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あの時以来、私はいつも通りの日常を生きていくことに努めた。
いろいろなところで無理は出てくるかもしれない。
でも、約束したから。
”忘れない”って。
私のせいでしゅーくんに大怪我をさせてしまった。
だから私は、どこかで私のことを想っているかもしれない彼に、
”私は大丈夫だから”って、
精一杯笑って言えるように、
いつか彼と会っても、彼が心配することのないように、
そんな風に生きていきたいと思う。
日常はすぐに過ぎていく。
自分というものに実感を感じられないのならなおさらだ。
―さみしい。
―会いたい。
――あの笑顔が、見たい。
そんな思いは、すぐに溢れてきた。
こんな事では、また彼に心配させてしまう。
でも、それでもこの気持ちは、押さえる事ができなかった。
――自分を保つことが、できなかった。
双子の存在は、私にとって、重要だった。
私の子供。
しゅーくんとの、子供。
私の視線はすぐに、遠い過去へ、そしていつか彼と会える未来へと飛んでいたけれど。
それでも子供達がいたから、私は現在という現実に留まっていられたのだ。
私にとっての日常とは、彼と共に居る事だった。
ならば、それが失われたのなら、
私はどこに生きているのだろう。
どこに生きていけばいいのだろう。
もう一度、前を見よう。
私は母親なのだから。
一人ではないのだから。
私の心は、あの時から凍りついたままなのかもしれない。
あの、太陽のような笑顔を失ったときから。
いつか、また、あの太陽に出会えるだろうか。
あの時のように、
私の凍てついた心を溶かしてくれるだろうか。
降り注ぐ慈雨のように、
乾いた私の心を潤してくれるだろうか。
彼は私のことを忘れてしまったかもしれない。
それは、とても怖い想像だった。
それでも、私は待っていた。
あの人を―――。
「っ!!・・・・・」
私は誰かに呼ばれたような気がして目を覚ました。
「しゅーくんが呼んだ気がしたんだけどな・・・・。」
鷲士と離されてからの自分の事を考えると”幻聴”の一言で片付けらてしまうかもしれない。しかし確かに私は鷲士の、”しゅーくん”の声を聞いた気がした。
「そうだね、しゅーくん。私がしっかりしなきゃダメだよね。私、お母さんなんだもんね。しゅーくんと私の子供なんだもんね。ね、美沙、樫緒。」
そういって私は隣で熟睡する双子に微笑んだ。
よく似た顔をした二人の赤ん坊が幸せそうに眠っている。少し私似。しゅーくんに似なかったのはくやしい。彼はカッコよかったのに・・・。
「しゅーくん、絶対に・・・また会えるよね・・・・。」
私は空を見上げる。
空には満天の星空と銀の満月が輝いていた。
「しゅーくん・・・・」
そして私は祈る。願いが天に届くように・・・。
少しづつ、少しづつ、時は流れていく。
彼の居ない日常にも慣れ始めた。
さびしい気持ちは変わらないけれど、
会いたい気持ちは変わらないけれど、
私は前へと進み始めた。
子供達に心配させないように。
”彼”に心配させないように。
そして、私自身のために。
”彼”と私の、未来のために。
そのためにはしなければならないことがある。
それは――――。
「やはり・・一緒にはいけない?」
身の回りのものとしゅーくんとの「こんやくゆびわ」だけをもって、私は振り向いた。
目の前には、結城の屋敷。
長い間、一人の少女を閉じ込めた、檻。
そしてこれからも、私の家族を血族という名の鎖で縛っていくであろう、場所。
そしてその前に、私の家族。
美沙と、樫緒。
「わたし、もう少しがんばるつもり。みんなにわたしの事を認めさせてやるんだから」
「ぼくは・・・少なくともこの家の跡取ですし・・・」
私は嘆息するしかなかった。
この強情なところは誰に似たんだか・・・。
でも、この二人はしっかりしたコだから。
”彼”と私の子供達なんだから。
私が心配すべきことではないのかもしれない。
いつの日か、私とは違う方法で、己の進むべき道を歩んでくれるだろう。
私はそのときに手助けをすればいい。
だから――
今は歩き出す。
私自身のために。
”彼”との、未来のために――。
さらに数年の時が経った。
美沙は、自分で設立した会社が順調に大きくなっていた。
樫緒は、結城という檻の中で、それでもがんばっている。
二人とも、自分なりの道を歩き出したのだ。
でも、私はまだ”彼”と出会えなかった。
会えばすぐにわかる自信はあるのに―――。
それはファミレスの前のことだった。
「────ゆうちゃん!?」
「違います!」
・・・・・やってしまった・・・・。
せっかく”彼”と出会えたのに・・・。
彼は約束を守ってくれたのに・・・。
でも、とうとう彼と出会えたのだ。
いつか、彼がまた聞いてくれたとき、
今度こそ私は答えようと思う。
「うんっ」
って――――
彼は昔のように微笑んでくれるだろう。
あの太陽のような笑顔で――――――
まさか・・今日のことをあんなに長い間、悔やむことになるとは思わなかったけど・・・・・・・(汗)
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