DADDYFACE ShortStories
「異伝弍 世界を継ぐ者」第1部(3)
written by SOUL

この話は、DFの世界に、菊池秀行氏のエイリアンシリーズと、
皆川亮二氏のスプリガンが登場します


第十一章 傷
「私の名はジル・ヘイドマン。至高の芸術家です」
 陰気な声で男は名乗った。
「何故、私を?」
 美沙は精一杯の虚勢を張りながら相手――ジル・ヘイドマンと名乗る男に問い掛ける。
「私は芸術をこよなく愛しております、それゆえに美しい物を留めて置きたい。そう考えております」
「それは光栄ね」
 美沙の声は限りなく冷たい。
「芸術をあ・い・し・て・い・る・?ハン!馬鹿じゃないの!!他人の迷惑考えなさいよ!」
 美沙の怒声を受けても男、ヘイドマンは涼しい顔をして。
「貴方のお怒りは当然です。ですが、芸術の為には個人の意志など道端の小石程度なのです。大丈夫、ここには貴方だけじゃない!沢山の美しき素材があります」
 もし美沙の目隠しが無かったら見えていただろう、ヘイドマンの目に灯る狂気の光が。
 二人の話を聴き、誘拐された者達―金髪の女性達が己が運命を悟り、泣き叫ぶ。
 だが美沙只一人は最後まで望みを捨てなかった。
(コイツは本物の異常者だ…けど、みんなが私を捜している筈。少しでも時間を稼がなきゃ)
 美沙は常に自分と共に居る、信頼できる仲間達の事を思い浮べた。
「はん!まるでミュージアムね!!」
 美沙の悪態は思わぬ反応を引き出した。
「ミュージアム?おや、貴方はミュージアムをご存知でしたか」
「へ?」
 ヘイドマンの言葉に美沙は驚く、思わず言葉になっただけのセリフに相手が反応するとは思って無かったのである。
「流石FTIの会長だけの事は在る。実は私は驚いたのですよ?まさかFTIの会長が、こんなにも美しい少女だったなんて」
 その言葉に美沙は心底嫌そうな顔をする。
「是非、私のコレクションに加えたい!そう思い、少々無理をしてでも貴方を迎えに行った訳です」
 誰も頼んでないわよ。と美沙は舌を出して文句を言う。
「中々理解しては貰えないようですね」
 ヘイドマンはひどく落胆する。
「本来、私は金髪の美しい女性を芸術の対象にしていました。ですが、貴方を一目見た時から!私の心は貴方に奪われたのです!貴方の様な未完の存在が己の未来に絶望し恐怖に絶叫する。それは世界に燦然と輝く物となるでしょう」
 その言葉に美沙は背筋が寒くなった――この男は狂っている。
 そして、ヘイドマンは美沙の目隠しを取り外す。
 美沙の目に神経質げな男の顔が写る。
「さあ、見せてください!貴方の中に在る恐怖を!!不安を!!」
 ヘイドマンの瞳が妖しく光る
 その赤い瞳が美沙を捉える、思わず目を背けようとするがヘイドマンによって顔を固定される。
 正面から美沙の瞳を凝視するヘイドマン、その妖しい光に美沙の瞳から理性の光が薄れていく。
(鷲士くん・……)
 その思いを最後に、美沙の意識は混沌の中に消えていく。

