い手袋で兵士の腕と頭を掴んだ八頭大がいた。
「大丈夫か?」
そう言ってウインク一つして見せる大の両手は電撃を放ちながら機械化兵を痙攣させていた。
―九頭・左竜雷掌―・…(?)
「もしかして…・・九頭竜?」
半ば見慣れた光景に、美沙はそう聞いてみる。
しかし大は少々呆れた顔をして。
「あのな?これはE−グローブっ言って電源内蔵の高圧電流を流す代物さ。最大一万ボルトまで出せるんだぜ!」
黒焦げになった兵士を放り投げ、大は腰に手を当て大威張りしている。
勿論、スイッチを切って。
その大を見る美沙の目に妙な光が宿る…・正確にはE−グローブにだが。
「それ!頂戴!!」
突然、美沙が大の手を取り、E−グローブを脱がそうとする。
「ばか!危ねえだろうが!?」
グローブを脱がそうとする美沙、それに抵抗する大。
二人の攻防は続く・…関係のない所で。
既に大多数の機械化兵が鷲士一人に倒されていた。
「馬鹿な・・…我が機械化小隊が・・…たった一人の人間に…」
悪夢のような光景に、ジェイムス・ゲイルマンは半ば茫然自失となっていたが自らの不利を悟り、兵士に撤退命令を出す。
「覚えていろ!この借りは必ず返す!!」
月並みな捨てゼリフを残し、ゲイルマンは小隊の生き残りを率いて撤退した。
「どうやら撤退した様ですね。」
銃を収めながら冴葉はそう嘆息する。
機械化兵には銃が通用しなかった為、冴葉達はかなりの苦戦を強いられた。
「鷲士く〜ん!」
戦いが終わり、一息付く鷲士に美沙が駆け寄る。
「怪我は無い?」
心配そうに美沙が聞いてくる。
「大丈夫だよ。美沙ちゃんや樫緒くんは?」
美沙を連れ、冴葉や樫緒の居る方へ進む鷲士。
「あの程度の敵に後れを取る僕じゃありません。」
樫緒が澄ました顔で答える、その横でメリッサが微笑ましそうに見ていた。
だが美沙は八頭大が居ない事に気が付いた。
「そう言えば、アイツは?」
一同が辺りを見まわすと、公園を出ようとしている大を発見した。
「あ〜!逃げた!!」
美沙の声に見つかった事に気が付いた大は振り返り。
「じゃあな。」
そう言って走り去ろうとした。
「あ〜!?逃げるなんて卑怯よ!!」
「はん。八頭の辞書に正々堂々なんて言葉は無いんでね!」
「待ちなさいよ〜!この卑怯者!!」
グロックG26を構えた美沙の視界から大は高笑いをしながら消えていった。
第八章 インターミッション
「くそ〜!逃げられたか〜!!」
額に青筋を立てて美沙は悔しがった。
「中々、しぶとそうな人でしたね」
のほほ〜んとした口調でメリッサが感想を述べる。
「しかし、あの男は何故プレートの事を?」
樫緒は冴葉に問いかける。
「判りません、しかも彼等の目的にパープルトン教授まで含まれている」
「米軍が何故、プレートとパープルトン教授を狙うのか?何か裏が有りそうですね」
冴葉と樫緒は米軍の介入という事態に、きな臭い物を感じていた。
「とにかく、一旦FTIの支社に戻り、今後の対策を練りましょう。アメリカ政府の動きも気になりますし」
冴葉の提案に一同は一旦、支社の方に戻る事にした。
だがその時、冴葉は顔面を腫らした男が気付いた。
「いたた…あいつめ!思いっきり殴りやがって!?」
先ほど大に殴られ気絶いていた男、情報屋ダニーであった。
「まあ、いいか。こっちは金さえ貰えばいいんだからよ」
ダニーはそう言って立ち上がる。しかし、目の前に立ち塞がる影に気がついた。
「?誰だい、あんた?」
「申し訳在りませんが、ご同行願えませんか?」
口調は穏やかだったが、冴葉の手にはワルサーPPK/Sがあった。
