DADDYFACE ShortStories
「異伝弍 世界を継ぐ者」第1部(6)
written by SOUL

この話は、DFの世界に、菊池秀行氏のエイリアンシリーズと、
皆川亮二氏のスプリガンが登場します


第二十五章 未来を賭けて
「それが、我が王の望みなのですから」
 穏やかな表情で、ラファエルは無情な事を言う。
「ふざけるな!!」
 御神苗の怒声が響く。
「王の望みだと!?竜脈を暴走させたら、一体どれだけの犠牲が出ると思ってやがるんだ!!」
 御神苗優は、今までにも竜脈(地脈)を操る事により起きる悲劇を目の当たりにしてきたのだ。
「そうだな、テメエらの勝手で滅ぼされちゃ敵わんな」
 八頭は両手を伸ばし、猫足立ちになる――ジルカの構えだ。
「竜脈を暴走させる事に何の意味があると言うのです?」
 刺す様な視線を投げ掛けながら、樫緒はラファエルに対し問う。
「それは、我が王の遠大な計画の為に必要な事なのです」
 その言葉に鷲士の怒りが爆発する。
「何が計画ですか!貴方達の都合の為に世界を犠牲にして良いなんて!絶対に認められない!!」
「そうよ!そんな勝手、認めるわけ無いでしょう!!」
 MCRを構え、美沙はラファエルに対し怒りの言葉を叩き付ける。
 そんな美沙達を見て、ラファエルは表情を曇らせ。
「いけませんね。これは遥か昔から決まっていた事、運命なのです」
 ラファエルから発せられる圧倒的なプレッシャーが辺りを支配する。
「運命に従えないならば、仕方ありません。貴方達を死者の世界へと、誘う事にしましょう」
 凄まじきプレッシャーの中、穏やかな笑みを湛えたラファエルが右手を上げる。
 すると突然、右手を中心に炎が湧き起り、炎は一振りの剣へと姿を変える。
「安心なさい。貴方達の魂は、私が導いてあげましょう」
 その剣の切っ先は美沙に向けられる。
 辺りを支配するラファエルのプレッシャーに誰一人として動けないと思われた時、美沙を庇う様に鷲士がラファエルの前に立ち塞がる。
「この子は殺させない!!」
 決意を秘めた瞳でラファエルを睨みつける鷲士。
 そして、鷲士の側に鈴木とメリッサが立つ。
「目的の為なら世界を犠牲にする、それが天使のする事か!我等、九頭竜はこの世の災いを屠る為にある!即ち、我はお前を屠る!!」
「私は、この世界に生きる者として貴方に戦いを挑みます!」
 ラファエルのプレッシャーを正面から受け止め、鷲士達三人は拳をラファエルに向ける。
「姉さまに害を成そうとする者は、例え神の使いで在ろうと許しません!」
「世界を滅ぼす前に、テメエを滅ぼしてやるぜ!」
「世界を滅ぼすなんて、絶対にさせねえ!!」
 樫緒が、八頭が、御神苗が、ラファエルに言葉を叩き付ける。
「古来より外道を屠る時には決まり文句がある!」
「イッ・ア・ショータイム!!」
 鈴木の言葉を引き継ぎ、メリッサは高らかと宣言した。