「ここは?」
 次に目を覚ました時、美沙は大地に倒れていた。
 頭を軽く振りながら美沙は自分の置かれた状況を思い出そうとする。
「確か変な男に誘拐されて、椅子に縛り付けられていた筈なのに?」
 美沙は立ち上がり、付近を見まわす。
 そこは港に面した倉庫の側だった。
「…!?、ここって!」
 その倉庫を見て、美沙はここが何処なのか思い出した。
「ここは…私が力に振りまわされて・…自分を見失っていた場所…」
 かつて美沙は己が血に流れる訪い人の力が覚醒し、その圧倒的な力に飲み込まれ人としての意思を失った事が有った(異伝 力を継ぐ者)。
その時、鷲士と樫緒の必死の呼びかけで美沙は己を取り戻す事が出来たのだった。
「どうして、こんな場所に?」
 美沙は何故こんな場所にいるのか判らず、混乱していた。
(もしかして、さっきのは夢!?)
 だが夢と言うには現実感が有り過ぎていた。
 ヘイドマンと名乗った男の赤い目を美沙は覚えていた。
 訳が判らず美沙は取り合えずその場を移動した。
「鷲士く〜ん!!樫緒!!冴葉ちゃ〜ん!!」
 近くにいるのではないか?そう思って美沙は三人の名を呼んだ。
 暫く三人を捜してみたが、誰一人としてここには居なかった。
「みんな―!どこに行ったのよ!?」
 美沙は三人を捜すが、答える物は居なかった。
 歩きつかれた美沙はふと、目の前に在る倉庫に気が付いた。
(もしかして、みんなこの中に居るのかな?)
 不安を感じながらも美沙は、倉庫の重い扉を開く。
 中に明りは無く、薄暗かった。
「鷲士く〜ん!?」
 倉庫の中に呼びかける美沙は、倉庫の奥に何か在る事に気が付いた。
 なんだろう?そう考えながら、美沙は倉庫の中に進んでいく。
 奥に在る物は積み重ねられた木箱だった、しかしその箱には血か付いていた。
「なによ?これ!?」
 美沙は箱の横にまわる。そして、そこには信じられない物があった。
「冴葉ちゃん!?」
 箱の横に在る物。それは全身を血だらけにし、既に息絶えた冴葉の亡骸であった。
「うそよ!?どうしてこんな!!冴葉ちゃん!!!!!!」
 冴葉の亡骸にすがり付き、必死に揺さぶる美沙。
 泣き叫ぶ美沙の目に、箱で隠れていた壁が目に止まる。
「!?!!!!!!樫緒!?」
 その壁には腹部を大きく引き裂かれた樫緒の亡骸が拠りかかっていた。
「樫緒!!どうして!?…何で!!!!!!!!」
 事切れた己が半身を抱き上げ、美沙は樫緒の亡骸を抱き締め泣き叫んだ。
「うそよ!?どうしてこんな事に!!」
 そして、美沙の目の前の地面に右腕と両足を切断された鷲士の遺体が横たわっていた。
「鷲士く・ん・……鷲士くん!!!!」
 横たわる鷲士の遺体に駆け寄った美沙は、事切れ、真っ青になった鷲士の顔に手を添える。
 それはとても冷たかった。
「何で・・…一体誰が……」
 その時、突然辺りに風が巻き起こる。
 その風は積み上げられた木箱を崩し、中から鏡が散乱する。
「!?」
 砕けた鏡に写ったのは、金色の髪をし、翼を生やした自らの姿だった。
 そして、その翼は返り血で真っ赤に染まっていた。
「うそ・…いやぁぁぁぁっぁぁぁっぁっぁあぁぁぁ!!!!!」
 血で赤く染まった両手を見ながら美沙は絶叫した。

「ふむ」
 そこは美沙が監禁されている屋敷の中だった。
 大きなテーブルに座り、ジル・ヘイドマンは興味深そうに美沙を見ていた。
 椅子に縛られ美沙は虚ろな目をしていた、涙を流しながら。
「中々面白い"傷"を持っていますね。」
 美沙の見ている物はヘイドマンの力による幻覚だった。
 しかも只の幻覚ではない。
 その人が持っている恐れ、不安、悲しみなどを相手に幻覚として見せる邪悪な力であった。
「これは、良い作品ができますね」
 そう言って、ヘイドマンは笑う――悪魔の様に。

              第十二章 吸血鬼 
 リマ中心部から南に少し外れたミラフローレス地区。
 そこに立つ小さな屋敷、ヘイドマンの居る悪魔の館に一つの影が忍び寄る。
「ここね」
 既に日は暮れ、その影は暗闇に紛れ屋敷に近付いて行く。
 一階部分の窓からこぼれる明りが美しい金髪を照らし出す、メリッサだった。
 彼女はリマの町で、昔、世話になった情報屋の老婆に北欧系の男の事を尋ねに行ったのだった。
「南に少し離れた所に古い屋敷がある。近頃、誰も住んではおらん筈の屋敷の窓に明りが灯るらしいぞ」
 メリッサは老婆の情報を信じ、この屋敷に来たのだった。
 そして、彼女は音も立てずに窓に近付き、中の様子を窺う。
『これは、良い作品ができますね』
 窓の中で北欧系の神経質そうな男が悪魔の様な笑みを湛え笑っていた。
 大きなテーブルを中心に十人程の女性が椅子に縛られているのが判る。
『悲しいですか?恐ろしいですか?ですがね、それは全て貴方の中にある物ですよ!私はただ、貴方の中に在る漠然とした恐怖を呼び覚ましただけなのですよ』
 あれが、ジル・ヘイドマン。
 メリッサは窓の内側で狂喜する男を見ていた。
(ミュージアムのハイ・キュレーターの中でも特筆すべき、パラノイア)
 ヘイドマンはその悪意に満ちた顔を一人の少女に向け、嬉しそうに笑っていた。
(美沙ちゃん!?)
 ヘイドマンが悪意を向けている先、そこにはメリッサのよく知るツインテールをした少女が座らされていた。
 美沙の無事を知り安堵するメリッサ、だが何か様子がおかしい。
(これは、増援を待っている暇は無さそうね)
 メリッサは腰のホルダーから冴葉に用意してもらった銃―S&W M29 しかも61/2インチモデルを抜く。
 美沙を救う為、一人で突入する決意を固める。
(待っててね、美沙ちゃん)
 メリッサは心の中で呟いた。

