DADDYFACE SidetStories
「美沙雪姫」
written by GO TO



むかーしむかしの事です。
ある所に小さいけれどそれなりに豊かな国がありました。ある時、その国に一人の女の子が生まれ、その子は美沙と名付けられました。
母親は産後の経過が良く無く美沙が物心つく前に亡くなりましたが、そんな事を感じさせない位スクスクと成長しました(お転婆なのは愛嬌です)。
そんな美沙を回りの人は雪のように肌が白い事から「美沙雪姫」と呼ぶようになりました。

美沙雪姫が12歳になった頃突然父が再婚しました。継母の名前は美貴、美沙と名前が似てるのは気のせいです。
美沙は美貴の事が何となく気に入らないので、父親に離婚する様に説得しましたが聞き入れてくれません。
しかも、結婚してから一週間もしない内に国王はポックリと逝ってしまいました。
こうなると怪しいのは美貴王妃ですが…
何と美貴王妃は魔女で国王を毒殺してしまったのです。わぁびっくり(笑)
あれはまだ美貴が魔女見習だった頃(別に師匠は魔女蛙では無い)、偶々見かけた隣国の鷲士王子に一目ボレをしたのです。そして一人前の魔女になった今、まずは鷲士王子に相応しい地位を手に入れ様と言う壮大何だかセコイんだか良く解らない計画の詰めなのです。
とまあ導入部はこれ位にして本編行って見様〜。

豪華絢爛な内装が施された部屋。その中で美貴王妃は大きな鏡に向かっている。
「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で鷲士王子に一番相応しいのはだ〜れ?」
と、他人が見たら「この女、鏡に向かって一人事喋ってやがる。頭可笑しいんじゃね〜の?」と言いたくなる様な事をやっているがこれは魔法の鏡。使用者の質問に答えてくれると云う「おうぱあつ」と呼ばれるものである。もっと別の使い道があるような気がするのだが…
とまあそんな訳で律儀に質問に答える鏡。
『それは美沙雪姫です。』
と明らかに美貴王妃の神経を逆撫でする様な答えを返しやがる。ピシッっと何やら美貴王妃の額の辺りからヤバイ音が聞こえて来た。
「へーそうなんだ〜。あの娘がね〜。参考までに聞くけど2番以降はどうなってるのかしら?」
怒りを押さえながらも続きを促す美貴王妃。どうやら自分の順位がきになる様だ。
『その次は名門貴族シュライヒャー家のノイエ・シュライヒャー嬢とその妹のルイーゼ嬢となっております』
「ほー、ノイエがね〜」
良く見ると握り拳がプルプルと震えている。
『後は、鷲士王子の教育係の片桐冴葉女史やその部下の西単衣嬢。人魚の国の姫の(と云うより最長老)綾代いずな女史。その他にも…』
「ねえ?」
『ハイ?何でしょうか?まだまだ続くのですが。』
「ニホンと云う国にね、とても良い言葉があるらしいのよ。」
『ハア?』
今の話との繋がりが解らず首があるのなら傾げている様な声を返す鏡。
「なんでも『鳴かぬなら殺してしまえ不如帰』というらしいのよ。」
……
……
……
永遠とも思われる静寂が続く。
『え〜と。入力データに不備が見付かりました。再計算したところ2番は美貴王妃です。』
根性無し。
「そっか〜2番か〜♪何で一番じゃ無いのかしら?」
『出番の差というか、メインヒロインとヒロインの差というか、読者人気の差というか…』
「よっぽど壊されたいらしいわね?」
『ヒィッ』
自分では動けない筈の鏡がガタガタ震えている。
「まあ良いわ。」
『ホッ。』
自分の寿命が延びて安心する鏡。胸があったら撫で下ろしている事だろう。
「美沙を消せば私が一番なのよね。」
『エッ?』
呆気に取られる鏡。
「既に国王を殺してるのよ。こうなればもう一人殺したって同じ事。待っててね鷲士王子、美貴は直ぐに貴方に相応しい女になりますから。」
使える主を間違ったかも、と後悔する鏡を余所に美貴王妃の笑い声が部屋に木霊する。
情熱を使う方向を間違っていると思いつつ以下続く。


一方その頃窓の外では猟師の息子の樫緒が全てを立ち聞きしていました。
「そんな王妃が魔女で、美沙雪姫様を(下らない理由で)殺そうとしてるなんて…」
何故こんな所に都合よく彼がいたのかと云うと。
実は樫緒と美沙雪姫は乳兄弟として育てられたのです。幼い時から本当の姉弟の様に育ちましたがそこはそれ姫と猟師では正面から合う訳には行きません。それで樫緒の方が窓から面会に忍び込んでいたのですが、今日はこの様な場面に出くわしてしまったのです。あぁご都合主義。
「早く姫様に知らせねば!」