「ゆくぞ、鷲士!」
「はい!」
 鈴木と鷲士は共にラファエルに突撃する。
「愚かな」
 ラファエルの持つ炎の剣が横殴りに鈴木を襲う。だが鈴木は剣が届く前に跳躍してかわす、そして大きく開いたラファエルの懐に鷲士が滑り込む。
―九頭・右竜徹陣―
 気合を込めた右正拳がラファエルを捉える、だが鷲士の正拳を受けたラファエルは平然としている。
「そんな!?確かに手応えが有るのに!!」
 鷲士の拳は確かにラファエルの胸板を捕らえている、だがラファエルは平然とした趣で鷲士の腹部に左の掌底を重ねる。
「人の子には私を倒す事は出来ませんよ」
 掌底より放たれた衝撃波により、鷲士が吹き飛ばされる。
「くそおおおおお!」
 オリハルコンのファイティング・ナイフを構え、御神苗がラファエルに切り掛かる。
 だが、ラファエルは炎の剣でファイティング・ナイフを受け止める。
「無駄です」
 そう静かに言った後、ラファエルは力を込め、御神苗を吹き飛ばす。
「この野郎」
 八頭がラファエルに廻しげりを放つ。だが最小限の動作でそれをかわし、炎の剣が八頭を貫こうとする。
 跳躍して八頭はそれをかわし、ラファエルの背後に張り付く様に降り立ち、両足首を掴む。
―ジルカの傀儡系他力跳九の十七―
 相手の身体機能を利用してラファエルを己が足のバネだけで後方に大きく飛ばす。
 だが、ラファエルは空中で翼を開き、態勢を崩すことなく浮遊する。
 天使の翼を開き、宙に漂うラファエルに向かって美沙がMCRの磁気強度と加速度を最強レベルにして関東大震災クラスの衝撃波を叩き込む。
 だがラファエルは衝撃波を食らっても平然としてる――掻き消されたのだ!
「これなら!」
 メリッサが右手をふり、ハイ・キュレーターを焼き尽くした火球を無数に生み出す。
「痴れ者が!」
 樫緒が身構える、念動力を放つ気だ。
 メリッサの火球と樫緒の不可識の力がラファエルを襲う。
 だが、それすらも手前で掻き消された。
「そんな…馬鹿な…」
 その光景に樫緒は言葉を失う。最大出力の念動力を放ったのに、それすらも通用しない。
「絶対防壁…」
 その時、側にいたメリッサの呟きが聞えた。
「なんです?それは」
 樫緒の問いに、メリッサはラファエルを警戒しながら答える。
「絶対防壁、高位天使が持つとされる特殊能力よ。己が周囲の空間を意思力にて固定し、あらゆる物を阻む、不可侵の盾…」
 つまり、メリッサの火球も、樫緒の力も、ラファエルの絶対防壁に阻まれたと言うのだ。

「ならば!」
 メリッサと樫緒の攻撃が失敗した事を見て、鈴木がラファエルに突き進む。
「儂のこの手が真っ赤に燃える!貴様を倒せ、と轟き叫ぶ!!食らえ!九頭双竜・激竜牙!!!」
 何処かで聞いたようなセリフを述べながら、鈴木の両手が氣に包まれる。
 そして、ラファエルに向かって一気に跳躍!ラファエルの絶対防壁に激突する。
「うおおおおおおお!!」
 ラファエルに肉薄する寸前、絶対防壁とぶつかる。
「無理です、人の子に私の防壁は破る事は出来ません」
 静かに言うラファエルに、驚愕の表情が現れる。
 鈴木の氣に包まれた右手が、ラファエルの絶対防壁を砕き始めたのだ!
「誤算じゃったな!我ら九頭竜は深海の大破壊竜の気脈を、ヒトの体で再現せし者なり!!竜脈を操るこの場所では、我らは、より多くの氣を操る事が出来る!!!」
 見ると、鈴木の両手が凄まじき光を放っている。
「鷲士!」
「はい!」
 ラファエルの目に、鷲士の跳躍する姿が写った。
―九頭・左竜雷掌―
 体内に蓄積された生体電流を一気に集約、竜脈を操る地である事も合わさって、凄まじい放電が起こる。
「はああああああああ!」
 鷲士の気合の声と共に、ラファエルの絶対防壁に亀裂が入る。
「馬鹿な・…人の子に、これほどまでの力が有ろうとは・…」
 そして、鷲士は鈴木の肩に手を乗せ支点とする。
―九頭双竜・顎―
 鷲士の両足がラファエルの首に掛かる。
「うおおおおお!」
 頚骨をへし折られ、ラファエルは地面に激突する。
「やったー!鷲士くん、すっごぉーい!かっくいい!!」
 娘の歓声を受けながら、鷲士と鈴木は地面に降り立つ。
 だが、ラファエルはまだ生き絶えてはいなかった。

「人の子にしては、中々やりますね。ならば、私も本気で行きますよ」
 頚骨をへし折られながらも瞬時に再生し、ラファエルは六枚の翼を大きく広げる。
 途端、鷲士や鈴木を始め、そこにいる全ての者が凶風に吹き飛ばされる。
「うををおを!?」
「きやああああ!?」
 ラファエルの起こした風。それは、真空を含むカマイタチの様な物だった。
 だが、その切れ味は凄まじく。御神苗のAMスーツすら、切り裂かれていた。
「一体何が…」
 咄嗟にメリッサに抱きかかえられた美沙と樫緒は真空の刃から逃れる事が出来た。
 だが、メリッサを始め、その場に居た全ての者が全身に裂傷を負っていた。

