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雪の振る町の中、一人の青年が歩いている人々に声をかけている。
「マッチ、マッチは要りませんか〜」
草刈鷲士である。その格好は継ぎはぎだらけの上にぼろぼろになっている。とてもこの寒さを耐えられる様な格好ではない。
「マッチ、マッチは要りませんか〜」
「ううっ、誰も買ってくれない。」
「この年になっても孤児院に置いてくれている先生や、皆の為にも稼がないと行けないのに…」
「マッチ、マッチは要りませんか〜」
それからもしばらく続けていた鷲士だが、やがて寒さに耐えきれず路地裏に退避してしまう。
「ううっ、マッチは売れないし、この寒さには耐えらないし、どうすればいいんだろう。」
「売り物だけどマッチに火を点けたら温まるかな?」
とマッチを一本取り出し火を点ける。
「ああっ、暖かい。それになんて優しい光りなんだ。」
だが、マッチの火はすぐに消えてしまう。
「もう一本だけ。」
と、そんな事を続けていると不意に、マッチの光りに照らされ一人の美女の姿が浮かび上がる。
「ねえ。キミ何やってるの?」
その声を聞いた鷲士は驚きの余り奥の方に2m程後ずさる。
「で、出たな幻。ぼ、僕は死んだりしないぞ。朝になったら冷たくなってたりするもんか。」
「あのね、キミ。人を何だと思ってるの?」
「えっ、幻じゃないの?」
「一応人間のつもりだけど。」
「ああっ、ごめんなさい。ごめんなさい。」
「まあ、良いけど。あっ、私の名前は麻当美貴。キミは?」
「草刈鷲士です。」
「そっか〜鷲士くんか。で、何をしていたの?」
「それは…」
鷲士は事情をかいつまんで説明する。
「ふ〜ん、お世話になっている孤児院の為にマッチを売っているけど、全然売れないと。」
「そうなんです。それにこの寒さで僕どうすれば良いか解らなくて。」
「よしっ。私が全部買って上げよう。」
「ほ、本当ですか?え〜と全部で何箱あったっけ?」
「そんなケチくさい買い方しないよ。」
「だって全部って…」
「だから〜。キミも・ふ・く・め・て♪」
「へっ?」
次の日とある孤児院に多額の寄付金が送られると共に、一人の青年が姿を消したと云う。
めでたしめでたし。
「ねえ、先生。鷲士お兄ちゃん本当に行っちゃうの?」
「ええ。それで鷲士君も美貴さんも私達も、皆幸せになれるのよ。」
「でも鷲士お兄ちゃん、売られてく子牛の様な目でこっちを見てるよ。」
「あれは美人のお嫁さんを貰った嬉しさの余り泣きそうになっているのよ。」
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