所変わってここは美沙雪姫の部屋。
「そう、あの女どーも気に食わなかったけどやはり人間じゃなかったのね。」
でも、あたしの勘じゃ吸血鬼だと思ったのにとブツブツ呟いている美沙雪姫。
「姫様!納得してる場合じゃありません早くお逃げ下さい。」
「いやよ!」
間髪入れず答える美沙雪姫。
「あたしの辞書に逃げるなんて言葉は無いわ!徹底抗戦よ。」
「そんな事をされると話の展開が…」
呆気に取られながらも言ってはいけない台詞を言う樫緒。
「何よ。その話の展開って?」
「いえ、何でも有りません。そんな事より。」
「良いですか?唯でさえ王妃と姫であちらの方が権力を持ってるんです。その上相手は魔女です、魔法を使うんです勝ち目は有りません。」
「でも、あたしの辞書には…」
「その辞書は不良品です。後で新しいの買ってあげますから。」
まだ何処か納得がいかない様でうーうー唸っていた美沙雪姫だが。
「分かったわよ。逃げればいいんでしょ、逃げれば。」
「分かって貰えましたか姫様。」
「ふー。こんな事もあろうかと造っておいた隠し通路が役に立ちそうね。」
「何時の間にそんな物を…」
ジト目で美沙雪姫を見つめる樫緒
「いや、その、あははははは。すいません、城を抜け出して遊びに行こうと思って造りました。」
結構あっさり認める美沙雪姫。
それを呆れた様に横目で見る樫緒。
「まあいいでしょう。後の事は私に任せて姫様はお逃げ下さい」
「でも、あたしが逃げたらあの女追手を差し向けるんじゃ無い?他の人に迷惑も掛かるし…」
「その点に抜かりはありません。主治医の古谷さんは私達の味方です、奥さんが人魚の国にコネがあるらしく魂の入って無いコピー程度ならすぐに用意出来るそうです。それを死体として埋めれば納得するでしょう。」
その言葉に対し嫌そうな顔を浮かべる美沙雪姫。
「なんか想像すると嫌な感じがするけど、解ったわ後の事は任せたわ。」
「御武運を姫」
と何処かの会長秘書の様な台詞をのたまう樫緒に笑顔を残し、隠し通路に姿を消す美沙雪姫であった。


そして美沙雪姫の葬儀が盛大に行われた。
そこには多くの人が集まり皆涙を流し嘆いている事からも美沙雪姫の人気が伺える。
そしてこの葬儀の主催者でもある美貴王妃は一応悲しんでいる振りをしている。
「あぁ。まさか美沙がこんな、バナナの皮で滑って頭を打って死んでしまうなんて。なんてオモロイ…もとい。なんて惨い死に方を…神よ何故です、何故美沙が死ななければならないのです。」
(うふふふふ。これで私と鷲士王子の間を阻む物は何もないわ。国が落ち着き次第迎えに行きますから待っててね。)
相変わらず鷲士の事しか頭に無い美貴王妃。それにしても樫緒と古谷医師は美沙雪姫の死因を「バナナの皮で頭を打った」事にしたらしい。美沙にバレタ時に二人がどんな目に合うか考えるだに恐ろしい。


そして森の中をさまよっていた美沙雪姫は小さな家を発見しました。
「こんな森の中に家が建ってるなんてラッキーね。泊めてもらえるか聞いてみましょう。」
ドンドン
「ごめんくださーい。」
ドンドンドン
「ごめんくださーい。誰かいますかー?」
ガチャ。ギィ。バタン。
誰も居ない事を確かめると勝手に家の中に侵入する美沙。そして家の中を見渡すと。
「こんな森の中に家があるだけでも怪しいのに、家の中には子供用の小さいベットが7つ。子供だけでこんな所に住んでるなんて怪しいわね…」
怪しいのは勝手に人の家に上がりこんだお前だ!
だがそんな事には構わず家の中を物色する美沙。
見付かった怪しい物といえば葉っぱと云う所から発売されたPCゲーム位だ。
「他には何も無いわね。ふぁ〜あ。」
一日中森の中をさ迷っていた為、すっかり疲れている美沙雪姫。
「持ち主には悪いけどちょっとこのベット使わせてもらいましょ。」
そして美沙雪姫はベットに潜りこむと早々と寝息を立て始めるのでした。

そしてその夜、暗い森の中を7つの人影が一列になって歩いている。
「皆、もうすぐ家に帰りつきますよ〜。頑張りましょう!」
「「「「「「はいっ」」」」」」
先頭の人物の言葉に返事を返す残り6人。その台詞は見事にシンクロしていた。
その後、帰りついた7人が家の扉を開けると荒された室内の様子が飛びこんで来るのであった。
「はわわ〜。ど、ど、ど、泥棒さんです〜。」