「苦しませるのは、本意では有りません。一思いに止めを刺してあげましょう!」
 そう宣言したラファエルの周りに狂風が巻き起こる!
 それは炎を纏い、荒れ狂う炎の乱舞となった。
「最後です」
 ラファエルの言葉に、全員が避け様とするが、裂傷の為、反応が遅れた。
 此の侭、全員が焼かれるかと覚悟を決めた時、遅れてきた男が到着した。
「ラファエル!!」
 炎の乱舞を纏うラファエルに向かい、凄まじき光の奔流が叩き付けられる。
「な!?」
 間一髪、光を避けたラファエルは、光の発せられた方向、入り口の方を見る。
 そこには、奈落の底(笑)に落ちていたアルモスが居た。
「相変らず無慈悲な事をやっているじゃないか!それでも天使か!?え?ラファエル!!」
 まるで旧知の人物に話しかける様なアルモスに美沙達が驚いた。
「どう言う事?」
 だが、驚きはそれだけでは無かった。
 アルモスを見たラファエルに動揺が走る。
「貴方は・…罪人!邪神アルモス!?…まだ"稼動"していたのですか!?」

              第二十六章 天使の王 

「貴方は・…罪人!邪神アルモス!?…まだ"稼動"していたのですか!?」
 乱入してきたアルモスを見て、ラファエルは驚愕していた。
 アルモスは、なぜか帯電している右腕を前に突き出した格好で入り口に立っていた。
 「生憎だが、まだやらねば成らない事が有るんでね」
 ラファエルを睨みつけ、アルモスは美沙と樫緒を庇っているメリッサに近付く。
「メリッサ、状況は?」
 その言葉に、メリッサは中心にある巨木を指差し。
「アレが竜脈を操るシステムの中心よ。システムは意図的に半暴走状態に有り、此の侭では地表が破滅するかもしれなわ!」
「なるほど」
 メリッサの説明を受け、アルモスは状況を飲み込んだ。
「ラファエル!熾天使たるお前が何故、破滅を望む!?かつては人を心から愛していたお前が、何故!?」
 その言葉に、ラファエルは悲しそうな顔をする。
「それが、我が王の望みだからです」
「……そうか、メタトロンの命令か・・…」
 ラファエルとアルモスの会話を聞いていた美沙達が驚いた。
 アルモスとラファエルが知り合いで在るだけでなく、天使の王―メタトロンの名が出てきた事に。
 メタトロン―神の代理人、天界の宰相とすら呼ばれる存在だ。
 神の代理人とすら称される程、偉大な存在とされ。その姿は、大地に足を着けながら、頭は神にすら届くと言う程の巨体であるとされる。
 そのメタトロンが竜脈を暴走させ、世界の破滅を望んでいると言うのだ。
「何でよ!?何でメタトロンは世界を滅ぼそうとするのよ!!」
 美沙の叫びにラファエルは顔を伏せ。
「貴方達に言っても仕方が無い事です」
 そう言って、ラファエルは再び狂風を呼び、炎を纏わせる。
「どうやら、戦うしかない様だな。メリッサ、奴は俺が何とかする!お前はこの遺跡を止める方法を探し出せ!!」
 そう言ってアルモスはラファエルに向かって右腕を突き出す。
「ゆくぞ!」
 アルモスの右腕から再び光の奔流が溢れる。
「え!?何!!」
 その光景に、美沙は驚きの声を上げる。
 光は、ラファエルを飲み込もうとするが、絶対防壁に阻まれる。
「荷電粒子砲…」
 その光景を見て、御神苗は呟く。
「ぼやっとしてねえで!俺達も行くぞ!!」
 八頭から声を掛けられ、御神苗は我に帰る。
 ココで奴を倒さねば、竜脈が暴走するかもしれないのだ!