「はい」
こうして一行は一旦支社の方へ戻る事に為った、客人と一緒に。
ニュヨークー支社に戻って、冴葉は精力的に事後処理を指揮する。
公園内に放置された敵の死体を回収、アメリカ政府に対する牽制、そして軍に対する情報収集、冴葉の指揮は的確に進む。
そして子猫様達は近くのホテルでコーヒーを飲んでいた。
「で?八頭は一体何を調べていたの?」
子猫様は目の前で簀巻きに成っているダニーに尋問する。
「あのね、お嬢ちゃん。俺もこの仕事で飯を食っているんだぜ!話す訳無いだろう?」
ダニーは頑として口を割ろうとはしなかった。
「ふ〜ん。そう言う態度取るんだ〜〜〜♪」
子猫様の顔に邪悪な笑みがよぎる。
「樫緒?」
美沙に声を掛けられた樫緒はため息を一つ付いた後、力を開放する。
「な!?なんだこりゃ!!」
ダニーはまるでコンクリートで固められた様に身動きが出来なくなった。
「あの〜美沙ちゃん。あんまり乱暴な事は・…」
その光景を見ながら鷲士はそう言葉を掛ける、美沙は少し不満げな顔をしていたが。
「まあ、鷲士くんがそう言うのなら仕方ないわね」
だが言葉とは裏腹に、美沙の顔に邪悪な笑みがこぼれる、その横ではメリッサが何かを期待するような目で見ていた。
「大丈夫よ。痛い事はしないから・…むしろ愉しいかもよ♪」
そう言って、美沙は近くに飾られて居た孔雀の羽を一本取り出した。
「んふふふふふ」
邪悪な笑みをしながら美沙は恐怖に引きつるダニーの足元に回り、その靴を靴下ごと外す。
「一体何を・・…まさか!!!!!」
突然、足の裏に風が掛かり、ダニーは顔面蒼白に成った。
「えい♪」
絶妙なタッチで美沙は足の裏をくすぐる。
「ひひゃあああああああ!」
「うん。いい反応!何処まで耐えられるかな♪」
子悪魔は之でもか之でもか、と言うくらい足の裏を擽る。
樫緒はこめかみを押さえているし、メリッサは嬉しそうに見ている。
「にひゃかぁぁぁぁはははは!そこのひひゃぁ助けてくれぎゃひゃはははは!」
ダニーは息も絶え絶えに鷲士に助けを求める。
「あの〜美沙ちゃん?そろそろ止めてあげたら?」
あまりの光景に、鷲士がそう助け船をだす――もしかして、こういう趣味が有るのだろうか?
「鷲士くん甘―い!さっさと喋ればいい事よ♪」
そうしている内も美沙の手は休まない。
「ひゃははははははは!わかっちゅあうあうああた!喋る!喋るから!!!!!!」
ダニーの絶叫がホテルの部屋に響く。
「さて、喋って貰おうかしら。」
ソファーに座り、コーヒーを飲みながら美沙はダニーにそう問いただす。
そこには息も絶え絶えなダニーがグッタリしていた。
「分っているだろうけど?もし、嘘言ったら今度は二人掛かりよ♪」
美沙の横には孔雀の羽を持ったメリッサが待機していた。
「分ったよ。実は八頭はナスカの地上絵について調べる様に依頼してきたんだ」
「ナスカの地上絵?なんで?」
ダニーの言葉に美沙はびっくりした声を出す。
「さあ?そこら辺は判んねえ。ただ、地上絵よりもその近くに在る伝承を重視していたぜ」
ダニーの言葉に美沙は暫し考える。
「どうやらメリッサさんの言っていた竜脈を操る四つの遺跡って話、信憑性が出てきたわね。トリプルGの八頭が動き、米軍の機械化小隊まで動き出した」
「まずは、機械化小隊の動向を把握しておかなけりゃね。アイツ等、ペルーに先回りしてるでしょうからね!」
愉しそうに美沙は言葉を続ける。
「んじゃ!行きましょうか。ナスカの地上絵へ!!」
翌日、一行はペルーを目指す。
ペルー共和国。国土は日本の3.4倍、人口約2400万人。