そして泥棒に入られた?小人さんの家。
「はわわ〜。ど、ど、ど、泥棒さんです〜。」
アタフタと右往左往する小人リーダー。
「そうだっ。何か盗られた物が無いか確認して下さい。」
「「「「「「はいっ」」」」」」
リーダーの言葉に答え散開する残り6人。そして。
「お姉様。私のベッドで誰か寝ています。」
そのベッドには今までの騒ぎにも動じる事無く眠りつづける美沙雪姫の姿が在った。
「あの〜泥棒さん。起きて貰えませんか。」
ユサユサと美沙の事を揺する小人リーダー。
「もしもーし。すいませーん、泥棒さーん。」
ユサユサユサ
「すみませーん。泥棒さん。起きてくださーい。」
ユサユ
「誰が泥棒よ−−−」
とイキナリ跳ね起きながら叫ぶ美沙。
「はわわー。す、す、す、すみませーん。」
その声に驚いたのか反射的に謝る小人リーダー。
だが美沙は寝ぼけ眼で辺りを見渡すと。
「ここ何処?」
とのたまうのであった。
「ココは私達の家です〜。」
律儀に答える小人リーダー。
「そっか。私、森の中を歩いてたらこの家を見つけて…んで眠くなったんでそのまま寝ちゃったのよね。」
うんうんと今までの事を思い出す美沙。
「それで貴方誰?」
「私はこの森に住んでいる妖精で、名前はマルチと申します。」
「妖精〜?」
思いっきり疑わしげな声を上げる美沙。
「ハイ。妖精です。ほらっ耳の形が違うでしょ。」
と横を向き耳を見せるマルチ。
(確かに普通の人とは形が違う。違うけど…これは絶対に妖精の耳じゃない!)
マルチの耳は明らかに人工物であった。
「それで後ろの人達は?皆、貴方と同じ顔してるけど。」
「この子達は私の量産型…もとい。私の妹で6つ子何ですよ。」
(今、量産型とか聞こえた様な。怪しい、明らかにこの家だけ世界観が違う。)
「まあ良いわ。私の名前は美沙。元はこの国のお姫様として蝶よ花よと育てられ、美沙雪姫なんて呼ばれてたけど。今は新しく来た継母に権力を握られ、その上命まで狙われたので逃げ出して来た惨めな敗残兵よ。」
と自虐的な自己紹介をする美沙。
「まあ、それは大変です〜。<娘の命を狙う継母。幸せそうな家庭に一体何が!!>という奴ですね。」
「あんたそんな知識を一体何処で?」
呆れた表情で尋ねる美沙。
「この前、町で購入した週刊誌に似た様な事が書いてありました。」
「あっそう。」
「それでしたら暫くこの家に泊まっても良いですよ〜。」
「本当に!!」
マルチの言葉に目を輝かせる美沙。
「ええ、構いませんよ。」
「良かった〜。助かったわ、有難う。」
安堵したのか。
グゥ−−−
と美沙のお腹の虫が鳴き出した。
「お腹が空いてるんですね。何か作ってきますから待ってて下さい。」
と台所らしき場所へと姿を消すマルチとその妹達。
(最初に合った時は、変な人だと思ったけど優しい人達で良かったな。見ず知らずの私の為にあれこれと世話を焼いてくれて。)
と美沙が感動に浸ってたのも束の間、台所からは。
ガシャン、パリン、ガランガラン、グワシャ、ザラララララー、グチャ、はわわ〜トマトがトマトが〜。
といった音が漏れている。
(何?あの子達は一体何を作っているのよ〜)

そして30分程後に食卓に出されたのは、茶色で平べったく円形の少し焼け焦げた物体だった。
「参考までに聞くけどコレ何?」
引き攣った笑みを浮かべながら美沙が尋ねる。
「これはミートスパゲッティーという料理ですよ。」
と満面の笑みを浮かべてマルチが答える。
(違う!。コレは私の知ってるミートスパゲッティーじゃない。あえて言うなら…そう!これはミート煎餅よっ!)
「あ、貴方達は食べないの。」
必死に逃げ道を探す美沙。
「私達は物を食べなくても大丈夫なんです。なんと太陽光線からエネルギーを作れる様にパワーアップしたんです。ねっ妖精っぽいでしょ?」
(だからそれは妖精じゃない。そんな妖精私は認めない−−−)