「うおおおお!」
 オリハルコンのファイティング・ナイフを構え、御神苗はラファエルに向かって突進する。
 八頭もまた、ラファエルに向かって突進するが、絶対防壁に阻まれる。
 先ほどの炎の狂風を食らい、二人共かなりの傷を負っているが、渾身の力を込めてラファエルに立ち向かう。
 鷲士と鈴木もまた、ラファエルに向かい拳を繰り出す。
―九頭右竜・翔扇―
 鷲士の右腕が霞む、だがラファエルは翼をはためかせ、大きく後退して技をかわす。
「甘い!」
―九頭左竜・落崩―
 ラファエルのかわす方向を予期し、鈴木の左手がラファエルに襲いかかる。
 だが、ラファエルはそれすらもかわして見せる。だが、鈴木はそのまま体を回転して廻し蹴りを放つ。
 それでも、絶対防壁を破る事は出来なかった。

「やはり、その防壁を何とかしないとな」
 アルモスは右腕を水平に広げる。
「我が右腕より現われ出でよ!天使、ソード!!」
 その呼掛けに答えるが如く、アルモスの右腕が淡い光に包まれる。
 そして、光の中から一人の天使が現われる。
「何!?」
 その光景に、八頭と御神苗は元より、樫緒や美沙も絶句する。
 アルモスの右腕より現われた女性型の美しい天使、端正の取れた肢体を黄金色の鎧で覆い、水の様な透明な剣を持つその姿は、余りに幻想的だった。
「あれは一体?」
 驚きの声を上げる鷲士に鈴木が答える。
「あれは天使ソード。アルモスの体内に注入された二つのナノ・システムの内の一つじゃ」
「天使ソード!?」
 一同の驚きをよそに、アルモスより現われた天使ソードは二枚の翼を広げる。
「我、天と地の理を用いて、あらゆる不文律を打ち破らん!」
 アルモスの言霊を受け、ソードの翼が黄金に輝く。
「これは!?」
 樫緒は驚きの声を発した、ソードの翼が輝いた途端、それまで感じ取れていた空間の構造が何も感じられなくなった。つまり結城の力が掻き消されたのだ!
「さて、これでご自慢の絶対防壁も使えなくなった訳だ!どうするラファエル?」
 黒き独鈷杵―虚空を抜き放ち、アルモスはその黒き刃をラファエルに向ける。
 天使ソードの力、それは空間に対する干渉力を強制的にキャンセルするものである。
「それでも!私は、引く事は出来ないのです」
 ラファエルは炎の剣を構え、アルモスに対し切っ先を向ける。
「ならば、仕方が無い。ゆくぞ!」
 アルモスは地を蹴り、ラファエルに向かって駆け出す。
 ラファエルに向かって虚空が振り下ろさせる、だがそれを炎の剣が受け止める。
「はああああ!」
 御神苗のファイティング・ナイフがラファエルを強襲する、だがラファエルは虚空を弾き、ナイフを向ける御神苗を六枚の翼が起こす強風が吹き飛ばす。
 八頭がスターム・ルガーを抜き発砲する。
だが、その全ての銃弾は炎の剣に燃やし尽くされた。
「ならば!」
 ラファエルの背後から鈴木は迫る。
―九頭・右竜金剛撃―
 右手に氣を込め、あらゆる物を貫く必殺の一撃だ。
 ラファエルは間一髪、それに気付き、鈴木の一撃を避ける。
 そこへ、鷲士が肉薄する。
―九頭・左竜雷掌―
 左手に凝縮された生体電流が迸る、それに気付いたラファエルが炎の剣で鷲士を切り払おうとする。
「鷲士!?」
 その事に気付いた鈴木が警告の声を上げる。だが、それは杞憂に終った。
―九頭竜・蓮華歩舟―
 本来、氣により水の表面張力を変える技だが、竜脈を操る場所であるが故に集められる膨大な氣を使う事で、足の裏に薄い氣の膜を張り、ラファエルの炎の剣を蹴りつけ、飛び退いたのだ。
「これで!どうだ!!」
 ラファエルの態勢が崩れたのを見て、美沙がMCRを最大出力で撃ち込む。
「何!?」
 鷲士達に肉薄され遠距離からの攻撃に、一瞬、反応の遅れたラファエルは、美沙の放つ衝撃波に翼を撃ち抜かれる。
「そこだ!」
 ラファエルがバランスを大きく崩したを見て、御神苗はファイティング・ナイフをラファエルの胸板に深々と突き刺す。
「うおおおおおおおお!」
 御神苗は、そのままナイフでラファエルを切り裂く。
「ぐはぁぁぁあああ!」
 口から血液の様な物を吐き、ラファエルは肩膝を付く。
「ま…さか・…私が…人の…子に・・…」
 息も絶え絶えと言ったラファエルにアルモスは虚空を向ける。
「ここまでだな、ラファエル。」
 アルモスは虚空を振りかぶり、止めを刺そうとした時。突如、横から放たれた光に吹き飛ばされる。
「うをおおををを!?」
 まともに光を受け、アルモスは十mは吹き飛ばされる。
「何だ!?」
「今のは、一体!?」
 予想だにしなかった攻撃に、御神苗達の視線が光の放たれた方向に集まる。
 そこには、年端もいかぬ一人の少年が立っていた。

