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――それは獣の数字である。その数字とはすなわちヒトのことを指す、其の数字は・・・――
港湾内に浮かぶ一艘のクルーザー。普通のクルーザーとは少し違うフォルム―軍事用に近い―をもつ、その内部。一台だけついたCRTの光が一人だけの乗組員を照らし出している。―砂村水蓮―。瞳以外に色を持たぬ白い美貌の少女、彼女はCRTに浮かんだ情報にその眉を少々歪め・・。そして自らの”造物主”に連絡するために卓上のコードレスホンに手を伸ばした―――。
”青年”が船に現れたのはそれから数十分してからだった。どうやら用事の最中だったらしい。急いできたのかその息が荒い。
現れた青年もまた並外れた美貌を持っていた。完成された野生の美貌とでも言えばいいのか、黒いコートを着こなした姿は黒豹を思わせるしなやかさだった。青年の名は陣内悟――。その名を知るもの達に恐怖と、それに等しい畏れすら与える”ヒトの神”と呼ばれる男――。
「”アレ”が見つかったってのは・・・マジか?」
問う悟、その表情は真剣そのものである。
「・・・・・反応が高いから・・まず間違いないと思う・・・。場所は・・・太平洋、マリアナ海溝・・その最奥だと思われるわ・・。」
水蓮の返答に満足げに頷く悟。
「マリアナ海溝か・・・。AI!機関全速、目標、マリアナ海溝直上!!」
その声に反応して古代の超技術が使われた内部機関に灯がともる。そしてプラズマジェット推進の奔流が彼らを運んでいく――。
世界最奥の場所、マリアナ海溝へと――。
月の光だけが優しく降り注ぐ深夜、悟達を乗せた船はマリアナ海溝、その直上についていた。
「・・・どうするの?お父さん。”アレ”の場所は恐らく深度一万メートルクラス・・・。”鬼”の技術といえども充分な細かい作業ができる潜水艦はないわ・・・・」
しかし水蓮の疑問を受け、不敵に笑う悟。
「ふふふ・・。甘いぞ水蓮!!(作者談:某ワッフルよりも(爆))、これを見ろっ!!(ごそごそ)テキ○ー灯〜〜」(パパパパ〜ン)←効果音
悟がいつの間にやら腹部についている白いポケットから怪しげな効果音と共に取り出したのは、ボトルに銃のグリップを取り付けたような物体だった。
「これからでる光を浴びればアラ不思議。24時間の間どんな環境下にも対応できる体に大変身だっ!!」
「・・・・・・・」
水蓮、無言
「はっはっは。こいつは未来から来たネコ型ロボットも使っていたという由緒正しきモンだぜ、すげぇだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
水蓮、さらに無言。
「・・・ゴホン。まぁつまり、コレで大丈夫ってこった。」
悟が言いなおす。が、その頬が赤い。ボケを素で通されて恥ずかしかったらしい。まぁ水蓮にツッコミを希望するのが間違っている気もするが・・・・。
「じゃあいってくるから、後は任せたゼ。」
そういって悟は海中に姿を消した。
「・・・お父さん。結局コレ使ってない・・・。」
一人取り残された形の水蓮が傍らのテキオ○灯をさす。余談だが悟がそれに気付いたのは30メートルほど潜ってからだったという(笑)
ちょうど、その少し前―。日本、八重垣市、メルクリウス財団本社ビル、その玄関。そこに一人の少女が立っていた。先の二人と比べれば見劣りするだろうが、コロコロと豊かに変わる表情や大きな瞳は充分可愛いといえるだろう。――柊 夏菜。”ヒトの神”陣内悟の”相方”、その事実を知るものは少ないが―。
「悟のヤツ、今回も人を置いてさっさと行っちゃうんだから。せっかく久々の・・・・デートだったのに。」
デート、のくだりで顔を赤くするのがこの少女らしいところだろうが、途中でデートをすっぽかされたくらいで付近から怪奇スポット呼ばわりされているメルクリウスビルに黄昏時、しかも一人で来る辺り度胸が座っているともいえなくはない。まぁ恋する少女は盲目、と言うヤツかも知れないが・・。
「とにかくっ!!今日こそはビシッと言ってやるんだから!!」
そういって胸の前で拳を握る。バックにメラメラと炎でも出したくなるような気合だ。そしてそのまま自動ドアをくぐった。そして―――。
悟は闇の中にいた。それはいい。深度一万メートル以上の深海、そこに光の一辺も射すはずがない。それは当然だ。しかし――。
「空気が・・・・ある?」
そう呟いた瞬間、視界に光が溢れた。
「くそっ!何なんだ!いったい・・・」
闇に慣れてしまった瞳が光でくらんでしまってなにも見えない。それでも少しずつ慣れてきたその視界が周りを捉え始める。どうやらドーム状になっているらしいが大きさの桁が違う。小さな街くらいはある。深海にこれだけの大きさの建造物――一体どのような技術が可能とするのか?
