第1章 これだけある相続対策の勘違い
その1「相続対策と相続税対策は同じ」
という勘違い
| 相続対策と相続税対策はここが違います! |
| ◆相続対策は、財産を円満に相続人に承継するための対策 |
| ◆相続税対策は、相続税を円滑に納税するための対策 |
相続対策を必要とする人は意外に多い
「相続対策」と「相続税対策」という2つの言葉を聞くと、同じものと考える人は多いと思います。似たような言葉ですので、専門家も無意識に同じに使ってることがあるでしょうし、混同したからといって、日常生活に支障があるわけでもありません。一般の人たちからすれば、どちらにしても自分にはあまり関係のないことというのが、これらの言葉に対する共通した認識だと思います。
ただ、相続税対策を必要とする人は、確かに国民全体から見ればごくわずかかも知れませんが、相続対策を必要とする人は、実は意外に多いのです。
それは、それぞれの対策の本来の目的が異なるからです。
整理すると、次のようになります。
相続対策は、広義では「生前贈与、遺産分割、財産承継、事業承継、遺言の作成と管理、財産評価、節税対策、納税対策」など、相続に関する対策の全般を指します。
一方、相続税対策は「主に相続税を円滑に納税するための対策」を指します。
この表現ですと、相続税対策も相続対策に含まれるようなニュアンスになりますので、両者を別物のように表現した先の言い方は、厳密には正しくないかも知れません。
ただ、相続に関することで、被相続人や相続人等が困ったり、悩んだり、争ったりすることの多くは、「遺産分割に関すること」と「相続税の支払いに関すること」です。
相続問題といえば、ほとんどこの2つに集約されると言っても過言ではありません。
そこで、2大相続問題の1つである「遺産分割に関する対策」を狭義の相続対策、そして、もう1つの「相続税の支払いに関する対策」を相続税対策と、2つを分けて考えると、対策の目的が明確になり、理解しやすくなると思います。
先ほど、相続税対策を必要とする人はごくわずかで、相続対策を必要とする人は意外に多いと述べましたが、それも、この2つの対策の違いを理解しておいた方が良い理由のひとつです。それについて若干説明を加えます。
相続税には基礎控除というものがあり、5,000万円にプラスして法定相続人一人につき1,000万円までの財産には相続税は課税されないことになっています。
つまり、相続人が配偶者と子供2人の計3人であれば、5,000万円+3,000万円(1,000万円×3人)で、8,000万円までなら相続税がかからないことになります。
そのうえ、自宅などの居住用の財産には評価自体を低くするという特例がありますので(事業用の財産にも同様の特例があります)、相続財産が自宅と現預金だけというようなケースは、ほとんど相続税がかかりません。
それゆえ、多くの人たちは自分には相続税はかからないのだから、相続税対策も相続対策も必要ないと考えています。
しかし、相続税はかからなくても、相続財産があれば、遺産分割や事業承継で問題が生じることはあります。自宅の土地建物は普通は数千万円の価値はありますから、相続人が複数いれば取り合いになることもあります。被相続人が事業を行っていて、承継候補者が複数いると、誰が継ぐかで争いになることもあります。相続財産が自宅(または兼用住宅)と現預金だけの場合はほとんど相続税はかからないと言いましたが、逆に言えばこのパターンの相続(一つの不動産と多少の現預金が相続財産)が最も多いでしょうから、相続人間で不動産の奪い合いになるのは、現実にはよくあることです。
こういった争いを防ぐための対策が相続対策です。
相続対策と相続税対策の違いなどと言うと、何やら言葉の遊びとも思われそうですが、やはり、この2つの違いを理解することは重要だと思います。
その2「相続税を節税すれば納税がしやすくなるという勘違い」につづく
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