どうしたんですか?
元気が・・・、ありませんね
こんな時、慰める言葉をみつけることが出来ない不器用な自分に、ちょっぴり腹が立ちます
ずっとあなたの後ろを歩いて来て、いつのまにか、横に並んでいるのが自然になりました
でも
あなたの横顔を見つめる時は、どうしても、俯きがちになってしまいます
そんな私だから、あなたにそんな悲しそうな顔をしている理由を、訊ねることが出来ないんです・・・

良いことを考えました
明日、遠出をしませんか?
あまり二人連れ立って出かけたことはないけれど・・・、こんな時だから
今からビーンズとトマトを煮込んでチリコンカンを作ります
チリパウダーをたっぷり加えて、口から火を吹きそうなほどに
たまねぎはみじん切りにして、甘く炒めて飴色になるほどに
チリドックと、ポットに入れた暖かいコーヒーをバスケットに詰めて
ちょっと恥ずかしいけど、手をつないで

私の前では、無理に笑わなくても大丈夫
いつもちょっとだけ眼を伏せている私だから、わかることもあるんです
照れた時に指をはじく癖も、甘えたい時につま先で床を蹴る癖も
それから腰に手をあてて、手の甲が白くなるまで力を込めるのは、思い詰めた時
ちょうど今、海を見てるみたいに
口にしてくれなくても、私にはちゃんとわかっているから
そして肩をすくめて振り向いて、いつか笑ってくれることも私にはわかっているから
出来る事は何もなくても
私は
そんなあなたの傍にいたい

ごめん
心配かけているのはわかっているんだ
でも、大切な君だから、話せない悩みもあるんだよ
・・・厨房で何をしているの?
チリドッグ? ピクニックへでも行くつもりかい?
「正解です」って言われても・・・
はいはい。大人しくついて行けばいいんだろ。そんなにふくれなくてもさ
支配人から車を借りてくるよ、たまには海までドライブもいいだろう

人はどうして、話を聞くだけでは飽き足らないんだろうね
理解りあえないとわかっているのに、つい言葉を重ねてしまうのは、何故なんだろう
寂しいから。怖いから。弱いから。愛しいから
たぶん、一人ではいられないから
同じ間違いを繰り返して、人を傷つけても、それでも誰かの言葉を聞いて、
自分を出さずにはいられないんだね

耳の奥で鳴る海風の音も
君が後ろでかすかに立てる、砂をかむ足音も
こんな風に、しんとした心でなければわからなかった
きっと
俺の知らない世界のどこかで
俺は俺に戻ってゆくんだね
岩場に腰掛けて
お手製のチリドッグ、いただきます
・・・うん、上手い。自然に頬が緩んで、チリの辛さにかあっと熱くなってくる
でも、知っているかな。心まで暖かくなったのは、マリアがこうして隣にいてくれるからだって