「人の子にしては、中々、やるじゃないか」
 入り口とは反対の方向に突如現われた少年に、一同の視線が集まる。
 涼やかな瞳と美しい金髪、年の頃は十歳前後だろうか?
 だが、その少年を見た時、全員が恐怖に打ち震えた。
 少年から放たれる、底知れぬ悪意。見る者を震わせる邪悪な意思。
「誰よ!アンタ!?」
 声を震わせながらも、突然の乱入者に美沙が問いただす。だが、少年はそれを無視してアルモスの方を見やる。
「驚いたよ!まさか、君がまだ"稼動"しているとはね?二千年前に破壊したと思っていたのにね?」
 冷たい視線を投げ掛け、少年はアルモスに向かって、そう言った。
 その時、美沙達は理解した。
 この少年こそ、全ての元凶なのだと!
 そして、吹き飛ばされたアルモスがやっとの事で起き上がる。
 アルモスは少年を見て、声を失った。
「どうやら、僕の計画を邪魔する気だね。けど、そんな事は許さないよ。」
「メタトロン・・…」
 少年を見て、アルモスはやっとの事でそれだけを呟く。
「メタトロン!…・・コイツが!?」
 凄まじい悪意の中、全員が驚いた。
 この凄まじい悪意、天使の名に似つかわしくない邪悪な意思。
 この少年が、天使の王―メタトロンだと言うのか!?
「うおおおおおおおお!!!!」
 驚く全員を尻目に、アルモスは虚空を構え、メタトロンに突っ込む。
 それに呼応する様に、ソードもまたメタトロンに突っ込む。
 メタトロンの寸前で、アルモスは大きく跳躍し、その身を九つに分ける。
―破理拳流抜刀術奥義星空破砕斬―
 かつて、美沙達は一度だけ見た事が有る。
 九つの分身を生み出し、それぞれが圧倒的な剣撃を繰り出す。正に、星を砕くに相応しい技であった。
 だが次の瞬間、美沙達は己が目を疑った。
 メタトロンが腕を一振りするだけで、ソードは一瞬の内に砕かれた。
 そして九つの分身が繰り出す剣撃を少年―メタトロンは悉く弾いたのだ。
 最後の剣撃を素手で掴み、メタトロンは残りの手でアルモスの首を掴む。
「判っているだろう?今の君では、僕に勝てないよ」
 そして、メタトロンの背中に翼が広がる。
 背中だけでなく、両手や両足にも翼が広がる。
 その翼、三十六枚の翼の全てが輝く。
「もう一度、滅ぶがいい」
 その輝きが一段と輝いた時、アルモスは物凄い勢いで吹き飛ばされた。
「ぐああああああ!!!!」
 凄まじい勢いで吹き飛ばされ、反対側に居た美沙達の所まで吹き飛ばされる。
「アルモス!?」
 美沙の目前には、全身をズタズタにされた、アルモスの無残な姿があった。
 圧倒的な力に、成す術を失った美沙達にメタトロンの冷たい視線が注がれる。
「君達を殺すのは容易い。だけど、ここで暴れられて傷でも付けられたら堪らない。」
 そして、メタトロンの翼が輝く。
「君達には似合いの場所が有るよ、時空の狭間という似合いの場所がね」
 翼の輝きが、一層強まる。
「何を・…勝手な事を、ほざいてんのよ!!!」
 美沙のMCRが発射される。だが、メタトロンは全く通用しなかった。
「さようなら、人の子よ」
 翼は凄まじい光を放つ。


 光が収まった後、そこには誰一人として残されては居なかった。

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