FTI一行はチャーター便にて首都リマのフォルヘ・チャベス国際空港に到着したのは午後の事だった。
「ん〜やっと着いた!」
美沙は大きく背伸びをして身体をほぐす。
「ボス。ボリーバル・ホテルに部屋を取って有ります。まずはホテルに落ち着いてからにしましょう」
冴葉の提案により、一行はまずホテルへと向かう。
だが、その場にいる者は誰も気付いていなかった。
柱の影から一行を見ている男の存在を。
「美しい…」
それは、あの拷問部屋の主、ジル・ヘイドマンだった。
何かおかしい。
このペルーに着いてから、鷲士は度々感じていた。
「気の流れがおかしい・…」
アメリカからチャーター便にてペルーに近付くにつれ、鷲士は妙な違和感を覚えていた。
それが何なのか判らないまま、鷲士はホテルの部屋に荷物を置いて、美沙の部屋に向う。
既に、皆は美沙の部屋に集まっていた。
「先ほど、重大な事が判明しました」
冴葉はそう前置をしてから話だした。
「ニューヨーク支社からの報告に寄りますと。敵兵士の遺体を解剖した結果、確実に来訪者の技術が転用されています。具体例としまして、脳内にオリハルコンの脳波発信装置が確認されております。兵装としては電撃発生装置、チタン・ブレード、これは我々が持っている技術です」
その報告に美沙は苦虫をかみ締めたような顔をして。
「来訪者の技術なんか軍事用に転用されたら世界は無茶苦茶になっちゃうよ」
その点についてはご安心を と冴葉は美沙の懸念に答える。
「このような状況は最初から予想済みです。各国軍部により一層の圧力を掛けて行く手はずになっております」
才女は冷静に答える、事実上FTIを切り盛りしているのは彼女なのである。
「後、機械化小隊ですが、軍部からの情報を分析した結果。彼等は現在、軍部の指揮下から外れております」
「どう言う事?」
「つまり、彼等は脱走兵と言う事になります」
冴葉の言葉に美沙は驚いた、つまり機械化小隊は軍を脱走し独自の行動を取っていると言う事になる。
「彼等の背後に何が居るのか、現在調査中です」
冴葉の報告はそう締め括られた。
「つまり、彼等は米軍の為にプレートを求めて居た訳ではないと?」
樫緒は冴葉にそう訊ねる。
「はい」
その返事に樫緒は眉間に皺を寄せ。
「それはやり難いですね。何時もの様に政府に圧力を掛けても効果が無い、と言う訳ですね」
「そうです。情報によれば脱走した機械化兵は50名、先の公園での襲撃には大体20名。後30名はいる事になりますね」
冴葉は淡々と計算する。
「ま、いいじゃない!今度会ったらまとめてスクラップにしてやるわ!!」
美沙はその場の雰囲気を和ませようとわざと元気な声を出す。
「取り合えす問題のナスカの地上絵に行って見ようか?何か判るかもしれないし」
そして、FTIの一行はナスカの地上絵を目指す。
そこには世界の存亡を賭けた戦いが待っている事も知らずに。
第九章 インターミッションU
「ふぅ」
リマ市内に在るボリーバル・ホテルより、少し離れた所に在る喫茶店内にて金髪の美女は携帯のスイッチを切って一息付く――メリッサだった。
「連絡は付いたけど、アイツはあんまり当てに出来ないからな〜」
メリッサはそう言って携帯を見る。
美沙の号令の下、FTIのスタッフは機械化小隊の動向と、現地調査などをしながら、ナスカの地上絵に行く為の準備をしていた。
準備が終わるのを待つ間、手持ち無沙汰のメリッサは一人で近くの喫茶店に来ていた。
ゲイルマンに狙われるメリッサの単独行動など鴨が葱を背負って来た様なものだ。
だが、彼女には単独行動する理由が有った。