 屋敷の中ではヘイドマンが虚ろな眼差しの美沙の顎を持ち、顔を上げさせる。
 美沙の瞳には何時もの様な理知的な光は無く、止め処も無く涙を流していた。
「余りの絶望に心を閉ざしたか、素晴らしい!!正に芸術!!貴方のその姿は混沌とした世界に燦然と輝くでしょう!」
 魂の抜け落ちた様な美沙を見ながらヘイドマンはその邪悪な笑みを深める。
 その時だった。
 突然、窓ガラスが割られ小さな物が投げ込まれる。
 そして、それは一瞬の間を置いて強烈な光を撒き散らす。
「な!何だこれは!!?」
 強烈な光に目を焼かれ、ヘイドマンは目を押さえ後ずさる。
 メリッサが窓の外から、ヘイドマンに向かい銃を向ける。
 そして三つ銃声が響き、ヘイドマンは倒れた。

「きゃぁぁぁぁぁ!?」
 ヘイドマンに誘拐された女性達が悲鳴を上げる。
 だが次の瞬間、女性達は呆気に取られる。
 窓ガラスを叩き割り、一人の女性が窓枠を乗り越える。
 そして、部屋の中に飛び降り様とした時、窓枠に足を引っ掛けそのまま落ちる。
「きゃあ!?」
 意外と可愛い悲鳴を上げてメリッサは床に落ちた。
「あたたたた!?やっぱり慣れない事をするもんじゃないわね〜」
 落ちた時に打ったのか、メリッサは腰を擦りつつ起き上がる。
 その光景に誘拐された女性達は呆然とし、次の反応に苦しんだ。
「怖がらせてごめんなさいね?大丈夫、助けに来たの」
 その言葉に女性達から歓喜の声が沸く、しかし美沙は相変らず無反応だった。
「美沙ちゃん?」
 その姿を不審に思いつつもメリッサは美沙に近付いて行く。
 だが美沙はメリッサが近くに来ても何ら反応を示さない。
 その時、メリッサは美沙が小声で何か呟いている事に気が付いた。
「私が殺した…・鷲士くんを・・…冴葉ちゃんを・…樫緒を・…私が殺した…」
 同じ言葉を何度も呟く美沙の姿にメリッサはその美しい顔を蒼白にした。
「ち、ちょっと!?美沙ちゃん!!どうしたの?」
 片を揺さぶり必死に美沙に呼びかけるが、美沙は何ら反応を示さない。
「無駄だよ。その少女の心は閉ざされている、己が恐怖によってね」
 そこには胸と頭を撃ち抜かれ絶命したはずのヘイドマンが起き上がろうとしていた。
「残念だが、この程度では私は死なないよ」
 見る見るうちに傷口から血が止まり消えていく。
「あら、復活系のハイ・アートでも持っているの?」
 メリッサの言葉にヘイドマンは薄く笑うだけだった。
「ハイ・アートか・…確かにそう言えるかもしれない」
 完全に傷の癒えたヘイドマンはメリッサを小馬鹿にした様に笑う。
 その姿にメリッサは右手に持った銃を構え、穏やかな口調で語る。
「ジル・ヘイドマン。ミュージアムのハイ・キュレーターの中でも最悪の男。貴方の芸術とやらの為に何人の女性が犠牲になったか」
 そこには怒りも殺意も無く、淡々と事実を述べる姿が在った。
「芸術の為には多少の犠牲も仕方がないでしょう」
 そう言ってのけるヘイドマンの目に妖しい光が灯る。
「貴方、素晴らしい金髪をしていますね。さらさらとして、お手入れもちゃんと行き届いている様だ」
 ヘイドマンの邪悪な顔に悪魔の笑みがこぼれる。
「確かに未完成な少女も素材としては良いのですが、私としては金髪の似合う貴方の様な女性にも創作意欲を駆られるのですよ」
 その赤き瞳に邪悪な意志を漲らせ、ヘイドマンはメリッサを値踏みする様に見る。
「えらく金髪にこだわりますわね?…・・もしかして昔、金髪の女性に振られたとか?」
 その言葉にヘイドマンの顔から余裕が消えた。
「あら?正解の様ですわね、しかし案外つまらない理由ですわね」
 そのセリフに怒りだすかと思ったが、ヘイドマンは努めて冷静な声で。
「決めました。貴方は念入りに加工してあげましょう!この私の手によって」
 それが戦いの合図となった。