後日、美沙は語る。
「防空壕に篭って毎日毎日カンパンばっか食べていた人達の気持ちが痛いほど理解出来た。」と



豪華絢爛な内装が施された部屋。その中で美貴王妃は大きな鏡に向かっている。
「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で鷲士王子に一番相応しいのはだ〜れ?」
と前にも聞いた覚えの在る台詞を言っている。
『それは美沙雪姫です。』
ピシッっと何やら美貴王妃の額の辺りからヤヴァイ音が聞こえて来た。
「あんたねぇ。美沙は死んだのよ。何で死んだ人間までリストに入れてんのよ。」
そんなに私を一位にしたくないの?と鏡に凄む美貴王妃。
『ど、どうやら美沙雪姫は生きてる様ですね。これは確かな筋からの情報です。』
ガタガタ震えながらも何とか答える鏡。
「と云う事は内部に手引きした者がいるわね…。そっちは後回しにするとして、美沙の居所を教えなさい!今すぐに。」
『森の奥に住む7体のメイドロボット…もとい7人の妖精の所ですけど。どうするのですか?』
「知れた事!他人が頼りにならないのなら私自らが手を下すわ。そう!この私が造りし特製の毒りんごでね。」
おーほっほっほっほ。
と美貴王妃の笑い声が木霊する部屋の中で(そんな怪しげなりんご食う奴なんざ居ねーよ)と鏡は思っていた。


だが、その頃美沙は飢えていた。
来る日も来る日も食事はミート煎餅。朝昼晩3食ミート煎餅。
そんなにミート煎餅が嫌なら自分で作ればいいのだが、大方の予想通り美沙は料理した事が無かった。もちろん試しに料理してみたがマルチの料理と甲乙点け難い稀に見る名勝負となった。
その為、気分を変えたい時は原材料をそのまま齧るという行動に出ていた。
そんな時に美沙の目の前にりんご売りが現れた。
その人物は全身をすっぽりと黒いローブで包んだ怪しい人物だった。りんごを売りにこんな森の中に現れる様な怪しい人物だった。
普段の美沙なら絶対に買わないだろう。だが、あえて言おう。美沙は飢えていた。


毒りんごを一口、口にした美沙はそのまま倒れてしまいました。
偶々早めに帰ったマルチが早期発見しましたが所詮ドジ属性。慌てるか嘆く事しか出来ません。
ですがその嘆きをの声を聞きつけた一人の男がその場に駆けつけました。なんとそれは武者修業の旅として諸国漫遊していた鷲士王子でした。ご都合主義ですが昔話なんて所詮こんなもんと納得して下さい。
「一体どうしたんだい?」
「美沙雪姫が悪い魔女に毒りんごを食べさせられたんです。」
何故そんな事まで解る?マルチ。
「くっ。こんな小さい子にそんな事するなんて魔女め。」
鷲士王子はそう呟くと美沙雪姫の事を調べます。
「まだ助かるかも知れない。」
「本当ですか!?」
「解らない。でもやれるだけの事はやって診よう。」
なんと鷲士王子は王家に伝わる伝説の拳法<九闘流>(くとうりゅう)の使い手だったのです。なので応急処置程度ならお茶の子さいさいです。
取り合えず鷲士王子は人工呼吸と心臓マッサージを繰り返します。
そして10分も続けた頃です。
「うぅん。」
と美沙雪姫が意識を取り戻します。そして目を開けるなり。

「何してるのよー!このスケベ−−−。」
バシーーーン。と景気の好い音が森中に響き渡ります。
「ひ、人が寝てる間に唇を奪うなんて、最低!」
「ち、違う。誤解だ!僕はただ…」
「その方、胸も揉んでましたよ〜。」
と余計に場を混乱させる事を言うマルチ。
「違う!あれは心臓マッサージと云って…」
「……取って」
「えっ?」
「責任取ってって言ってるのよー!」
「責任って…そんな…」
「貴方のせいで私はもうお嫁に行けない体になったのよ。責任は当然取って貰うわよ。」
「そんな…君と僕は年齢も離れてるし。」
「そうよ。年齢が離れてるのよ。責任取ってくんなきゃ小さい子が寝てる間に悪戯する様な変態ロリコン野朗だって世界中に広めてやるー!」
「違う。あれは君を助けるため仕方無く…」
「責任取って。」
「だから。」
「責任取ってくれるんでしょう?」
「いや。その。」
「酷い!やっぱり変態なんだ。」
「ちが…」
「責任とって。」
「だから…その…」
「セ・キ・ニ・ン」
「解りました。責任取らせて頂きます。」


こうして鷲士王子は国に幼い婚約者を連れて帰ったそうです。しかも、その相手が死んだと聞かされていた隣国の美沙雪姫だったので2度ビックリ。
両親や大臣達からの反対は特には無かったようですが当然の様に鷲士王子はロリコンという噂が流れたそうです。
めでたしめでたし。

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