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新刊紹介 戸井十月「ゲバラ最期の時」 |
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いま公開されてヒットしている映画、「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳別れの手紙」というゲバラ2部作を既に見た方も多いでしょう。この映画の主人公でありキューバ革命の英雄として知られるチェ・ゲバラの人生に深く共感し、かねてからその死の真相を探り続けてきた作家、戸井十月氏は、私(羽柴)の古い友人です。そして戸井氏が、この映画公開と時を同じくして2009年1月に出版したのが、この著書「ゲバラ最期の時」です。 |
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ゲバラ2部作 映画は第1部「チェ 28歳の革命」では、ゲバラがカストロらのゲリラ戦に加わり、独裁者バチスタを倒しキューバ革命を成功させるまでを描き、第2部「チェ 39歳別れの手紙」では、キューバを離れて南米ボリビアでゲリラ活動を始めたゲバラが次第に追いつめられ、ついに政府軍に捕らえられ処刑されるまでを描いています。 なんでもソダーバーグ監督は、最初は第2部だけを映画として製作するつもりだったのが、途中から、合わせて第1部も作ることとしたということです。キューバで革命に成功したゲバラが何故ボリビアで困難なゲリラ戦に身を投じ、死ぬこととなったのか、それを描くにはキューバ革命の場面から始めなければならなかったのでしょう。
18歳にして「ゲバラの死は、私の青春に楔を打ち込んだ」という戸井氏は、オートバイにまたがって中南米を疾駆した若いころからゲバラの人生の足跡を追い、その成果は既に前作「チェ・ゲバラの遙かな旅」(集英社文庫所収)にまとめられています。しかし戸井氏によれば、その前作ではゲバラのボリビアにおける活動、特に最期の時を納得のいく形で書けなかったというのです。もちろんそれは戸井氏の責任ではなく、ゲバラの死をめぐる真相が未だ明らかになっていなかったという時代の制約によるものなのですが。 そんな戸井氏の前に偶然、ゲバラと最期の会話をかわした人物が現れます。2005年、バイクによる南米大陸走破の途中のことです。戸井氏はそれをきっかけに、ゲバラの最期を知る証人たちにインタビューを始めることになります。当時の事情を知る多くの関係者から話を聞くにのは今のうちしかないという思いが、戸井氏を突き動かしたのです。 隠されてきた最期 こうして戸井氏の執念は、ゲバラの最期を知る人々(ゲバラと共に闘っていたキューバ人ゲリラ戦士、ゲバラが捕らえられていた学校の教室でゲバラと会話を交わした女性教師、射殺直後のゲバラの遺体に触れて、それが政府軍の宣伝のような戦闘による死ではないことを見抜いた医師、さらには、直接のインタビューではないが、命令されてゲバラを射殺した政府軍兵士など)からの聞き取りという形で、ゲバラの最期の時をめぐる真実を克明に解き明かして行きます。 それは同時に、ゲバラを革命の英雄としないためにその最期の様子を隠し通そうとし、その遺体のありかさえ秘匿したボリビア政府と、さらにはその背後にいるアメリカ政府の意図を暴くことでもありました。 著者の戸井氏が何を見いだしたのか、それを知るには是非、この本を手にとって読んでみて下さい。映画でもある程度は描かれていますが、詳細はやはり書かれたものには及びません。また、映画では描かれていない遺体をめぐる政府側の工作や、関係者のその後の人生なども非常に興味深いものがあります。 革命のロマンの行方 戸井氏は、以前に私が紹介した著書「カストロ 銅像なき権力者」(新潮社)においてキューバ革命のもう一人の英雄カストロを描いています。しかし、そのカストロと盟友ゲバラとの間に、革命後に何があったのでしょうか。 ゲバラが革命後のキューバを出てアフリカやラテンアメリカの革命運動に身を投じることとなる経緯は、今回の戸井氏の著書「ゲバラ最期の時」によれば、革命後のキューバの後ろ盾となったソ連を「帝国主義的収奪の共犯者」と弾劾する革命家ゲバラと、国際政治の現実ではソ連に頼らなければならない小国キューバの指導者であるカストロとが、二日間にわたりとことん話し合った末の結論だったとされています。 革命のロマンを国際政治の現実の中でも貫こうとしたゲバラに、戸井氏は暖かいまなざしを注ぎます。 ソビエト革命も中国革命も、その後の経過を見てくると革命のロマンが常に現実によって裏切られてきた歴史といえます。ひとりキューバ革命のみが例外であることが出来るのか、私(羽柴)には判断できません。ただ、オバマ新大統領のもとでアメリカがこれまでの傲慢な振る舞いを改めつつある現在、革命のロマンを追い続けたゲバラの人生の最期の時をめくる真実が、この著書によって広く知られることを期待します。 (戸井十月「ゲバラ最期の時」は集英社から本体価格1500円で出版) |
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