 ヘイドマンは美沙の時と同じようにその赤き瞳でメリッサの精神を侵そうとする。
 だが、それよりも早くメリッサのS&W M29 が火を吹く。
 その銃弾はヘイドマンの両眼を貫く、凄まじい早業だ。
「ぐぁああああああ!!!」
 銃弾に目を撃ち抜かれ、衝撃で頭蓋骨が砕け脳漿を撒き散らしながら崩れ落ちるヘイドマン。
 勝敗は決した様に見えるが、メリッサはそのまま窓枠を飛び越える。
 そして地面に着地するやシリンダーから空薬莢を排出、ポケットから新しい弾を取り出し装填する。
 装填終了後メリッサは再び窓に向かい銃を向ける、だがヘイドマンは頭蓋が砕け、絶命しているはずだ。
 その時、突然、窓の横の壁が崩れ、ヘイドマンが姿を現した。
 窓にポイントしていたメリッサは一瞬反応が遅れ、ヘイドマンに銃を向けるのが遅れた。
 その間にヘイドマンは距離を一気に詰め、メリッサに襲いかかる。
 だがメリッサはヘイドマンの右のパンチを左手で掴み一気に引き込む。
 そして引き寄せられるヘイドマンの顔面に右肘を叩き込む。
「ぐぁあああああ!!」
 右肘はヘイドマンの鼻柱を砕き、怯んだ隙にメリッサは再び距離を取る。
 ヘイドマンの眉間に銃をポイントし、メリッサは相手の出方を探る。
「ふふふ、中々やってくれますね」
 顔面を血だらけにしながらもヘイドマンの顔に笑みがこぼれる。
 既に血は止まり、鼻も元通りに復元されていた。
「この程度の傷、何でも在りませんね」
 そう言って笑うヘイドマンの唇から大きな犬歯が見える。
 それを見てメリッサは納得した様に頷いた。
「成る程。赤い目、それにその牙、そう言う訳ですか」
 その言葉にヘイドマンは薄く笑い
「貴方は先ほど私がハイ・アートを持っていると言いましたね?」
 それが? とメリッサ。
「確かにハイ・アートと言えるのかも知れない。私はね、来訪者の作り上げた生物兵器ライカンスロープ(獣人)の末裔なのだよ」
 誇らしげに言い放つヘイドマン。
 だが、メリッサは別の言葉を思い出していた。
    吸血鬼と。

第十三章 紅蓮 

 「確かにハイ・アートと言えるのかも知れない。私はね、来訪者の作り上げた生物兵器、ライカンスロープ(獣人)の末裔なのだよ」
 誇らしげに言い放つヘイドマン。
 だが、メリッサは別の言葉を思い出していた。
    吸血鬼と。
 吸血鬼とは、元々19世紀の作家ブラム・ストーカーが各地に伝承される伝説をまとめ、吸血鬼ドラキュラとして世に送り出した事が有名である。
 つまり、吸血鬼の伝説は昔から在ったのである。
 強力な再生能力を持ち、犠牲者の生き血を啜り、常人を遥かに超える能力を持つ。
 そして彼等は魅了の力を持つと言う。

「成る程、美沙ちゃんが心を閉ざしたのは、貴方の所為って訳ね」
 メリッサの顔に初めて怒りの色が浮かぶ。
「そう!私の魅了の力は相手の精神を操る物、アレンジしだいでは相手の強い感情を操る事も出来るのですよ」
 大きな牙を生やしたヘイドマンの口が醜く歪む。
「あの娘は常に心に恐怖を抱えていた、常人とは違う己の力が周りの人間を傷付けてしまうのでは無いかと。私はその恐怖をほんの少し意識の表面に出したにすぎない」
「吐き気がしますわ!」
 ヘイドマンの言葉をメリッサは怒りを込めて中断させた。
「貴方達ミュージアムは何時もそう!己の力を誇示し、他者を虫けら程度にしか思っていない!私は貴方達を許さない」
 何時もの穏やかな雰囲気など微塵も感じさせない程、メリッサの怒りは頂点に達していた。
 だが、そんなメリッサを嘲笑いながらヘイドマンは愉しげに訊く。
「ほう、許せないですか?ではどうします?そんな豆鉄砲では私は倒せませんよ?」
 確かに、メリッサが部屋に突入した時に銃弾を三発、そして両眼にそれぞれ一発ずつ銃弾を受けている筈なのにヘイドマンには何ら傷跡は無い。
「吸血鬼の再生能力って言う訳ですね」 
 底冷えのする様な声で、メリッサは呟く。
「そう!私に取って銃弾など何ら意味を成さない・…ちなみに伝説に在るような白木の杭を打ち込んだ所で私を滅ぼす事は出来ませんよ?」
 自分の圧倒的優位を確信し、饒舌になるヘイドマン。
「判りますか?この私は古代人が作り上げた最高傑作!無限の再生能力を持ち、常人を軽く凌駕する力を持っている!私こそが最高のハイ・アート!神の力を持っているのです」
 だがそんなヘイドマンに向かい、メリッサは嘲笑を投げ掛ける。
「神の力を持っている?…古代の亡霊ふぜいが偉そうに!」
 そこには普段ののほほ〜んとした感じのメリッサは無く。
 冷たい瞳の、まるで別人の様なメリッサが居た。
「貴方程のクズに出会ったのも久しぶりですわ…いいでしょう、この私が貴方を髪の毛一本残さず消滅させてあげましょう」
 そう言い放ち、メリッサは右腕を上げ指を鳴らす。
 途端、指先から数cmのところに直径50cmの真っ赤な火球が前触れも無く現れる。
「な!?」
 その光景に驚愕の声を上げるヘイドマン。
 そして、その火球は凄まじい勢いでヘイドマンに向かって突き進んでいく。
「うおぉ!?」
 迫り来る火球をヘイドマンは何とか避けたが、火球から放たれる熱波により髪の毛や服の一部などが発火し燃え上がる。
「ぐぁあぁっぁぁぁ!?」  
 火を消そうと大地を転げまわり、何とか髪や服の火を消した。
「はあ、はあ、一体何が…」
 何とか火を消し、荒い息をしているヘイドマンに向かってメリッサの嘲笑が降り掛かる。
「どうしたの?神の力を持っているんじゃなかったの?」
 メリッサの指が次々と打ち鳴らされる、その音に呼び出される様に次々と火球が現れヘイドマンを襲う。
 直径10cm程の火球が無数に現れ、逃げ惑うヘイドマンに襲いかかり付近を火の海にして行く。
 屋敷の方を除き付近は火の海になっていた。
「はあ、はあ、貴様はまさか!?発火能力者!火炎魔人か!?」
 発火能力者―任意に火種を作りだし、火の気の無い所に炎を発生させる特殊能力者である。
 炎に照らし出され、メリッサは普段の表情からは想像も付かない様な妖艶な表情をしている。
 そして、メリッサの美しい金髪は炎に赤く照らし出されていた。
 その色を一言で表現するならば『紅』であろう。