「さて、美沙ちゃん達が心配しているだろうから早めにホテルに帰えらなきゃね」
言い訳をとうしょうか?などを考えつつ、メリッサはボリーバル・ホテルへと向かう。
その時、通りの先にある教会に人が集まっているのが目に止まる。
なんだろう?小さな好奇心からメリッサはその教会へと向かう。
「真紀。綺麗だったね…」
聞きなれた声が見慣れた人影に囁かれる、宮前麗華と麻当美貴だった。
美沙との電話にて話が出ていた友人の結婚式とは、このペルーにて行なわれていた。
カト女時代の友人、貿易商を父に持つ来栖州真紀はこのペルーに旅行に来ていた時、現地青年と運命的な出会いをし、熱烈な恋愛のすえ父親の反対を押し切ってゴールインしたのだった。
最後には父親も折れ、この結婚式にて号泣していた。
「ねえ、聞いてる?」
美貴の反応が無いので、麗華は再度美貴に話しかける。
「・…………」
「美貴?・…妄想モードか・・…駄目だこりゃ」
麗華の目の前で美貴は焦点の合わない瞳で何やらブツブツ言っていた。
「何時か・…ウフフ・…私も…フフ……しゅうくんと…・・」
傍から見ると危ない人である。そして麗華はウエディング・ドレス姿の友人の所に行ってしまった。
もっとも美貴は全然気が付かないが。
その場に立ったまま、妄想に花を咲かせる美貴は意外な声で正気に戻る。
「あら、麻当さん?奇遇ね〜」
その声に美貴は弾かれた様に声のする方を見る。
「ゲゲ!パープルトン教授!?」
「何、その顔は?」
余りに意外な人物に美貴はそのまま絶句してしまった。
(なんで!こんな所にコイツが居るのよ!!!!!)
心の中で美貴は絶叫した。
「豪勢な結婚式ね。貴方のご友人の方の結婚式なの?」
美貴の心の絶叫など気付きもせずに、メリッサはそう聞いてくる。
「え、ええまあ。そう言う教授こそどうしてここに?」
「ちょっと、用事が有ってね」
美貴の社交辞令にメリッサは律儀に答える。
二人は止め処も無い話を交わす。
もっとも美貴は早く話を切り上げて、この場を立ち去ろうとしている。
美貴にとって鷲士の側に居る女性は皆、敵なのである。
美貴が冷酷な結城モードに成らないのは、ここが友人の結婚式場であり、メリッサが相模大の教授だからである。
「それじゃあ、私は友人に挨拶しなければならないので」
そう言って美貴はその場を離れようとする。
「あ、麻当さん♪」
美貴は妙に愉しそうな声に眉をひそめながら振り返る、そこには妙に悪戯っぽい顔のメリッサがいた。
「何でしょう?」
「貴方がゆ・う・ち・ゃ・ん・でしょう?」
メリッサの爆弾発言に美貴は真っ青になった。
(な!なんで、知っているのよ!!!!!この女が!?)
凄まじい形相で美貴はメリッサを凝視する、その間にも美貴の顔は目まぐるしく変化する。
(どうして!?まさか鷲士から訊いたとか!・…いや、あの鷲士が気付くとは思えないし・・…そう言えば!美沙!!あの子はこの女と仲が良かったし!)
殆ど言いがかりのような事考えている美貴を、さも面白そうにメリッサは見ていた。
「あのね、殆どバレバレだと思うわよ?」
メリッサの言葉に美貴は絶句した、その表情を見てメリッサは笑いながら。
「だって、そっくりじゃない?貴方と美沙ちゃんって。姿形だけじゃなく、中身がね♪」
その言葉に美貴は混乱した、確かに美沙は幼い頃の自分にそっくりだ。
中身は…私はあそこまで無茶苦茶じゃないぞ と。
目を白黒させる美貴を見て、メリッサは微笑む。
その姿に、美貴はメリッサにカマを掛けられた事に気付く。
(う〜!してやられた!!)