そしてその中央部。そこに一振りの剣がささっていた。
「・・・・・・これが絶対神”神”を倒すためだけにまつろわぬ神々が鍛え上げた剣、魔王(サタン)・・・・なのか・・・?」
実物を目の前にして」悟にはその実感がなかった。そこにあるのはなんの変哲もない短刀である。これがあのサタンの佩刀―またはこの剣を使い戦った者がサタンと呼ばれたとも―とはとてもではないが見えなかった。
「まぁこんなとこにあるからには普通の剣じゃないのはたしかだろうが・・・。持っていきゃわかるだろ。」
と、まぁかなり大雑把なことを言いつつ悟がそれに手を触れようとしたとき、”ソレ”は起きた。
(我に穢れた手で触れるな、愚か者が!!)
頭に響くような声、悟が瞬時に気配に気付き、その方向―真上―に視線を向ける。そして”ソレ”はゆっくりと降りてきた。
「ガー・・ゴイル・・・?」
それが悟が見た”ソレ”の印象だった。6対12枚の黒羽を背に広げ、艶やかな漆黒の長髪をたなびかせて降りてくる美しい女性――。
(ガーゴイル?神の操り人形などと同視されるとは心外だな。呪われし大剣豪よ。我は破天の牙、神殺しのための666のシステムを持つ”魔王”の統括システムにして管理者。名を”ルシフェル”。神の呪いを受けし者、神に仇なす者よ。なにを望み、ここまで来た?)
高圧的、とも言える口調で言い放つ目の前の存在―ルシフェル―。その台詞を聞き、それ以上とも言える不敵な笑みを浮かべ悟が答えようとした。
「俺か?俺の望みは・・」
(神を滅ぼす事で自らを滅することか?)
「くっ!!」
図星を突かれて動揺する悟、夏菜にも、そして水蓮にも言った事のない、理由。彼が”神殺し”を決意した、その、理由。さらにルシフェルがいった言葉が悟の心をさらに揺さぶる。
(その程度、神など倒さずとも可能。魔王に宿る”力”神の小細工など通じぬ。・・・・・失望だな、古代の大元帥よ・・・・・己が身の消滅を願う者などに神は倒せぬ。その永遠の連環、我が手にて断ち切ってくれようか?)
そういって”魔王”の切っ先を悟の喉元に突きつけた。
「おれを・・・・滅ぼせる・・?」
それは悟が――サルトル・ザ・マーキュリアンと呼ばれる男が長い間―本当に長い間―望み続けたことだった。
―この呪いが、悲しみが、苦しみが・・・・終わる?―
長い間だったかもしれない、ほんの一瞬だったかもしれない、そんな時間の中、悟は迷いつづけた。そして――。
「俺は―――。」
「さとるぅーーーーーーーーーーっ!!」
少女の声が空気を切り裂いた――。
少々時間を戻そう――。
夏菜がメルクリウスの中に入った時、そこに広がっていたのは一面の――砂漠だった。
「はぁ???」
開いた口が塞がらない、とは今の彼女のような表情を言うのか。そして次の瞬間、夏菜の鼻先に現れたドアに心臓が止まりそうなほど驚き――なんとか口が塞がる。
「・・こ・このドアは・・・・・(汗)」
どこかで見たようなデザインのピンクのドア、そのドアの目線の辺りに”夏菜専用”と書かれた不思議な光沢のプレート。どうやら夏菜がメルクリウスに入ったことを感知して出てきたらしいが・・。恐る恐る、という感じで夏菜の手がドアノブにかかる。
(やっぱコレって・・アレだよね・・・?こうなったら・・・なるようになれ!!っていうかならないように、なるな!!)
ガチャッ。
ドアを開けたその先には――。
場所は変わって、マリアナ海溝、その直上。悟が消えた海を見つめていた水蓮は背後に感じた気配に振り向き・・そこで止まった。
「夏菜・・・さん?」
そこには彼女のはじめての”友達”、柊 夏菜がいた。その姿は傍目に見ても怒りに燃えている。その状態のまま夏菜は1歩・1歩と進んでいき、
「水・蓮・ちゃんっ!!」
ガシィッ!!と音でもしそうな勢いで水蓮の方を掴んだ。
「さとるはどこへいったの!!」
怖かった。恐らく今の彼女を見ればゴジラも裸足で逃げ出すだろう。その勢いに押されて水蓮が悟の居場所を指差す。―――すなわち、真下へと―――
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