「貴様は一体?……・・!?」
 メリッサを睨みつけるヘイドマンの顔に驚愕が浮かぶ。
「封印者の火炎魔人は・・美しい金髪の…女性だと言う・…貴様が紅蓮のメリッサか!?」
 その言葉にメリッサはその妖艶な笑みを向ける。
「ジル・ヘイドマン。貴様の様なクズには勿体無いが、見せてあげましょう…紅蓮の力を」
 その言葉と共にメリッサの右腕が左から右へと振られる、そしてその腕を追う様に10cm程の火球が10個程生まれる。
「死ね」
 淡々と、まるでゴミでも見るような目でヘイドマンを見ながらメリッサは呟く。
 その言葉を合図に、10個の火球はヘイドマンに群がって行く。
 その一つ一つが、凄まじい熱波を放ちながら火球はヘイドマンに襲いかかる。
「ぐぁあああああああ!!」
 四方八方から火球が襲いかかり、ヘイドマンを炎の海に飲み込んでいく。
 凄まじい炎に焼かれ、ヘイドマンの体は黒焦げになる。
 辺りに肉の焼ける臭いが立ち込める、だがヘイドマンはその状態で立ち上がった。

「グゥフフフ・…コノ程度ノ炎デハ、コノ私ヲ滅ボス事ハ出来ナイゾ!」
 全身を炭化させながらも、ヘイドマンは立ちあがり赤き眼でメリッサを見る。
 全身を焼かれても死なず、その赤い瞳はギラギラとした光を放ち、大きな牙を生やした口からは耳障りな声が出される。
「私ノ体ニ在ル"ナノ・マシン"ハ特殊ナ物デネ、通常ノ物ヨリ再生能力ガ高ノダヨ!モットモ、ソノ見返リトシテ他者ノ血液ヲ必要トスルガネ」
 赤き瞳でメリッサを睨みつけながら、ヘイドマンは言葉を続ける。
「エネルギー源トシテ他者ノ血液、赤血球ヲ必要トスル。ソレユエニ私ハ趣味ト実益ヲ兼ネタ方法ヲ取ッテイルンダガネ」
 大きな牙を持つ口が歪む。
「サテ、ドウスルカネ?タカガ火球ヲ造ルシカ能ノ無イオ前ガドウ戦ウ?言ッテオクガ、ソノ程度ノ大道芸デハ私ハ倒センゾ!」
 己が勝利を確信し、ヘイドマンの顔に邪悪な笑みが宿る。
 奴は肉体の損傷を補う為、メリッサの生き血を吸うつもりなのだ。
 だが、その妄想もメリッサの嘲笑に遮られる。
「愚か者!私の力が火球を造るだけと思ったか!?」
 嘲りを込めた言葉と共に、メリッサは指を鳴らす。
 途端、ヘイドマンの右腕が前触れも無く燃え上がる。
「グァアアアアア!?」
「私の力は空間に在る素粒子を自在に加速出来る、その気になれば貴方の体を構成する物質を燃焼させる事など容易いのよ」
 もだえ苦しむヘイドマンに向かってメリッサは冷たい声で言った。
「例え無限の再生能力を持っていようとも、その体を構成する全ての物質を燃やされて果たして再生出来るかしら?」
 そしてメリッサは指を鳴らす。
「煉獄の炎に焼き尽くされろ!」
「グギァァァァァァ!!!」
 全身を真っ赤な炎に包まれ、ヘイドマンは塵一つ残さず燃やし尽くされた。