悔しそうな美貴を見て、メリッサはまた笑い出す。
「大丈夫!草刈君に話したりしないから」
その言葉に美貴はメリッサを見る。
「自分から告白したい?それとも草刈君に気付いて貰いたい?女心って複雑よね」
美貴はその時初めて気が付いた、メリッサの瞳が優しい光に満ちている事を。
「草刈君も薄々気が付いているのかもね……けど、彼の中にはある種の恐れ…拒絶される事への恐怖の様な物を感じるわ」
メリッサの言葉に美貴は柳山側海岸における鷲士といづなの会話を思い出した。
『ショックでした…怖いっていうより…裏切られたことがです…頭の中は、ぼくはいらないんだ…必要ないんだって・…』
「しゅーくん・…」
その事を思い出し、美貴は悲しげな表情をする。
美貴の表情を見てメリッサは勤めて明るい声を出す。
「今、草刈君達もこのペルーに来ているのよ」
「え!?鷲士が!」
メリッサの言葉に美貴は驚きの声を上げる。
「麻当さん、貴方も一緒に来ない?草刈君には貴方の支えが必要なのよ」
「教授…・」
「それにね?告白するには近くにいる方が何かと便利よ♪」
メリッサの声には限りないほど優しく聞こえる。
「教授、有難う御座います」
「メリッサで良いわよ」
美貴に向かってウインクするメリッサ。
「麻当さん。私達、良い友達になれると思うわ」
美貴に向かって微笑むメリッサ。
その表情に美貴は年上の姉を得たような気分になった。
そして美貴は麗華を誘い(無理矢理連れて)メリッサと共にボリーバル・ホテルへと向かった。
第十章 "芸術家"のアトリエ
美貴達を連れ、メリッサがボリーバル・ホテルに戻った時、ホテル内のFTIのスタッフは
大騒ぎをしていた。
「どうしたんだろう?」
あまりの騒ぎ様に美貴は疑問の声を上げる。
「さあ?私がホテルを抜け出したぐらいで、ここまで大騒ぎをするとは思えないし」
メリッサ達が首を傾げていると、美沙の部屋から冴葉が慌しく出てきた。
「あ!冴葉さん!」
メリッサが冴葉を呼びとめる。
「教授!?良かった。ご無事だったのですね」
厳しい表情のまま、冴葉はメリッサ達に近付いて行く。
「美貴さん?それに確か宮前さんでしたわね?」
どうしてここに?と冴葉は硬い表情で訊く。
「実は街で偶然出会ったのよ」
メリッサはそう答える。普段なら冴葉ももう少し事情を問いただすだろうが、今はそれだけの余裕が無かった。
「何かあったんですか?」
美貴の問に、冴葉は厳しい表情のままに答えた。
「実は1時間前にボスの乗った車が行方不明になったんです」
その言葉にメリッサや麗華は驚いた。中でも美貴は顔面蒼白になり冴葉に詰め寄る。
「一体どう言う事!?美沙が行方不明ですって!!」
美貴の狼狽ぶりに冴葉は鎮痛な趣で答えた。
「実は三時間ほど前、ペルー政府にナスカ(インヘニオ)平原を封鎖させる為にボス自らが大統領府に赴かれたのです。そして、先ほど大統領の許可は得たと言う連絡を最後にボスとの連絡は途絶してしまったのえです」
冴葉の声に悲痛な色が見え隠れする。
「現場に急行したスタッフに寄れば、付近の目撃者の証言では北欧系の不審な男性が信号待ちをしていたボスの車に近付き、ドアを開けて乗り込みそのまま逃走したと」
冴葉の言葉に美貴と麗華は顔面蒼白に成り
「誘拐され・…た…美沙が・・…」
「そんな…あの子が・…」
二人共かなりのショックを受けていた。
「鷲士さんと樫緒さんも捜索隊に加わり、現在FTIの総力を上げてボスの行方を捜しております」
だが二人共、冴葉の声が聞えないほどショックを受けていた。
中でも実の母親である美貴はあまりの衝撃にフラフラと倒れそうな程だった。