               第十四章 母 

 メリッサの目の前には、かつてヘイドマンだった物が残した焼け跡が残っていた。
「ふう」
 そう一息ついたメリッサは屋敷の方に向かって歩き出す。
 先ほどの美沙の様子が気になったのだ。
 だが、そんなメリッサを少し離れた所から見ている者達がいた。
「思わぬ収穫だったな、奴の暴走が紅蓮を呼び寄せるとは」
 そう呟く男、太陽王を象った仮面を着けたシェピロ・ダンストンであった。
「これで未確認だった紅蓮の力も判った、我らは先にナスカの地上絵に向かうぞ」
 シェピロは隣にいる少年に語り掛ける。
 歳の頃は十代半ば、白い髪に白い肌、そして燃えるような赤い目をしたアルビノ(白子)の少年。
「例えプレートが無くとも、お前の力なら亜空間にある遺跡の本体に進入できるだろう」
 そう言ってシェピロは少年を連れ、虚空へと消える。

「美沙ちゃん!」
 先ほど突き破った窓から再び入ってきたメリッサは、椅子に縛られた美沙に近付いていく。
 先ほど倒したヘイドマンは、美沙の中に在った恐怖を引き出したと言っていた。
 つまり、美沙は恐怖のあまり己が心を閉ざしたのだろう。
「美沙ちゃん!しっかりして!?」
 メリッサは美沙を縛るロープを解き、その肩を揺さぶり声を掛ける。
 しかし美沙は相変らず虚ろな目でブツブツと呟いているだけだった。
「美沙ちゃん!!」
 メリッサは美沙の頬を平手で叩く。
「しっかりしなさい!恐怖に捕われていてはだめ!!」
 虚ろな目をした美沙の頬をメリッサは何度も叩く、その甲斐あって美沙の瞳に微かに光が揺れる。
「しっかりしなさい!自分の恐怖には自分で打ち勝つしかないのよ!!」
 美沙の肩を揺さぶる手に力がこもる、そして弱々しいながらも美沙の意識が戻ってきた。
「私が鷲士くんを・・樫緒を…・・冴葉ちゃんを・…」
 瞳から涙を流しながら、美沙は呟いている。
 そんな美沙を見て、メリッサは凛とした声で言った。
「美沙ちゃん!今まで生きてきた自分を信じられないの!?」
 その言葉に美沙の肩が震える。
「古代の亡霊ごときに負けるほど貴方の意志は弱くない!!それは一緒に旅をした私が知ってる!力に振りまわされては駄目!逆に力を己が意志でねじ伏せなさい!!」
 その言葉に美沙は涙を流しながら訴えてくる。
「メリッサさん・…私はこの力が怖い・…自分と言う存在を飲み込んでいくみたいで・・」
 涙ながらに訴える美沙を、メリッサは優しく抱き締める。
「美沙ちゃん。人間なら誰でも心に恐怖を持っているわ、けど人間は勇気と言う力で不安や恐怖をねじ伏せ、先に進んでいくの」
 メリッサの言葉に美沙はその言葉をかみ締める様に聞いていた。
「私に出来るかな?」
 メリッサの胸に顔をうずめながら美沙はそう訊いてくる。
「大丈夫よ、貴方は一人じゃないわ!草刈君や美貴さんそれに樫緒君や冴葉さん、もちろん私も居るわ」

 あの後、メリッサは冴葉に連絡を取り、美沙の無事を知らせた。
『ボスはご無事なのですか!?』
 心配する冴葉に事情を説明し、屋敷に監禁されていた女性達を地元の警察に保護する様に手配してもらった後、メリッサは自分の乗ってきたレンタカーに美沙を乗せボリーバル・ホテルに戻た。
 美沙を部屋まで連れていき、気を落ち着かせた後、メリッサは部屋を出て扉に身を預ける。
 彼女は待っているのだ、美沙の心の恐怖を打ち払う事が出来る人物を。
 その人物はすぐに現れた。
「教授!!美沙は?美沙は無事なんですか!?」
 ホテルの通路を走り寄って来る影、美貴と麗華だった。
「落ち着きなさい。大丈夫、あの子は無事よ」
 その言葉に胸を撫で下す二人、だがメリッサの表情に翳りが有る事に気付いた。
「どうしたんですか?何か問題でも」
 いち早く気付いた麗華がそう尋ねる。
 その言葉に身を堅くする美貴、そしてメリッサは美貴を見ながら言った。
「美沙ちゃんは心に傷を負っているわ」
「そんな!?」
 美貴は驚きのあまり、言葉を失った。
 麗華もまた驚いていたが、余りの事に呆然としている美貴を気遣い抱き締める。
「美貴、あの子は強い子よ。大丈夫、きっと治るわ」
 麗華は美貴を抱き締めながらそう励ます。
「美貴さん」
 ショックを隠しきれない美貴に向かい、メリッサは優しく言った。
「今の美沙ちゃんに必要なのは、母親の温もりよ」
 そう言ってメリッサは扉を指差した、麗華もまた美貴の背中を軽く押しやり、促す。
 そして、美貴が部屋の中に入って行ってから数分後、冴葉から連絡を受けた鷲士と樫緒が現れた。
「姉さま!?」
「美沙ちゃん!!」
 二人は物凄い勢いで走り寄ってきてメリッサに問いただす。
「姉さまは無事なのですか!?」
「教授!美沙ちゃんは!?」
 慌てる二人に、メリッサは努めて平静な声で答えた。
「大丈夫、今はこの部屋の中に居るわ」
 その言葉を聞き部屋の扉を開けようとする二人をメリッサが止める。
「何故です!?この中に姉さまが居るのでしょう!!」
 冷静な樫緒にしては珍しくメリッサに向かって怒鳴りつける、しかも全身から青白い火花が放たれていた。
 樫緒も鷲士も美沙が心配なのだ。
 だが、メリッサは鷲士と樫緒に向かって言った。
「今は貴方達の出番では無いわ」
 その言葉に鷲士と樫緒が戸惑っていると、部屋の中から美沙の泣き声が聞えた。
「うわぁああああん!」
「美沙ちゃん…?」
 その声に若き父親は不安を感じる。
 彼女は強い子だと思っていた、だが考えてみればまだ十二歳の女の子なのだ。
「ここは美貴さんに任せて他へ行きましょう、色々事情を説明しないといけないし」
 その言葉に樫緒は納得した、母親の出番であると。
 鷲士は戸惑いながらも、樫緒に引きずられる様にしてその場を立ち去った。

               第十五章 ナスカヘ 
 
  ボリーバル・ホテルの別室にて鷲士と樫緒それに麗華は、メリッサの話を聞き終えていた。
「姉さまにそんな事が・・…」
 鎮痛な趣の樫緒が呟く。
「ミュージアム・…許せない!!」
 鷲士は怒りに任せ両拳を握り、指の間から血が滲んでいた。
 それぞれの反応を見ながら、メリッサは悲しげな声で言った。
「美沙ちゃんの中には力に対する恐怖があるの、あの子は自分が変ってしまうのではないかと言う恐怖と戦っているの」
 美沙はその小さな体で大きな恐怖と戦っていると言う。
 鷲士と樫緒は、無力な自分を恨めしく思っていた。
「しかしメリッサさん、あんなカルト集団の変態幹部によく勝てましたね?」
 麗華の情け容赦無い言葉に、メリッサは苦笑するしかなかった。
「草刈君には謝れなければいけないわね、私は封印者の一族なの」
 その言葉に鷲士は少なからず驚いた、だが樫緒の反応は違った。
「封印者が何故、父さんの大学に居るのです?つまり、僕達を利用するつもりですか」
 氷の様な樫緒の視線を、メリッサは涼やかな瞳で受流す。
「私の本職は考古学の方なの、封印者は副業の様な物よ」
「その言葉を信じろと?」
 樫緒の不信感は深まっていくばかりだった。
 そんな樫緒に向かってメリッサは事情を説明する。
「私が草刈君の居る大学に赴任した偶然よ、もっとも学内にダーティ・フェイスが居たのは驚いたけどね」
 メリッサは不信感を拭えない樫緒に向かって。
「考えても御覧なさい、封印者の仕事は危険な遺跡を文字どうり"封印"する事、他者が関与する余地は少ないほど都合が良いわ」
 メリッサはそう説明する。
「樫緒君、教授は美沙ちゃんを助けてくれた恩人だよ?僕は教授を信じるよ」
 そう言って鷲士は樫緒に笑いかける。
(出た、父さんのお人よし…)
 人の良さそうな笑顔をする鷲士を見て、樫緒はこめかみを押さえる。

「おはよ〜!」 
 翌日、美沙は元気な姿で鷲士達の前に現れる、努めて明るく見せているのは一目で判った。
「おはよ、美沙ちゃん」
 鷲士達は普段どうりに接する、慰めや、同情は時として逆効果になる事がある。
 一同はホテルのレストランにて朝食を取る、そして美沙の側には何時も美貴が付いていた。
「冴葉ちゃん、準備の方は良い?」
 食事が済んだ後、ナスカ(インヘニオ)平原に向かう為、まずイカ空港に向う事になった。
「既にセスナの準備は出来ております」
 美沙達はホテルを出て、リマの空港から空路でイカ空港に向った。
 八頭大の情報を得る為に、まず付近の町に行ってみる事になったのである。
 