「冴葉さん。美沙ちゃんを連れ去ったのは北欧系の男だった、そうですね?」
三人の会話中、何か考え込んでいたメリッサはそう問いただす。
「はい。身長190程のほっそりとした男だそうです」
冴葉の言葉にメリッサは暫し考え込み
「このペルーで北欧系の男なら、かなり目立つでしょう。何処か郊外に潜伏していると考えるのが妥当ね…冴葉さん、私も捜しにいきます」
メリッサの言葉に冴葉は眉間に皺を寄せ
「いけません!お忘れですか!?貴方も狙われているんですよ!!」
「私は昔、このリマに滞在していた事があります。この街なら裏まで知っています、任せてください。何か情報を手に入れてきましょう」
メリッサの言葉に冴葉は暫し考える、普通ならそんな危険な橋を渡らせなかっただろうだが、美沙を誘拐されたと言う事実が、才女を大きく動揺させていた。
「判りました、そちらの方はお願いします」
そう言って冴葉は近くにいたスタッフに報告を求めに行った。
「メリッサさん!お願い、私も一緒に連れていって!!」
美貴は悲痛な声でメリッサに頼み込む、だがメリッサは首を縦に振らなかった。
「美貴さん、貴方はここに居て。誘拐犯から何か連絡が来るかもしれないし、ここは私に任せておいて」
優しい瞳で、狼狽する若い母親を説得する。
「麗華さん。美貴さんの事、お願いね」
メリッサは麗華に美貴の事を頼む、帰りの道で三人は色々話しながら帰ってきた。
その時、メリッサは麗華こそ美貴の心の支えになっている事を知った。
美貴を麗華に頼み、メリッサはホテルを後にした。
リマ中心部から南に少し外れたミラフローレス地区。
そこに立つ小さな屋敷。既に人が住まなくなって久しいのか、荒れ放題だった。
二階建ての屋敷の一階部分に明りが灯っている。
そこに美沙は居た。
食堂だったのだろうか、大きなテーブルを中心に十個ほどの椅子の一つに美沙は座っていた。
目立った外傷は無いが、両腕は椅子ごとロープで拘束され顔には目隠しがされていた。
しかも驚く事に拘束されているのは美沙だけでは無かった。
そこに在る椅子全てに金髪の女性達が拘束されていた。
「う、ん〜」
目隠しされ、身体の自由を奪われた美沙がうめき声を上げる。
今まで気絶していたのが、目を覚ましたのだろう。
暫く身体を動かし、美沙は自分が拘束されている事に気が付いた。
(確か・・大統領をど突き倒して…車でホテルに戻ろうとしてたら…いきなり車の中に変な男が乗り込んできて・・…)
そこで美沙の記憶は途切れていた、多分そのまま眠らされたのだろう。
何とかして、みんなと連絡を取らないと。美沙はそう考え、何とか身体の自由を奪うロープを緩め様と、身体を動かす。
ジタバタと騒いでいる美沙の耳に扉の開く音が聞える。
「!?」
誰かが入ってきた。美沙はその気配を感じ、騒ぐのを止め必死になって気配を感じ様とする。
そうすると周りの方からすすり泣く声が沢山聞えてくる。
自分だけじゃ無い。その事実に美沙は安堵と恐怖を覚えた。
最初はミュージアムに捕まったのかと思った、しかし他にも誘拐された者がいる以上、その線は薄まる。なら何故?そこで美沙は一つの考えに到達する。
(私が余りに、きゃわゆいから誘拐された!)
美少女って不幸、などと余裕のあるボケをしながらも美沙は油断無く気配を探る。
「おや?随分と毛並みの違う獲物が掛かった様ですね」
耳障りな英語が美沙の耳に飛び込んでくる、えらく陰気な声だ。
「誰よ、アンタ?」
内心の動揺を隠し、美沙は勤めて冷静に問いただす。
「私の名はジル・ヘイドマン。至高の芸術家です」
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