 一時間弱のフライトで、セスナはイカ空港に到着した。
 ここはリマより南にある町で、ここよりナスカの地上絵に向って観光用のセスナで遊覧飛行に向うのである。
「ふう、やっとついた」
 大きく伸びをして、鷲士は空の旅から開放された事を喜んだ。
 美沙と冴葉は、既に現地に飛んでいたFTIのスタッフより最新の報告を受けている。
 樫緒と美貴は美沙の側に付き添う形になっている。
 だが、鷲士はペルー国内に入った時から、違和感を感じ続けていた。
「なんだろう?この感じは…」
 空港で辺りを見廻しながら、鷲士はそう考え続けていた。
 そう考えていると、美沙と話していたメリッサは急に鷲士に向って話し掛けてきた。
「どうしたの、草刈君?」
「え?いえ、別に」
 そう言葉を濁していると、メリッサはまた美沙との会話に戻っていった。
「ナスカの地上絵、プレートには竜脈を操る遺跡だと記されていたけど…結局、解析出来ていないのよね〜」
 メリッサは困った様に笑っている。
 つまり、何も判らないと言う事なのだ。
「それでは、ホテル・ラス・ドゥーナスに部屋を用意しておりますので、まずはそちらに行きましょう」
 冴葉の言葉に従い、一行は町にあるホテル・ラス・ドゥーナスへと向う。
「ここにはナスカ博物館ってのがあって、インカの民族資料・発掘出土品が展示されているのよ〜」
「へえ〜?美沙ちゃん、詳しいね」
「当たり前でしょう?私はいろんな遺跡に行った事が有るのよ!事前調査の方もバッチリよ!」
 そう言って美沙は鷲士に向い、エッヘン。
 車の中で美沙と鷲士は、そんな他愛も無い話をしている。
 一行はホテルへ向うのに、二台に分れて乗り込んでいる。
 一台目には、美沙と鷲士それに冴葉の三人。
 二台目には、美貴と樫緒それにメリッサの三人。
 普通なら、美貴は鷲士と一緒の車に乗ると駄々をこねる所だが、リマのホテルを出る際に美貴が同行する事を知った鷲士に『危険だから来ない方が良い』と言われ、すったもんだの挙句に。
『うるさーい!男が細かい事を!気にするんじゃなーい!!!!』
 と、いつもの様に無茶苦茶な論理を展開して、無理矢理付いてきたのだった。
 それゆえに、顔を合わせるのが恥ずかしいらしい。
 また、美沙の事が心配だったが、本人が大丈夫だと言い張り。
 事情を知らない鷲士に"僕が付いているから"と言われ、渋々別の車に乗る事を了承したのだった。

「は〜ぁ。結局、八頭に付いては何の情報も無しか〜」
 ホテルに向う車の中で、美沙はため息を付いていた。
 その時、ノート・パソコンに向っていた冴葉が顔を上げる。
「ボス、新たな情報が入りました。ゲイルマン少佐の指揮する機械化小隊がペルーに密入国した様です」
 その言葉に、美沙と鷲士は顔を見合わせた。
「あの機械仕掛けのオヤジが!?」
 酷い事を言う子猫様に、鷲士は引きつりながら。
「あの機械化兵団でしょう?やっぱり、ナスカの地上絵が目的なのかな?」
「そこなのよ!?」
 鷲士の言葉に、美沙と冴葉は揃って首を傾げている。
「そこが一番の問題なのです。」
「そう!一体、ナスカの地上絵に何があるのか、全然わかんないのよね?」
 冴葉の言葉を美沙が引き継ぐ。
「八頭が持っていったプレートには、竜脈を操る四つの遺跡の事が記されているらしいんだけど…ナスカの地上絵って言ったら砂漠に書かれた絵でしょう?あそこに何が有るのか分らないのよ!?」
 そう言って、再びため息を付いて、美沙は考え込む。
 その時だった。
「すみません!車を止めてください」
 突然、窓の外を見ていた鷲士が運転手に向って頼む。
「どうしたの!?鷲士君」
 車は急ブレーキを掛け、町の通りのど真ん中で止まった。
 後続の車も止まる。
「何か有ったのですか、姉さま?」
 車を降りながら、樫緒は美沙に問う。
「わかんない、急に鷲士君が・…」
 鷲士は不審がる一同に向かい。
「さっき、裏通りで複数の男に囲まれるお爺さんを見たんだ」
「強盗でしょうか?」
 鷲士の言葉にメリッサはそう訊ねる。
「いや、男達は皆、黒いスーツを着ていたし。何より自動小銃を持っていたんだ!」
 鷲士の言葉に、美沙と冴葉は先ほど話に出ていた機械化小隊かと思った。
 だが、機械化兵が黒いスーツを着るというのは考えにくい、何より目立ち過ぎる。
 その時、全員が思い当たる。
「ミュージアム!?」
 些か脅迫観念の様に思えるが、ここ数ヶ月、常にミュージアムと戦い、先日は美沙がハイ・キュレーターに誘拐されるなどミュージアム絡みの事件が多い。
 それゆえに、何か有ればミュージアム絡みと思ってしまう。
 もっとも、今回は正解なのであるが。

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